【40】 2章の8 再来
※3日連続投稿2日目。
※220425 6:30 前話でやらかしていた事に気付きました! 後半のアネゴの呼称に関して、修正しております。『ビグロ』→『シェーン』だけの変更ですので、わざわざ読み直すほどでは無いですが、完全に勘違いして書いてしまってました。ややこしくて申し訳ありません。
いつも誤字脱字報告ありがとうございます!
本当に助かっております!
「ま、まぁあたしの呼び方はどうでもいいさ。新しく覚えなおしたら『魔術』が使えるのか、って事だが……もちろん問題無く使えるとは思うよ? とは言え、無くした『記憶』を取り戻した方が早いとは思うがね」
アネゴは俺の言葉を聞いて少しだけ考えたが、すぐに可能だろうと言ってくれた。
良し、これで俺も『魔法』を使える可能性がある事は分かったな……ヒャッハーッ!
ああ、後アネゴ。取り戻すってのは残念ながら無理なんだ……元から無いので!
俺が心の中で、テンションを上げてヒャッハーしていると。
何事か考えていたアネゴが、うんうんと何か頷いた。
「……言われてみれば確かに。『魔術』に関する事を覚えなおす事で、無くした『記憶』を取り戻す切っ掛けになるかもしれないね」
「な、なるほど……?」
まぁ、覚えれるんなら実際どちらでも構わんのだ。そしてどうせなら、俺としては講師はアネゴが良いなぁ? 見てるだけで眼福なので、きっと覚えも早い事間違いなし! ……逆に覚えが悪くなる可能性も微レ存? グフフフ。
と、色々期待しながら妄想を膨らませていたのだが。
「よし、そう言う事なら! あたしが直接……ああ、いや」
「え?」
「今は、そういう訳にもいかないんだったよ……」
浮かない顔で呟いたアネゴに、思わず声を出してしまった。
綺麗な銀髪が流れている頭をぽりぽりと、ばつの悪そうな顔でかいているアネゴ。
どうやら何か、都合の悪い事があるらしいが……何だ? 忙しかったりするのだろうか?
俺が頭の中で疑問符を浮かべていると。
「悪いねメルカ。今、少し厄介な問題を抱えているもんでね。今日は無理やり時間を作ったが、当分は『魔術』を教えるほどのまとまった時間は取れそうに無いんだよ」
「そ、そうなんですか……」
ぐぬぬエロいダークエルフさんの家庭教師はお預けか……いや、あくまでアネゴのご厚意な訳だからな。無理を言っても仕方ない。
気を取り直し、笑顔でアネゴに返事をする。
「だ、大丈夫ですよ! ワタシの『記憶』が無い事くらい、大した問題じゃありませんし!」
「……ん、元々、レティシアの所でしばらく面倒を見る予定だった。何も問題は──」
俺の返事に重ねるように、レイフェちゃんもフォローしてくれたのだが。
何故か変なところで言葉を切ってしまった。
疑問に思いレイフェちゃんに目線を向けてみると。
「組合長? 先程の『Sランク』の話でうやむやになってしまったが、今現在の『記憶喪失』のメルカに……本当に『危険』は無い?」
おおっと。そう言えば、そんな話もしていたか。
色々とインパクトのある話が連続していたせいで、すっかり忘れていたよ。HAHAHA!
でもね、レイフェちゃん。実際のところ、『記憶喪失』自体が口から出まかせだから、『メルカ』に『危険』なんて無いん──
「……しまった、そう言えばそうだったね」
──だよ?
……え? あ、アネゴ?
何でそんな……深刻そうな顔してんの? え? 無いよね?
◇◇◇
何故か唐突に深刻そうな顔をし始めたアネゴに、強烈にイヤな予感がし始めた俺だったのだが。
唐突に部屋の入口のドアが、ノックの一つも無く開けられた。
ガチャリ
「──ご在室ですか、【伯母上】? 失礼いたし──」
「ブラーッ!! あんた、客が居る時には『そう』呼ぶなと何度言ったら覚えるんだいッ!?」
バシッ
「あ、あぶなッ……!? きゅ、急に何を……っと、これは失礼いたしました。御来客中だったのですね」
「見りゃあ分かるだろう、ったく。急ぎだろうとノックぐらいしないか」
……流れるような出来事に、一瞬意識がついていけてなかった。
ドアが開いたと思ったら、アネゴが手に持っていた〈杖〉をそちらに向かって投擲したのだ。
目では追えたが、反応はまるで出来なかった……なんちゅう速度だよ。
ついでに言えば、〈杖〉に反応して受け止めた訪問者も大概だとは思うが。
そう思いながら俺が視線を向けると。
そこに居たのは──
「これは初めまして、私は……む? き、貴様は『あの時』のッ!」
「……ゲッ」
『騎士ヤロウ』の『ク〇エルフ』ッ!?
