【39】 2章の7 魔法
※5日連続投稿が中断して申し訳ありません。
今日から3日連続投稿に修正します。
※220425 6:30 やらかしていた事に気付きました! 後半のアネゴの呼称に関して、現在時より前に読んで頂けていた方は、設定が変わっていますのでご注意ください。初めて読まれる方はスルーで大丈夫です!
いつも誤字脱字報告ありがとうございます!
本当に助かっております!
今自分が聞いた『内容』に脳の理解が及ばなかった俺は、おそらくよっぽど間抜けな顔をしていたのだろう。
「メ、メルカ?」
「うん? ……ど、どうしたんだいメルカ!?」
掛けられた声に、ハッと意識が戻ってくると。
目の前のレイフェちゃんと、向かいのソファに座っているアネゴが驚いた顔をしている。
いかんいかん……一瞬、意識が飛んでいたらしい。
「あ、いえ! 大丈夫です……です、が。その……少々驚いてしまいまして」
微苦笑を浮かべるよう意識しつつ、二人に弁解してみる。
「……驚く?」
「ああ、記憶が無いのにいきなり『あんたはSランクだ』って言われたら、そりゃあ驚くか。すまなかったね、配慮が足りなかったよ」
「ん、確かに。ボクもはしゃぎ過ぎた……ゴメン」
だが、俺が驚いた内容を二人は勘違いしたらしい。
頬をカリカリしているアネゴと、一気にションボリしたレイフェちゃんがそこに居た。ションボリレイフェちゃんもカワイイ。
……いや、確かに『メルカ』が『Sランク』だったと言う事にも驚いたのだが、その後のレイフェちゃんの『年齢』の件に意識を持っていかれたせいで、少々霞んだ感はある……いや、待てよ? と言うか『36歳』だって言うのなら、『俺』より年上……? レイフェ『ちゃん』とか呼んでるとおかしいか? レイフェ『さん』と呼ぶべきだろうか……って違う、口に出してはずっと『さん』呼びだったから良いのか。
だ、だが……この見た目と仕草で『36歳』? そりゃ、年の割に落ち着いてるなぁ、とは思ってたけども。
今も俺の様子がおかしいからか、不思議そうに首を傾げ。
そのふにふにした手で握手を続けるレイフェちゃ……さ……ちゃーん!? あ、頭が混乱するよぉッ!?
……ぎゃ、逆に考えるんだッ! つまりレイフェちゃんは『ロリBBA』! 何をしてもZENRINに邪魔される事は無いのだと……あ、〈異世界〉にはそもそも無いんだったYO! つ、つまりこのふにふにをぺろぺろしたとしても、俺がお巡りさんされる事は無いと言う事でファイナルアンサー? ……だ、ダメだろ俺ッ!? YESロリータNOタッチの精神を……『ロリBBA』の場合は良いんじゃ……ぁぁあぁぁぁあぁぁッ!?
レイフェちゃんに関してグルグル思考の混乱が回る中の俺だったが。
その時、アネゴの声が横から聞こえてきた。
「……しまったねぇ。メルカに『危険』って言葉が似合わない、なんて言い出さなけりゃ良かったよ。あたしが『鎮静の魔術』でも使えりゃ良かったんだが──」
──おれはしょうきにもどった!
「……『鎮静の魔術』、ですか?」
アネゴ今……『鎮静の魔術』って言った? 言ったよね? それってつまり──『魔法』だよねッ!?
いえす! あいらぶ、ふぁんたじぃ!
レイフェちゃんの年齢に関しては、とりあえず今は置いておこう! よく考えたら、可愛いからどっちにしろウェルカムだしッ!
今はそれよりも、〈異世界〉に来て初めて聞いた『技能』としての『魔法』に関するであろう話が聞けそうな取っ掛かりに、食いつかせて頂こうではないかッ! 『魔道具』もそれはそれで面白そうだが、自分の力で『魔法』を使うのはそれすなわち一つの『浪漫』だとは思わんかねッ!?
