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【43】 2章の11 予定

いつも誤字脱字報告、本当にありがとうございます!



 それなりに長い時間、アネゴの執務室にお邪魔していた俺とレイフェちゃんだったが。

 流石に時間が押していたのか、慌てた様子のギルドの職員がやってきたので、そろそろお暇する事にした。


 アネゴはそれでも渋っていたが、俺たちが遠慮したのと職員の目に押されて、どこかに連れていかれた。


『向こうに出発するのは、明日か明後日の朝方になると思うから、早めに『旅支度』を済ませといておくれよ! レティシアの店に使いを送るからッ!』


 連行されながら連絡事項を伝えていくのは流石だが、完全にドナドナ状態だったのでちょっと可愛かった。あのビジュアルでドナドナとか……需要はあるね!

 さておき、俺にとっては予期せぬ『予定変更』となってしまった訳だ。


「……メルカ、とりあえず一度レティシアのところに戻る」

「あ、はい! 分かりました、戻りましょう」


 いや、俺たちにとって……かな。


 ギルドの階段を下りながら、何かを考え込んでいる様子のレイフェちゃんには、ちょっと話し掛けにくい。

 えーっと、当初の予定だったら……この後、街中の案内を受けてからお店に戻って、店番をする……予定だったよな?

 レイフェちゃんの案内で街中を散策とか、それなんてデート? と、浮かれていた記憶も新しい。きっとレイフェちゃんも楽しみにしていてくれたはずなのになぁ……多分。


 それこそ、しばらくは美女美少女に囲まれて、のほほんとハーレムライフを送れると思っていたのに……ん? 全然ハーレムじゃないって? ……気の持ちようだろ?


 ……ああ、そう言えばミーニー君が確認しとくって言ってくれた〈鞄〉はどうなったかな?

 上手く見つかっていれば良いけど……あ、お礼とかもしないとだよな? 取り戻すのにかかった手間賃くらいはあげた方が……無いじゃん。いや俺、金ないじゃん。

 言葉だけじゃ、流石に……『体』でお礼は、絶対イヤだし……ああ『金』か『体』しか選択肢の浮かんでこない我が身の歯がゆさよ!


「──メルカ」

「はぁいッ!?」


 レイフェちゃぁん!? 何度も言ってるでしょ、急に声かけちゃ……そう言えば歩いてる最中にボーっとするなって何度か言われたような…………な、何かなー!?


「……もう」


 俺がボーッとしていた事はお見通しだったようで、プクリと頬を膨らませるレイフェちゃん……カワイイ。信じられるか? これで『俺』より年上なんだぜ?

 さておき、俺とてわざわざ機嫌を損ねたい訳ではない……時と場合によるが。ベッドの中とかなぁッ!? ぐへへ!


「す、すみません……どうかしましたか?」

「ん。よく考えたら、必要な物は、ほぼレティシアのところで揃う」


 あー……それもそうだな。

 レティシアさんのお店は、主に『探索者』や『冒険者』向けの物品を販売してる『雑貨屋』さんだし。

 そんなん、旅支度に必要な物とか真っ先に揃うラインナップである事は、確定的に明らかであった……不覚! この『Sランク魔術師』の『メルカ』の頭脳をもってしても……あ、はい。すんません。

 んで? それは分かったけど……それがどうしたのレイフェちゃん?


「確かに、レティシアさんのお店で必要な物は揃いそうですね……」

「ん。だからメルカが旅経つ前に、今日街を案内する」


 まっすぐにこちらを向いて、フンスと鼻息が出そうな感じのレイフェちゃん……よく見れば、頬も若干紅潮している気がするし……よっぽど街を案内したかったんだな! イイ子! 年上だけど!

 全く、俺が恋愛上級者じゃなかったら、俺とデート出来るのが楽しみだったのかと勘違いするところだったぜ!



 ──『総合ギルド』の建物を出ると、太陽はまだ中天に差し掛かる前だった。

 朝方にここに来た時よりも人出は増えているようで、建物までの道に設営された各種露店も盛況な様子だ。

 それに伴う、暴力的な匂いの洪水も朝より悪化して……ああ、この何かの肉が焦げる匂い……たまらん!


