表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/54

【44】 2章の12 善意

※投稿が、遅れに遅れて申し訳ありません!



 俺の気持ちを無視しているのか、はたまた目に入っていないだけなのかは分からないが。

 ミーニー君は、切羽詰まった様子で畳みかけてくる。


「ぶしつけなお願いだと言う事は、自分も分かっています。ですが、どうしても……どうしても、『王都』に向かわなければならないのですッ!」


 う、うーん? と、言われてもだなぁ……?


「あの、ミーニーさん? 申し訳ないのですが、確かにワタシたちは『王都』に向かいます。ですが、それも『魔術ギルド長』のご指示で向かいますので、ミーニーさんと、妹さん? を同道する判断はワタシには……」

「そ……そうなんです、か」


 俺の返事に、がっくりと肩を落としたミーニー君には悪いが……これ(・・)に関しては、ほんとに俺ではどうしようもない事でありまして。

 いや、正直ミーニー君はどうでもいいくらいだが、その『妹ちゃん』とやらには凄く興味があります、ハイ。イケメンは嫌いだが、同時にその『妹ちゃん』は美少女の可能性、高くないですか? あると思います!


 アネゴは残念ながら来れない訳だが、レイフェちゃんに加えて『妹ちゃん』が一緒の旅になるのなら、確実に期待できるじゃあーりませんか!

 美人や美少女なんて、いくら居てもいーモンですからねぇ!


 ……まぁ、それもアネゴの胸先三寸なんだけども……んー、今こっちに帰ってきたばっかりだけど、アネゴにお願いしてみるぅ? 忙しそうなアネゴの手を止めてぇ? ボカァ、気が乗らないなぁ?

 頼んだら頼んだで何とかしてくれそうな気はするが、自分が教えたいのに教えれないくらい忙しいアネゴの手間を増やすのもなんだかなぁ、ってことですよ。


 というわけで。

 何か良いアイデアは無いかと、横に立っているレイフェちゃんに視線を向けてみるが。


「……」


 ……あれ? いつもなら、実はこっちの思考を読んでるんじゃないか、ってくらいレスポンスの速いレイフェちゃんが……何か考えてるみたいで、俺の視線に気づいていない。

 仕方がないので、ちょっと視線を下げてレイフェちゃんの視界に俺の顔が見えるように屈んでみた。お、気付いたな。


「……ボ、ボクも同意見」


 ど、動揺してる? 珍しいモン見たな……もとい、ですよねー。

 レイフェちゃんでも無理なら、これは本当にどうしようもないって事で。


「残念ですが、ミーニーさ──」

「分かりましたッ!」


 お、おお?

 俯いていたミーニー君が、突然前を向いて何かを決意した表情で叫んだぞ? ……どうでもいけど、今ツバ飛ばなかった? 大丈夫?


「ギルド長の許可さえ頂ければ……良いのでしたら……」


 ちょっとばかりヤバげな雰囲気をかもしだしているが、ミーニー君大丈夫かこれ? 何かやらかしそうなんですけど……アネゴに迷惑かけたり、こっちに被害が出るような事は勘弁な?

 ……いや、あの(・・)アネゴをどうにかできる訳もないか。


 しかし、だとしたら何かアネゴを説得出来る『材料』でも持ってんのかね……いや、多分持ってるからこそこんな事を言い出したんだとは思うが。


 色々と含んだ俺の胡乱げな視線もスルーして、ミーニー君は踵を返すと。


「では、ちょっと自分は『総合ギルド』に向かいますので!」

「え、あ、はい……」


 結局止める間もなく、ミーニー君は走って行ってしまった。

 ……別段止める気は無かったけどな。


「えーっと……」


 とりあえず、だ……ぶ、無事に〈鞄〉が帰ってきて良かったなぁ!

 あ、ははははははは!



「──ちょ、ちょっとメルカさんッ!? 『王都』に行っちゃうって、本当なんですか!?」


 おろ、チロッペたん! さっきから姿が見えなかったけど……ああ、その手に持った商品らしきものから考えるに、倉庫かどっかから在庫を持ってきた、ってとこかな。

 ただ、両手に持った商品が不安定なのに、下手に持ったまま興奮して喋るのは良くないと思うんだ……ああ、ほら。


「え、わ、わわわッ!?」

「おっとっと!」


 やりそうだなーと思っていたのもあって、チロッペたんが落としかけた商品をいくつか空中でキャッチする事が出来た。

 まったく、おっちょこちょいさんめ! 良いカッコできるから、もっとやっても良いんやで?


「あ、ありがとうございます……」

「いえいえ」


 ニコニコしながら近くのテーブルの上に、キャッチした商品を並べる。

 中には、いかにも〈ポーション〉といった見た目の、薄い朱色の〈瓶〉もある。……ん? そういや、この〈鞄〉にも似たような物があったよな……?


