【05】 1章の03 確認
──クイ
ふむ。
クイクイ
ふむふむ。
グイィ キュッ
ほ、ほほぉ。
サワッ
おほぉッ!? ……いや、後だ後。
キュッ ピシッ
ふむふむ。
ガシッ ギシ……ギシギシ
おおおッ?
ドスンッ
ふーむ……後は……。
──サワワッ
お、おっふぉ…………ハッ!
◇◇◇
よ、よし! 記憶の再確認を交えつつも、大体の『スペック』は確認できたな。
……ん? 何の『スペック』か、だって?
そりゃあもちろん、この『メルカ』の身体能力、感覚、その他諸々ってやつさ。
廊下での珍事を経た俺は、目覚めた部屋の中に戻った後。 発端となった事態を思い出しながら、色々と『メルカ』の体の『性能』を確認した。
まぁ、細かい事を言い出すとキリが無いが……そうだな。
例を挙げれば、室内で限定されるとは言え、俺の意思通り自由自在に動かせる体は、まるで風の様だし。
開脚すれば、バレエだかヨガだかの選手の如く『180度開脚』も余裕で可能。 そのまま上半身を前にも後ろにも倒せる。
〈あっち〉では〈メガネ〉を掛けなければ、ロクに物が見えない『弱視』の『乱視』だったんだが、裸眼でもすこぶる視界はクリア。
後は……ああ、コレは正直俺も意外だったんだが。
目覚めた時に『メルカ』が寝ていた、部屋に備え付けられたデカイ〈ベッド〉があるよな?
『筋力』を確認してみようと、試しに端を持ち上げてみたんだが……片側だけとは言え、この細い両手でヒョイっと比較的楽に持ち上がったのには驚いた。 これも『メルカ』の言っていた、何かの『補正』でも掛かってるからなのかね……? 考えてもサッパリ分からんが。
……とまぁ万事そんな感じで、諸々ひっくるめて一言で言うなら……〈あっち〉の『俺』とは、全てにおいて比較にならないレベルで『高性能』だと言っておこうではないか。
……後は特に『何』も無いか…………いや、その……『ちょっとした事』はあったけど。
……。
…………。
………………仕方ないやんッ!?
健全な一男子が、絶世の美少女の体を自由に出来るってなったら、そんなん『イロイロ』するに決まってるやんッ!! オッサンだって一男子!
こういうポーズして欲しいな、とか!
こういう表情して欲しいな、とか!
情報の伝達に齟齬の無い、完璧なモデルだぞ! しかも触れる!
都合よく部屋〈クローゼット〉の中に、デカイ〈姿見〉まであったしッ! これは罠だッ! おのれコーメイッ!
……オホン。 ま、まぁ、『ソレ』はひとまず置いといてだ。
とりあえず自分の『状態』は分かり過ぎる程に分かったが、自分の『状況』がさっぱりぱったりこれっぽっちも分からん。
さしあたり、さっきの『イケメン君』の様子を見るに、おそらく『言葉』は通じる様だからな……声の質なんかはともかく、『言語』としては普通に『日本語』として認識できている。 『文字』に関しては、ちょっと実物を見てみないと分からんが、多分大丈夫なんじゃないかと思う……多分ねッ! 言葉が通じりゃ、何とかなる!
さーて! ちょっとばかり運動して腹も減った事だし、外に出て『情報収集』兼『燃料補給』といきますかね。
……おっと、その前に。 今度は『下着』で出歩かない様にしないと。
またそこらの誰ぞに、見られでもしてはかなわんよ、チミィ。
……とりあえずさっきのイケメン君も、もう一度会ったら少しばかり『オハナシ』しないとな。
さっきは寝起きで油断してしまったが──『メルカ』は俺のモノだ! 当たり前だけどッ!
そこらの『野郎共』に、カケラたりとも見せてなるものかッ! フンスッ!