 俺が無意識にクンクンと匂いを嗅いでいると。


「……フフッ」

「あッ」


 聞こえてきた声に慌てて視線を向けると、口に手を当てて肩を揺らしているレイフェちゃんの姿があった。

 ……あぁぁぁぁぁッ!? は、恥ずかしッ!?

 いや、笑ってるレイフェちゃんカワイイけど! うっすら見える瞳とか、口角の上がった口元とか、ちっちゃい手とか全部カワイイけどもッ!

 そんなカワイイ子の前で、美味しそうな匂いに負けて鼻クンクンさせてしまうなんて……穴があったら入りたい! 物理的に!


 内心で悶えのたうち回りながらも、必死に表面上は平静を装っていたのだが。


「じゃあ、先に少し腹ごしらえ」

「……はいぃ」


 ニッコリと笑いながらそっと俺の手を引くレイフェちゃんに、抗えるはずも無いのであった。



  ◇◇◇



 ……あうあうあ。俺、もうダメかもしれない。


 ……何があったかって?


 レイフェちゃんと、『街ブラデート』しました。以上。


 ……ああ、『ブラ』はブラブラした、って意味だからな? 決して胸の……分かってる? そ、そうか……察しが良いな。


 こ、こんな幸せな時間が有って良いのだろうか……レイフェちゃんみたいな美少女と、街をブラつきながら色々お話をして、気になった物を食べて、あまつさえちょっとシェアしたりして……ああッ!?


 元々が闇属性メンタルだから、お天道さまの下でこんな楽しんで良いのかと不安になってしまうぅぅ……こ、このままでは、今にきっと死ぬような目に……あれ? そういえば、俺もう死んでたな。一回。



 ……何か、急に落ち着いたぞ?


 うん、レイフェちゃんとデートして、色々見てまわった訳なんだが、レイフェちゃんが可愛すぎてあんまり街の風景とか施設が記憶に残っていないんだ。

 何で〈異世界(こっち)〉には〈カメラ〉が、〈ビデオ〉が無いのか……! レイフェちゃんが笑ってる姿とか、串焼きを食べる姿とか、ムスッとした顔とか、ニッコリ笑った顔とか……全部撮りたかったよぉぉぉ……心のマイフォルダには保存済みだけどね?


 オホン……でもま、しばらくこの街は離れる事になりそうだし、戻ってきた時にもう一回レイフェちゃんに案内して貰えば良いんじゃないかな? そしたらもう一回デート出来るし……何この完璧な計画……自分の頭脳が怖い。



 それはさておき、だ。

 それなりの時間を過ごして太陽も中天を過ぎた事だし、二人でレティシアさんのお店に戻ってる最中でござる。


 ああ、そう言えば。

 お昼には『昼の鐘』が鳴っていた。


 昨日、市場をうろついていた時にチラッと見えた、近くにある『城』で鳴らしているらしい。

 あれが、この『テインの街』の『領主』が住んでいる城なんだそうだ。


 まぁ、鳴らすのは中天の一回きりらしいが、それが基準になるみたいだな。

 朝は日の出と共に起き、夜は日の入りと共に休む、的な?


 昼夜逆転徹夜上等な生活を送っていた身には、何とも頭が痛くなる話だがね。


 ま、昼の鐘も鳴った事だし、切り上げて戻ろうと言う事になったのだ。

 俺も残念だったが、言い出したレイフェちゃんの方がドンヨリしていた気がするのは……楽しかったのかな? 楽しんでくれてたなら嬉しいけど……俺は楽しんでただけだったからな……分からん。


 当方、デートの経験は……ございませんので。ございませんのでぇぇっぇぇッ──


「──メルカ」

「…………はい?」


 ……しゃあ! 俺、学習出来る人!

 見事、我ながら見事な受け答え!


 しれっと、声を掛けてきたレイフェちゃんを見やると……あれ、何かジトっとした目で見られてるような……? 何? ご褒美?


「……『アレ(・・)』、知ってる人?」

「アレ……?」


 どれ……?


