言い回し
先輩「君は人を好きになったことがあるかい?」
男「それはある意味では、無いといえば嘘になりますけど」
先輩「そういう回りくどい言い回しは、私以外には嫌われるよ」
男「先輩以外の人とは割りと普通に話しますよ」
先輩「そういえばそうだね」
男「それに逆に考えれば、先輩は回りくどい言い回しは嫌いじゃないってことですね」
先輩「そうだね。気持ちをはっきりと言えないなんて実に日本人ぽくて趣があるじゃないか」
男「そう言われてみれば、そうかもしれないですね」
先輩「だろう!? 『恋』という言葉を知っているかい?」
男「それは、一応知っていますよ」
先輩「この『恋』という言葉は、日本語以外では非常に表現しにくいそうだ。
いわゆる『愛』との違いが難しいらしい」
男「確かに、英語だとどっちも『Love』になってしまいそうですね」
先輩「そう、『恋』は旧字体では『戀』と書くのだが、
これは『イトしい、イトしいと言えない心』という意味で、
つまり、好きな気持ちが恥ずかしくて伝えられないという事だな」
男「なんか奥ゆかしいですね」
先輩「しかし今の時代だと『ツンデレ』になってしまうのかな」
男「なんか一気に趣が無くなりましたね」
先輩「そうだね。しかしある意味では君はツンデレだから、
私に恋しているということになるね」
男「そうやって解釈をねじ曲げていくの止めてもらっていいですか」
先輩「ふふ、そんなにあせって拒否しなくてもいいじゃないか」




