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明日私は、恋してますか  作者: 植村夕月
Ⅰ 夜空の姫君は見つけた
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1話   プロローグ 

こんにちは夕月です。

短いプロローグから入りますが、本編の投稿はすぐに行います。

   1話   プロローグ 


 日が傾いて、教室は暗くなっていく。

 そんな時に、花瓶が割れる音が教室に響いた。

花瓶の前では荒く息を吐く少女がいた。

近くを通りがかった私が教室内に残っていた数人の生徒から事情を窺う。

 教師が状況を把握しようとする中、少女がぽつりと呟いた。

「……私が、やりました」

 私は少女を生徒指導室に連れて行った

 何か事情があるのではないかと根掘り葉掘り彼女に問うた。

しかし彼女は口を開くことはなく。ただ

「私が悪いんです。私が、私だけが――」

 うつろな少女の瞳を見て、私は追及をやめた。一目しただけで、この子の心の状態が尋常ではないことを理解した。

だから私はそそくさと彼女を解放したけれど、この時の判断が正しくなかったことは後程わかることとなった。

 彼女は足元がおぼつかないまま廊下を歩いてゆく。私は心配だった。

「なあ、君。送っていこうか?」

 彼女は振り返って私をまじまじと見る。

「いえ、もう面倒をかけるわけにいきませんから。大丈夫ですから」

 そういうと彼女は廊下の端にある階段へと、とぼとぼ歩いていった。

 窓から吹き抜けていく風が冷たい。

 十月の中旬ともなれば、夏の名残もすっかり失われてしまっている。

 私は三階生徒相談室の窓より、中庭に植えられている木々を眺めた。

「もうすぐ葉も色づき始めるころだな。ここもいい色合いになるといいな」

 こんな風にのんきに考えていられるのも今のうちだけ。

 

 後日私のもとに緊急の連絡が入った。

 携帯の通話口より飛んでくる言葉が一瞬理解できなかった。

「先生、聞いてますか。先生! 有紀が、有紀ちゃんがリストカットをして救急車で病院に送られたんですが、意識が戻らなくて――」

 平日の夜、少女の友人が帰宅した彼女を訪ねたときに、風呂場の浴槽で手首を切っているところを発見してのことだった。


「うん、うん、うん、うん……」

 少女は私の胸の中で泣く。

 間もなく日が暮れる頃だった。


ご拝読ありがとうございます。

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