ねんがんの おんなのこ を てにいれた !
やっとこさっとこボーイ・ミーツ・ガール
「ハッ」
気がつけば我輩の前には奴隷召喚用の魔法陣が書いてあった。ちがうぞ。あまりの人恋しさに我輩が自分でこれを書いたわけではないぞ。これは……ここにもともと書いてあった魔方陣に違いあるまい。
もう200年余りも住み着いているが、この塔はいまだによく分からない。たくさんのトラップやよく分からない宝箱などがあちこちにおいてあるのもどこか不気味である。
この魔法陣、調べたところやはり奴隷召喚用の魔法陣であるようだな。召喚用の魔法陣はいくつかのプロセスを一つにまとめたものであることが多いが、こいつは奴隷契約の魔法も含まれているタイプだ。研究してきた我輩にはわかる。大きさからして、かなり大規模な召喚陣であるといえよう。ちがうぞ。我輩が書いたわけではないぞ。
しかし研究者としては、魔法陣を発動させてどんなものが呼び出されるか見てみたくもある。今までにも古書の記録より復元したいくつかの魔法陣を試してみたが、人族あるいは魔族を呼び出す術式は試したことがない。多くの魔族なら奴隷召喚など忌避するものだが、あいにく我輩は普通ではないのだ。ちがうぞ。我輩が書いたわけではないぞ。
考えてみよう。ここにたまたま、なぜか書いてあった魔法陣を我輩が誤って発動させてしまう。
すると女の子が奴隷として召喚されて来る。状況に驚く女の子。しかも隷属魔法がかかっていることにパニックになるものもあるであろう。
そこで我輩はまずもって女の子を慰めるのだ。隷属魔法がかかっているが、これを使って虐げるつもりはないことをゆっくりと説明し、女の子を安心させるのだ。
その後、誤って発動させてしまった旨を説明し、奴隷魔法の解除方法をともにさぐることを提案する。
長い長い研究と共同生活の末、奴隷魔法の解除に成功するが、そのころには二人はいい感じ、女の子は愛の奴隷に……
ふむ。やはり研究者としてここは一つ、魔法陣を作動させてみようそうしよう。べつに下心なんてない。これは研究者として、純然たる好奇心と知的探究心の追求である。
いや、ちがった。我輩は調査中に誤ってこの陣を作動させてしまうのだ。魔力を通してこの陣を精査する途中、集中を乱して魔力を注いでしまうのだ。魔物の出現によって集中を切らして、だな。幸いこの塔にはうじゃうじゃと魔物が住んでいるし、まったく起こりえる偶然である。
そうと決まれば早速この魔法陣に魔力を注いでみるべきだ。結構気合入れたせいで複雑で大きいものになってしまったが、我輩の好みを反映するため、召喚者のイメージを元に対象を探知する術式も組み込んであるし、これいけるって絶対。我輩勝ち組じゃん。召喚魔法やってて良かった!ありがとう神様!
陣があって魔力さえ通せれば詠唱などいらない、これは我輩の長年の研究による召喚魔法の無詠唱化である。どうせ誰も見向きはしないし発表はしてないけど。
なむさん!どうか我が好みの少女をここに呼び出したまえ!
絶大な光に瞑っていたその目を開けると、目の前には角と尻尾の生えた少女がいた。戦闘民族たる魔族には珍しい軽装であり、首元に光る鱗、手首から先と足首から下は完全に鱗に覆われ、それぞれが大きく鋭い爪を具えている。見た目からして完全に竜人であろう、魔族の中でもかなり珍しい種族である。
華奢で小さく、竜人の特長たる縦長の瞳孔に、世界中の富を集めて収めてもまだつりあわぬ、確かな意思を感じさせる黄金の瞳。暗闇よりなお暗い深淵を切り抜いたその黒髪は、しかし吹抜けにそそぐ太陽の光を確かに反射して、光輪を形作っている。
胸当てと腰周りだけを覆うスカート、ハーネスのような個性的な装いで、覆い隠すものもなくさらけ出された臍周りには、鋭く光を反射する鱗がほんのりと主張する。
隷属魔法によるものか、黒い魔紋が蛇のように鎖のようにその体を這い回り、浅黒くみずみずしい肌がそれを際立たせている。
すばらしい。すばらしく我輩好みのつるぺた少女であると言えよう。しかも文句なしの美少女!神は我輩に味方したのだ!
ただただ、端的にその少女を形容するならば、それはすなわち「理不尽魔王」、その人であった。
(ええええ、これ、魔王出て来ちゃったんですけど、どうすんすかこれ、マジで神様!確かに魔王様すごい我輩好みのロリ魔王だけど!確かに今代の魔王様稀代の美少女だけど!)
あまりと言えばあんまりなその召喚の結果に我輩が硬直するなか、召喚された当の本人は平然としている。いや、少しばかりだが頬を染めて、その瞳にはなにやら妖しい色が見え隠れする。
(やばいこれ魔王様、これキレてない?なんかちょっと赤くなってるような気がするしこれ。絶対隷属魔法が発動してるのわかってぶちきれちゃってるんじゃない?嗚呼終わった。我輩終わった。最後の最後に生魔王様見れてよかった。父上母上、先立つ不幸をお許しください……)
我輩が生魔王様に謁見できた慶びと人生の後悔を一通り済ませていると、少女はふと、何を思ったか立ち上がり、魔王召喚の衝撃に座り込む我輩を見下ろしてこう言った。
「……問おう。あなたが私のマs
「魔王様それだめなヤツ!しかもシチュエーション以外ぜんぜん似てない!」
ついつっこんでしまった我輩はあまりの不敬にあわてるが、当の本人は再び無表情なその頬を染め、瞳にこもる妖しい色を燻らせた。
影のサブタイトルは 英霊召喚
ここから話が動いていくわけですが。どうしよう何も考えてない。ヒロインはもう二人くらい出したいかなぁ。
更新にはばらつきがありますがなるべく3日以内には更新していきたいと思っています。のろのろちまちま更新しますが、どうぞ今ひと時のお付き合いを。