2章 涼太の真夏の変化とシルク
ワン ワンワン ワン
ミーンミーンミーーン
庭でサスケが吠えている鳴き声とセミの鳴く音が混じった音で目が覚めた。
ん~。。。うわっもうこんな時間かぁ
8月24日 11時35分
ワン ワンワン
ん? はいはい。サスケさん 早く散歩に連れていきなさいってか~
あくびをしながら伸びをする涼太
分かりました分かりましたよ。先に俺の飯食わしてね~
涼太はゆっくり階段を降り、洗面台に向かい顔を洗う。顔をタオルで拭き終わり
鏡に映る自分をボーっとじっと見つめる。鏡越しには後ろの廊下が映る。
あっ昨日のユーチューブ。。。。きっとパソコンの故障か何かだな
後でもう一度確認しておこう。。
故障と信じたい反面、正直涼太の心境はドキドキしていた。
そのままリビングに行き、母が作っていったご飯をTVを見ながら食べる。
食べ終わり食器を流し台につけて、サスケの元へ向かった。
さっ散歩行きますか
散歩中、昨日の事を涼太はずっと考える。
昨日のユーチューブはいったい何だったんだろ。。。
あんな事今までなった事なかったのに
今日ハローワークから帰ってからもっかい見てみようか。。
あっ
そこに涼太と幼馴染みの恭子が横切る
恭子「あれ?涼太くん?」
お、お~。久しぶりだね
恭子「久しぶりだね。何してんの?」
な、なにって散歩を。。
恭子「散歩?こんな平日の昼間から?」
恭子は少し馬鹿にしたような口調で涼太に話す
ま、まぁな。ちょっと今就職活動でさ
恭子「ふぅ~ん。早く見つかると良いね。いい年だし。私もこの年で独身だし焦っちゃうよね。この年代。あ、そうだ又みんなで一度呑みにいこうよ。
連絡先交換しとこよ」
お、おう。じゃ
涼太と恭子はお互いに連絡先を交換した
恭子「じゃね」
恭子はそのまま歩いて真っ直ぐ進むと、迎えにきたスーツがパリッと決まった男の高級車へと乗った。
はぁ。相変わらずもてるんだろうなぁ。しかし何か性格変わったな。綺麗だけどこんなに馬鹿にされるとはね。けど良い匂いがした。さっ、行こうかサスケ
恭子は涼太と同じ小学校、中学に通っていた。恭子は学生時代でもすごくもてていて。中学の時だけでも
数人彼氏がいたという。それから涼太とは別の高校に行き会う機会は一気に減っていた。
中学の時に涼太は恭子に好意をもっていたが気持ちが伝えれないまま今に至っていた。
そのまま涼太は一度自宅に戻りいつも通りのハローワークへと向かい、夕方帰宅した。
今日、恭子に会ったよ
母「あらそう。恭子ちゃんて離婚したんでしょ?2~3年前に」
えっ?マジで?
母「ちょ、ちょっと、コロッケが口から飛んでるわよ。大体あなたにも当時言ってたはずよ私。」
そうだったっけ。あ、これコロッケだったの
母「言ったわよ。ってか何と思って食べてたのよ。まったく。。恭子ちゃんの相手の方は確か東京で宝石屋さんを経営している社長さんか何かだったと思うわ。勿体ないわよね。一生お金持ち人生だったのにね」
ふ~ん
母「ふ~んじゃないわよ。あんたも早く仕事見つけて早く結婚しなさい。どうだった?今日のハローワークわ」
いや、特に収穫無しです。
母「そればっかりじゃない。取り敢えず面接だけでも受けてきてよ。あと母さんとこの職場の件も考えといてよ。」
あ、いや一応、面接なんだけど明日の15時に決まった。。だけど
母「やったじゃない!ハローワークで収穫無しとか言っててちゃっかり収穫してるじゃない!!このこそ泥!」
こ、こそ泥って。。いやハローワークでは
母「あんたっ決めてきなさいよ!しっかりね!それで何の仕事の面接?あっ営業とかは向いてないんだからやめときなさいよ。」
いや。。仕事内容は。ちょっと分からないというか。。何というか。。
母「まぁ、何の仕事か知らないけどとりあえず頑張ってきなさいよ。」
え、あ うん
いつもよりちょっとだけ母のテンションが高いと感じた。
風呂からあがり自分の部屋へと入り、パソコンの前へと座る
よしっ確認しよう。昨日の事が何かの間違いなのかどうなのか。
パソコンの電源を入れようとした時であった。真っ暗いパソコンモニターの画面の右端に何かが映る。。
え??