 レイフェちゃんが指差す方向を確認してみると、見えてきたレティシアさんのお店の方から駆け寄ってくる人の姿が……ああ! あのイケメン面、間違いない。


「はい、昨日言っていた協力して下さってる『冒険者』……の方ですね。お名前は……ニー、ニー……」


 名前は……何とかニー……何とかニー……ああ、オナって言い掛ける自分が憎いッ!!


「……ミーニー、とか言う?」


 そうそれッ!! 流石はレイフェちゃん!!


「はい、その方ですね!」


 良かった、変な事言い出す羽目にならなくて……しかし、昨日の今日だけど良く俺の居所が分かったな……連絡先も聞かなかったのには、根拠があったらしい……意外とやるようだ。

 だが、近づいてくるミーニー君は見たところ手ぶらなようだし、〈鞄〉はまだ見つかってないか……『王都』行きには間に合いそうにないな。


「残念ながら、〈鞄〉は見つからなかったみたいですね……」

「……そう?」


 溜息をつきながら言った俺の言葉に、何故かレイフェちゃんが疑問の言葉を返してきた。

 ん? と思っていると、声の届く距離まで近づいてきたミーニー君が。


「メルカさーん! 〈鞄〉、見つかりましたッ!」


 ぬぁ、ぬぁんですってぇぇッ!?



  ◇◇◇



 驚愕しながらも何とかミーニー君と挨拶を交わし、レティシアさんの店まで同行する。


 まさか、昨日の今日で見つけ出してくるとは本当に思わなかった……本当に意外だが、ミーニー君は優秀な『冒険者』のようだ……イケメンのクセにッ!


「やはりと言いますか、予想通り『故買屋』に持ち込まれていまして」

「なるほど、そうだったんですね……」

「……」


 楽し気に話すミーニー君と違い、先程までそれなりに喋っていたレイフェちゃんが静かになっている。

 意外と人見知りするタイプ……いや、まぁ昨日からの付き合いでしかない訳だが、それなりに喋っていたイメージだったんだけどな?

 今も、ジーっとミーニー君を見て……はッ!? ま、まさか……レイフェちゃんはミーニー君みたいなイケメンがタイプ……!?


 ……だ、ダメだダメだダメだッ!!

 NTR反対! するのは良いけどされるのはイヤ! ……そもそもまだ寝た訳じゃないけど!


 レイフェちゃんは俺の……じゃないけど……じゃないけどッ!


 俺を挟むように3人で歩いていたのだが、左に立っているレイフェちゃんの視線を遮るように、少し前に出る。

 ……な、何かなレイフェちゃん? 脇を突かないでくれたまえッ!?



「──あ、お帰りなさい二人とも」


「……ただいま」

「ただいま戻りました!」


 店頭に立っていたレティシアさんと挨拶をしながら、支払いを行う店員さんの横に置いてある物を確認した。


「どう、ですか?」

「……はい、間違いなさそうです」


 そこにあったのは、間違いなく昨日俺が無くした、茶色い革の〈背負い鞄〉だった。

 やれやれ、一日しか離れていなかったはずだが、戻ってきたのが分かると一気に安心できたな……ん? あ、あれ?


「はい? どうかされましたか?」


 違和感に気付き、慌ててミーニー君に視線を向けてみるが、ミーニー君は特に疑問に思っていないよう……あ、そうか。もしかしたら俺……〈鞄〉の事は何度も口にしたが、横に差していた〈杖〉の事は……言って無かったかも?


 念の為に、慌てて〈鞄〉を開けて中を確かめるが……いや、入ってる訳無いよな。120cmはあった筈だ。そもそも入る訳が無い。入らなかったからこそ、俺も〈鞄〉の横に差したんだし。


