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没落令嬢の雇われ悪女な日々 〜私に「俺をダメ男にしてくれ!」と言った公爵家御曹司様には破滅したい事情があるらしい?〜  作者: 藍野ナナカ
第1部

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37 威力


 私たちの母ロザリアはとても美しい。

 もうすぐ十七歳になる娘がいるなんて誰も思いつかないくらいに若く見えるし、その美貌にどんな表情を浮かべれば最も効果的かを熟知している。

 そんな母を見て育ったから、私は顔のいい人たちには耐性がある。どんな美男美女を見ても、顔の良さだけでは動じない。

 でも普通の人はそうでもないんだなと、しみじみと実感した。


 今、私がいるのはパフデール侯爵様のお屋敷。

 贅を尽くした、でも統一感があるためにスッキリして見える部屋にて、優雅なお茶会の真っ最中である。

 お茶会に招かれているのは、私たちの他は十人前後。

 簡単に数えられる程度の人数しかいないのに、はっきりと人数を言えないのは、私たちが入室した途端に、何人かが倒れて運ばれていったからだ。


 そう、見事にばったり倒れた。

 ――たぶん、というか間違いなく私たちを見て。予想していなかったから、ものすごく驚いてしまった。


「さすがレディ・ロザリアの子供たちだ。二人揃うと威力がすごいなぁ!」

「……威力ってなんですか?」


 礼儀として大笑いを必死で抑えてしているらしい御曹司に聞いてみる。

 御曹司はさらりと髪をかきあげた。

 もう十分に笑いすぎて乱れた髪型が、それだけですっきり見栄えよくなるなんて意味がわからない。これだから顔が良すぎる男は腹が立つのだ。

 八つ当たり気味に不貞腐れる私に、御曹司はちらりと周りを見てから囁いた。


「君たちはレディ・ロザリアと同じ顔だからね。それでいて方向性が全く違う。君はレディ・ロザリアと同じ悪女系だし、テレンス君は……そうだ、氷の美少年だな!」

「あら、素敵な表現ね。でもすぐに氷の美青年になってしまうから、氷の貴公子がいいわよ?」

「ふむ、そちらの方がテレンス君らしい呼び名かもしれませんね。さすが侯爵夫人!」

「…………似合わない呼び名をつけられても困りますよ」


 テレンスはため息をついた。

 でも、別に似合わないことはないと思う。

 透き通るような銀髪も、薄い水色の目も、父と同じ色合いなのに印象がまるで違う。母似の顔立ちと組み合わされたせいだろうか。

 私は見慣れているし、いつも地味で平凡な服を着ているから気が付いていなかったけれど、もしかしてテレンスは傾国の美少年なのでは……?


「そうか、さすがテレンスね!」

「他人事のように言ってるけど、君もだよ? 二人が一緒にいるから、相乗効果でとんでもない威力になっているんだ。レディ・ロザリアである程度免疫ができているから、君一人ならそこまで脅威にならないんだけどね。……レディ・ロザリアはいつも君ばかりを連れまわってテレンス君を表に出さなかったけど、その理由がわかる気がする。あの顔は危険だな」


 ……それを、あなたが言うんですか?

 私たち姉弟が目立つのは否定しないけれど、御曹司も一緒にいるから、さらに目立つし失神する女性が出てしまったのだと思う。


「なんだか、とても印象的なお茶会になってしまいましたわね。気を取り直して末の息子を紹介しましょう。ケイレス、テレンス君を席に案内してあげて。女性ばかりだと気後れするのよね?」

「やっと覚えてくれましたか、母さん。テレンス君はこっちへおいでよ。女性たちの話は取り留めがなくて辛かったんだ。せっかくだし、これから抜け出して釣りでもする?」

「え? さすがにそれは……できれば絵を見たいのですが」

「いいよ。化粧臭い部屋から逃げられるなら何でもいい! あと、敬語はなしだよ!」


 ケイレス様は同じ年頃の仲間ができて嬉しいのか、すぐに外へとテレンスを連れて行ってしまった。

 なかなかに強引だ。

 でも侯爵家のお坊ちゃんらしく、どこかのんびりした気の良さも垣間見えた。


「あらあら、二人に逃げられてしまったみたい。あの年頃の男の子は堪え性がないわね。皆様、ごめんなさいね」

「仕方がありませんわよ。ケイレスさんと仲良くなれば、あのきれいな貴公子さんともまたお会いできますでしょう? ……ところで」


 侯爵夫人と同じくらいの年齢の女性が、こほんと咳払いをして私を見た。


「お若い貴公子もそうでしたが、そちらのご令嬢は、その……知っている方にそっくりで驚いてしまいましたわ」


 その言葉を聞いて、私ははっと気を引き締めた。

 テレンスの美貌の威力に感心している場合ではなかった。

 これは私の「仕事」だ。

 今日の仕事内容は……あれ? オディーランス公爵家の御曹司を派手に振った女は、こういうお茶会でどんな顔をすればいいの?

 密かに慌てていると、御曹司が流れるような動きで私を椅子に座らせ、その後ろに立って笑顔で見回した。


「俺の自己紹介は不要な方ばかりなので、省略させてもらいますよ。こちらの令嬢を紹介させてください。今、俺が必死に追いかけているヴィオラ・ロレーダン嬢です。頼み込んで一緒に来てもらいました」

「まあ、やっぱり噂の……いえ、失礼。おきれいな方ね!」

「ダーツの名手でもあります」


 御曹司はニコニコと答える。

 令嬢らしくない私の噂を聞いているとしても、この笑顔の前では何も言えないだろう。

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