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【54】 2章の21 昼食

またも1日遅れ……何故改善できないのか!(申し訳ありませんの土下座_( _´ω`)_ペショ



「──あ、メルカさん! もうすぐご飯できますよぉ!」


 川沿いから馬車の近くに戻った俺に声をかけてくれたのは、我らが『神』たるエルネたんだった。

 どうやら、河原から集めた石で焚火を造り、簡単な煮炊きが出来るようにしていたようである。


 衛兵のオッサン、ダグラスと協力していたのだが、あれよあれよと準備が進んでいったもので俺の出番は欠片も無かったのは記憶に新しい……俺は文字通りの役立たずだが、それを口に出すのはゆ・る・さ・ん!


 それはさておき、ダグラスのオッサンは馬車の後ろで何かの荷物を降ろしながら、ブラーと喋っているようだし。

 エルネたんは急造のかまどと化した焚火の上に、金属製の鍋をかけて何かをかき混ぜているな。


 匂いは美味しそうな……何だろう? 肉っぽい匂いと、何かの香草だろうか?

 詳細は分からないが、食欲はそそられる匂いが漂っている。


「エルネさんは、今は何をしてらっしゃるんですか?」


 とりあえず今やっている事を聞いてみるかと、微笑みを浮かべながらエルネたんに話しかけてみる。


「『穴ウサギ』の干し肉と乾燥野菜を、野生のレィモンバルジと一緒に煮込んでるんです! 美味しいですよぉ! 味見してみますか?」


 そう言いながらエルネたんは、鍋から煮込んでいる物を取り出して見せてくれた……のだが。


「へぇ、美味しそうな匂い──ッ!?」


 ……同意しつつ覗き込んだ鍋の中では、『独特』の……そう、『独特』の外見をしている真っ黒い肉塊が煮込まれていて……いや、匂いは美味しそうなんだ。匂いは凄い美味しそうなんだよ!


 ただ……見た目が、その……小動物のミイラというか?

 パッと見がゲテモノの類に入るというか……視覚的な食欲減退効果が激しいというか?


 し、しかし……エルネたんが笑顔で作ってくれた食事を食べないという選択肢は、ない!

 

「で、では失礼して……」

「はいッ!」


 意を決して、横に置いてあった二股のフォークのような物で、真っ黒い肉塊を小皿に取り口に運ぶ。


「(えッ?)」


 ……味は、まぁ美味い……んじゃないでしょうか?

 ただ、食感はあんまりよろしくない……スジばってる感じが……微妙に?

 正直な感想を申し上げるのならば、あまり美味しくないのだが……そんな事が言えるかッ!


 多少顔が強張りつつも、何とか笑顔を浮かべてエルネたんに返事をする。


「こ、れは……初めて食べましたが、なかなか美味しいですね!」

「よ、良かった! たくさんありますから!」


 少し慌てたようなエルネたんが、元気に返事してくれる。

 その嬉しそうな笑顔を見せてもらえれば、それだけで俺は幸せなの──


「(──ダシ取り用の『穴ウサギ』を食べちゃう人、初めて見ました……コレって、美味しいのかな……?)」


 ──うぇいうぇいうぇいぃぃッ!?

 今、何か聞き捨てならない一言が入ったんですが、そこんとこどうですかッ!?


「あの、エルネさ──」

「……あ、のメルカさんがお好きなら、これ(・・)もお出しします、ね……?」


「あ、ああ……ありがとうございます……」


 ……否定できなかった俺は悪くないッ! チックショウッ!


「そ、それじゃあ、エルネはパンを取ってきますね!」

「あ、はい。いってらっしゃい……」


 タタタッと駆けていくエルネたんを見送りながら、手の中の小皿に盛られた肉塊を見下ろす。


 どうしよう……残したくはないが、食いきれる気もしないんですが。


「──おぉ? メルカよぉ、オメェそんなモン(・・・・・)喰うのかよ……? オレ様でも、よっぽどでもなきゃあ喰わねぇぞ?」


 軽く呆然としていると、すぐ後ろからドン引きした調子の声が聞こえてきた……ついさっき同じ事をされたので耐性のあった俺は、動じずに振り返る。

 と、またいつの間にか元の『ライオン頭』に戻っているウェルが後ろに立っていた。


 ……この際、コイツに何とかしてもらえんだろうか?

 その顔なら、何でも食えるだろ? だろ? 食えよオラァン?


「……そ、そうなんですか。落ち込んでいたエルネさんを元気づけれたらと思って、話してみたんですが……これ(・・)、普通は食べる物じゃないんですね」

「あー……なるほどな。確かに、エルネの嬢ちゃんだいぶ参ってたみてぇだったしなぁ……メルカのその心意気は買うがよぉ? 『穴ウサギ』は肉もほとんどねぇし、小骨が多いからな……普通はダシ取ったら捨てる部分だぜぇ」


 腕組みをして頑丈そうなアゴをさすっているウェルは、この肉塊を処理してくれる気はないようで。

 全く、役に立たんライオンだ……!


 さて本当にどうしたものかと、もう一度手元に目を落とした俺だったのだが。


「……仕方ねぇなぁ? 目の前で辛気臭いツラされるもの、ナンだしよぉ……」


 ヒョイ


 視界の外から褐色の筋骨隆々とした腕が伸びて来たかと思えば、俺の小皿から真っ黒い肉塊をかっさらっていった。


 ……お? 何か知らんが、助かった!

 顔を上げてみれば、ポイと口に真っ黒い肉塊を放り込むウェルの姿が……な、中々にバイオレンスッ! 何と言うか、見た目がねッ!