「(……やはり、彼女の……)」


「あ、あのミーニーさん?」

「ああ、はい! なんでしょうか?」


 何かを呟いていたミーニー君に声を掛けると、慌てて居住まいを正しているが……これは望み薄だよなぁ。


「一応、お伺いするんですが……この〈鞄〉の横に、ねじくれた木製の〈杖〉なんて……差さって無かった、ですよね……?」

「えッ、〈杖〉ですか……す、すみません! 自分が見つけた時には、この〈鞄〉しか……」


「です、よね……いえ、ありがとうございます」


 予想通り、ミーニー君は存在すら認識していない……これは持ち去られた時かその途中で抜かれてしまったのだろう。

 いや、そもそも〈鞄〉が帰ってきただけで御の字としか言えない。


「申し訳ありません……! まさか、そんな物も有ったとは気づかず……」

「いえ! 〈鞄〉が見つかっただけでも本当に嬉しいです! ワタシでは、手がかりすら掴めなかったんですから!」


 顔を蒼褪めさせて平身低頭のミーニー君だが、そこまで焦らなくても良いだろうに。俺は別に君の上司でも無ければ生殺与奪を握った敵でも無いぞ? まったく。


 ……待てよ? どうせなら──


「本当に気になさらないで下さいね! まさか『王都』に行く前に戻ってくるなんて思ってもみなかったので、こちらとしては感謝しかありませんので! お礼の言葉しか無い(・・・・・・・・・)のが申し訳ないくらいです!」


「いえ、そんな…………え?」


 お、おおっとッ!? ……しれっと『謝礼』の話を流してもらおうとしたが、流石に無理があったかな……?

 だって、何も払えるモノ無いんですものッ! 仕方ないじゃないッ!?


 た、畳みかけて何とか無かった事にッ!


「本当にありがとうございました! それでは──」

「待ってください」


 ああ……逃げられなかった! ですよね、俺でも逃がさないと思う! 骨の髄までしゃぶりますよねぇッ!?


 ……な、何を要求するつもりだ……! 『メルカ《俺》』の『胸』かッ!? 『脚』かッ!? まさか『尻』かッ!? それとも……『全部』とか言い出すんじゃあねぇだろうなッ!?

 もし、そんな事を言い出したら、恩はあるとは言えここで人知れず……って、めっちゃ人多いんですけど!?


 豹変した目の前のミーニー君(オオカミ)を、どう処理したら良いのか必死に考えていたのだが。


「メルカさんは先程……『王都』に向かう、と仰いませんでしたか?」

「え? …………言いました、けど?」


 身構えていたのに、全くの予想外の言葉が返って来たので、思わず気が抜けてしまった。

 それがどうしたっての? ……もしかして、謝礼が要らなくなった? やだぁ、もっと早く言ってよ! ……んな訳無いよね。


 疑問顔の俺に、気合を入れているのかキメ顔のミーニー君が迫る……だから近いッ! 近いんですよアンタはッ!


「メルカさん!」

「は、はい……?」


 無言の圧力に若干腰が引けながらも、俺は何とか言葉を返す。

 そんな俺の様子も考慮されず、ミーニー君は更に圧力を上げたイケメン顔で迫ってくる……いくらイケメンでも、俺には効果は無いんだぜッ!?


「非常に申し上げにくいのですが、『お願い』があります……」


 やっぱりか!


 お、おっしゃ! 大丈夫! 俺はNO! と言える日本人だッ……!

 ……あれ? 今の『メルカ()』って、日本人と言えるのだろうか……?


「自分と──」


 NOOOO!? 迷ってる時間なんて無い、と、ともかく断らねばッ!

 自分と、なんだ!? 結婚か!? お突き合いか!? ただれた関係かッ!?

 イケメンとなんてイヤ! 俺は美女美少女としたいの! ……何を? ナニをッ!


 と、ともかく返事はNOOOOOOO!!


「──『妹』を、『王都』まで同行させて頂けないでしょうかッ!?」


 のぉぉぉ…………うん?




ここまで読んで、面白い、もっと続きを! と興味を持って頂けましたら、是非BMやご評価での応援もよろしくお願いいたします!

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  |作|       |作|

_(・ω・_) → \(T∀T )ノ

 ☆☆☆☆☆ →  ★★★★★


先日、久方ぶりのレビューを頂きまして、的確に作者の書きたい要点を理解して頂けたレビューに、不覚にも号泣してしまいました。

途中で新作に浮気したり、更新が滞る時もあるかもしれませんが、必ず完結させますのでどうぞ気長にお付き合いください!

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― 新着の感想 ―
[一言] まあ、何やかんやで杖も戻ってくるだろ。
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