表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お人好しトリオ  作者: 山元周波数
名無しのラブレター編
8/12

第八話 朝早くに

 次の日、周五郎は朝早く学校に来ていた。時刻は6時30分。

 理由は、周五郎が真面目な性格で毎日朝早くに登校している……、という訳ではなく、ラブレターを入れる場面の可能性をまた検証するためである。





 朝早いため、辺りもまだほんのり暗く、静寂につつまれている。ほとんど人がいないぼろい校舎は寂しげに、風に吹かれながら立っていた。







 校門を通りすぎた周五郎は運動場を見てみる。朝練をしているのかと思ったが、誰もいない。


 小杉は朝7時に学校に登校しているわけだから、昨日やったようにST の後にやるか、朝早く学校に来て、ラブレターをいれるかのどちらかである筈だ。今日は後者の方を確かめるために朝早くねむーい中、周五郎は学校に来たわけだが……。


「おいおい、昇降口が開いてねぇぞ」

 まず校舎に入れないことに気づく。しかし、校門が開いていた訳だから教員か事務員がいるはずである。

 生徒用の入口である昇降口は3つある校舎のうち、真ん中の校舎にあるのだが、開いていなかった。

 教員用の入口や来客用玄関は北側の校舎にある。そこなら開いている筈だろう。

 北側の玄関に向かうと壁にAEDが掛かっていた。

 (こんなおんぼろ設備の学校でも、安全対策はバッチリなのかな) と周五郎は感心する。



「よし、開いてた。 これで校舎に入れるな」

 教員用入口はやはり開いていた。

 (後は真ん中の校舎に行けばオッケーだな)

 周五郎は得意気にふふ、と笑って静かな校舎を歩いていく。



 風が強く吹いて窓ガラスが震え、カタカタと音をたてている。

 無人の校舎には時折窓ガラスが揺れる音がするが、そのあとまた静寂が訪れる。


 周五郎は校舎同士を繋ぐ渡り廊下にやって来たのだが……。


「開いてない!?」

 渡り廊下にも鍵つき扉がついているのだが、鍵が掛かっている。

 これでは真ん中の校舎に行ってラブレターを入れることが出来ない。

 

 (朝早く来たってのは無理なのか? となると、やはりST の後にラブレターを入れたってのが濃厚だな) と周五郎が考えていると、突然後ろに気配を感じ、咄嗟に振り返って見ると……担任の藤下だった。


「周五郎じゃないか。 こんなに朝早くからどうした?」

「わぁぁ!! せ、センセーですか。驚かさないでくださいよ。

……たまたま早く起きたので来たんです。先生こそお早いですね」

「私は鍵を開ける係なんだよ。昇降口が開いてなかったんだろ? 開けてあげるからついてきなさい」


 確かに、見ると腰に鍵をたくさん掛けている。

 (しかし、鍵を開ける係ってことは、小杉がラブレターを見つけた日、つまり5日前のことも知ってるかもしれないな)



「先生、じゃあもしかして5日前に昇降口の鍵を開けたのは先生ですか?」

「5日前? ああ、そうだが、そんなこと聞いてどうする?」

 藤下が怪訝そうな顔をしている。 

 (さて、どこまで話すべきかな)

 彼の脳細胞が急速に動き始めた。


 この高校の教員達は、周五郎達がさまざまな依頼を解決していることを知っている。そのことに対する教員の反応はさまざまで、

「ただの高校生がそんなことをするんじゃない。そんなことをする暇があったら、勉学や部活動に励め」と言う人もいれば、

「人助けとはいい心がけだな。困った人がいれば、なにも言われなくても助ける。それこそが助け合いの精神だ。これからも頑張りなさい」 という人もいる。


 しかし、大抵の教員は前者で、見つけると注意をする。だが、先生たちも本心で言っている人は少なく、大抵はなにか問題が起きたときに

「教員はなにをやっていたんだ」とマスコミに叩かれても対応できる口実を作っておく、という訳である。


 藤下も前者に含まれる。生徒指導部でもあるわけだから、余計賛成はしないだろう。


 ここは適当なことを言っておくかと、周五郎は方針を決める。


「友達が言ってたんですよ。『5日前にたまたま早く起きたから、折角(せっかく)早めに学校に行ったのに開いてなかった』って」


「ふむ、そういうことか。確かに私が開けたぞ。確かその日は6時40分頃に開けたと思う。大抵先に渡り廊下を開けた後に、昇降口を開けているからな」


 (小杉がラブレターを見つけたのが朝7時なわけだから、その20分間に入れた可能性もあるにはあるが……、かなりきつそうだな。そんなギリギリなことをするよりST の後にやったほうが簡単だ。朝にやるメリットも無さそうだし) と周五郎は考えながらも、一切そんな素振りは見せずに、


「その時間帯に生徒は見かけましたか?」

「音楽部の子達は見かけたが、それ以外は見てないな」


 (なるほど。ラブレターを入れたのが音楽部の場合なら、朝に入れた可能性も捨てきれないな)


「いろいろ教えていただき、ありがとうございました」

「構わないさ。だが、探偵ゴッコもほどほどにしろよ」

 はっと藤下を見ると、ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべていた。どうやら藤下は、周五郎が依頼を受けて動いていたことを気づいていたようだ。


「ええと……、いつから気づいていたんですか?」 


 藤下は先程までとは違って、人のよさそうな笑みで答えた。

「最初からだよ。まず、部活動に所属していない人間が来る時間じゃない。しかも、私が鍵を開ける係だと言えば、直ぐに食いついてきた。5日前がどうだったかなんて、普通に暮らしている人間は聞かないさ。5日前に何らかの事柄が起きて、誰かがお前たちに依頼し、そして今それを調べているといったところか? その程度、少し考えればわかるさ」


 周五郎はうう、と唸って、

「先生、このことは……」

「わかってるさ。他の先生方には言わないでおこう。だが、周五郎、本当にほどほどにしておけよ?」

「わかってますよ」 と周五郎は頬を膨らませる。


「その顔はわかってなさそうだがな。まあいい。ほら、開けたぞ」


 気づくと昇降口に着いていた。藤下が鍵を開けたところだ。 周五郎が藤下の顔を見ると、やれやれといった感じでこちらを見ている。


「ありがとうございます」

 周五郎は藤下に深くお辞儀をして、教室に向かう。いろいろあったが、後はミッツーと詩織の報告を聞くだけだな、とぼんやり考える。


 ところで……。

 (早くきたから誰もいない。

暇だ、暇すぎるぅぅぅぅぅぅぅぅゥゥゥ。)

 意外と落ち着きがない周五郎であった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