んーむ……さてさて。 〈服〉は、どんなのがあっるかなー……カワイイのがあるとイイなぁ……ゲヘヘヘ。
ん? でも、カワイイ〈服〉を着た場合、主に楽しいのはそこらの『野郎共』と言う事になりはしないか……ま、いっか! 『中身』見せる訳じゃねーし!
よーし! とびっきりカワイイ〈服〉で、お出かけしちゃうぞー! るんるんッ♪
……ゴファッ!
…………HAHAHAHAHA!
るんるんッ♪ は、今後永久に使用禁止とするッ!!
自分へのダメージが酷いッ!! 自爆もイイところだッ!!
◇◇◇
──何という……事、だ……。
ねぇ、待って?
『絶世の美少女』よ?
『至高のハーフエルフ』よ?
俺が精魂込めて作り上げた、『究極のワタシ』ですよ?
それが何で──
・最初に見つけた〈水色のメイジローブ〉
・〈シンプルな下着〉上下×3セット※全部水色
・厚手で丈夫そうな〈濃い黄色の綿外套〉
・頑丈そうな〈焦げ茶色の編み上げ半長靴〉
──しか、〈服〉を持ってねぇんだよッ!? 〈あっちの俺〉だって、まだ〈服〉持ってたよ!?
まさか、『メルカ』の荷物の中に……ここまで〈服〉の類が存在しないとは思わなかった……。
確かに俺の『設定』上では、『クールビューティでちょっと天然なお嬢さん』キャラを売りに、人気を得てきたけどよッ!?
俺のコントロールが無い状態だと、ここまでファッションに適当になってしまうと言うのか……いや、今ここに無いだけかもしれんが…………参ったな。
一応、最初に見つけた〈メイジローブ〉を除けば、どれも『ゲーム』の中で一般販売の区分に入る〈装備品〉として売られていた物と似ている。 ただ、俺の記憶が間違っていなければ……そこまで高価な代物では無かった筈だ。 感覚的に言えば……服の量販店で売ってそうなレベル? ユ○クロか、し○むらって感じか。
とは言えこれじゃあ、選択肢は一つしかねぇじゃねぇか……いや、この〈メイジローブ〉だって悪いもんじゃないと言うか、むしろ『ゲーム』では作成に苦労した覚えのある〈高級装備〉に区分されるんだが…………マンガやアニメでよくある『デート前日の女の子』が如く、色々と試してみたかったんだよッ……! だって楽しそうじゃん!? 後、それを自分の目で見れる俺がもれなく楽しい! 中身は気にしない方向でお願いします!
……と言うか、そもそも全体的に荷物がえらく少ない。
自分の部屋とかなら、結構荷物が分けて置かれてたりするもんだが、デカ目の〈革製・茶色の背負い鞄〉以外にほとんど荷物が見当たらない。
その〈背負い鞄〉の中身も、
・鍵付きの分厚い〈本〉×3冊
・謎の〈瓶〉(赤)×5本
・謎の〈瓶〉(青)×3本
・謎の〈瓶〉(緑)×2本
・携帯料理セット(ナイフ・フライパン等)
・円筒状に巻かれた〈毛布〉
・〈革の水筒〉(中は空)
・〈ランタン〉
……と、きたもんだ。
一体、何処の『冒険者』だよッ!! ……ん? あ、一応『メルカ』も『冒険者』だっけ……HAHAHA!
そ、そうそう! 『冒険者』らしさ、を強化してくれる物もいくつかあったんだわ。
・いかにも曰く有りそうな、120cm程の〈捻くれた木の杖〉
・シンプルだが頑丈そうな〈小剣〉(刃渡り50cm程)
そう……〈武器〉だ。
現代日本に住んでいる一般人なら、憧れこそ持ちはしても、実際に扱った事のある人間がどれだけいるのだろうか?
少なくとも俺は、『ゲーム』以外で所持も使用もした事は無かったね。 つか、許可無かったら捕まるし!
見つけた時は、思わず口から感動の溜め息が漏れてしまったくらいだ。 ……うん、まぁ最初〈木の杖〉の方は〈武器〉に見えなくて、一回スルーしかけた事は忘れよう!
