【04】 1章の02 活路
──あれは、『いつ』の事だったか。
確か最初の切っ掛けは、極々些細な事だったと思う。
日々のブラックな仕事のストレスを、『ゲーム』内のカワイイ『メルカ』でモンスター狩りする事で発散していた俺に。
街中で急に声を掛けてきた『PC』が居たのだ。
『──あの』
『はい? どうされましたか?』
『その……アナタで、〈見抜き〉させて頂いてもよろしいでしょうかッ!?』
『…………は?』
──あー……うん、ごめん。 良く考えたら、ぜんっぜん些細じゃなかったわッ! むしろ大事件ッ! GM、いや、おまわりさぁぁんッ!
……さておき、その割りと些細じゃない出来事が『切っ掛け』で、『俺』は理解した。
『俺』が丸2日完徹して誠心誠意造形した『メルカ』の姿は、他の人間から見ても美しく可憐なのだ、と……例えはアレだが、いきなり『見抜き』されるくらいに、な。
それまでは、今までの『俺』の延長線上でしかゲームをしていなかった。 だが、〈その一件〉があってから……『俺』は、本気になった。
折角だから『俺』はこの赤い……じゃねぇ。
『俺』は『ゲーム』の中に居る間、可能な限り全力で『ワタシ』になろうッ! ってね。
──そして気が付けば。
『俺』は、スッカリ『ネカマ』兼『姫』になっていた……いや、どうしてこうなった。
……ご、誤解するなよッ!? 俺の性癖は、どノーマルだからなッ!?
その、なんだ……最初はそれっぽく、キャラクターとしての『ワタシ』をやっていただけの筈だったんだが……どうにも熱が入りすぎたせいか、中の『プレイヤー』自体、つまり『俺』も女性だと勘違いされてしまったんだよ。 クッ、自分の才能が憎いッ!
……ていうのは建前で。 正直、途中から純情なバカをからかうのが、かなり楽しくなってしまったって言うのもあるんだけどな! 俺、勘違いされても全然否定しなかったし!
いや、もちろん全然最初から信じようとしない人(というか、そもそもこちらの性別に興味ない人とか)も居るんだけど。
『MMORPG』やってる人間の、耐性が低いんだか無いんだかは知らないが、大抵の人間がポンポンと面白いように騙されて、中には本気の好意を伝えてくるヤツとか居てな……?
そういうヤツに、ちょちょっとソレっぽい言動してみると簡単にコロッと行くのがまた……ウケるッ! や、失敬失敬、つい本音が。
ダメだよキミ達? 本当の『女性』は無駄に女性アピールとかしねぇから! ……いや、俺もそれを勉強して応用したけどさッ!
レベル上げや資金稼ぎの合間に、回復を早める焚き火の周りで会話中、それとなくキャラクター同士の距離を縮めてみたり。
時間が合った相手と、二人でダンジョンに潜って攻略した後に、雑談に混ぜて人生相談してみたり。
無駄に世間のイベントと同調する『ゲーム』の中で、ヴァレンタインやクリスマスやハロウィーンにキャピキャピしてみたり。
後はまぁ、トイレに行く事を『お花摘み』とか言ってみたりな。 今時リアルの女性でも、言ってる人間がどれだけ居るんだ、って話だわ。
大体、数少ない知り合いのモノホンの女性は、ゲーム中にトイレ行く時「便所」だったからな……ん? いや、比較対象が悪い気もするな……HAHAHA!
ま、その人のキャラもハゲのオッサンだったし……中の人と、キャラに関係性は無い良い見本だと思うね……あ、俺も含めてね?
