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DHMO

部長「ちょっとこの資料こんなふうに修正してくれないか」


男「ふむー、いいですけど……、でもこれ意味としては同じですよね。

  なんかあまり修正の必要性を感じないんですが」


部長「それはお前がこの内容の全貌を知っているからだろう」


男「どういうことでしょう?」


部長「全く知らない人が見たら、同じ内容でもかなり違った印象を受けるということだよ」


男「ふーん。そんなもんですかね」


部長「あぁ。人間は騙されやすいからな。お前DHMOって知ってるか?」


男「DHMO? なんですかそれ? サプリメントですか?」


部長「ある物質の名前だよ。


 DHMOとは、

 ・水酸と呼ばれ、酸性雨の主成分である。

 ・温室効果を引き起こす。

 ・重篤なやけどの原因となりうる。

 ・地形の侵食を引き起こす。

 ・多くの材料の腐食を進行させ、さび付かせる。

 ・電気事故の原因となり、自動車のブレーキの効果を低下させる。

 ・末期がん患者の悪性腫瘍から検出される。

 ・その危険性に反して、DHMOは頻繁に用いられている。

 ・工業用の溶媒、冷却材として用いられる。

 ・原子力発電所で用いられる。

 ・発泡スチロールの製造に用いられる。

 ・防火剤として用いられる。

 ・各種の残酷な動物実験に用いられる。

 ・防虫剤の散布に用いられる。洗浄した後も産物はDHMOによる汚染状態のままである。

 ・各種のジャンクフードや、その他の食品に添加されている。


  っていう特長を持っている。この物質についてどう思う?」


男「いや、かなり危ない物質ですね」


部長「でもその辺で結構見かけるし、お前も知らない間に摂取しているんだぞ」


男「な、なんだってー!」


部長「DHMOはDihydrogen Monoxide (ジハイドロジェン・モノオキサイド)の略称で一酸化二水素のことだ」


男「へー」


部長「つまり化学式ではH2O」


男「!?」


部長「まぁそういうことだな」


男「うわ、人間ってすごいですね。すごいバカですね」


部長「そうだな、今度から文章の表現には気をつけてな」


男「はい。でもこれってSSだから読み返して分かりますけど、会話だったらたぶん分かんないですよね」


部長「細かいことは気にすんな」

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