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繰り返しますが都合のいい終わり方です。



 転送される直前、リュウヤは少年の声を聞いた。

 そしてその声はこういった。

「君を僕のような目に合わさせはしない」













 気づくとリュウヤは、とある住宅街の道路に立っていた。

 帰ってきた。

 そう気づくまでしばらくの時間がかかった。

 服装も、時間も召喚された日と同じだった。

 なんだか、夢を見ていたみたいだと思ってしまいそうになるが、魔王とキスした感覚はリュウヤのなかに強烈に残っている。

「結局、あいつの名前わからなかったな」

 そう声に出すと、なぜだか急に涙が溢れてきた。

 涙が枯れるとよく言うが、この涙は枯れそうにないなとリュウヤは思った。

 その時、リュウヤの後ろから声がかかった。

「あの、どうしました?」

 若い女性の声だった。

 今更ながらに、道路で立って泣いてたら驚かれるよなと思いながら後ろを向いてリュウヤは我が目を疑った。

「ああ、すいません。なんでも――」

 リュウヤはそこから言葉を続けることが出来なかった。

 そこには、黒髪のショートカットの魔王そっくりな女性がいたからだ。

「どうかしましたか?」

 しばらく固まったリュウヤだったが、浮かんできた甘い考えを頭を振って否定した。

 だが流れてくる涙はどうしようもなかった。

「すいません。余りにも友人に似ていたので」

 他人の空似だ。

 そう思ってその場を立ち去ろうとしたリュウヤだったが、少女の言葉に固まった。

「ふふふ、リュウヤって案外泣き虫なんだね」

「え…………」


「わたしだよわたし」

「どうして……」

「なんだその言い方。まるでわたしが生きていちゃいけないみたいじゃないか」

 そう少女は少し怒ったようにいった。

「だってさっき君は僕のために」

「そのはずなんだけどね。なにが起こったのやら」

 そう言って少女は肩をすくめた。

「さっき君と別れを済ませたばかりなのにね。なんか恥ずかしいよ」

「そんなことはいいじゃないか。俺は君が生きてくれてくれただけでいい」

 リュウヤは転送直前に聞いたあの声がなにか関係していると思ったが、深く考えるのはやめた。

 とりあえず彼女が生きている。

 その事実さえあればよかった。

「そういえば、君の名前を教えてくれ。最後、聞き取れなかったんだ」

「わたしの名前? わたしの名前は   だよ」

 少女はそういって、満面に笑みをたたえた。

 リュウヤはその名前を忘れないように、何度も口のなかで反芻した。

 二度と君の手は離さない。

 そう心に決めながら。










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