【14】 1章の12 疑惑
予約投稿に間に合わなかった……遅れて申し訳ありません。
「──そこの彼は、ここにはキミの付き添いで来たと言っていたが……この〈嘘吐きの水晶〉が、どうかしたかね?」
真顔のまま、衛兵のオッチャンは様子を伺う様にミーニー君に声を掛ける……と言うか、真顔が割りと怖いぞッ!? チビりそうだから、出来たらもうちょっと朗らかにお願いしたいんだけどなッ!?
俺の感想を知ってか知らずか、さっきよりは落ち着いた様子のミーニー君が、しっかりとオッチャンの目を見ながら返答した……のだが。
「い、いえ。 人の『ウソ』を見抜くと言う〈嘘吐きの水晶〉。 以前に名前を聞いた事があったのですが、実物を見たのは初めてだったので、少し動揺してしまいま──」
「動揺? 何故、動揺する必要があるのかね? それとも──何か、『隠し事』でも?」
ミーニー君の言葉尻を捉えたオッチャンが、ずいっと一層テーブルに身を乗り出してくる。 おかげで、それほど広くも無い部屋が余計狭くなった様に感じる。
さておき、『ウソを見抜く水晶』……ね?
見た目と名前だけでは、すぐに思い出せなかった『俺』だが、その機能に覚えがあった。
あれは確か……正確な日付は記憶の彼方だが、『ゲーム』の中で去年の夏に開催された『クイズイベント』で使用された〈魔法道具〉に、そんな機能があった筈だ。
正直、何でこんな時期に『クイズイベント』? と言う感想を覚えた記憶がある。
が、そこは運営曰く。 夏と言えばどっかの大陸を横断するスーパーだかハイパーだかのクイズですよねッ! だから、私達もクイズイベントですッ!
と言う趣旨の告知が出ていて、思わず俺も呆れた……まぁ、景品が有能な〈魔法道具〉だったり、限定の〈浴衣衣装〉だったから、積極的に参加したんだけど……悪いッ!? ゲーマーとして、限定品は揃えないと気が済まないんだよッ!
……えーっと何の話だっけ……ああ、そんな『クイズイベント』の小道具の一つとして提供されていたのが、件の〈嘘吐きの水晶〉だったって事だ……まぁ、正確には〈水晶〉の名前が違って、確か……〈真実の水晶〉とか言ってたかな。
『イベント』で出題された、いくつかのクイズの問題の中で、一緒に参加したグループのプレイヤーに関する事を聞かれる問題があって。 キミ達、仲間ならこれ位知ってるよね? 的なノリで出題される内容が、普通他人には教えない『スキル』の構成だったり、個人で持ってる総資産がどれくらいか、とかとか。
そんな本人しか分からない様な情報を問題にした時に、どうやって正否を判定するんだ? と言う話になった段階で、運営が投入してきたのが〈真実の水晶〉だった訳だ。
運営曰く、この〈水晶〉は『アカシックレコード』にアクセスして、誤った答えに対して発光する事で反応します! と、説明を受けた訳なんだが──まぁ結局、そんな人に教えたくない事をガンガン聞かれる様なイベント、プレイヤー側からのクレームが凄くてすぐ運営謝罪の流れになってたけどな! もちろん、豪華景品はそのままで! いやぁ、誰だろうなそんなクレーム入れたのは……?
……コホン。 んで、まさかとは思うがこの〈水晶〉……その『設定』のままの機能を持っているんじゃ、なかろうな? だとしたら、色々と事情を抱えているメルカとしては、しち面倒くさい事が確実だからな。
…………しかしまぁテーブル越しとは言え、割と近距離で。 無言で目を合わせてるイケメンとオッチャンの図かぁ……うむ、特に需要は無いな! 返品したいんだが、コールセンターは何番かな? 何、インターネットしか無理? やれやれ、ネット端末なんてここには──だぁぁッ!? 無理ッ! コレ以上は現実逃避も無理ッ!
