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お人好しトリオ  作者: 山元周波数
名無しのラブレター編
5/12

第五話 高校生の流行り

 推理通りにできるかどうか、試すことにした周五郎。


「よし、もう大丈夫かな?」

 周五郎は辺りに人がいないのを確認して、トイレから出る。


 この高校は東西に細長い校舎が3つ、縦、つまり南北に並んでいる。そして、3つの校舎はともに東側の渡り廊下で繋がっている。真上から見るとアルファベットの「E 」を左右逆にした形である。


 周五郎たち一年のいる校舎は南側の校舎で、クラスは二階又は三階、そして靴箱は真ん中の校舎の二階にある。なので靴箱へは渡り廊下を通らなくてはいけない。


「どの渡り廊下を通ろうか」

 というのも、二階渡り廊下はきちんと壁と窓ガラスがある。

逆に三階渡り廊下は簡素な作りで壁は胸のあたりまでしかなく、吹き抜けなつくりだ。


 (三階渡り廊下の場合、外の部活の連中から見られる可能性が高いか? まず、二階渡り廊下を通ってみるか)

 ちなみに、周五郎のクラスである1年A組は三階にある。



 グラウンドからは運動部の威勢のいい声が聞こえ、音楽室の方からはさまざまな楽器の美しい音色が聞こえてくる。


「みんな頑張ってんだな」


 何となく呟いた自分に、周五郎はすこし驚いた。

 面倒だと思って部活動に入らなかった自分が、そんなことを言うなんて、とやや自嘲気味に笑いながら廊下を歩いていく。







 二階の渡り廊下に来てみたが、これは失敗かなと周五郎は思う。

 理由は案外教員が通ること。周五郎たちが帰った後、クラスの戸締まりなどの点検をしているみたいである。

 それに、よく考えてみると教員は二階渡り廊下を使う人が多いことに周五郎は気づく。 理由は簡単で、三階渡り廊下だと、雨が斜めに降ってるときに濡れていて危ないからだ。二階渡り廊下ならちゃんとした壁があるから、濡れが多少あっても三階ほどではないだろう。

 ということで周五郎は階段を上り、三階渡り廊下に行ってみることにする。


「ふつーに歩いていると外の部活の人間からは一応見えるかな。でも、すこし距離があるし、しゃがんで歩けば、ばれることはないか。まあしゃがんで歩いている所を見られたら、かなり不審がられるだろうけど」


 多分使ったのは三階渡り廊下かな、と彼は思う。

 (部活の連中も練習で、校舎なんか見てないだろうし)

 そう思いながら、靴箱へ向かう周五郎。靴箱は金属でできていて、茶色の錆が目立つ。そんな古い靴箱はクラスごとに分けられていて、出席番号順で並んでいる。靴箱には番号しか書いてないから、番号を知らないと順番に開けていかないといけない。

 もちろん、用意周到な周五郎はちゃんと小杉の番号も調べてある。座席表に載っていた。15番である。


「あった、ここだな」

 小杉の靴箱はすぐに見つかった。一応三階渡り廊下を通れば誰にも見つからずにラブレターを入れれるわけだ。

「あとは開けて入れれば終了……、ってあれ?」

 開けてみると小杉の靴箱にはスリッパが入っていた。それはいいのだがスリッパに書いてある名前が……。


小谷川美空(こたにがわみそら)だと?」

 確か小谷川はバレー部所属で、チャラチャラした軽薄な女だ。小杉とは正反対と言ってもいい人間だが、なぜか仲がいい。

 おかっぱ頭の髪型なのだが、これが以外と似合ってるやつだ。顔立ちもいい。

 彼女はいつもクラスの男子と楽しそうに喋っていてる。周五郎も何度か話したことがあるが、どこか彼女の笑みが男に媚びる雰囲気を漂わせていて、あまり得意なタイプではない。

 

 周五郎は何か考える素振りを見せたあと、ぼそりと呟いた。

「なるほど、そういうことか……、だが、いや。これは事件に関係ないだろう」

 

 (さて、仕事も終わったことだし、久々にケーキ屋でも行くかな!) 

 彼は顔をにやつかせながら昇降口を出た。


 周五郎は帰宅部である。三川や詩織が部活を誘ったことがあったが、彼いわく「部活? そんなめんどくさいもん何で入らないかんのだ? 俺は自由を束縛されるのが嫌なんだ」と断っていた。


 周五郎の言うケーキ屋は学校から歩いて10分ほどの場所にある。名前は「ハンプティダンプティ」だ。

 このケーキ屋、実は「ぐっさん家」でも特集されたことがある。

 そのときはO市を唯一走る電車でもある、名鉄瀬戸線を使ったロケだったみたいで、その途中で「ぐっさん」とゲストの「はいだしょうこ」が立ち寄った店である。

 この「ハンプティダンプティ」はおしゃれなケーキが多く、フルーツをまるごと使ったりといろいろな工夫をしている。

 ただ、O市という田舎にある店にしてはすこし高く、大抵500円台はする。

 店の中にはテーブルと椅子が置いてあり、買ったものをそのまま食べることもできる。

 周五郎は何かを考えるときに、なにかを食べることが多く、このケーキ屋はよく通う店の一つである。


「ぐふふ、今日は何のケーキ食べようかなー」

と本当にスキップしながら、学校を出る周五郎であった。

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