内心の興奮を努力して抑えつつ、アネゴに目線を向けてみると。
軽く頷いたアネゴが口を開くところだった。
「ああ。残念ながらあたしは、火力特価の『魔導師』でね。治療や回復に使われる『魔術』の類は、とんと使えないのさ」
ほう! ほほう!
火力特化……『ゲーム』的に言うと、『アタッカー』としての『魔法職』みたいな感じっぽいな! 良いなー、大砲っていう感じか!
「どちらかと言うと、メルカ自身が治療関連の『魔術』もそれなりに使えたはずだよ」
「わ、ワタシが……ですか?」
マジかよ……あ、いや確かに。『ゲーム』で最優先に強化していたのは『氷晶魔法』だったが、ソロでもある程度行動できるようにと、男共に貢がせる小道具に便利だからと『治療魔法』に関してもそれなりに強化していたな……それが反映されているのか?
驚きと共に、理由が推察出来て納得した一面もある。
とは言え……その各種『魔法』の使い方がさっぱり分からないのが、悲しいところなんだが。
「はぁ……」
「そうか、『魔術』の使い方も分からなくなってるんだね……だけど、少なくとも『技能』を失ってる訳じゃあ無いはずだから、一度確認してみようか」
無意識に漏れ出た俺の溜息を見たアネゴが、唐突にニヤリと笑いながらそんな事を言い出した。
確認? 確認って……何をどうやって?
表情に疑問符を浮かべていると、横でレイフェちゃんが驚いているのが目に入った。
どういう事なのかと目線を向けてみれば、俺の様子を見たレイフェちゃんがアネゴに声を掛ける。
「すごい。組合長は、『状態確認』の『魔術』が使える」
「そういうことさね」
……いや、若干ドヤ顔をしているアネゴには悪いんだが、俺には凄さが分からない。
だって、『ステータス』だろ? 言っちゃ悪いが大抵の『ゲーム』で、ボタン一つで確認できる代物だぞ? もちろん、俺がやっていた『ゲーム』もだ。
……まぁ、今アネゴが口に出すまで、そんなモノを確認しようと一度もしていなかった訳だが……不覚ッ!
俺の反省はともかく、内心を汲み取ってくれたのかレイフェちゃんが事情を説明してくれる。
「『状態確認』の『魔術』は、難易度が高い『魔術』だと聞いた事がある」
「『根源』に関わる『魔術』は、基本的に難しいものが多いからね。それじゃあメルカ、悪いけど今から〈杖〉を向けるよ」
そう言いながら、アネゴは傍らに立て掛けていた魔法少女チックな〈杖〉を手に取り、片手でぎゅるんと回転させている……か、かっけぇ!
パシリと〈杖〉の回転を止めたアネゴが、口中で何事か呟きながら俺に〈杖〉を向け……な、何か『魔法職』の人間に〈杖〉を向けられるのって、剣士に剣を抜かれるとか、警官に銃口を向けられる気分がして……ああ、だからアネゴは向ける前に一言断ったのか!
俺が妙に納得している間にも、アネゴの『魔法』が完成したらしく。
「──『状態確認』」
『呪文』の言葉と共にアネゴの〈杖〉の先端から、淡い光が俺に向けて放射された……何か、電池切れかけで弱ってる懐中電灯みた……いや、やめておこう。
思ったより派手ではないが、『魔法』の内容が内容だしな。こんなもんなんだろう……もっとこう凄いエフェクトとか期待してたけど。
『──ぁ──』
……うん? 今、誰か何か──
「──で、どうだいメルカ?」
「うわッはい!?」
一瞬違う事に気を取られていたせいで、アネゴの声に必要以上に驚いてしまった。
「いや、だから『状態』がどうなんだ、って事さ。もう見えてるだろ?」
訝し気なアネゴだが……何の事だ? 見えてる? 見えてるって……残像が? いや、それは違うだろうけど。
俺の様子に、本当に何も見えていない事が分かったのだろう。
急にアネゴが慌てだした。
「……『状態』が見れない? そんなバカな事が……それは『魂』に起因する代物だよ? それが何で……」
む、むむむ? 何かマズイのだろうか。そんなに慌てられると、俺としても居心地が悪いのだが。
俺が居心地の悪さにモゾモゾしていると、レイフェちゃんが声を掛けてくれた。
「メルカ? ……お手洗い行く?」
「い、いえ! 大丈夫ですよッ!?」
ち、違うからッ! そういうモゾモゾじゃあない! ちっちゃな子供じゃないんですから、トイレくらいちゃんと口に出して言えます!
