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お人好しトリオ  作者: 山元周波数
名無しのラブレター編
6/12

第六話 性格診断

 考え事をすると何か食べ物を食べたい周五郎はケーキ屋にやって来た。

 店の店内はおしゃれな感じの内装で、さっきまでボロ校舎にいた周五郎は、どこかおとぎの国に来てしまったのかと一瞬錯覚してしまう。

「いらっしゃいませー」

 若い感じの女性の店員さんが、営業スマイルをキラキラと顔に張り付けて迎えてくれる。

「ええと、ショートケーキと紅茶をお願いします」

「こちらでお食べになりますか?」

「はい、そうです」

 

 注文を終えた周五郎は空いている席に座った。店内には、他に会話に花を咲かせているオバサンが何人もいた。周五郎はケーキがくるまでのんびりとするつもりだ。


 余談だがO市は平成23年11月1日に日本紅茶協会より「おいしい紅茶の店」店舗数日本一として、認定された。

 しかし、O市に住んでいる人間、ほとんどこの事を知らない。

 周五郎もこの事を知ったのはつい最近のことだ。

 いやいやいや、別に他になにか凄いところが無いわけじゃないからね。全然田舎じゃないんだからね、と一人でぶつぶつ言う周五郎。

 店員さんが冷たい視線を投げ掛けているが、彼は気づいていない。知らぬが仏である。ちなみに冷たい視線で見ている店員さんは、最初に彼を笑顔で迎えた店員さんである。

 

 まあ、でも確かに紅茶を凝ってる店は結構あるかもしれないな、と周五郎はまだ一人でぶつぶつ言っている。


 

 そして、O市はいちじくが特産品らしい。

周五郎は小学校の時に、いちじくジャムを作ったのを覚えている。

 この店でも、いちじくタルトとショートケーキで迷ったんだよ。だけど、今日はシンプルなのがいいかなーと思って、とさらに一人でぶつぶつ喋っている。



 店員さんからケーキを受け取った周五郎は、紅茶を飲みながらメモ帳と携帯を取りだし、小杉のラブレター画像を見る。

 

 かなり字が綺麗である。

 多分習字経験者だな、と彼は感じる。

 字をよく見ると短い横線を僅かだが右斜め上に書いているのが分かる。字をきれいに書くポイントの一つに、長い線は長く、短い線は短く書く、というのがある。

 同じ長さの線分でも、普通に横に書くのより右斜め上に書く方が横幅が短くなるため、このようなことをするのである。メモ帳に「習字経験者」と書き込む。

 思い付いたことはメモしないと忘れちゃうんだよね、とぶつぶつ呟いている。冷たい視線で見ていた店員さんも諦めたのか、奥に入っていってしまった。


 (最後の○が気になるな)

何か意味でもあるのか、とすこし考えてみるがさっぱりわからない。

「○、意味不明」と書き込む。


 次に周五郎は文章の感じを確かめ始めた。。

 (ちゃんと丁寧な言葉づかいをしているから、真面目、几帳面って感じを受けるな)

でも、几帳面なら名前は忘れないか、と周五郎は思い直す。

 結構ドジ屋さんだな。

「真面目、几帳面、でもちょっとドジ屋さん」とメモ帳に書き込む。


 (ラブレターの紙はごく普通の便箋だな。やはり真面目なイメージを受ける。手紙を使ってるあたり、俺と同じでチキン) なぜかすごく親近感がわく周五郎。

 

 (面と向かっては恥ずかしくて言えないから手紙にしようって感じか? うーん、今ならメールとかラインもあるけど、手紙の方が伝わりやすいのか。 字を見るとなんとなくその人の雰囲気が伝わってくる気がするしな。そこまで考えてるなら頭も切れる)

「恥ずかしがりや、頭は切れる」と書き込む。


 そして、もう一つ。小杉は気になることを言っていた。封筒に付いていた糊が弱かった、と。

 これもやはり、書き手がドジだからであろうか。


 周五郎は小さくため息をついた。


 (手紙を読んで分かるのはこの程度かな。我ながらあまり役に立ちそうもない分析かもしれないけど。後はミッツーと詩織の報告を待つとしかない)

 周五郎はひとり気難しそうに頷いたあと、またケーキをむしゃむしゃと幸せそうに食べ始めた。






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