ま、そんなこんなを繰り返していたら……当時所属していた『ギルド』の一人に、『ゲームのプレイ動画』を作って『配信』してみないか? って誘われた訳でして。
その本人は、将来的に映像関係の仕事に就きたいとか何とか言ってたけど……だったら『MMORPG』やってないで勉強したら良いんじゃ無いかとか、そもそも『ゲーム』のアイテムに学費をつぎ込んで課金してんじゃねぇとか、色々『メルカ』として言ってはみたが馬耳東風。 聞く耳持たないとは、正にあの事だったね……もちろん、忠告したのは気遣いできるアピールだった訳ですが、何か。
……とは言えそれで路頭に迷おうが、俺には一切関係無い訳で。 ホイホイと誘いに乗って、動画を配信してみて貰った訳なんだが──それが一つの転機だった。
『ゲーム』自体の人気だとか、出したタイミングだとか、キャラクターとして需要があったとか、色々な偶然と要素が重なった結果なんだろうけど……気付けば『ワタシ』も、立派な『姫プレイヤー』になっちゃってたんだよねー。
……いやぁ、何かもう、凄いよ? 色々。
『ワタシ』の動向を調べてネットに上げるヤツも居れば、それを報告してきて点数稼ごうとするヤツが居て。 んで、そんなヤツは信用ならないから耳を貸すな、とのたまうヤツが〈レアアイテム〉を貢いできたかと思えば、翌日にはネットで晒されてアカウント停止に追い込まれたりしてたな……うん、中々の春秋戦国時代じゃったのぉ…………ま、そもそも『俺』が原因だーけーどーッ! ふははははッ!!
……ごほんごほん。 まぁ、それはさておき、そんな『ワタシ』も『結婚』しました! ……無論、『ゲーム』内でな。
お相手は、『結婚』当時同じ『ギルド』に所属していた───【スオウ】っていう子です。 ちなみに『リアル』は5歳年下……何で知ってるのかって? みなぎるトークぱぅわぁよ!
まぁその子が……実は最初に、『俺』が『ワタシ』に全力で取り組む切っ掛けになった、あの『見抜き』の子でもあった訳なんだが、な。
……もしこれが現実なら。 道端で会った女性にいきなり、あなたでオナ……じゃなくてシコ……ヌいて良いですか? と聞くようなもんだ……うん、どれ選んでも大差無いこの酷さよ。 事案よ事案。
一発で通報ものである。 ちょ、まって!? 俺はただヌきたかっただけなんだッ! ……うん、パーフェクツにアウトォッ! ……な相手ですが。
これはあくまで──『ゲーム』。
『見抜き』後に賢者になったのか知らないが、エラく面白かったり役に立つ話をしてくれて。
会話が弾んだら、何故かチャットで器用にどもりながらギルドに誘われて。
飽きたら放り出そうと思っていたんだが、それからもずっとアピールを続けられて。
……まぁなんだ。 『ワタシ』も別段デメリットも無かったのし……って言うか、各種アイテムとかを山のように貢いでくれて、ダンジョン攻略も時間があったら全部手伝ってくれるって言う……お前さん、その情熱を『現実』に向けろよ、オイ……って思わなくもない子だったよ………………おい、何故俺を見る。
……そんな【スオウ】が……何で『こんな事』になっちまったんだ……?
◇◇◇
『──〈理由〉なら、分かっているでしょう?』
……いや、そんなの全然……いや、まさか…………でも、あんな理由でか? 『ゲーム』の中でだぞ?
『……それは【彼】、【スオウ】にとって……十分な〈理由〉だったようですよ』
……【スオウ】に出会ったのが、『見抜き』の件の時だから……多分、およそ一年と半年前。
『ゲーム』内で『結婚』したのが一年前位で……俺が、例の『理由』で荒れたのが半年前から、か。
……思えば、まぁまぁ長い付き合いにはなってたんだな。
『純粋な【彼】を弄んだ、という事ですね』
……いや、5才年下だからアイツも20半ばを過ぎて成人してる、大の大人な訳だし……って言うか、本当に『ゲーム』内だけなんだぜ?
『俺』が仕事を退職してから、どこかに出掛ける気にもなれなかったし、先立つモノも無きに等しいしで、結局ほとんど家に籠りっきりになるのは当然の帰結だろ?
