【28】 1章の26 身分
今回も、そこまで重要ではない『身分』に関する設定があるので、細かい事はイイや! と思われる方は、
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『この間』
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の、文章をスルーしてもモウマンタイだよ!
自信のある知識だったのか、今度はチロッペたんが説明してくれる事になった。
「今のお母さんの話にもあった部分ですが、一口に『貴族』と言っても細かな区分がたくさんあるんです!
とりあえず、『身分』が上の方からご説明しますね──」
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チロッペたんが、身振り手振りで説明してくれた事をまとめると、だ。
まず、この『絶対王制』の『王国』の中で一番偉いのは、もちろん『王』になる訳だ。
次いで継承権のある『王族』が続く。
次に『貴族』になる訳だが、これには基本『領地』を持っている『上級貴族』と、『領地』を持っていない『下級貴族』に分けられる。
『上級貴族』の区分は──
主に『王族』から臣籍に降った場合になる『公爵』。
各地域や政治のトップである『侯爵』。
辺境の地や重要な資源などがあるエリアを治める『伯爵』。
大き目の街なんかとその周辺を治める『子爵』。
小さめの町や村をいくつか管理する『男爵』。
ここまでが、『上級貴族』になるそうだ。
んで、その下で働いたり、支えたりする側が『下級貴族』な訳で。
こっちは治めてるエリアとか関係ないので、単に偉いか偉くないかだけになるが──
上から順番に『準男爵』、『士爵』、『準士爵』までが『下級貴族』だそうだ。
ちなみに『王』や『王族』は、その一族がそもそも君臨者で、生まれた時から程度の差こそあれ権力を持っている訳だが。
『貴族』の場合は、生まれた子供に家を継がせられる『世襲貴族』と。
生まれた子供は『貴族』ではなくなる『名誉貴族』ってのもある。
一部の例外なんかはあるが、基本『上級貴族』は全部『世襲貴族』で。
『下級貴族』は両方が同じくらい存在してるとか。
実務能力を買われて、平民から『名誉士爵』になった官僚なんかも居れば。
代々、『上級貴族』に仕える戦闘能力を維持してきた、『世襲士爵』が騎士としての職務にあたっている場合もあると。
その辺は色々らしいけど、表向きでは『名誉』でも『世襲』でも『士爵』は『士爵』。より先任かどうかの差はあれど、階級としては同じ扱いだそうな……表向き、ってわざわざつけるって事は、そう言う事なんだろう。
もちろん『王侯貴族』は特権階級で、国法を破らなければ結構やりたい放題も出来るんだとか。もちろん、やり過ぎれば場合によっては改易とかもあるそうだが、実際のところはどうなんだろうね。
ああ、特権階級と言えば『聖職者』も、『貴族』とはまた違う特権階級と言えるみたいなんだが。
とりあえずチロッペたんも省きながら説明していたので、そういうものだと思っておこう。
『貴族』の次に『兵士』がくるみたいなんだが、これも色々あるみたいだな。
戦争とかに備えてる『兵士』と、街中やその他で治安を守ってる『衛士』は、管轄は違うけど両方とも同じ『兵士』だとかなんとか。
んで、次がチロッペたんやレイフェちゃんたちも含む『市民』になるみたいだな。
職業としての『商人』や『鍛冶師』何かの差はあれど、身分として考えた時には皆『市民』と言う訳だ。これは分かりやすい。
ただ、特定の街や村に居を構えてる『一般市民』と、街から町へ渡り歩いたりしている『自由市民』なんて区分もあるらしいが……これも結局は同じ『市民』らしい。
ちなみに『ゲーム』の時の設定で当てはめると、『プレイヤー』は全員『自由市民』扱いだったと思う。色んな街や村、山川海から人外魔境、果ては異界の『ダンジョン』なんかをうろついてた訳だから、当然そうなるとは思うけどな。
んで、最後に……まぁ『ファンタジー』だしな。一応『ゲーム』にも名前だけは出て来てたんだが……『奴隷』が来る訳だ。
『奴隷』の区分は簡単で、『一般奴隷』と『犯罪奴隷』しかない。
借金や口減らしで人身売買の結果になる『一般奴隷』か、読んで字のごとく犯罪を犯したが生きたまま捕まった『犯罪奴隷』になるようだ。
まぁ細かく言ったら、身分を戻せる可能性がある『一時奴隷』と、もう絶対変化無しの『終身奴隷』があるらしいが、特に関わりたくないのでどうでもいいだろう。
……そりゃあ、もし『俺』が生身で〈異世界〉に来ていたとしたら、色々と考えるところは有っただろうが……今更だしな。
『メルカ』自身が、奴隷にならないように気を付ける以外には、特に無いだろう。
……ん?