そして、もう一つ。
ある意味『別世界』に来たら、真っ先に確認したい物でもある、皆大好き〈お金〉も発見した!
と言っても〈鞄〉の中に入っていた訳ではなく。 俺が今着ている、この〈ローブ〉の下に置いてあったのだ。
〈革〉で出来た、いわゆる『巾着』タイプの〈小袋〉を見つけた俺は、何とはなしに手に取ってみた。 すると、大きさの割りにズシリ……とは来なかったが、チャリチャリと言う独特の『金属音』がするではないか!
慌てて〈袋〉の口を開いてみれば、中にはキラキラと光る〈小さな金属の円盤〉が……って言うか、〈硬貨〉なんだけどね。 つまり〈お金〉が入ってたって訳よ!
……最も、肝心の〈財布〉の中身はと言えば。 〈500円玉〉サイズの〈デカ目の銀貨?〉っぽい〈青白い硬貨〉が12枚。
と、〈黒ずんだ銅貨?〉っぽいのが30枚っていうなー……はぁ。 ……ん? 何で凹んでるんだ、って?
……いや、だってな? 〈黒ずんだ銅貨?〉っぽい方は、見た目といい質感といい、世の中を渡り歩いてきた古めの〈十円玉〉その物だし。
〈デカ目の銀貨?〉っぽい方は、サイズこそデカいが質感といい重さといい……明らかに〈アルミニウム〉っぽい、と言うか、サイズを変えた〈1円玉〉にしか見えないんだわ、これが! うーん、安っぽい!
……そして、他に〈お金〉的な物は見当たりませんでした、まる…………この、言い知れぬ不安感。 分かる?
まぁ〈銅貨?〉の方は、目を凝らせば分かるレベルの『何かの紋様』が裏表にあるし。 〈銀貨?〉の方は、結構精巧な細工で『長髪の女性の横顔』と『枝葉を伸ばした樹木』の絵柄が彫られてるから、安物とか偽物って事は無いと思う……と言うか思いたい。
っていうか、ファンタジー定番の〈金貨〉無しってどうなんだ? 〈向こう〉の『ゲーム』では、通貨は〈金貨〉が基本だったんだが……実は貧乏……いや、そんな訳は無い! ……無いだろ? …………はぁ。
……あ、そうそう。 それとさっき、おむすびころりんよろしく転がってった〈指輪〉も、〈お金〉と一緒に〈小袋〉に入れてある。 本来ならつけた方が良いのかもだけど……俺、指とか手に何かつけんの、正直好きじゃないんだよ。 という訳で、収納と相成りました。
後は…………ああ、さっき気になった『文字』の事なんだが……折角〈本〉があるし、読めるか判明するかもって思ったのは良いんだが、表紙にも裏表紙にも背表紙にも、特に『文字』らしき物は存在しなかった。 表紙に何か、『幾何学的な文様』がある位で、読めないし『文字』っぽくもない……って言うかむしろ、何かの『魔法陣』的なモノに見えるんだが……ま、分からない物はしょうがないよな。 外に出りゃ分かるだろ。
さて。
〈ローブ〉は着たし、〈ブーツ〉は履いたし……一応、念の為に〈小剣〉も〈鞘〉に巻きつけてあった〈ベルト〉を使って装備してみた。 といっても、長さが短かったもんで腰には着けられず、右の太ももに装備しているんだがな? ほら、よくセクシーキャラがしてる感じで……分からん? フッ、貴様と私は相容れんようだな。
しっかし、これ……使おうと思ったら、結構な高さまで〈ローブ〉を捲り上げないと使えないよな……中、丸見えじゃ……いや、使うような状況にならなけりゃいっか。
よし、後は〈財布〉を……ってこれ、入れる場所がねぇな……?
んー……じゃあこの〈ローブ〉の上から巻いてる〈飾りベルト〉に挟み込んで、っと。 うむ、なんかそれっぽい! 何かのコンシューマRPGで見た気がする!
準備完了! さぁ、いっちょお出かけしてみ──
コンコン
──ん? 誰か……来た?
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