んで……元々、仕事の後の夜から深夜に掛けてがメインのプレイ時間だったんだが、日中も含めてずっと有り余る時間を『ゲーム』に注ぎ込む事になって。
同じ〈ギルド〉所属のメンバーとも話が合わなくなり、何時入ってもプレイしている『ワタシ』にお節介なほど心配してきて……何か、何かイライラした結果……〈ギルド〉を脱退。
その後片っ端から野良の廃人に声掛けまくって、反応良かったヤツにモーションかけて貢がせて…………バカみたいに『姫プレイ』で食い物にしたりもしたけど、よ。
あれだって、ちょっと長めに入ってる人間にとっては、大した事でもない代物だったと思うし。
……んー、とはいえ実際。
我ながら無駄に『コッチ』の才能はあったんじゃないかと思う。
よくキャバ嬢が貢がせるっていう話を聞いて、ストレス発散も兼ねて割とやりたい放題やったからな。
まぁ、廃人の労力の……せいぜい『九割五分』位の成果を貢がさせただけとは思うが。
な? 大した事ないだろ? 『全部』じゃねぇんだから、相当良心的だって。
腕を組みながら過去を回想していた俺に、『メルカ』が心地よい声で話し掛けてくる。
『……その【メルカ】に、自分達の〈ギルド〉に……ひいては自分の所に帰ってきて欲しくて……【スオウ】は相当無茶な〈課金〉をした様ですよ』
……うげ……途中から、やたらと〈良いアイテム〉を持ってくるなぁとは思ってたけど……まさかそんな〈課金〉までしてたとは……。
俺はプレイ時間を増やしたのかな、位にしか思っていなかったが……いやだって考えてもみろよ?
結局は──『ゲーム』じゃねぇか。
俺の作り上げた【メルカ】が、いくら完璧で美麗過ぎるとはいえ──たかが『ゲーム』なんだぞ。
それを、よ…………クソッ!
『……とは言え、そういう〈理由〉で結局の所──【スオウ】は、【ワタシ】に殺されたようなものなのです』
……は? ……いやいやいや。 何言ってるんだ?
【メルカ】を使っていたのは【俺】であって、【メルカ】自身は関係ないだろ。
『……普通ならそうなったでしょう。 あくまで、『ゲームキャラ』を使っていたのは『プレイヤー』。 言ってみれば、殺害の【凶器】と同じ物。 【道具】に意思はありません』
……うん。 そらぁ当たり前で、至極当然の事だろうよ。
例えば……『俺』を刺した【スオウ】の持ってた〈包丁〉みたいなもんだ。
結果的に〈包丁〉が『俺』を殺した、が。〈包丁〉が俺を殺したかった訳じゃない……多分な。
〈包丁〉を使って、【スオウ】が『俺』を殺したんだ。
『──ですが……【アナタ】が異常だったのか、それとも【ワタシ】が異常だったのか……そこは分かりませんが……【メルカ】には、一つの【個】が与えられてしまった』
んん? ……つまり、どゆ事?
『本来であれば、〈下位位階の存在〉に〈上位位階の存在〉を害す事は出来ません。 例えるならば、物語の登場人物に【アナタ】が殺される様なものです』
……それはそうだ。 『マンガ』や『ゲーム』のキャラクターに現実の人間が殺された、なんて笑い話にもならない。
『なのに──【アナタ】は……【メルカ】の『存在』を……強固にし過ぎた』
……んん?
『現実に居てもおかしくない程に、【メルカ】という【偶像】を作り上げてしまった……その結果、〈位階管理者〉が極々僅かに、混乱しました』
……。
『ありえない筈の、〈下位位階の存在〉による〈上位位階の存在〉の消去……その結果、いえ過程といった方が良いのかも知れませんが、【アナタ】も害されてしまった』
…………。
『【アナタ】が作り上げた【メルカ】によって、【スオウ】は死を選び、道連れに──【メルカ】を、つまり【ワタシ】を殺した』
………………へ?
『〈位階管理者〉は、そう判断してしまった様です』
え……という事は……どういう事だってばよ?
