クリスマスイブの人々3
男「うわー、いっぱいありますね」
先輩「そうだね。とりあえずテキトウに選んでみるといい」
森島「コンビニとかで売ってるのとは高級感が全然違いますね。これなんてすごく気品があって芸術品みたい」
先輩「それはフランスのPARKERというブランドのものだよ。パーカーは"世界中で最も愛されているペン"と呼ばれている。
そのソネットというシリーズは女性でも使いやすいように細く作られているから、手が小さいモリシーでも握りやすいと思うよ。
少し試させて貰おうか。店員さーん!」
サラサラ……
森島「すごい! とっても滑らかです! 普段使ってるペンとは全然違う」
先輩「それは良かった。今更だがボールペンの一般的な分類を説明しておこう。
まずざっくり分けるとインキには大きく3種類ある。
①普通の油性ボールペン。揮発・乾燥に強く、書いた文字が変質しにくい。でも少し書き味が重い。
②水性ボールペン。海外メーカーではローラーボールと呼ばれ、人気もある。
濃くクリアな文字を、軽い筆圧でサラサラと書ける。でもにじむ。
③ゲルインキボールペン。水性のような書き味と油性のような定着性をもった万能インキ。
しかし、海外メーカーがほとんど製造してないためデザインの幅がとても狭い。
海外メーカーだと1つのシリーズで、①,②とあとは万年筆の3種類出してることもある。
ペン先の出し方も大体3種類
①ノック式。片手でサッと出せるため使いやすい。
しかし、いつの間にかノックされていて服とかを汚すことがある。
②ツイスト式。カッコいい!!
③キャップ式。ペン先が乾かないため粘度が低く、乾きやすいインクを使用できる。
ギミックがないため構造がしっかりしており、ペン先もぐらつきにくく、筆圧の調節がしやすい。
他にもいくつかあるけど、いわゆる高級ボールペンと言われるものは②が多いんじゃないかな。
これくらい知っておいた上で、好きなデザインを選んで、
握りやすさ、書き味なんかを確かめてみればいんじゃないかな。
線の太さは最悪リフィルを変えればいいから、少し優先度低くてもいいと思う。
男「なるほど。普通に詳しいですね」
先輩「ふっふっふ。ミスボールペンとは私のことだよ」
男「あんまりカッコいい響きじゃないですね」
先輩「コウたんはどんなのがいいんだい?」
男「こういうシンプルで威厳がありそうなのがいいですね」
先輩「シェーファーか。渋いね。このブランドの万年筆は大統領が使ってたことで有名だよ。
コウたんも試させてもらうといいよ」
男「はい」
先輩「モリシーはずいぶん悩んでいるみたいだね」
森島「なんかいろいろ目移りしちゃって。
でもすごいオシャレでいいなぁって思うものって結構いいお値段したりするんですよね。
今月は他にちょっと出費もあったし……」
先輩「まぁ無理して買う必要もないさ。別になくても困らないものだしね」
森島「そうですね。でもいつかは欲しいなぁ。仕事のできる女性って感じがしますもん」
先輩「モリシーならすぐに出世していくらでも買えるようになるさ」
―買い物後―
森島「すみません、お待たせしました。もうボールペン買いました?」
男「うん。便秘の森島さんがトイレで踏ん張ってる間に買ったよ」
森島「違いますよ! トイレが混んでたんです! 女性にそんなこと言うなんてほんとデリカシーがないですね」プンスカプンプン
男「ごめんごめん。冗談だよ」
先輩「まぁまぁ何はともあれ、無事に買えて良かったじゃないか」
男「そうですね。ありがとうございました」
森島「私はすみません。わざわざ一緒させて頂いたのに」
先輩「いや、いいんだよ。ボールペンに興味を持ってくれた女性が増えただけで嬉しいよ」
森島「いえ、こちらこそ本当に楽しかったです。ありがとうございました」
先輩「さて、それじゃ帰ろうか。コウたんはモリシーを送ってあげなよ」
男「分かりました」
森島「いえいえ、一人で大丈夫ですよ」
先輩「クリスマスの夜に女性が一人で歩くなんて危険だよ。ね、コウたん」
男「そうですね」
森島「じゃあ、すみません男さん。よろしくお願いします」
先輩「コウたんは送り狼になるんじゃないよ」
森島「せめて送りトナカイくらいにしてくださいね」
男「ヒヒーン!」
森島「え、トナカイってヒヒーンって鳴くんですか?」
先輩「いや、私も知らないなぁ」
男「さ、行きましょうか」