涼太は電源のボタンに人差し指を伸ばしたまま振り返る事無く固まる。
何かが映ってる。。どうしよう。。ぼやけててハッキリしないが右端に何かが映ってる。。。
よし、ゆっくり振り返ろう。。
涼太は勇気を振り絞り一気に振り返った
う、うわぁ~~!!
シルク「う、うわぁ~~~!!」
そこに居たのはシルクという涼太の肩ぐらいの大きさの黒いスーツを着たリスだった。
涼太は当然驚いたが、リスのシルクも同じように驚き叫んだ。
すると母がいきなり部屋の扉を開けた
ガチャン
すぐに涼太はひきつった顔をしながら母の方を向いた
母「ちょっと何??大声出してビックリするじゃない」
い、いやぁ。。何でもないよ。ちょっとパソコンがいきなり電源落ちちゃって び、びっくりしただけ。
母「静かにしてよぉ。ご近所さんに迷惑だし」
と母が扉を閉めたと同時に涼太はシルクがいた場所を見たが、シルクはいない。
あれ?
抜けたような顔で再びゆっくり扉の方を見るとシルクが再びいた
涼太は自分の口を両手で塞ぎ再び驚いた。
ある程度落ち着いてから落ちるようにストンと椅子に腰をかける。
あ、あのぉ。。。リ、リス??
しばらく間があり。。。
じっと涼太を見つめ
シルク「っワン!!」
再び涼太は腰をぬかす。
シルク「犬です」
い、いあぁリ、リス。。。
シルク「そーです。そーです。誰が何と言おうとリスです」
シルク「で?」
え、いや でって。。 何すか??これ着ぐるみ?
涼太はシルクの背中や頭の後からチャックを探す
シルク「そうそうそう。ここにYKKってかいたチャックがってあるかっ!!着ぐるみでも何でも無い正真正銘のリスや!」
関西人。。?いや関西リス?・・・
シルク「この状況からいって驚くのは当然。まっ、座りぃな。ワシの名前はシルク。それより昨日のユーチューブ見たやろ?」
あ、その関係の人??
シルク「ちょっ、しゃべってんねんから急に入らないでくれる?ほんで、その関係の人?ってワシはリスやから」
シルク「んで昨日のユーチューブに記載してた通り明日の25日15時に面接をする。それに必ず合格してほしい」
あ、本当に面接を行うって事? いや15時に面接って15時に公衆電話に入ってと書いてあったけど?
シルク「そう、その時に面接をする訳や」
いや、その時って・・・・
涼太にとって疑問だらけであった。
シルクは小さな手帳を出し、眼鏡をかけてこう話した
シルク「そう、え~全世界から100人程その日に呼ばれ、面接を行い たった10名だけの合格」
いや、無理だよ。。。100人中の10名なんて。。。ただでさえ未だに無職なんでスから。。。
シルク「無理じゃない。自分の働きたいっちゅう気持ちを全面的に相手にぶつけたらええ」
しかし、どこの企業の面接??職種は?清掃業とか、エンジニアとか、、、
シルクは涼太の顔に近づきこう言った
シルク「営業職や」
い、いやぁ。。。営業職はすみません。。。
シルクはその場に座りこみ、ため息をつきながらジャケットから取り出したタバコに火をつける。
わぁちょっと、ここで吸うの? えっと空き缶、空き缶 ハイこれ灰皿
シルク「あのなぁ、涼太は変わるんや。自信を持て。そして自分のレベルを上げるんや。たった1回の人生や。少しでも人生に後悔しそうなら今変わるんや」
と言いながらシルクは空き缶にタバコを入れてそのまま窓から出て行った。
涼太はそのままシルクが出て行った窓を見つめ、思った。
今年の夏も去年ぐらい暑い。今年の夏も去年ぐらいセミが鳴く。
けど今年の夏は去年の夏と大きく違う