35話 Daybreak3
Daybreak3
四限目の体育の授業だった。冬真っ只中ということもあって、内容は持久走。距離は可能な限り遠くまでなんて鬼畜内容だった。
「距離指定しないなんて、体教も酷なことをさせると思いませんか、那岐さん」
「そうだねえ、ぜえ、ぜえ。あんまり話しかけないで、げほげほ」
「すみません」
私は、那岐さんのスピードに合わせてグラウンドのトラックを走っている。上気するからだが、冬の冷気を弾く。汗がぼたぼた流れて、びっしょり。昼食を摂るときの汗臭い自分を想像するとはずかしいです。
トラックを回るうちに何度も目に付く有紀さん。
制服姿で私たちをずっと眺めていた。怪我の影響で当分体育はできないそうだ。
「那岐さん、私先に行きますから」
このもやもやした感じは何なのだろう。やけに気分が悪くなる。腹が立っているわけでも怒りがわいているわけでもない。
私はそこから遮二無二走った。
「加奈さんすごい距離は知ったねえ。さすがエースだよお」
「そういうあなたは、終わってからえずいていましたけど大丈夫ですか?」
顔色を悪くしている那岐さんと私は校舎すぐそばの木陰で休んでいた。体育教官に終了までの二十分は好きにしていいとのことだった。およそ計画性のない授業内容だ。体力を消耗した生徒たちがこれ以上何かすることもできないだろう。
私は壁にもたれかかってぼうっとしている有紀さんに視線を向けた。
昨日、彼女の口からあることを打ち明けられた。彼女の弟さんが入院していて今度見舞いに行って欲しいとのことだ。
こうしてみれば、……よくよく似ている。
「昨日は驚きました。有紀さんが壇上で話すときが来るなんて思いもしませんでした」
「ああ、あれはカッコよかったねえ。有紀ちゃんもやればできるじゃん。(*・ω・)」
「あの子は面倒くさがりだと思っていたのですが」
「うん、その辺は間違っていないと思うよお」
うんうんと頷いている那岐さん。
先日の放課後、生徒会室へ向かう途中だった。那岐さんと廊下で接したときに興味深い話を耳にはした。ただ話の肝心の部分が聞けずじまいだったのだ。昨日のリコール騒動もそうだ。何か関係がありそうだ。
「あなた、最近運動部の様子がおかしいって言っていましたね。何か詳しい事でも知っているんですか?」
「えっと、詳しくは知らないよ。ただこの学校って最近になって運動部の活躍が目まぐるしくなっているよねえ。どんどんいい成績を出すようになっているんだ」
「この前、ある部活がインハイに出場したみたいですし、大きな地区大会で優勝した部もあるそうですね。それは結構なことだと思いますよ」
好成績を残すことができた。その部は栄光を手にする。そして来年の部活動勧誘も有利になるか。
いや、それだからこその問題も発生してくることがある。
次も好成績を残さなければいけないというプレッシャー。それに関してはその年にいい人材に恵まれたと言って割り切れるならいい。そういう考えができずに空回りしてしまう顧問だったら困る。程度の差こそあれ、努力によって好成績をもたらすことは可能だと思う。ただ無理なものは無理なんだ。部は、健全な身体を育んで、かけがいのない仲間を作り上げる場として機能すればそれでいい。
もし、その根本を忘れて部員たちに無茶なことをさせてしまうなら……。しかしてこんなものは考えすぎ。
「考えすぎか」
私はひとりごちた。




