【20】 1章の18 再会
ここのとこ9:00投稿でやってみてたのを、試しに8:00投稿にしてみようとしたのですが……間に合わなかったので手動で今投稿です!
「──結構です」
俺は、今の自分に可能な限りの最高の笑顔を浮かべると、ヴァイス……いやク〇エルフの目を見ながら返答した。
すると、俺の言葉がよっぽど予想外だったのか、切れ長の目を軽く見開きながら〇ソエルフが言葉を返してきた。
「……今、何と言った?」
「結構です、と申し上げました……どうやら今の騎士様は、お耳の調子がよろしく無い様ですね?」
「……な……」
「先程の『義賊』の方との戦いで、負傷でもなされたのでしょうか……これは早く衛兵の方に捜索を引き継いで、療養される方がよろしいかと愚考いたします」
「きさ──」
「もちろん、『国王陛下』のご下命が最優先である事、ワタシも十分に理解しております……ですが、その任を遂行する為にも、どうぞご自愛下さいませ──騎・士・サ・マ?」
「ぐ……ぬ」
──プルプル震えながら、紅潮した顔でこちらを睨んでいるク〇エルフに、最高の笑顔を維持しながら、俺は内心でゲラゲラと笑っていた。
いや、だって見て見て! 自分で口に出した理由をそのまま煽りに使われたもんだから、反論しようにも出来なくなっちゃってるこの間抜けな姿ッ! ぐ……ぬ、とかって言葉に詰まっちゃって、顔真っ赤で震えちゃってるこの状態とかもー笑える笑えるッ!
キサマの幼稚な罵倒なんぞ、『ネトゲ』で飛び交うイヤミと誹謗中傷に比べて何と手ぬるいものかッ!
……いやぁ、メンドクサイ性格をしていた『心理学専攻』の追っ掛けが教えてくれた、正当な理由がある様に見せ掛けつつ相手の反論を抑え込む煽り方、そのまま使えるとは思わなかった……感謝感謝。
ま、このクソエルフが煽り耐性ゼロだったからこそ出来る様なもんだけど。
後は……まぁ、もしプッツンされて何かしらの実力行使に出られた場合は正直まずかっただろうが、国王陛下とやらから命令される様な立場の人間が、こんな公衆の面前で暴挙に出る事は無い、と踏んでの事だ……見通しが甘いって? ……まぁ、俺もちょっとイラッ☆として、つい……テヘッ! ゴフッ!?
お、おっと……このままここで時間を経過させても、百害あって一利なしだな。
「……あ、いけませんね! これ以上お忙しい騎士様と、衛兵の方々のお邪魔をしてしまってはいけませんし、ワタシはこれで失礼させて頂きます」
「あ、ああ……すまんな、お嬢さん」
「いえいえ。職務、お気をつけて」
呆然としながら経緯を見ていたオッチャンにだけ、挨拶をする。
……まぁどっちにしろ、衛兵のオッチャンには〈鞄〉を見つける手段は無さそうな口ぶりだったしなぁ……最悪、ミーニー君に寄生させて貰って、しばらく凌ぐしかないかもしれん。出来ればやりたくないが……どうせ寄生するなら、メルカくらいの『美少女』だろ! 常識的に考えて!
そう考えながら、俺は踵を返して後方に立っていたミーニー君の方を振り向いた……んだが。
「あの? ミーニーさん?」
「……あ、はい!? す、すみません、ちょっとぼーっとしてました!」
「は、はぁ……?」
言う通りぼーっとこっちを見ていたが、何だ? 今さらメルカに惚れたか? ……メンドくさそうだから、本気になるのはやめてよね?
「そ、それじゃあ行きましょうか!」
「そうですね」
それは良いんだけど……今度は、何で満面の笑み……?
……後、何処に……?
◇◇◇
「──いやぁ、でもさっきのメルカさんは凄かったですねぇ!」
「い、いえいえ……その、ついちょっと……怒っちゃいました……」
「当然ですよ! さっきの『ヴァイス卿』は、酷かったですからねッ!」
「あ、アハハ……」
クソエルフにちょっとやり返せた俺は、多少スッキリした気分になりつつも今後の方針をどうしようかと思っていた。
すると、ミーニー君から提案があり、一度『露天広場』戻ってみようと言う事になった。
俺も他に思いつくアイデアも無かったので、ミーニー君に先導して貰いながら雑踏の中を進んでいる訳だ。
……そして、引き続きミーニー君の機嫌がやたらと良い。
それ自体は別に構わないんだが、理由が分からない上機嫌って妙に気持ち悪いと言うか、不安になると言うか……俺だけ?
妙な気分になりつつ歩いていると、ミーニー君がこちらに顔を向けつつ再度話し掛けてくる。
「それにしても、メルカさんは勇気がありますよねぇ……」
「はい? 勇気、ですか?」
何のこっちゃ?
言葉の意味が分からず疑問顔の俺を放置して、ミーニー君が続ける。
「ええ、あのヴァイス卿に、あれだけ言ってしまえるなんて……うん、やっぱり凄いですよ!」
「あの、と言いますと?」
さっきから、俺が理解している前提で話を進めるな、このバカチンが。
これだからイケメンは、人の話を聞かないと言われるんだぞ? ……あ、うん俺調べだとそうなってる。
と、そこでようやく俺の疑問顔に気付いたのか、ミーニー君がちょっと真顔になった。
「あ、れ? ……もしかして、ご存じじゃなかったんですか?」
「はぁ、あの騎士様を見たのは、今日が初めてでしたが……」
「そ、そうなんですか!? あ、だからあんな事まで……?」
そう呟くように言うと、ミーニー君は気を取り直す様に説明してくれた。
「あの騎士様ですが、本名は【ツェーブラ=シュバルツ=ヴァイス】様と仰いまして、国王陛下から『子爵位』を賜ってらっしゃる『ヴァイス家』の一員なんです……確か、現当主の次男でしたか」
「……ほ、ほう」
あんのクソエルフ、貴族だったのかよ……!