……ちなみに、既に2回ほど経験済みです。
「そうだ、あんた……レイフェだったね」
俺に声を掛けた事で、アネゴに存在を思い出されたのか。
腕を組んで一人で考え込んでいたアネゴが、レイフェちゃんに声を掛けた。
「ん、そう」
「悪いんだが、ちょっとあんたで試させてもらってもいいかい? 失敗なんてするはず無いんだが、もしかするとあたしに何か原因があるのかもしれない」
「……構わない」
コクンと頷いたレイフェちゃんに頷き返すと、アネゴは〈杖〉をレイフェちゃんに向け──
「──『状態確認』。……どうだい?」
「……確認できる。問題ない、と思う」
「やっぱり、そうだね……あたしの手ごたえも、おかしなところは無かった。メルカ、あんたの見えている範囲に、こう『半透明の板』は見えないかい? ほとんどの人間は、そういう形で把握できるはずなんだが……」
アネゴに聞かれて、もう一度キョロキョロと周囲を見回してみるが……やっぱり見えない。
俺の反応で同じ状況だと言うのが分かったのだろう、アネゴが念の為ともう一度『状態確認』をかけてくれたのだが……状況は変わらなかった。
頭を抱えて悩みだすアネゴは、姿勢が崩れて色々見えそうになっていて楽しいな。もうしばらくこのままでも良いぞ?
とは言え、『メルカ』に関する事だし、スッキリしないのは俺も落ち着かない。
『魔法』何ていう良く分からない分野の話だが、少し考えてみるとするか。
◇◇◇
うーん、とりあえずアネゴとレイフェちゃんが言ってた内容的に、この『魔法』は……あれ? そう言えば、二人ともさっきから『魔法』じゃなくて『魔術』って言ってる気がするな?
何か違うモノなんだろうか? ……後で聞いてみるか。
まぁ、とりあえず『魔法』で認識しとくとして、だ。
まず、『状態確認』は難易度が高い『魔法』らしい。
『状態確認』が使えるアネゴは、それを誇らしげにしてたから、少なくとも誰でもできるような代物ではない。
だが同時に、レイフェちゃんに効果があった事から、アネゴが『魔法』に失敗していた訳では無いようだ。
となると、『メルカ』に原因がある疑いは濃厚な訳だが……怪しいところが多すぎるわな。
そもそもが『俺』になってる訳だし。
その『俺』は〈日本〉の人間な訳だし。
多分、その辺が原因なんじゃなかろうか。
海外で日本の家電は使えないらしいしな。
電流の規格が違うとか何とか……ま、俺は海外旅行なんてした事無いから、ネットの知識だけどな!
……ん? 『規格』?
……待てよ? さっきアネゴは『魂』って……あ。
もしかして──『魂』か?
この『体』に入っている『魂』は、『メルカ』の物じゃなくて『俺』の物だ。
そのせいで、〈異世界〉の何か……さっきのアネゴの言葉を借りるなら、『根源』だっけか? と『規格』と合っていないから、システム的な不良が起こってしまっている……のかもしれない。知らんけど。
となると……これは解決しない問題なのでは無かろうか? 少なくとも、『メルカ』が前の『メルカ』と違うと説明しない限り。
……そして、それを説明するのは……難しい、よな。
参った……何とか適当に誤魔化しておくしかないか?