位置ッ! 位置考えてッ!? 座ってる椅子的に、ちょうど二人の視線が交差する付近に……俺、存在ッ! 所在が無いとは、正にこの事かッ!?
……ちょ、もうこれ『圧』、『圧』がヤベェって……って言うか、俺軽く放置プレイなんですがそれは……いや、むしろ放置プレイでも良いっちゃ良いんですが、問題は俺の〈鞄〉の件な訳でして? 見つからないからって、諦める訳にはイカンのですよ?
……ぐぬぬ……正直、こんな『圧力』マシマシのガチムチオッチャンに声なんか掛けたくは無いのだが、このままここに居るのはご勘弁、ってヤツだ。
短時間ではあるが、これまでの言動から鑑みるに、このオッチャンは生真面目で職務に忠実、ただユーモアを解さない程の堅物では無さそうだな……頼りになる気のイイオッチャン型か?
となると……常識的な部分と、事実を織り交ぜつつ説得、オチにユーモアをつければ……よし。
意を決した俺は、オッチャンにゆっくりと声を掛ける。
「……その、彼は困っていたワタシを、わざわざ衛兵詰め所まで送って来て下さいましたし、そうなったのも本当に偶然からですよ? それに──」
そこで一瞬言葉を切り、オッチャンが俺に注目するのを確認してから──
「──『ウソ』がバレると考えたら、大体の人は動揺するんじゃないでしょうか?」
主に……『俺』とかもなッ!
俺は内心でそう叫びつつも、顔はニッコリ微笑みながらオッチャンに言った。
すると、しばらく何かを考える様子だったオッチャンは、再度チラリとミーニー君の目を見た後、一つ大きく溜め息をつくと、フッと苦笑を浮かべる。
「ふむ……それもそうか。 確かに、誰しも『ウソ』をつかずに生きていくのは難しいからな」
「そうですよ。 現にワタシだって、ウソや秘密にしたい事の一つや二つはありますし?」
「……ハハッ! 確かに、イイ女にはウソや秘密は付き物と言うからなッ!」
……ふぅ……何とか誤魔化せたか? クソ、生身だとやっぱりやり難いな。
反応が細かく見える分、対応を変更しやすいんだが、そのせいで逆に悩みそうになる。 選択肢が多いってのも、良し悪しだわ。
笑っているオッチャンをひとまず置いておいて、チラッとミーニー君を確認してみると。
こちらを見ていたのか、思いっきり目線が合った。
と、急にわたわたし始めたかと思えば、コホンと一つ咳払いをしてからオッチャンに声を掛けた。
「……自分も、出来る限り正直に生きているつもりですが……その、『仕事』上や、家族に心配を掛けない為にウソを言う事もありますので、ついあんな反応を」
「ふむ……私だってそうさ。 嫁さんに黙っておきたい事の、一つや二つはある」
ふぅ、やれやれ……場が和んだ所で、本題に入っても構わんだろうか?
そう俺が考えたところで、オッチャンが気になる事を言い出した。
「……すまんな、『例の義賊』のせいで、些か過敏になっていた様だ」
「……『例の義賊』?」
「ッ」
「ん? 何だ、まさか知らないのか? 近頃世間を騒がせている、あの『義賊キャットテイル』の事だぞ?」
そう言いながら、呆れた様な目線を向けてくるオッチャン。
HAHAHA! こちとら、〈異世界〉に来てまだ3時間位だっての! 世間を騒がせてようが、知らないモンは知らないよッ!
……と言い切れれば良いのだが、そう言う訳にもいかない。
さっき広場でチロッペとレイフェに言った『設定』を、そのまま流用するか。
……いや、待てよ。 良く考えてみれば、ミーニー君には俺が安宿に居た事を見られていたな。
『研究バカ』と言う設定を使うと、何かイラン反応をされる可能性もあるし──
そう考えつつ、再度チラリとミーニー君の反応を確認したのだが。
「…………」
んん? ……あれ、何か……さっきより動揺しているような?
……あ。 まさか……何か、関係あるのか?
『義賊』とやらと?
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