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1章 涼太

 これはまだ俺が何の目標も無くただただ時間を潰していたセミが鳴く暑い真夏の頃に始まった話である。今でも真夏にセミが鳴くがあの頃も同じセミが鳴いていたような気がする。セミの鳴き声を聞くと思い出す。


「こちらの番号札をお持ちになってパソコンをご利用下さい」

「あ、はい」

今日もすげぇ人だな。

よくもまぁこんな平日の朝からハローワークに来てるよなぁ

あ、俺もか。

受付の人も「またこの人来てるわ」とか思われてるだろうな。。

さて 俺の仕事、仕事


カチ、カチカチ

清掃業。。ん~、何か違うんだよね。

一応プリントアウトプリントアウト

カチ、カチカチ

不動産。。か。。何か厳しそう。まっ、これも一応プリントアウトプリントアウト

ん~次、次

カチカチ、カチ

営業職を探してみよう。うわ、いっぱいあるわぁ。

月給60万?? はいはい。。 

貰えるはず無い無い。。よくもまぁ嘘を記載できるよな。。

がっつりした営業職は難しそうだけど

こっちのルート営業という事なら。。何かいけそな気がするね。

お客さんは決まっていて、その決まったお客さんのところを訪ねていくだけ。。。か

ま、一応プリントアウトプリントアウト

プリントアウト出来る回数も決まってる事だし

よしっ今日の俺の仕事は終わりぃ

帰ってユーチューブでも見よっかな~


 涼太はハローワークを出て、真っ直ぐ最寄りの駅に向かい自宅へ帰る方面のホームで携帯ゲームをしながら電車を待つ。

あぁ。。暑い

 4つ先の自宅がある駅まではわずか12分。勿論その間も涼太は座席に座り携帯ゲームをする。

 自宅の最寄りの駅から徒歩10分。涼太は真っ直ぐ自宅へと帰る。 


「ただいま~」

 涼太の声を聞いた母が台所から小走りで玄関まで来る

母「涼太あんたそろそろ就職先決めてよ。もう就職活動に3年もかかってんのよ。

  あんた今年で30歳だし。もう、周りの子らは就職どころか家庭もってるわよ。分かってんの?」

うわ、ぐいぐい痛いとこ責めてくるよなぁ。。

「じゃ~ん、今日はこんなにプリントアウト出来ました~」

母「じゃ~んじゃ無いわよ。プリントアウトが仕事じゃないでしょ! で決まったの?面接先」

 涼太は肩を落とし元気の無い声で

「今から決めまぁ~す。」と言い、

 涼太はそのまま階段を上がり自分の部屋へと入っていった。

 階段下から涼太の背中を見つめながら母はため息をもらす。


さぁ~て、ユーチューブ見てから就職活動就職活動~

 涼太は背負っていた自分のリュックをベットの上に投げ捨て自分のパソコンの前へと急いだ


 涼太のここ数年の生活は、朝遅く起床し、リビングテーブルの上に置いてある母が作った料理をTVを見ながら朝食・昼食かねて食べる。

 食べ終わると新聞に挟んである求人チラシをゆっくり見た後、健康の為だと10分程飼い犬であるサスケと共に散歩に出る。

 14時頃に自宅を出て4つ先の駅にあるハローワークへと向かい、母がパートから帰ってくる17時頃に涼太も帰宅する。

 帰宅後は真っ直ぐ2階へ上がり、大好きなユーチューブをパソコンで見て夕食時には1階へ降り夕食と風呂を済ませ

 再び自分の部屋へと戻り、ハローワークから印刷した用紙や求人広告をサラッと拝見した後、再びパソコンを起動し、大好きなユーチューブと

 携帯ゲームを繰り返した後、夜中の2時頃に就寝する、それはまさに半引きこもりのような生活であった。

涼太が好むユーチューブとは、再生回数が少ないあまり誰も見ていないようなユーチューブを発見し自分だけが知っているといった気持をもって楽しむ事である。


母「涼太~ ご飯出来たわよ~」

うわ~。あと5回は見れるよこのユーチューブ  さっ飯ぃ飯ぃ~ 

「はぁ~い」


 夕食は母と涼太2人でTVを見ながら食べる。

 涼太が小学生3年生の頃に両親は離婚をし、母1人で涼太を育ててきた。

 涼太自身も母に離婚理由を聞かずに今に至る為、なぜ両親が離婚したとかは涼太自身も分からない。

 家計的にも涼太が無職になっている今、かなり厳しい状態である。そんな中、半年この状態が続いている事に

 母も頭を抱えていた。

 またこうしていつもの食事が始まる


母「あのさぁ涼太、今日母さんが働くパート先の部長さんがさぁ

  とりあえず就職先が見つかるまででも構わないからアルバイトでウチで働かないか?って言ってくれてるんだけど どう?」

「アルバイト?」

