【27】 1章の25 地理
今回、そこまで内容の無い現実との距離換算などのフレーバーテキスト要素が入ってるので、雰囲気だけ分かればイイや! と思われる方は、
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『この間』
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の、文章をスルーしてもダイジョブだよ!
まだ見ぬ『王都』に一瞬思いを馳せつつも、目の前の『景色』に勝るモノもそう無いと思いなおして愛でりんリング。にゅふふふふ。
俺が内心でにへらぁ~、としながらも頑張って表情は真面目を保っていると。
レティシアさんが何か思いついたように、喋りかけてきた。
「そう言えばメルカさん、『地理』も……なんですよね?」
「はい。正直どこに何があるのか……今居るこの『街』の名前すらも覚えていません」
「分かりました。街中での細かな案内は、明日アンちゃんかレイフェにお願いするとして……今話に出た『王都ケイボン』や、この街『テイン』のある『アリド・フォテイン王国』の中の事を中心にお伝えしましょうか」
そう言うとレティシアさんは、テーブルの上からお茶の入ったカップの類を移動させ、広がったままの『貨幣』を手に取ると、身を乗り出しながら簡単な地図イメージを作り始めた……プルンプルンしよる。うへへ。
俺が思わぬ眼福に鼻の下を伸ばしている間に、レティシアさんの準備が出来たようで、体を起こして全体を確認した。
「……うん、大体こんな感じでしょうか。レイフェ、どう?」
と、何故かそのままレイフェちゃんに出来を確認した? 何だ? レイフェちゃんは地理に詳しいのだろうか? まだちっちゃいのに凄いねぇ……ハッ、今の俺凄くオジサン臭くなかったか? ……じ、地味にショックがッ!
「ん、大体問題な……レティシア、この『銀貨』が『テイン』?」
「え、ええ。そのつもりよ」
一つ頷いたレイフェだったが、何か思いついたのか今居る『テイン』の場所を確認すると、余っていた『真鍮貨』を位置を確認しつつ置いた。
レティシアさんはテーブルの上の『貨幣』同士の位置を確認すると、『真鍮貨』が意味するものが分かったようだ。
「その位置は……あ、『ドワーフの里』ね」
「そう」
……ふーん。この位置に『ドワーフの里』があるのか。レイフェちゃんが一人前と認められる為の、部族のしきたりを持ち出してきた連中、だったな。
こんだけ色々と良くしてくれたレイフェちゃんの為だ。いつかは分からないが、余裕が出来たら〈ドワーフ〉共に小一時間ほど説教してやろうかね? ……なんてな。
もう一度全体を見直したレイフェちゃんが、『地図』を承認した事を受けて。
レティシアさんが、こっちに向き直りながら口を開いた。
「メルカさん。簡単な位置関係だけですが、これが『アリド・フォテイン王国』の『地図』です──」
◆◆
本来であれば、レティシアさんの肉声そのままに説明を繰り広げたい気持ちは満々なのではあるが。
内容的にはそこまで多くないので、簡単にまとめる事にする。
まず、この『地図』はテーブルを使った簡単なものだが、『エレメット大陸』北西部にある『アリド・フォテイン王国』の全土を表現した物だ。
レティシアさんが座ってる側を『北』、俺が座ってる側を『南』。
レイフェちゃんが座ってる側が『西』で、俺が座ってる側が『東』。
つまり俺の視点からだと、正面を見れば『南』から『北』を向いている、そういうイメージだな。そして『北』には二つの丘が……じゃない。今のは忘れていい。
あー、大体テーブル中心より少し下でそれなりにレイフェちゃん側、つまりこの場合は『南西』寄りになる訳だが、そこに置かれた『銀貨』が今俺たちの居る『テインの街』だな。
そこからレティシアさんの方に移動していって、テーブルの真ん中をちょい越えたかな? くらいの所にある『金貨』。これが、『王都ケイボン』だそうだ。多少、川や山を避けていく必要があるが、ほぼ真っすぐに街道が伸びていて、『徒歩』でも『馬車』でも概ね『5日程度』で到着できる距離らしい。
