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クリスマスイブの人々4

男「今年は暖冬とはいえ、さすがに冷えるねー。寒くはない?」


森島「……。はい、大丈夫です」


男「そう……」


森島「……。今日はすみませんでした。デートの邪魔をしてしまって」


男「いや、構わないよ。森島さんも一緒で楽しかったし、ペンも買えたしね」


森島「正直に言いますけど、私別にペンに興味なんてなかったんです。ただ先輩と

   男さんがクリスマスイブに2人きりで出かけるのが嫌だっただけなんです」


男「うん。気付いてた」


森島「やっぱりそうですよね……。私って嫌な女ですよね……」


男「……」


森島「でも最初はただデートを邪魔したかっただけなんですけど、

   いろいろペンについて教えてもらったり、使わせてもらったりして

   いつの間にか普通にペンを選ぶのを楽しんでました。

   これは本当です。新しく興味を持てるものを知ることができて先輩には本当に感謝してます。

   男さんから先輩に伝えておいてもらえますか?」


男「森島さん。はいこれ」


森島「なんですかこれ?」


男「開けてごらん」


 ガサゴソ


森島「ボールペン? さっき買ったんですか?」


男「うん。ウチの部署からのクリスマスプレゼントだよ」


森島「え? 部署?」


男「がんばった後輩にはミス&ミスターサンタクロースからのプレゼントがあるんだそうだよ」


森島「……」


男「森島さんがトイレに行ってる間に2人で買ったんだ」


森島「……」


男「僕がボールペンを欲しかったのもそうだけど、今日はもともと僕と先輩が

  部署を代表して森島さんへのプレゼントを買うつもりだったんだよ」


森島「えっ……」


男「今年、森島さんが入社してウチの部署にきてくれたおかげで、仕事がずいぶん楽になったんだ」


森島「……」


男「仕事の飲み込みも早いし、新人としての視点から業務の改善提案も行ってくれたおかげでだいぶ仕事がやりやすくなった」


森島「……」


男「今やってる業務だって、本当は僕がメインでやらなくちゃいけないのにほとんどまかせっきりにしちゃってるしね」


森島「……」


男「だから、感謝の意味も込めてがんばった森島さんへのプレゼントをしようって先輩が提案してくれたんだ」


森島「えっ、先……輩?……」


男「うん。どうかな? 気に入った?」


森島「……はい…………すごく……ステキです……」


男「そう? 良かった」


森島「…………」


男「そのペン、先輩が選んだんだ。サイズは違うけど僕のとおそろいなんだよ」


森島「………………ぐすっ……」


男「僕は、森島さんが気に入ってたやつの方がいいんじゃないかと思ったんだけどさ、

  先輩が、僕とおそろいにした方がたぶんモリシーが喜ぶだろうって」


森島「……ぐすっ…………ヒック……」


男「あの先輩よく見てるんだよね。普段ボーっとしてるように見えるけどさ」


森島「……ぐすっ……ぐすっ…………」


男「キミが書きやすいって言ってたペンの太さとか重さとかちゃんと見ててさ、

  僕のと同じデザインの中で一番近いやつを選んだんだよ」


森島「……ぐすっ……ぐすっ…………ヒックヒック……」


男「使い心地も気にいったら、先輩にお礼言ってあげてよ。きっと喜ぶから」


森島「……ぐすっ…………ヒックヒックヒック……は……はい……ヒック……」


男「ふぅー、やっぱ冷えるね。ちょっとそこの自販機でコーヒーでも買おう。ちょっと待ってて」




―――――――――――――

―――――――――

―――――

――


 ゴクゴク。ハァー


男「どう? 落ち着いた?」


森島「はい。情けないところを見せてしまいました。

   今日ほど自分が嫌になったことはないです」


男「あんまり悲観的にならなくてもいいと思うよ。

  みんな森島さんに感謝してるし、森島さんのことが好きなんだよ。

  だからこうやってプレゼントを買おうとか提案してくれるんだよ」


森島「ちょっと、また泣きそうになるので止めてください」


男「ボールペン。大事にしてね」


森島「はい。家宝にします」


男「ふふふ」


森島「ところで、忘れるところでした。これをどうぞ」


男「ん、何これ?」


森島「可愛い後輩サンタちゃんからのクリスマスプレゼントです」


男「え? 悪いよ」


森島「私の泣き顔を見た罰として受け取ってください。

   受け取ってくれないとこのボールペンをたたき折ります」


男「なんか無茶苦茶だなぁ。じゃあありがたく頂くよ。開けてもいいかい?」


森島「はい。どうぞ」


  ガサガサ


男「これはタイピンかな?」


森島「はい。何買おうか迷ったんですけど、いつも男さんが使うものにしました」


男「ありがとう、嬉しいよ。大事に使うね」


森島「……。あーあ、なんかもう負けましたよ」


男「何が?」


森島「もう何もかもがですよ。プレゼントあげてびっくりさせようと思ってたら、

   逆にプレゼントで感動させられて泣かされちゃうし、先輩のすごさは

   再認識させられちゃうし、こんな泣いてメイクがドロドロの顔を男さんに

   見られちゃうし。なんかもうさんざんですよ」


男「ドロドロの顔も可愛いよ」


森島「うるさいです」


男「はい……」


森島「とりあえず先輩は強大だということが分かったので、もっと気を引き締めねばなりません」


男「森島さんは勘違いしてるよ。僕と先輩はそんなんじゃないよ」


森島「うるさいです」


男「はい……」


森島「明日からは女磨きにも精を出しつつ、もっと攻撃的にいかなければなりません」


男「いや、今でも十分……」


森島「男さん!!」


男「は、はい!」


 チュッ


男「な、な、」


森島「今日は先輩にボロ負けしているので、ほっぺだけにしておきます」


男「え? あぁ。ありがとう?」


森島「いつか先輩に勝ったらちゃんと告白もします」


男「そうかい」


森島「今日はここまでで結構です。明日からの襲撃にそなえて早めに帰って

   あったかくして寝てください。コーヒーごちそうさまでした。おやすみなさい」


男「あ、はい。おやすみなさい」


タッタッタッタッ


男「襲撃って何!?」

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