「……って、そうじゃなくてですねッ! 『王都』に行っちゃうって、どういう事なんですかッ!?」

「ええと、その……実はですね?」


 誤魔化されてはくれなかったか……まぁ、実際誤魔化せるとも思ってなかったけど。気が乗らない説明をしたくなくて、つい引き延ばしてしまった。

 俺だって、出来ることならチロッペちゃんと一緒に過ごしたかったんだし。


 内心で、誰に向けてかも分からない言い訳をしつつ、チロッペたんに事情を説明する。


 最初こそ動揺していたチロッペたんだが。詳しい事情を聞いて納得してくれたのか、段々と落ち着いていってくれた。


「……もう、そんな事情だったのなら、文句を言っちゃった私が子供みたいじゃないですか……」

「そ、そんな事無いですよッ!? 朝ここから出かける時に言っていた事と、まるで違ってしまいましたからね……気にして下さってありがとうございます!」


 俺と離れるのがそんなに寂しかっただなんて、チロッペたんは本当に優しいイイ子やで……。


「でも、それだとメルカさんはどなたと同行されるんですか?」

「えっとですね……」


「……護衛としての、『ヴァイス卿』──」


 そうそう、さすがレイフェちゃん。確定しているのは、アネゴに護衛として放り込まれる『ヴァイス卿』こと『雑魚メンエルフ』、と後はレイフェちゃんくらい──


「──だけ」


 ……へ?


 ……レイフェちゃんは?


「あ、あの……?」


 い、いや、待て。落ち着け。


 ぐるぐると視界が回っている気がする。


「残念だけど、ボクは……行けない」


 声に視線を向ければ、顔をうつむけたレイフェちゃんの姿。

 両手を下ろし、同時にぎゅっと握られた手が小さく震えている。


「考えてみたけど……『王都』では、ボクは役に立てない」


 驚きのあまり思考が停止してしまった俺を相手に、顔を上げたレイフェが語り掛けてくる。

 そんな事はない! そう口に出したいのだが、前髪の奥に見えるレイフェの瞳がそれを拒んでいる。そんな気がする。


「……ここに、この街にメルカが滞在しているなら、ボクでも役に立てた……でも」


 言葉を続けるレイフェの言葉に、心のどこかで納得する自分も居た。

 ……レイフェが『王都』についてきてくれれば、きっと俺の安心感は比べ物にならない。だが……それだけだ。

 俺の安心感のためだけに、レイフェを生活拠点から引き離すのか? 安心感(そんな事)の、ためだけに?


 ……もしかすると、俺がここで必死に頼み込めば。優しいレイフェは、ついて来てくれるかもしれない。


 だが、それは自分の『夢』のために頑張るレイフェの、足を引っ張る行為。邪魔にしかならない。


 それをしちゃ……いけないんだ。


「……いえ、大丈夫です。気を使わせてしまって、申し訳ありません」


「……ごめん」

「謝って頂く事なんて! ……無いんです」


 自分の気配りの無さに、レイフェの好意に甘えてしまっていた事に、嫌でも自覚させられてしまった。

 そして俺の言葉に、レイフェとチロッペが立ち尽くしてしまう。

 嫌な沈黙が場を包んでしまった。


 あー、しまった……もっと言いようがあったんじゃないか……?

 俺が後悔していると──


「──ちょっと。ここは『お店』よ? 難しいお話なら、奥でしましょう?」


 少し呆れたような、そして包み込むような声が聞こえてきた。


 のっそりと目線を向けると、そこには腕を組んで立つレティシアさんの姿があった。



  ◇◇◇



「──なるほど。それでお店の中で、あんな辛気くさい顔をしてたのね」

「申し訳ありません……」


「もう、それは良いんですよ。メルカさん」


 レティシアさんが、苦笑を向けてくる。


 あの後、店員さんに店を任せてレティシアさんと俺たちは、朝食をとったダイニングキッチンに集まり。

 そして、つい先ほどに至るまでの話をレティシアさんに伝え終わった。


 聞いたレティシアさんは、少しだけ黙っていたが……納得がいったのか、俺に話しかけてきたところだ。


「話は分かったけれど、別に誰も悪い訳じゃないんですから気にする事も無いでしょう?」


 あっけらかんと言うレティシアさんの言葉に、思わず否定しそうになるが……多分、内容は間違っていない。


「メルカさんの『記憶喪失』の原因は分からないけれど、少なくとも『魔力暴走』は故意に起こしてる訳じゃないですし。レイフェだって、出来ることを出来るだけやってメルカさんを助けたんでしょう? 何が不満なの? まさか、どこまでも人を助けようなんて思ってないでしょう?」

「それは……そう」


 レティシアさんの言葉を聞いたレイフェちゃんが、少し考えながらも頷く。


 そして、ふとこちらに目線を向けてきたレイフェちゃんと目が合った。 


 さっきの申し訳なさそうな目線とは違い、少なくとも今はお互いフラットな気持ちになれている……気がする。

 思わず、笑みが零れた。目線の先では、同じくレイフェちゃんも。


「──はいはいはい。いつまで見つめあってるの」


 パンパンと手を叩いて、レティシアさんが言葉を発した。


「お店をいつまでも空けていられないんですから、話が終わったなら解散解散!」


 レティシアさんの言葉に、慌ててレイフェちゃんとチロッペたんと動くことにする。


 ……ん? ところで俺は、何をするんだ?



重めの話だったのと、作者の疲労で爆睡してしまった関係もあり、投稿がめちゃくちゃ遅れてしまいました……申し訳もありません。


次話からは、また気楽なクズ主人公に戻ります!(待て

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 杖が女の子になって戻ってくるに一票(唐突)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