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【09】 1章の07 認識





 チロッペたんの一言が、多少気になりはしたものの。


 とりあえず、俺はその場にゆっくりとしゃがみ込みつつ(・・・・・・・・)、地面に敷かれた〈大きな麻の敷布〉に並べられた『商品』を手に取ってみる事にした。



 ……って言うか、パッと見ただけでも明らかに『気になるの』がいくつか在るんだけど……とりあえず、先に良く分からない物から見ていこうかな、うん!



 さて、一つ目は……真ん中にU字の出っ張りがある、片方が尖った10cm程の〈短い鉄の棒〉? ……うん、なんだこれ? 短い〈文鎮〉か? 実際、手に取ってみても何に使うのか良く分からん。木製だったら、形的には『ツボ押し』に使う短い棒によく似てるけど……これでツボ押したら、多分痛い。と言うか体に刺さる……よく分からん、次いくか。



 次にこれは……〈髪飾り〉、かな? 先端が尖った細長い棒状の部分の反対側に、細工された板状の部分がある、〈(カンザシ)〉っぽい物だ。素材は〈金〉とか〈銀〉じゃなくて……〈鉄〉っぽいけど。ま、〈金〉は高いんだろうな。数本まとめて置いてあるので、触るとチャラチャラ鳴る音が涼やかだ。



 お次は……お? これ、〈扇子〉じゃねぇか。〈異世界(こっち)〉にも有るんだなぁ……って、まぁまぁ重いな、これ…………あん? 骨が〈鉄〉で出来てる……これ、所謂(いわゆる)鉄扇(テッセン)〉か? ……骨と骨の間部分は、手触り的に〈紙〉じゃなくて何かの〈皮膜〉っぽいな……こう、コウモリの翼的な感じ。



 ……まぁ、次だ次……こっちは、〈小振りなナイフ〉か。おお、小さいけどしっかりしてるな。刃筋も……うん、真っ直ぐだし、こいつは良い物だ……でも、『柄』がこんなに小さいと、使い難くないか? 重心が、ほとんど全部『刃』にあるぞこれ……? 『柄』に巻かれた、赤い『飾り紐』はカッコいいけど。



 えーっと、これは……待て、何で〈メリケンサック〉? これ、ファンタジーともちょっと違うような……いや、こういう〈武器〉もあるか。それに造りはしっかりしてて、物自体は良い出来っぽいし。



 その隣は……ん? 何の変哲も無い、真っ直ぐな〈木の杖〉? さっき言ってた『魔法』の媒体……あれ? これ思いっきり『魔法職(マジックユーザー)』案件の物じゃね? 聞き間違えたか?

 しっかしシンプルに〈まっすぐな木の杖〉過ぎて、正直俺が〈鞄〉の横に差して来た〈杖〉の方が、よっぽどそれっぽ──いや、これは?


 シンプル過ぎて見る所が無いと思いつつも、試しに手に取ってみたんだが、〈杖〉の重心が直径の太い持ち手側じゃなく、細くなりかけてる部分にある……変な違和感が……って何だ、この切り込み? 動くぞ……ってオイ!? これ〈刃〉が仕込まれた〈仕込杖〉じゃねぇか!? あれだ、座〇市!



 ……何かもう、『商品』のバリエーションが物騒過ぎる気がしてきたが……んで、次は……あ。そうだ、これこれ。


 これが、パッと見で明らかに気になる物だったんだが……コレ、いわゆる〈腕甲(ガントレット)〉もしくは〈籠手〉かな?

 肘から前腕をカバーして、手の甲から指の付け根までの部分をカバーする形状なんだけど……いやぁ、やっぱり武器と一緒で防具も目にして触れると楽しいよねぇ……別段武具フェチとかじゃないけど、ゲームでしか見られない様な物をこの目で見ると、やっぱり全然違うワケよ! このズッシリと来る感じが……ん? 何だこの『紐』?


 思わず顔をニヤニヤさせつつ、いろんな角度から〈腕甲(ガントレット)〉を眺めていると、手の甲付近から出ている『謎の紐』を見つけた。パッと見は、各指に掛けて装着する時に使う物かと思ったのだが、親指と人差し指の間から出ていて本数が合わない。


 疑問を顔に浮かべたからだろうか。横から見ていたチロッペたんが、声を掛けてきた。


「ど、どうかされましたか?」

「いえ……この『紐』は何に使う部分なのかと思いまして」


 『謎の紐』を示すと、チロッペたんが手を伸ばそうとしたのだが


「あ、それはですね──「手側を上に、縦向きに持って」」


 ……何故か横から、レイフェちゃんが口と手を出してきた。


 まぁ、特に従わない理由も無いし? むしろ『第二美少女(獲物)(推定)』とコミュニケーション取れるんならハイ喜んでぇッ!!



「は、はい……こうですか?」

「ん」


 言われた通りに〈腕甲(ガントレット)〉を持つと、軽く頷いたレイフェちゃんが若干身を離しつつ(・・・・・・)紐を握り……待て、いま何で身を離し──


 ──ジャキィンッ


 金属音と共に、〈腕甲(ガントレット)〉の前腕部から手側に向けて、勢い良く……刃が生えた。うん、刃が生えた。

 ほとんど反りは無く、細いが鋭そうな30cm程の刃が、3本……生えた。


 ビ、ビビッて無いからね? 全然ビビってないからね? 俺をビビらせたらホント大したもんだよ?


 さておき! ……これ、アレだよな。ほら、腕に着けて鉤爪が出っぱなしだったり、コレみたいにガチョっと飛び出したりする……〈鉤手甲〉ってヤツ、だよな? ほら、よくゲームとかアニメとかでさ、『忍者』とかが袖の下にでも隠してそうな…………隠す?