あんまり、まとまってない気がしてきたぞ?
あー、つまりだな──
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『身分』としては偉い順に、
『王』
『王族』
【上級貴族】
『公爵』
『侯爵』
『伯爵』
『子爵』
『男爵』
【下級貴族】←『メルカ』ココのどれか?
『準男爵』
『士爵』
『準士爵』
『聖職者』
『兵士』
『市民』←『チロッペ、レイフェ、レティシア』ココ!
『奴隷』
──って順番になる訳だな。
まぁ、改めて説明を受けた上で考えると、俺が『家名』付きで名乗った時にレティシアさんたちが極端な反応をしたのも納得と言うか。
……でも、実際の所『メルカ』の立ち位置ってどうなるんだろうな?
『俺』が死んだ時に会った『メルカ』は……何て言ってたっけ。
確か……『一般的な魔導士』? とか言ってた気がするかな? でも、『魔導士』は『身分』じゃなくて『職業』だから……判断基準にはならんか。
『職業』が『魔導士』って事は、何か『魔法』とかに関わる『仕事』でもしてたんかね?
……ん? と言うか、想定外で〈異世界〉に『俺』が来ちゃった訳だが、『メルカ』としての『仕事』とかってどうなってるんだ?
いや、明確にお役所仕事みたいな出勤退勤が無いような『仕事』の可能性もあるけ……あ、そうだ。
あちゃー……現実的になったせいで逆に忘れてた。
そもそも『メルカ』の設定では、『職業』は『冒険者』だった。
色々な街や村に行き、各種問題を解決する事で報酬を得る『何でも屋』。それが『冒険者』。
今の『メルカ』では、その使い方が分からなくなってしまってるが……きっと『魔法』を使って、お金を稼いでいたに違いない。
目覚めた時に居た、あの『宿』も。短期滞在だからこそ、あんなヒドイ所を利用していたんだろうな……何かの『仕事』の合間か、あの近くで『仕事』でもあったのか。
ああ、でもそうなってくると、やっぱり『魔法』が使えるようになりたいなぁ……多分、正確には思い出す扱いなのかもしれないが。接客商売なんかしたくないが、自分の『魔法』でバッタバッタと敵をなぎ倒すお仕事なら……ちょっとやってみたい! なんせ男の子ですからッ!
……こうなってくると『メルカ』の持ち物に有った、あの〈鞄〉にくっついたまま持っていかれた〈木の杖〉。
何とかミーニー君が取り戻してくれたら良いんだけど。
見た目的に、〈木の杖〉があったら『魔法』が使えるんじゃないかと……そもそも無くても使えるなんてオチじゃな──
◇◇◇
「──カさん? メルカさん? どうしちゃったんですか?」
「え、あ、はい?」
肩を揺さぶられる感触に、慌てて意識を目の前に戻すと。
右側から目の前に、キスでもするように近づいてくるチロッペの顔が──って近いッ!?
「うわッ!?」
「な、何ですッ!?」
チロッペのあまりに近い距離感に、思わず声を出しながらビクリと飛び跳ねてしまった俺と。
俺の声に驚いたのか、慌てて身を離すチロッペ……たん。
……あれ、俺今すごいもったいない事したんじゃね?
