【45】 2章の13 準備
※投稿が遅くなって申し訳ありません!
※いつも誤字脱字報告ありがとうございます! 非常に助かっております!
朝の予定では、俺はこれからやりたくもない接客をしかたなくやりながら、周りを囲む美女美少女にウハウハするはずだったんだが。
「……良い仕事」
想定外の大幅な予定変更の結果、遠出する準備に勤しむ事となりました……んーむ。ちょっとテンション下がっちゃったせいか、どうにもキレが悪い気がする……ここはちょっとレイフェちゃんのキュッと締まった控えめなヒップを眺めて気持ちをホップしなければならないのは最早義務まであるね? ……別に義務じゃない? ならば権利を行使するしかあるまいッ! HAHAHA!
「──うん、この〈鞄〉は凄く頑丈……詳しくはボクには分からないけど、多分何かの『魔術』も掛かってる」
「……そ、うなんですか! 前のワタシは、中々に裕福だった……のでしょうか?」
「…………多分、そう」
バレてない! バレてないよぉ! ……バレてない、よな?
レ、レイフェちゃんの事はさておき。折角ミーニー君が探し出してくれた〈鞄〉でもあるし、そのまま『王都』行きの旅支度を放り込むのに使ってみてはどうかなー、と思った訳でして。
レティシアさんの解散宣言の後、レティシアさんとチロッペたんは店の応対に戻り。
旅支度をする必要があった俺はレイフェちゃんの手伝いの元、店の2F昨日借りてた部屋で〈鞄〉の確認と相成った訳であります。
主に行うのは『鍛冶』だけど、各種拵えや鞘も作る関係で〈革〉の加工にも詳しいレイフェちゃんに、〈鞄〉自体の確認をお願いしてみたんだが。問題は無さそうだな。
とりあえず中身を全部取り出して、ガワの〈鞄〉だけを確認してみてもらってたが……そもそも、入ってた中身も全部持っていく必要あんのかね……?
むしろ、一時的に失くす前の予定通り、一部売っぱらってしまった方が良いんじゃなかろうか。
ちょうどよくレイフェちゃんも居てくれる事だし……一回、確認してみようかな?
「レイフェさん、〈鞄〉に入っていた中身なんですが……不都合が無ければ、一部売却して資金に変えようかと思うのですが、どうでしょう?」
俺の言葉に、腕組みをして少し考えるレイフェちゃんだが、最終的に頷いた。
「……うん、良いと思う。持ち歩くには不便な物もあるかもしれない」
「じゃあ、少し確認するのを手伝って頂いても?」
「任せて」
ちっちゃいのに頼もしいレイフェちゃんにお願いして、中身をベッドの上と横のテーブルの上に広げて確認してみる。
・鍵付きの分厚い〈本〉×3冊
・謎の〈瓶〉(赤)×5本
・謎の〈瓶〉(青)×3本
・謎の〈瓶〉(緑)×2本
・携帯料理セット(ナイフ・フライパン等)
・円筒状に巻かれた〈毛布〉
・〈革の水筒〉(空っぽ)
・〈ランタン〉
っと、こんなもんか……。
多分、何もなくなってはいないと思うけど……あんまりハッキリとは覚えて無いんだよな。
あの絶壁オヤジに追い出されたせいで、そこまでしっかり確認して無かったし。
さて、レイフェちゃんに……んん?
「……?」
どしたのレイフェちゃん? ちっちゃな首を傾げて……? 何か変な物でもあった?
「レイフェさん? どうかされましたか?」
「……ボクも、あまり詳しくないから自信が無いけど……」
そう言いながらレイフェちゃんが手に取ったのは、中が空の〈革の水筒〉と、何の変哲もない〈ランタン〉の二つだ。
特に物珍しくも無いけど……いやまぁ、〈日本〉でキャンプを趣味にしてた訳でも無い俺からすれば物珍しいが、〈刀剣〉や〈杖〉に〈鎧〉なんかと比べたらまだテレビとかで見た事はある。
こんなのが気になるのか?
俺の視線を気にせず、〈水筒〉と〈ランタン〉をいじくりまわしていたレイフェちゃんが、やがて短く声を上げた。
「やっぱり」
「え?」
声を上げながら〈水筒〉を持ち上げたレイフェちゃんの手元から、『水』がトプトプと流れ落ちてき、た……待って? 何で『水』が?