この国で一番栄えてる街で、人口も一番多いそうだ。詳しい所は分からんらしいが。ちなみに、『テイン』は4番目くらいに栄えてる……と言われても、だな。
他にも、チロッペたんのお腹の近くにある『小金貨』が、国の中でも『北西』に位置する『北の港街シャリコ』。
ちょうどテーブルの真ん中で一番俺側の端っこ、つまり『東』に位置する『銀板』が『鉱山の街ギエルマニ』。
後、レイフェちゃんと俺の真ん中くらいの端っこにある『小銀貨』は、『南の港街フーレロービ』。
他にも小さな町や村は数多くあるが、大き目の『街』と言えるのはこれくらいらしい。
何と言うか、大きな街には特色を活かした『二つ名』みたいなのあるのが面白いな……ああ、ちなみにこの『テイン』にもあって、『王国でも一番の穀倉地帯』を抱えてる事と、から『麦の街テイン』なんだとか。その関係もあって『食品』が比較的安いとか、俺にとっては助かる情報だね! 今の所、自腹で買えそうにない事は置いといて、だが。
あ、ちなみにレイフェちゃんが付け足した『ドワーフの里』だが。
位置的には、『鉱山の街ギエルマニ』からちょっとだけ『テイン』の方に移動した所にあった。流石『ドワーフ』と言わざるを得ないな。
んー……それはそれとして、だ。
レティシアさんの話を聞きながら考えてみてたんだが……凄くあいまいで、正直良く分からん事が一点だけある──『距離の基準』だ。
『馬車』で5日とか『徒歩』で10日とか言われても、よー分かりませんのよ。試しに適当に計算してみるか?
まず『馬車』の移動速度はまったく知らんので、大体々目安で話されてた『徒歩』を基準として……基本的に日が出ている間しか移動できない訳だろ。
途中休憩も挟みつつで、今の季節は分かんないけど……適当に日の出が6時としての、日の入りが18時と仮定した場合で日照時間が『12時間』?
最初と最後は野営の撤収と準備が入るとしてざっくり1時間カット、途中の休憩と昼食を挟むとしてざっくり2時間カット? ってなると合計3時間カットして、移動時間に使ってるのは実質『9時間』。
普通の人間の歩行速度は時速4km位だから、かける9で……ざっくり『36km』? が、5日だから……『180km』? くらい離れてる……のか。すんごい適当計算だけど。
〈日本〉のイメージだと、確か何かで『東京─大阪』間の距離が『500km』とか聞いた気がするな? 『王都』を『東京』だとすると……その3分の一ちょいオーバー……『静岡』とか辺り? うー、こんな事なら『地理』もうちょい覚えとくべきだったか……ってこんなん想定できるかッ! って話になるわな。
ま、それは良いとしてだ。徒歩で『東京─静岡』を移動かぁ……すんげぇイヤだな。まぁ、俺が歩く事は無いだろうけど……あれ、これフラグじゃ……は、は、ハハハハッまさかなッ!?
◆◆
──俺の内心の感想はともかく!
とても分かりやすく教えてくれたレティシアさんに、お礼を言うのは至極当然の事だな。
俺は胸の前で手を組みつつ、軽く頭を下げてレティシアさんに礼を言う。
「レティシアさん、ありがとうございます! おかげさまで、位置関係が良く分かりました!」
「それは良かったです。他の街の事は、主に『お客さん』から聞かれたり、お話する中で出てくる事もあるので覚えておいて損は無い筈です」
「あ……そ、そう……です、ね。お話する事も、ありますよ……ね」
にこやかに返事をしてくれるレティシアさんは、良い。とても良いのだが……その内容が、俺の労働をしなければならない『現実』を突き付けられたようで、少々不服である。
くそぅ……やはり労働をすると言う事は、対人接客も必要になると言う事で……あー、客が女の子ばっかりのお店で働きたい。それならやる。むしろやらいでかッ!
俺の内心を知ってか知らずか。
何かを考えている様子だったチロッペたんが、横を向いてレティシアさんに話し掛けた。
「ねぇ、お母さん。メルカさんにお店をお手伝いして貰う時なんだけど、あんまり外に出ないところの方が良いのかな?」
「あら……アンちゃん、どうしてそう思ったの?」
……おお? 何故かは分からんが、チロッペたんが俺に都合の良い提案をしてくれたぞ? が、何故か表情がすぐれない……どしたん?