『そうですね……〈魂〉は巡っています。 基本的には各〈位階〉、各〈世界〉毎に。 しかし、たまにイレギュラーな事が起こり、〈同位階平行世界間〉を跨いでしまう事があります。 時と場合によっては〈肉体〉ごと……そして、更にイレギュラーな場合には、〈別位階世界間〉でも〈魂〉や〈肉体〉の移動が起こってしまう場合もあります』
──あ、れ? ……何か、すげーイヤーな予感がしてきた訳なんだ、が……。
『この〈世界〉の〈因果〉の中に、本来であれば存在しない【メルカ】が、一つの〈存在〉として組み込まれてしまったのです』
……お、おい。
『そして、この〈世界〉での【メルカ】が死んでしまった。 なので──その〈魂〉を輪廻の輪に帰そう』
……マジ、か? つまり──
『そう、そのつまり、ですよ。 死んでしまったこの〈世界〉の【アナタ】の代わりに、死んでもいない〈別世界〉の【メルカ】の〈魂〉が、こちらの〈世界〉の輪廻に放り込まれるのです』
──って事は、つまり、あれか……【メルカ】にとっては……完璧に、とばっちりって事、か。
『ハァ……【メルカ】としても実に不本意ですが──その通り、なのですよ』
◇◇◇
……『俺』だって、血も涙も無い機械でも、狂った殺人鬼でもないんだ。
見ず知らずの他人がどうなろうがあまり気にしないが、精魂込めて作り上げ長い時間を共にした『メルカ』に愛着が湧いていない筈も無い。
そんな相手に迷惑を賭けてしまった事は、それなりにショックだった。
……しかし俺には、呑気に打ちひしがれる時間すら与えられないらしい。
『──む……残念ながら、どうやらそろそろ時間切れ、のようですね』
ん? 何の話……って、メルカッ!? おま、足! 足が消えてってる!?
『〈位階管理者〉が、しびれを切らしたようですね。 強制力を持って、【メルカ】を輪廻に流そうとしています』
さ、さっき言ってた『輪廻の輪に放り込む』ってヤツか?
……何か、何とかならないのか? さすがに、ここまで愛着を持った相手が消えるのはイヤなんだが……しかもとばっちりで。 元は俺のせいではあってもよ。
『そうですね……さすがに〈管理者〉の強制力に抗うのは難しいです……ただ、【アナタ】に手伝って頂ければ、もしかすると【ワタシ】という存在が消えずに済み、かつ正常な輪廻を取り戻す事が可能かもしれません』
お、おお、マジか!? 俺はどうせ死んだ所だしな、失う物なぞ何も無いぞ。 何でも任せてくれたまへ!
『……ちなみに、ですが』
ん、何かね!?
『今の【アナタ】は、〈魂〉だけの状態ですが……このままだとどうなると思いますか?』
む? どうなるってそりゃ……【メルカ】がさっき言ってた、『世界の輪廻』ってのに放り込まれるんじゃねぇの?
『……いいえ。 このままでは【アナタ】は──〈消滅〉します』
……は、はぁぁぁッ!? な、何で!?
『【アナタ】の〈肉体〉が死んだ分の、輪廻に向かう〈魂〉を【メルカ】が肩代わりするのです。 そして【アナタ】の〈魂〉は、行く場所の無い状態のままにこの〈世界〉を彷徨い、維持する力が切れた時点で〈消滅〉する、と言う事です』
え、そんな、〈消滅〉とか、ちょっとマジ勘弁だぜ……次は超イケメンの超金持ちに〈転生〉……は、ただの願望だが……な、何とかならねぇの!?
『なります』
そうだよな、ならねぇよな…………ん? ……っておぃぃぃぃッ!? なんのかよッ!!
『簡単な引き算です。 【メルカ】の〈魂〉と【アナタ】の〈肉体〉が無くなる。 では残ったのは【アナタ】の〈魂〉と──』
──そうか! 【メルカ】の〈肉体〉!
『そういう事です』
ど、どうすれば良いんだ!?
『先程から準備をしていまして、【ワタシ】が通ってきた〈位階世界間〉の『ルート』を維持しています。 あなたの後ろにある〈扉〉状の『ルート』を通れば、理論上は問題なく〈向こう〉の〈位階世界〉に行けますよ』
え……あ、これか! 〈四角い白い光〉……?
何なの? さっきからずっと思ってたけど、この娘、優秀過ぎね!? 天才か! 後カワイイ。 結婚しよ。 出来ないけど。
『……【ワタシ】の持つ〈知識〉は、〈世界〉を渡る際に紛れ込んだ、極々僅かな物に過ぎません。 向こうでの【メルカ】は、極普通の魔導士でしかありませんでしたよ』
いやいやいや。 だとしても、だよ。 マジで惚れ直すわ。
『……』
んで、俺は〈向こう〉に行くだけで良いのか? 『定額パックツアー』みたいな感じで。
『いいえ、もちろん違います』
ですよねー。 知ってた。
『必要なのは、〈向こう〉で【ワタシ】が研究していた【理論】の実証と、その為の【素材】です』
ふ、ふむふむ? 【理論】と【素材】ね?