「加えて、ご本人も過去に『近衛騎士団』に所属していらっしゃった、『難攻不落』と言う『二つ名』を持つ、高位の『Aランク冒険者』としても有名な方なんです」
「な、なるほど」
それは何か衛兵のオッチャンも言ってたな……『Aランク』ね……凄いんだろう、多分。
ってか、『子爵位』とか『近衛騎士団』とか『Aランク』とか、『パワーワード』多すぎない……?
……ちょっと、段々寒い感じがしてきたなー、気温が下がってるのかなー? アハハー……ア、アハハー!
……菓子折り持って、謝りに行ったら勘弁してくれないかな……いや、むしろ何処か遠い所に逃走した方が良いかもしれないな……逃亡資金……はい、ありません。逃走ルート……はい、知りません。一緒に逃避行する相手……はい、何処にも居ません。
……無い無い尽くしにも程がありますので、これは案としては却下かな。
……あ、でも『美少女』と一緒に逃避行とか、何それ楽しそうって感じだし、一緒に乱れた性と生を実感しながらの日々って、生きてるって感じをビンビンに感じそうだし……え、ビンビンになる所が無い? あなたは何を言ってるんですか? ビンビンになるのは何も物理的だけな話ではな──
「──あの、メルカさん? ……その、何か顔色が悪い様な気がしますが……大丈夫ですか?」
俺が迫りくるヤバそうな予感に、つい軽い現実逃避をしていたせいで、横からミーニー君に心配されてしまった様だ。
いつの間にか、無駄にイケメンのその顔が、こちらの顔を覗き込むようにしていた……何故これが美少女じゃないのかと、コールセンターに問い合わせたい。
「え……ええ! 大丈夫ですよ! こ、この所あまり出歩いていなかったので、少し体が驚いているのかもしれません」
「そうなんですか!? も、もうすぐ『露天広場』に着きますので、一度座ってゆっくりした方が良いのかもしれませんね……」
「あ、ありがとうございます……多分大丈夫ですけれど、着いた時にちょっとお願いするかもしれません」
気遣いの出来るイケメン……普段であれば、嫉妬心で文句を言うだけかもしれんが、何か微妙に頼りになる気がして思わず……あ、やっぱイラっとする☆
よし、ワタシはまだ大丈夫だ!
◇◇◇
「──あ、良かったッ! メルカさんッ!」
これは……多分『美少女』の声ッ!
何処だッ!?
一緒に逃避行しながらえっちい事しようぜ! 三日三晩ッ! 三日三晩だッ! FOOOO!
俺の美少女センサーが反応する声に、思わず振り返ると。
そこに居たのは、『露天広場』で一緒にイチャイチャしてくれた、カモシカの様な綺麗な脚をしている『チロッペたん』の姿だった。
「あ……チロッペ、さん」
「急に走り出してしまうから、びっくりして探してたんですよ、もう……」
あー……何かサーセン。
見れば、言葉通り俺を探し回っていたのか、額にうっすらと汗をかいている。
……そういえば、無くした〈鞄〉を見た気がして思わず追いかけたから、何も言わずに別れちゃってたもんな……しかし、ほぼ初対面の相手でも、そんな心配が出来るなんて……ホンマ、エエ娘や……! エエ娘過ぎて、逆にこっちが心配になるレベルやでしかし。
思わず心の中で感動しつつ、俺は急いでチロッペたんに返事をする。
「ごめんなさい……無くなった〈鞄〉とそっくりな色を見かけた気がして、つい追い掛けてしまったんです」
「あ、そうだったんですか? じゃあ、もしかして見つかっていたり……」
「いえ、実はその……それは見間違いで、こちらのミーニーさんが持ってらっしゃる、〈肩掛け鞄〉と間違えてしまったんです──」
そう言いながら、横に立ってこちらの会話を見ていたミーニー君を示すと、すぐにぺこりと頭を下げながら自己紹介を始めた……ん? そういえば、さっき持ってた〈肩掛け鞄〉が見当たらないな? 何処かに置いてきたのか……?
「──初めまして、自分は……えーっと……ちょっとした縁があって、メルカさんのお手伝いをしているミーニーと言います」
「あ、その、わ、わたしは……」
ミーニー君の自己紹介に、わたわたしながらチラチラとこちらを見てくるチロッペたんに、ついついほっこりしてしまう──おっと、助け船助け舟。
「あ、ミーニーさん、こちらワタシの『お友達』の」
「──あ、はい! メルカさんの『友達』、のアンチローペ、です!」
ほっぺたを赤くしながら、俺の『友達』と言い切るチロッペたんの姿は、ホントにもうペロペロしたくてしょうがない……だが、それは次の機会にしておかないとな。残念だが。実に残念だが。
それはさておき、チロッペたんと再会できて良かった。割ともう、正直2度と会えないんじゃないかと思っておりました、ハイ……そのフトモモをペロペロするまで、俺は死ねないッ!
……じゃなくて。チロッペたんが来たんなら、レイフェちゃんも一緒に居るもんだと思ったのに……何処に居るんだ?
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