レティシアさんに促されて、チラリとこちらを見ながら言葉を続ける。
「最初に提案した時は単純に、メルカさんの助けになれば、と思ってたんだけど……お昼にお母さんが言ってた『貴族様が絡むトラブル』の話を聞いた後だと、もしかしたらメルカさんが『トラブル』に遭いやすくなるんじゃないかな、って思い始めちゃって……」
「チロッペさん……」
あらやだこの子……マジモンで良い子過ぎるんじゃなかろうか? 善性のかたまりか? 地上に舞い降りた天使じゃったりするんじゃろうか? 神様、こんな子を心の中でペロペロしちゃってすみません……でも、反省はしても後悔はしない!
「なるほど……その事ね」
「うん……」
チロッペたんの言葉を聞いてレティシアさんは優しく微笑むと、流れるようにチロッペたんの頭を撫でた。
「ちょ、お母さんッ!?」
「フフッ」
慌てるチロッペたんと、慈母のように……じゃねぇな。まんま文字通りの『慈母』だった。優しくチロッペたんの頭を撫でるレティシアさんの図は、世界名画傑作選の1枚に選ばれても良い位の素晴らしい構図だったが、残念ながら俺の手元にはカメラが無い。記憶に焼き付けるに留めておこう。てぇてぇ。
とっても尊い絵に、俺も思わずニコニコしながら眺めていると。
メルカの視線に気付いたのか、チロッペたんが顔を真っ赤にして両手で頭をガードしてしまった。残念そうなレティシアさん……俺も残念です。
と、今度はそのレティシアさんもメルカの視線に気付いたらしく。あ、と言う顔をしたかと思うと流れるように姿勢を正して、真面目な表情でテーブルに向き直った……が、よくよく見ると尖った耳の先端が赤いので、これは恥ずかしがっていルンデェすね? イイよォイイよぉ? 続けて続けて?
コホンと咳払いを一つしたレティシアさんは、静かに話し始めた。
「実際のところ、メルカさんが『トラブル』を抱えてる可能性は、あまり大きくは無いと思っています」
「え……そうなの?」
そうなの? 『メルカ』、記憶無い……事になってるけど?
俺も思わず間抜け面を晒してしまったからか、レティシアさんが慌てて言葉を続ける。
「ああ! メルカさん、ごめんなさい! もちろん『記憶が無い』事自体で十分な『トラブル』ではあります!」
「い、いえいえ! お気になさらず!」
「言い方が良くなかったですね……私が言いたかったのは、『貴族が絡むトラブル』と言う事です」
気持ちが落ち着いたのか、レティシアさんがもう一度静かに説明を続けてくれる。
「私も商売柄、たくさんの方々にお会いしますが、こと『貴族』の方に関してはそこまで面識がある訳ではありません……ただ、そんな私にも商人同士のつながりや、個人的に情報を頂いている人も居るので、それなりには世情に詳しいはずです」
ふむふむ、なるほど?
「その私の情報網に、『エルフの貴族』の方に関する情報は、今のところほとんど入っていないんです……と言うよりも、実際には『エルフの貴族』の方はそこまで数が多くないのもあるんですが」
「あ、そうなんですか?」
そこまで無言でレティシアさんの話を聞いていたのだが、発言の内容に思わず口を挟んでしまった。
レティシアさんは一つ頷き、言葉を続ける。
「はい。名の知れた『上級貴族』の中では、『エルフの貴族』は『3家』だけです。そしてその方々の中に、『ヌコバス家』のお名前は無いので……メルカさんが覚えてらっしゃる『家名』が間違っている訳で無いのならば、おそらく『準男爵』以降の『下級貴族』なのではないかと思います」
「……な、なるほど」
……うん。
また新しい言葉が増えちゃったんだが……『上級貴族』と『下級貴族』ってなんぞ?
俺が困惑しているのに気付いたのか、チロッペたんが声を掛けてくれる。
「あ、そうかメルカさん。『身分』に関する区分も分からないですよね……」
いぐざくとりぃ!
ぷりーずてぃーちみー!