俺がそんな風に考えていたのだが。
「──あ、もしかすると!」
唐突に頭を抱えていた姿勢から跳ね起きたアネゴの胸部がぶるんぶるん……違った。いや違わないけど。
さておき跳ね起きたアネゴが、その形の良いアゴに手を当てながら半ば独り言のように語り出した。
「もしかすると、『記憶』が無い事自体が原因なのかもしれないね……」
「……どういう、事でしょうか?」
説明の方頼んますわ、アネゴ。残念ながら俺ッチの『記憶』はとんと当てにならないんです……なんせ元から無いもんで。
「『魔術』の『根源』は、使用者の『魂』に刻まれた『世界とのつながり』その物だと言われてる。そして『魔術』を『どう使う』か、って言うのは使用者が覚えた『知識』や『技術』に依って左右される訳だ」
ふ、ふむふむ?
「だが『状態確認』の『魔術』は少々特殊で、『魔術』を使うのは使用者だが実際の効果を確認するのは対象者だ。この場合、もしかすると『根源』と交信しているのは使用者ではなく対象者なのかもしれない……これはもしかすると、新しい学説の根幹になるか?」
良く分からんが、『俺』を基準にするのはどうかと思うぞ? 特異点を基準にしちゃダメだろ。
「えーっと……つまり、その……ワタシの『記憶』が無いから? 『知識』や『技術』が無くなっているので、『状態確認』の効果が無い、という事……なんですか?」
「まぁ、ざっくりとした仮説だが、そういう事さね」
本人もまだ納得がいってないのか、ちょっと曖昧な仮説だが……俺に『知識』や『技術』が無いのは間違い無いしな。そもそも中身が完全な素人になっちゃってる訳だし。
……ふむふむ。まぁ実際『記憶』が無いのにスタントみたいな車の運転できるか、とか。人型巨大ロボットを扱えるか、って言ったら……あれ? 俺の『知識』だと使える人の方が多いんですけど、それは?
……『知識』の方が偏ってる? どーもすみません。
ま、実際にアネゴの使った『状態確認』はさっぱり効果が無いって事は、多分『俺』の『魂』になってしまった部分が原因だろう。
つまり、あれだけ強化しまくったメルカの『魔法』に関しては、もう使う事は出来な……待てよ?
……『メルカ』としての『知識』や『技術』は一度全部すっぽ抜けてしまった訳だが。
『俺』も頑張って勉強して『知識』と『技術』を修めさえすれば、『魔法』が使えるのだろうか?
「あの組合長?、それはワタシが……もう一度覚えなおしたら、『魔法』を使う事が出来るのでしょうか?」
アネゴに聞いてみたら、何故か凄くイヤそうな顔をしながら首を横に振られたのだが? え、つまりもう希望は無いんですかッ!?
「組合長なんて他人行儀な。メルカなら気軽に名前で呼んでくれないかい? 背中がかゆくなるよ」
……あ、そこ。驚かせないで頂けませんかねー? 全く。
だけどまぁ、そういう事ならお言葉に甘えまして。
「え、あ……じゃ、じゃあ──シェーン、さん?」
アネゴと『美黒』さんは、別人だからな。
だったらファーストネームで呼ぶのが妥当だろう……と、思ったのだが?
「……ま、まぁあんたがそう呼びたいんなら、それでもイイけどさ」
んーむ? ……アネゴの濃褐色の肌だと若干分かりにくいが、頬を紅潮させているような? ファーストネームはマズかっ──ふぉうッ!?
疑問符を浮かべていると、何故か隣から横腹を突かれた。
慌てて視線を向けてみると。
……何故か見えないのにジト目だと分かるレイフェちゃんが……何だ?
「ど、どうしました?」
「……別に」
お、おう? ご機嫌斜め?
※アネゴの呼称が、220425 6:30 以降『ビグロ』→『シェーン』に修正されています。
直前のモノローグで同一人物ではない、と認識していたのでわざと変えようとしてもらう筈が、気付いたら同じ呼称をしてしまっていました……紛らわしくて申し訳ありません。
ははは、こやつめ。
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