アネゴの部屋を訪ねて来たのは、まさかの昨日遭遇したいけ好かない『ク〇エルフ』だった。
まさか、こんなところで会う羽目になるとは……面倒事にならないと良いけど。
しかし俺の思いも虚しく。
俺の顔を改めて認識した『ク〇エルフ』は、それまで浮かべていた愛想笑い……のようなものを一瞬で消し去ると、不機嫌そうにアネゴに声を掛けた。
「お──【姉上】? 何故、この『無礼者』がここに居るのですか?」
「……『無礼者』? ……一応聞いておくが、何の事だ?」
「昨日『報告』に伺った際に申し上げた、『無礼者』と言うのがそこの娘なのですよ。何なのだ貴様は、まさか次は姉上に取り入ろうとでもいうつもりか?」
「……」
「姉上、騙されてはなりませんよ。ただでさえ姉上の美貌と権力には、群がる愚か者どもが多いのです」
……昨日会った時と同じく、相変わらず上から目線でヤな野郎だ……だが、こんなのでも『貴族』だって話だし、どうやらアネゴとも知り合いらしいな。
「おい貴様、いくら姉上が面倒見の良いからといって、貴様のような間抜けが関わって良いお方では無いのだ。さっさと出て行くが良い」
ここで意地を張って、アネゴの協力が取り付けれなくなりでもしたら……損しかしなさそうだし、何より今はレイフェちゃんも居る。
累が及ぶ可能性を考えたら、形ばかりでも頭を下げておいた方が良いか……不満だが。不満タラタラだが。むしろ不満しかないまであるがッ!?
内心で溜息をつきながらも、とりあえず挨拶でもしてやるかと立ち上がろうとした……のだが。
ガタンッ
向かいのソファが傾くほど勢いよく立ち上がったアネゴが、ツカツカと『ク〇エルフ』に近付き──
「『闇の束縛』」
「え? ……あ、姉上? 急に何を」
無手で何事か唱えたかと思えば、『ク〇エルフ』の足元から濃密な……それこそ『闇』の塊のような『何か』が伸びあがり、一気に縛り上げてしまった。
縛り上げた拍子に、地面に落ちかけた〈杖〉をアネゴは空中でキャッチすると、そのまま何かを唱え続けている。
事態についていけないが、とりあえず男を縛りあげても需要が無いと思うんです。むしろ縛るなら美少女や美女であるべきで、それこそ『メルカ』とかアネゴが縛り上げられるのは俺的にも……いや、でも見る側なら良いけど、自分が縛り上げられる側なのはイヤだな……反省。
俺が混乱している間にも、事態は進んでいく。
「う、動けないのですが……姉上?」
「『闇属性付与』『質量増加』『形状変化:茨』……」
「あ、姉上ッ!? 何故『地竜』にトドメを刺した時の『エンチャント』を行っているのですかッ!?」
どんどんと顔を蒼褪めさせていく『ク〇エルフ』を見ているのも、まぁそれなりに面白いのだが。
流石にアネゴの持つ〈杖〉の先端で、『ク〇エルフ』を縛ってるのと同じ濃密な『闇』みたいなモノで、巨大なトゲトゲ付のハンマーみたいな物が形成されていくのはどうかと思うんだ、うん。
……既にレイフェちゃんの上半身くらいの直径になってるし、気のせいか妙な『圧力』で地鳴りのような音がしてる……気がするんだが?
「姉上、私が何か無作法をしたのかもしれませんが、流石に、流石に『それ』はマズいですッ! 私とて防御に自負は持っておりますが、『それ』を無防備に受けるのは非常に、非常にッ!」
と、それまで静かに準備を整えていたアネゴが、ズンッと軽い地響きを立てながら『巨大ハンマー?』を肩に当てる。
「……ねぇ、ブラー?」
「は、はいッ!?」
「あたしもね、それなりに可愛がっていた甥っ子を『始末』するのは、気が引けるんだよ……」
「……し、始末ッ!?」
静かな口調で語りかけているアネゴの顔は見えないが、背中からでも強烈な『プレッシャー』が押し寄せてくる。
同時に、『それ』を至近距離で浴び続けている『ク〇エルフ』に、ほんのちょびっとだけ同情してやりたくもなってきたぞ……?
「だけどねぇ──」
「ひ、ひぃッ?」
ブオンッ
肩から両手で〈杖〉を持ち上げると、大上段の構えを取るアネゴ。
トゲトゲの一部が部屋の天井をかすり、パラパラとかけらが落ちてきている……これは、本格的に『ク〇エルフ』終了のお知らせ、って感じかな。まぁ多少の同情はするが普段の態度が態度だったんだと思うし、仕方ないんじゃないかな?
内心でウンウン頷いている間にも、アネゴの言葉が続く。
「──500年前に、『孤児』だったあたしを拾ってくれた『大恩人』を」
「……え」
「『仲間』で『親代わり』だった【メル姉】を」
「……は?」
「『無礼者』や『間抜け』、果ては『愚か者』呼ばわりするようなヤツは──もはや甥でもなんでもないねぇッ!」
「……ひ、ひぇぇぇぇぇッ!?」
……な、何か思ったより……アネゴの『メルカ』への思いが重い。いや、ギャグじゃなくて。
思わず変な感慨を浮かべてしまったが、急に手をツンツンされた。
「メルカ、止めれるなら止めた方が良い」
「レイフェち……さん?」
「『あの』威力が炸裂すると、この建物が……倒壊する」
……そ、それはマズイッ!?
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