「……うーん……やっぱり、あんまり食うモンじゃあねぇよなぁ」

「あ、ありがとうございます……!」


 割と困っていたので、本気で心からお礼を言う。


「ハッハ! 礼の言葉なんざイラねぇよ」


 尖った爪で、自分の鋭い牙の間を掃除していたウェルはヒラヒラと手を振って応える。


 しかし、下の脳でしか物事を考えない最低ケダモノ野郎だと思っていたが、中々どうして気を使えるライオンではないか。

 ちょっと見直し──


「あ。んじゃあよメルカ、今晩イッパツ(・・・・)ど──「はぁ?」……い、いや。何でもねぇ……」


 全く、見直そうと思ったらすぐコレだよ。

 もうちょっと他人の気持ちとか、世間体とかに気を使えないのかね? ……ん? 何故か視線を感じる気が?


 と、俺がウェルに呆れていると。


「──お待たせしましたー! お昼の準備出来ましたよぉー!」


 手に、何かがこんもりと入った袋を持ったエルネたんが、テケテケと駆けてきた。


 やっとメシか。

 俺もそれなりには腹が減ってるしな……もっとも、何も仕事してないけど!



  ◇◇◇



 戻ってきたエルネたんに、持っていた小皿と二股フォークを返して。

 ついでに、さっきの『穴ウサギ』はウェルが食べた事をキッチリ伝えておく。


 空になった小皿と、俺の顔を二度見してたからな……このまま誤解されても困るんだよ!

 しれっと、ウェルが『穴ウサギ』を好きなのかもしれないと言っておいたが……まぁ構わんだろう。


 さておき、別の椀にエルネたんが作っていたスープを受け取り、その上にパンを乗せてもらう。

 スープとパンかぁ……どうしても街中での食事と比べると、量も質も落ちるよなぁ……まぁ、量はそれなりにあるし、今のメルカ()の体は燃費が良いみたいだから、足りない事は無さそうなのが救いだが。


 焚火近くの、毛皮が敷いてある大き目の石の上に腰かけながら、一息つく。


 振り返って見ればエルネたんに続いてか、ブラーもこちらに歩いてきていた。

 どうやら、周辺警戒はダグラスのオッサンに引き継いだらしい。


 視線を巡らすと、御者のオッサンとケニーのニイチャンも、馬を馬車につないでいる。

 おいおいこちらに来るのだろう。


 どっちにしろ、全員で一斉に食事と言う訳にもいかないのだろうし、先に食べるのだろうが……まだ〈異世界(こっち)〉の常識に自信が無い俺としては、食べて良いのか分からんな。

 こう見えて、空気をが読める人間なんだぜ俺は!


 と、何やら近くでゴソゴソやっていたウェルが、焚火に何かを置いて……お? あれはもしかして?


 ──ジュウゥゥ


 直火が肉の脂を溶かす、独特の音が聞こえてくる。

 同時に、その香りも。


 さっき狩ったと言っていた……何だっけ?

 確か、『地走り』がどうとか言ってた鳥の肉か。


 エルネたんの作ったスープの香りと、焼ける肉の香りが混ざって……これは最早暴力だろうJK。


 ──クー


 ……無意識に、メルカ()の腹が鳴る。


 幸い、焚火で作業しているエルネたんとウェルには、聞こえなかったようだ。

 やれやれ、もし聞こえていたらかなり恥ずかしい思いを──


「──言動と違って、腹の音は可愛らしいものだな?」

「ッ!?」


 慌てて振り返ると、すぐ近くに立って腕を組み、口角を上げているブラーの姿が。


 ぐ、ぬ、おぉぉぉぉぉ?

 まさか、コイツに聞かれてしまうとはぁぁぁ……!


 と言うかコイツら何なの!? 美人の後ろからコッソリ近づくのが趣味なのッ!?

 それなんてストーカーですか! イケメンだろうがストーカーは犯罪なんです! 被害届出してやろうかってここ〈異世界〉でしたね出す先がありませんチクショウめぇぇぇぇッ!!


 せ、せめて何事も無い風を装って。


「……生理現象ですから、仕方ありません」


「ハァ……全く、可愛げのない事だ。せっかく見てくれは良いのだから、もっと伯母上を見習えば良いものを……」

「ブラー様のご心配には及びませんので」


 オメェに心配される事じゃねぇから!

 ちゃあんと、レイフェちゃんやチロッペたん、レティシアさんにエルネたんの前では、カワイイメルカやってますぅぅ!

 ヤロウはお呼びでないだけなんですぅぅッ!


 フン、と顔を背けながら、もう一度焚火近くのウェルに目線を向ける。

 適当な枝でも削ったのだろうか、あまり真っすぐではない木の串で刺された肉に、何かをパラパラと振りかけている。

 多分、塩とかその辺だろう。

 器用に枝を回す様子は手慣れており、ある意味職人のようだった。


 最悪森の中で『遭難』とかしそうになっても、ウェルが居れば何とかなりそうだな……同時に、確実に貞操は危険だが。

 ま、そもそも街道沿いに移動して『王都』に向かうだけなんだから、『遭難』とかする訳ないんだけ、ど……ふわぁぁぁぁっぁッ!? し、しまったぁぁッ!!


 フ、フラグ……立ててもうたッ……!?


 い、いや待て待て待て。


 それがフラグであると言う事を認識したのであれば、折ってしまう(ブレイクする)事も可能なハズだ。

 認識した上で警戒していれば、事前に潰せる。


 移動拠点である馬車から離れずにいれば、遭難のしようが無いしな!


 それでも遭難するなら、それは全員でのそうな……ああああああぁぁぁぁぁッ!?



フラグ「ピコピコーン!」

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