 ……あー、待てよ? って事は、もしかして……最初の〈鉄の棒〉は〈寸鉄(すんてつ)〉だか〈我眉刺(がびし)〉だかで、〈柄の短いナイフ〉は〈スローイングナイフ〉、か?


 それに〈鉄の簪〉、〈鉄扇〉、〈メリケンサック〉、〈仕込杖〉?



 ……おいおいおい。


 いや、確かに『メルカ()』みたいな『魔法職(マジックユーザー)』タイプだと、使う機会無さそうだけどよ。というより、有っても困ると言うか。むしろ、いつ使うんだよと言うか?



 遠目じゃ良く分からなかったが、チロッペたんとレイフェちゃんが売っていたのは──全部、『暗器』の(たぐい)だったのだ。



 どれも、よく『暗殺者(アサシン)』とかが持ってたり、日本だと主に『忍者』が持ってるイメージが多い類の物だ。いや、確かに『ゲーム』でも、『ロールプレイ』が出来る様にバリエーション豊かな『武器』が在ったが……『暗器』なんかあったっけ?



 ……っていうか、のどかな真昼間の街中の広場の〈噴水〉横で……『何』売ってんの、この子達。こういうの常識なの? 何この〈世界〉。マジコワイんですけど。


 ……でも、ついついジックリ見ちゃう! だって『男の子』だもん! ……三十路過ぎてようが心は『少年』なんだよッ! ……つ、次はどんなのがあるんだ!?



 少しばかり、〈世界〉の違いによる差に驚愕しながらも。

 滅多に見れない各種『暗器』を手に取り、ホクホクしながら色々な角度からジーックリと見ていた俺は。


 何の気なしに、次の『暗器』を見ようとしゃがみ込んだまま(・・・・・・・・)横に小移動した(・・・・・・・)。すると──



「(──ちょちょ、お客さんッ!? 下、下! (スソ)がッ!)」



 唐突にチロッペたんが、顔を真っ赤にしながら慌てて小声で叫ぶように声を掛けてくる、という器用な真似をしてきた。


 同時に、さっきの〈鉤手甲〉以降距離が近くなっていたレイフェちゃんが。こちらではなく横を見ながら、自然な動作で〈商品〉を置いていた〈敷布〉を少々持ち上げて……そのままキープしている。



 ……んん? 何してるんだ?



 そのまま動かないレイフェちゃんは、とりあえず放って置くとして……チロッペたんは、『下』が、どうしたって?



 顔を赤く染めたチロッペたんの視線を追って、俺も『下』を見てみると。しゃがみ込んで曲げた自分の脚の間から、〈ローブ〉に隠れていた『水色の中身』がまともに見え──て、いっけねッ!?



「ッと!」



 慌てて〈メイジローブ〉の前を押さえつつ、脚で挟み込む。



 ……イカンイカン、『コレ』は俺のだ。また自分以外の野郎共に、見られてしまう所だったぜ……。


 俺が『中身』を隠したのを確認したレイフェちゃんが、上げていた〈敷布〉を下ろした。



 ……ああ! そうか、さりげなく周囲の『視線』をカバーしてくれたのか……! た、助かった。



「……あ、ありがとうございます。すみません、ついつい夢中になってしまいました」



 苦笑いしつつ、二人に礼を言う。同時に、心の中でタラリと冷や汗が流れるのを感じた。



 ……やれやれ、俺も『メルカ』になったからには色々と気をつけないと。よくよく考えてみれば、『言葉』やその内容はともかく、女の子らしい常識的な『所作』に関しては、流石に練習した事が無いからな……そっちはそれこそ、『レベル1』みたいなモンだ。表情だけとか、あざとい攻撃ならさっき『宿屋』で色々出来たから、まだ出来そうだけど……ま、自分以外使う相手はおらんがな!



 俺が一人、黙って反省していると。


 チロッペたんは苦笑いしながら、レイフェちゃんは無表情で、仲良く首を横に振る。



「気になさらないで下さい! 同じ『女』として、当然の事ですよ。私だったら、恥ずかしいのはイヤですから」


「気にしないでいい……それに、ボクが(・・・)作った物(・・・・)』を、興味深く見てくれたのが嬉しかったし──」



 いやはや、何ともありがたい事だ。


 よーし、お礼に後で妄想の中でジックリと……って、いやちょっと待て(じゃすとあもめんつ)



 今………レイフェちゃんは、何て言った?



「……あの、レイフェち、さん? 今、何と仰られました?」


「? ……気にしないでいい?」


「あ、いえ、ソコではなく……今、『ボクが作った物』、と仰られませんでしたか……?」



 俺の驚愕の目線を気にせず、レイフェちゃんは事も無げに頷く。



「そう。ここにある『作品』は、全部ボクが作った物」




 ……ちょ、おいおい、マジか。



 少々スルーしがちだったレイフェちゃんの姿を、改めてマジマジと見つめる。



 ……身長は、精々(メルカ)の胸の下程度。腕も、身長と比べれば多少太いかもしれないが、外見上違和感がある訳でもなく。


 全体としては、正に『ツルペタ』としか言いようの無い体型で。伸ばした真っ黒な前髪で目を隠し、後ろ髪はまとめて、頭の後ろの高い位置で『お団子』にしている。


 見紛う訳も無い程に『少女』、一歩間違えたらそのツルペタっぷりに『少年』と区分されてもおかしくない、そんな女の子。しかも、今気付いたけどリアル『ボクっ娘』じゃねぇか……!



 さておき、そんな子が作った『作品』が……『コレ(暗器)』ときましたか。




 ──はぁぁぁぁぁ……〈異世界〉、マジ〈異世界〉!!



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