母「とりあえず就職先が見つかるまでの間よ」

 涼太は箸の両端先を口に挟んで考える

「じゃあ今週仕事が決まらなかったらそうするよ」

母「分かったわ」

 夕食を食べながら2人はTVを見る。

TV「私が当選したら、この国の消費税を無くし、この高齢化社会に輝く未来をお届けします

   ですので、あなたの一票!!あなたの一票をお願いします」

母「みんな最初はこう言うのよね。一度政治家になると最初の約束事はお忘れ

  会議してても居眠り。欠席。不倫、汚職何でもOK まぁ中には一部の偉いさんは責任が追及されるでしょうから気を張ってるでしょうけど

  その人らより下の政治家や名前も分からない政治家さんらは楽して金儲けね」

 涼太は箸の両端先口に挟んで考え、母にこう話す

「じゃあさぁ、有言実行制度にしちゃえば良いじゃん。」

母「有言実行制度?」

「そう。つまり、自分の決めた事を出来ると考えた時間内に出来なければ給料無し。と同時に次の目標をたて

 次の出来る事を頑張ってしていく。」

母「はははは。そりゃいいわね。出来ない政治家は給料無しか。その制度になると政治家を目指す人も減るかもねぇ~ そういやぁ今でもあるのかしらねぇ

  知り合いに政治家がいてれば何かと融通がきくっていうやつ」

 「はぁ?何それ。そんなのがあるの?顔がきくから有利に動くとか。有りえないよ」

母「そーね。昔の話よね」

 涼太は自分の食器を流し台に持っていき風呂へと向かった。

 浴槽につかりながら涼太は浴室の天井を眺め首に着けている長めのネックレスのトップの端を口に銜え考える

あ~、マジでそろそろ決めないとなぁ。さすがに母ちゃんの職場では周りの職場連中が白い目で見るだろうなぁ。。

俺。。何に向いてる仕事なのかなぁ。。何がしたいのだろうなぁ。。

 

 風呂から出た涼太はバスタオルを首にかけ髪の毛をドライヤーで乾かす事なく2階へ上がった。

ま、取り敢えずユーチューブだな

 涼太はいつも通りパソコンの電源を入れ、ユーチューブと急いだ

 ユーチューブの画面が出るまで髪の毛をタオルでガサガサっとふき取りながらパソコンの画面を見て涼太はビックリした

な、何だ??? こりゃ!!  は?

 そこにはいつものユーチューブのトップ画面の中に あなたへのおすすめ というところ全てが

 赤い画面でタイトルが リョウタ① になっていた。

 涼太はすぐにそこをクリック出来ずにいた。

ウ、ウイルスか。。??。。いや、けど俺の名前が。。

あ~。。どうしよう。。。

涼太は一瞬、戸惑った


今パソコンを消して次出てこなかったら一生後悔しそう。。

 涼太は勇気を振り絞りクリックした。


そして再生された。

赤い画面にTVのノイズのような画面が続く。。

・・・ザーザーザー ・・・

え?え?。。

 そして、ノイズ画面が30秒程経った画面に出てきたもは赤い画面に新聞の切り込んだ文字で一文字ずつ出てきた もちろんノイズ音も続く

ザーザー・・・ザザ・・・

 め・・ん・・せ・・つ・・・・・・・

 ・・・・び・・・・・・・・・・は・⑧・・・・・月・・・2   5・・・・・・日・・・・・・15・・・・・時・・・・

 ・・に・・・・・・東・・・・きょ・・・・・・・う・・・・駅・・・・き・・・・た・・で・ぐち・・・

 ・・・・到・・・着・・・・・・し・・・・た・・・・・・・・ら・・・・駅・・・・ま・・・・え・・・・・の

 ・公・・・・衆・・・・・電・・・・話・・・・・・ボッ・・・・クス・・・・・に・・・

 ・・・・・・・・・は・・・・い・・・・・・・・・・・れ・・・・・・・

 と文字が終わると再び赤い画面とノイズ音だけに戻り、しばらくしてユーチューブが終わると同時にパソコンの電源が落ちた。。

ちょ、ちょっと。。こ、これは何??

 涼太は電源が落ちた真っ暗なパソコン画面をしばらく見つめていた。

 バッと後ろのカレンダーを見た。

今日は23日。。あ、明後日だ。。

暑さのせいもあり額から顎にかけて汗がこぼれ落ちる

 涼太はすぐに机の上にあるメモ用紙に25日東京駅北出口15時に公衆電話ボクス と書いた

 そしてまだ髪の毛が乾かないままベットに入った。

 何てない毎日繰り返されてきた涼太の日常が一瞬でくつがえされた感情に満たされた涼太であった。

 その日涼太はパソコンを起動する事無くそのままいつもより早く眠った。


 

 



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