「レ、レイフェさん? さっきまで、その〈水筒〉……空っぽでしたよね?」
「ん。これは高級品の〈魔力水筒〉。この側面の『魔法陣』に手を当てて『魔力』を込めるか、汎用の〈魔石〉を押し当てながらフタを閉める事で、内部に『水』が生成される」
お、おおおおお? 何か目立たないけど、凄いアイテムキターッ!?
つ、つまりそれって……いくらでも『水』が出せる系のアイテムって事だよな……!
俺の興奮を読み取ったのか、ニコリと笑ったレイフェちゃんが〈水筒〉を手渡してくる。
「メルカが上級の『魔術師』や『冒険者』だと聞いたから、もしかしたら持ってるかもと思ってはいた……ボクも間近で実物を見たのは初めて」
「な、何だか凄そうなアイテムですね……?」
「多分……『金貨』で……ううん、金板。 『金板』で2.3枚くらい」
えーっと……『金板』? めっちゃ高級って事はすぐ分かるんだが……昨日の夜にレティシアさんが現物を用意できた中で一番価値の高い貨幣だったはずだ……それが、2.3枚……と、とんだお宝じゃないかッ!? 具体的な値段は分からんけどッ!
「こ、こここ、これって……」
小市民的思考の俺としては、思わず〈水筒〉を持っている手が震えてしまう。
が、いつも通りのレイフェちゃんが、俺の手を上下から挟んで震えを止めてくれた。
「メルカ、落ち着いて。確かに高級だけど、使用してる『冒険者』や『探索者』はそれなりの数が居る」
「そ、そうなんですか……?」
「ん」
しっかりと頷くレイフェちゃんに、ようやく気分も落ち着いてきた。
そうか……具体的な値段は分からんが、せいぜい高級な『ウォーターサーバー』が手に入ったと思っておけば良いかな? ……まぁ『ウォーターサーバー』の値段なんぞ知らんのだが。
俺が落ち着いたのを見て、レイフェちゃんが手を離すと横から〈ランタン〉を手に取った……って、まさか? それも凄い高級品だったり……しないよね?
「レ、レイフェさん? まさか、そっちの〈ランタン〉も……?」
「ん……ううん、こっちは普通の〈魔石灯〉」
「そ、そうですか……」
首を横に振るレイフェちゃんに、思わず胸を撫でおろす。
売りさばくなら高級品の方が都合が良いが、あんまりなんでもかんでも高級品だと心臓に悪い。
「でも……少し特殊?」
「え? 特殊、ですか?」
「ん」
〈ランタン〉を弄っていたレイフェちゃんが、この部屋に置いてあった〈魔石灯〉のように横のカバーを上げて〈ボタン〉を押した。
すると、カバーに覆われてない面から目の眩むような光が壁に向かって照射される。
「ま、眩しい……!?」
「『魔石』の寿命を考慮しない代わりに、ものすごく強い光を出すようにされてる……すごい」
こ、これはもう〈フラッシュライト〉だろッ!? 直で見てないのに、目が痛いくらい眩しいんですけどッ!?
「レ、レイフェさん!?」
「あ、ごめんメルカ」
俺が声を掛けると、少し慌てたようにレイフェちゃんが〈ボタン〉を押して、〈ランタン〉を消してくれた。物珍しかったからか、ちょっと興奮してるみたいな感じだが……その様子が見えないぃぃッ! 明順応! 俺の目、早く明順応してぇッ!?
◇◇◇
「メルカ、大丈夫?」
「な、何とか……元通りに見えるようになってきました」
目のチカチカする感じもようやく収まってきたぞ……これは、使いようによっては強力なアイテムだな。
目の周りをぐるぐるマッサージしながら、レイフェちゃんの方に視線を向けてみる。
すると、少し落ち込んだかのように肩を落としたレイフェちゃんがいたので、これ幸いと肩に手を置いてみる……す、すべすべぇッ!
「気にしないで下さい。レイフェさんがいらっしゃらなければ、ワタシもこのアイテムの価値が分かりませんでしたし」
「……ありがと、メルカ」
こ、このままぁ! しれっとほっぺたなでなでしちゃったりしてもぉ、イイんじゃあないでしょうかッ!?