『幸いな事に、【素材】の方は多少の時間が掛かるとしても、まず間違いなく手に入る筈です』
な、何か『当て』があるんだな。 分かった。
じゃあ、【理論】の方はどうすれば良い?
『…………』
……メ、メルカ? どうしたんだよ、急に黙って……もう、腰まで消え掛けてるんだから、急がないとまずいんじゃ……。
『……残念ながら、『理論』に関しては……【アナタ】に、どうにかして頂くしか無いのです』
へ? ……【俺】に?
『【アナタ】の言う通り、『理論』をお伝えするには時間が余りにも足りません。 更に言えば、多分に〈向こう〉にしか存在しない『魔法』の概念や技術を含む為、例えこの場に〈向こう〉へ残してきた資料があったとしても、欠片も理解出来ないでしょう』
そ、それって何て無理ゲ──
『──ですが』
……ですが?
『【メルカ】は、【メルカ】です。 多少の時間が掛かったとしても、きっと……出来る筈…………いえ、出来ます!』
……。
…………。
……ハァ。 そこまで断言されちゃあ、な。
ま、やってはみるさ。
『はい……では、忙しないお別れですが……【2つ】だけご忠告を』
ん? 何だ?
『まず1つ目は、〈魂〉が〈位階〉の違う〈世界〉を移動した場合、何らかの〈不具合〉が発生する可能性があります』
……それ、大丈夫か?
『便宜上〈不具合〉と表現しましたが、【アナタ】は〈上位〉から〈下位〉への移動となりますので、実質は何らかのプラスの補正と思って頂いて構わない筈です……理論上は』
最後の一言で微妙に不安だけど……ま、分かった。 んで?
『はい。 そして2つ目ですが……現状のあちらの〈世界〉は、【アナタ】が【メルカ】を作った『ファンタジーMMORPG』と、それを維持している〈こちらの世界〉を元に〈統合再構築された世界〉となっています』
え……と、統合再構築? 『ゲーム』と『現実』で?
『ああ、そこまで大きな影響ではありません……〈あちらの世界〉に居る人々は、基本的には存在する〈世界〉に沿った知識があります。 しかし、思考、メンタリティ、精神性といった物は元となった〈こちらの世界〉の影響を強く受けています。 つまり『ゲーム』の中で【メルカ】の周りに居た人達も、〈あちらの世界〉に沿った人達として存在しているのです』
……ま、待った。 正直分かりそうで分からない!
『──端的に言えば『ゲーム』に存在した〈NPC〉は、元となる『人格』が無い為にほぼ雛形となった『ゲーム』の設定そのままの状態に近いですが、〈PC〉は、〈こちらの世界〉の〈中身〉の思考と、〈統合世界〉の知識を持って存在してる、という所でしょうか……分かりましたか?』
……な、何となく分かった! ……多分?
『ハァ……本当に大丈夫でしょうか……ですが、もう時間もありませんし……仕方ありませんね。 どうかお元気で……ああ、それと。 もう【アナタ】の体になりますから、その……多少は構いませんが……あまり、【メルカ】の体を変な事に使わないで下さいね』
ああ、任せろッ! 変な事には、あー……で、出来るだけ使わないッ!
『……もう、お好きにどうぞ……では、後ろの〈扉〉へどうぞ』
おぅ! 色々ありがとなッ!
『お気をつけて。 さ──』
んじゃ、また今度なッ!
◇◇◇
『フフ……あんな性格でも、【メルカ】を生み出してくれた人です……一応、感謝もしているんですよ…………それ以上に、色々……そう、結構色々と思う所が無い訳でもないですけれど』
『次に会う事が叶うとすれば……【メルカ】が、あの【理論】を完成させた時』
『その時は、正常な〈因果〉に戻る為に、【メルカ】もまた少し面倒をしなければなりませんが……まぁ、良いでしょう』
『それに案外──〈下位位階〉での〈一生〉は、こちらでは〈一瞬〉の事かもしれま──』
ヒュッ
『──おや……今のは、まさか? ……いえいえ、それこそまさか、ですね』
『……では。 それ時まで、どうか息災で』
──また今度……『おとうさん』。