「あ……えーっと」
若干混乱している俺を見ている、目と口を大きく開けてテーブル横でのけぞるような姿勢のチロッペたんが居る。
そーっと視線を巡らせれば、左からこちらに手を伸ばしかけているレイフェちゃんと、正面で立ち上がったレティシアさんの姿があった。
と、驚きから立ち直ったのか、チロッペたんが口を尖らせながら声を掛けてきた。
「ああ、ビックリした……急に黙り込んじゃったから、何かあったのかと思って近づいたら、今度は急に大きな声でホントにビックリしたんですからねッ!」
「ご、ごめんなさいチロッペさん! 説明して頂いた事を考えてる内に、考え込んでしまったみたいです……」
状況を理解して、すぐにチロッペたんに謝った……って言うか、チロッペたんがこっちに移動してきたのも全く気付けてなかったぞ……俺、どんだけ考え込んでたんだ。注意力散漫にも程がある。
俺が自分自身に呆れていると、尖らせていた口を戻したチロッペたんが、今度は心配そうな視線で声を掛けてくる。
「でも、本当に大丈夫なんですか? 今もまだ、若干顔色が良くないような気がしますけど……」
「え、そうなんですか……?」
チロッペたんに言われるが、近くに鏡がある訳でも無いので自分自身の顔色を見る事も出来ない。
確認してみようとレイフェちゃんの方を向いたのだが。
途中で、腕を組みながら片手を頬に当てたレティシアさんが、困ったような顔をしているのが目に入るし、確認しようと思ったレイフェちゃんも頷いている有様だった。
「……ごめん、メルカ。気づけてなかったけど、確かにチロッペの言う通り顔色がよくない」
「そうですね。メルカさん伺ったお話だけでも、だいぶご苦労をされたようですし……お疲れになっているんでしょう」
二人に身振りだけでなく、言葉でも肯定された内容に、俺自身も体が重いような気がしてきた……と言うか、気がしてきたどころじゃないぞ……何だ? 完徹明けの昼過ぎみたいな気分だ。
少しふらつく俺の姿を見て、レイフェちゃんが背中に手を当ててくれた。
「食事の前にも、だいぶ疲れていたみたいだった。一度寝て、体調は戻ったのかと思っていたけど……」
「そうだったの? でも、食事はちゃんと取れたみたいだから……」
言葉を切ったレティシアさんが、俺の顔を見ながら一つ頷いた。
「……今日のところは一度お休みなって、また明日に色々と話を進めていく事にしましょう」
「すみません、レティシアさん……」
「お気になさらないで下さい。レイフェ、私はアンちゃんとここを片付けてから上がるから、念の為にメルカさんをお部屋まで連れて行ってもらえる?」
「ん、大丈夫。任せる」
小さな体で、自分の胸をトンと叩くレイフェちゃんは、カワイイが頼りがいもある不思議なオーラを発しているようにも思えた。
「では、メルカさん。ゆっくりと休んで下さいね」
「おやすみなさい、メルカさん」
「はい……ありがとうございます。おやすみなさい」
何とか就寝の挨拶だけ済ませ、レイフェちゃんに手を引かれて階段を上る。
柔らかい感触なのに、力強いその手に安心感を覚えつつ、自分の部屋まで戻ってきた。
……が、そんな事を考えていられたのもそこまでだった。
自分の体が、自分のもので無いような感覚を覚えた俺は。ベッドの上の掛け布をめくる事も無く、そのまま倒れ込んでしまった。
「め、メルカッ!?」
慌てたような、聞いた事の無いレイフェちゃんの声が聞こえた。
「……呼吸は普通……大丈夫、みたい」
そして、急速に意識が闇に呑まれていく──
「おやすみ、メルカ──」
おやすみ、レ──