「……メルカ」
「は、ハイッ!?」
な、何もしてませんがどうかしましたかレイフェちゃん!?
「この〈鞄〉の中身……売らない方が良いかも」
「え、それは……」
ううむ? でも、いつまでも手持ちのお金が無いのも……ん? よく考えたら、あの頼りになりそうなアネゴが手配してくれたのなら……全部向こう持ちで、移動滞在ウッハウハ出来るかもしれないな?
現状、すぐにお金が必要なところは……無いと思うし。
俺が考えを巡らせる間にも、レイフェちゃんが言葉を続ける。
「ボクに分かる分だけで、結構な高級品が見つかった……ボクに分からない、残りの分もきっと……」
そう言いながら、こちらに視線を向けてくるレイフェちゃんの言いたい事は分かる。
残った〈本〉や〈瓶〉の類も、実は『とんでもない代物』の可能性は十分にある。
だったらここは、とりあえずキープの方向性が一番かな?
「……分かりました。手伝って下さってありがとうございます、レイフェさん」
「ううん」
首を横に振るレイフェちゃんが、ニコリ微笑んでくれれば。それは実質プライスレスのお宝に他ならないんやでッ!
「ひとまずは、何も売らない事にしておきます。何もすぐにお金が必要な訳でもありませんし……後は、何か必要な物はあるでしょうか?」
俺の質問に、レイフェちゃんはまた腕を組んで考え込むが……その姿勢も可愛いよね。写真撮りたい。
「んー……念の為の〈保存食〉?」
「なるほど……では、心苦しいですがレティシアさんにお願いして、少し貸して頂きますか」
レイフェチャンの言葉に頷き、一緒に階下に降りようと手を伸ばしたのだが。
何故かレイフェちゃんは、慌てて自分の腰に手を回している。
「ま、待ってメルカ! お金なら、ボクが用立てる!」
「え、で、ですが……?」
レティシアさんなら、現物で借りといて後でお金払うのでも行けるんじゃない?
そう思うのだが、俺が伸ばした手を片手で必死に押さえているレイフェちゃんを見ていると、このまま待つ方が幸せだな……と思い至るのであった。このホッコリ感は、もはや悟りが開けるのではないかと言うレベル。
「ん。ボクも、それなりに貯えがある」
んふー、と鼻息荒めのドヤ顔レイフェちゃんカワイイ……こ、ここは借りておくしかあるまい! 何なら支払いは、私めの肉体奉仕でも構いませんぞッ! むしろそれで支払わせろぃッ!
……おっと。俺の内心の興奮は隔離して、ともかくレイフェちゃんが差し出してくれたお金を受け取らねばなるまい。
「前のワタシも、もう少しお金を残しといてくれたら良かったんですが……」
俺は本心と真逆の事を言いながら、腰の〈巾着〉をベルトから取り外し口の絞りを広げた……のだが。
キィーン キンキン──
レイフェちゃんのドヤ顔に意識が行ってしまったせいで、ついつい限界以上に〈巾着〉の口を広げてしまった。
〈巾着〉の中から、『アリド銅貨』と──『贋金』が周囲に飛び散るッ!? ま、マズイッ! これを見られるのは非常にマズイッ!!
「す、すぐ拾いますから、レイフェさんはそのままで大丈夫ですよッ!」
レイフェちゃんに声を掛けつつ、すぐに銀色の輝きを優先して拾い集める。
黒ずんだ銅貨の方は後で構わない! ともかく今は、『贋金』をレイフェちゃんに見られる前に!
ま、間に合えッ! こんな時の為に、メルカの体は風よりも速く動けるんだろうッ!!
だからレイフェちゃん、今だけはその親切心を封印して、俺の言う通りに──
「あ、こっちにもある──」
だぁぁぁぁぁめぇっぇぇぇぇぇぇぇッ!?
レイフェちゃん、『贋金』拾わないでぇぇぇぇぇぇッ!?
……と、祈りながら手を伸ばしたのだが。
残念ながら、俺の祈りは通じない訳でして。
「──コッ!?」
拾い上げた『贋金』を見たレイフェちゃんの、息を呑む音が聞こえてきてしまったのでした。
BA・RE・TA!
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