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platonic a  作者: いづくにか
friendship
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5

最近やけに疲れる気がする...

トレーニングの負荷を大幅に増やしたわけでもないし、睡眠時間もちゃんと確保している。

もしかしたらなにか病気になってしまったのか!?

あとでケイに診てもらわなくては。


今日の試合はすでに終わったし時間を潰すために軽くランニングをしよう。

チームのトレーニングルームに入ると、なんとなくそれまでと空気が変わった気がした。ボクは嫌われているから同じ空間にいるのが気まずいのだろう。

嫌われているのはもちろん悲しいが、もう慣れてしまった。


どこにいってもこうなるのだ。はじめのほうこそみんな仲良くしてくれるが、いつの間にかボクの悪い噂が流れ出して1人また1人と離れていく。

印象がなるべくよくなるように笑顔の練習をしたり雑用を積極的に引き受けたりしていたが、そもそも噂が事実無根なのだ。ボクが後輩を脅していたり、暴力を振るっていたり全く身に覚えのない噂のせいで遠巻きにされているのだから自分の行動に気をつけても意味がない。

せめてボクに期待してくれているファンのために勝たないと。常にベストなコンディションを保つために食事もトレーニングも徹底的に管理して、1日だって気を抜いたことはない。

その甲斐あってか大手チームであるビッグバンにも入れたし昨年のタイトルも獲得した。

だけど頑張れば頑張るほど、上り詰めるほどにボクの周りからは人が消えていった。


よくない考えを振り払うようにランニングマシンの速度を上げる。

約束の15時までそこまで時間もないから、多少の負荷なら問題ない。軽く息がつらい程度に短時間走るのが好みだ。余計なことを考えなくて済む。



ある程度走った頃に時計を確認すれば約束の時間が迫っていた。

シャワーで軽く汗を流し、宿舎内の面談室に向かう。


高そうなスーツを着た男女がちょうど宿舎からでてきたところに鉢合わせてしまった。どこかのスポンサーだろうか。もしボクのアンチであれば下手に関わればチームに迷惑がかかる。

軽く会釈して通り過ぎようと思っていたのだが女性のほうが声をかけてきた。

「あっ、シラー選手ですよね!さきほどの試合すっごくよかったです!」

どうやらアンチではなかったらしい。今やボクの悪い噂は外部にまで広がっているようだからファンの存在はすごくうれしい。

気の利いた返事がしたいのだが、いざとなるとなにも言えない。なんとかありがとうと言うので精一杯だった。

口下手な自分が嫌になる。



部屋に入るとすでにケイが待っていた。

「お疲れ。今日の試合もよかったよ」

彼はボクがかけだしの頃から支えてくれている個人マネージャーだ。ボク1人ではここまで来れなかっただろう。医者としての安定した生活を捨ててまでボクに賭けてくれたのだ。ボクは彼のためにも勝ち続けなければならない。

「ありがとう。でも異能者でもなかったしあのレベルなら勝てて当然じゃないか?」

「おいおい、俺以外には言うなよ。相手へのリスペクトがない発言は炎上するんだからな」

苦笑しながら注意された。そんなつもりはなかったのだが...気をつけないといけない。

「すまない。気をつける」

「まあ言い方はともかく事実ではあるからな。シラーなら相手が異能者以外ならそこまで心配はしてないしな」

でだ、と続ける。

「さっそく今後の予定なんだが、1ヶ月後のでかいチーム対抗まで試合はセーブ気味だからコンディションを仕上げる感じでいいか?」

「ああ、ケイに任せる。それと最近体が重い感じがするんだ。診てくれないか?」

「もちろんだ。なにか思い当たる原因とかあるか?具体的に痛い箇所とかもあったら教えてくれるか?」

そう言われても特に思い当たるものはない。

「わからない。痛いわけじゃなくて疲れがとれないんだ。なにかの病気だろうか?」

「なるほどな。とりあえず診てみるか」


その後ケイがいろいろ触ったり血を抜いたりして検査してくれたが特に悪いところはないそうだ。

どこも悪いところがないのはいいが、それでもたしかに最近疲れるのだ。

「まあ最近追い込み気味ではあったからな。とりあえず1週間ほど強度落として回復期間にしてみるのはどうだ?」

「それで頼む」

「じゃあそんな感じでメニュー組んどくぞ。なんかあったらすぐ言えよな」

ケイは医療の知識も豊富で、もちろんマネージャーとしてもボクなんかにはもったいないくらい優秀だ。ボクもケイのために勝ち続けないと。

今後の計画も決まったことだし部屋から出ようと扉に手をかけると珍しくケイが呼び止めてきた。

「シラー。なんか困ったことあったらなんでも言ってくれよ?おまえはため込みすぎるからな」

「すでに頼らせてもらっている。ありがとう」

扉のしまり際に遠慮するなよ、と言ったのが聞こえた。彼はすばらしいマネージャーだ。でもあまり迷惑をかけたくはない。彼に愛想をつかされるわけにはいかない。


手持ち無沙汰になり自分の部屋に戻った。いつもなら自主トレをするのだが、ケイにメニュー以上のトレーニングを禁止されてしまった。

部屋にも特になにかがあるわけではない。趣味があるわけでもない。

あらためて自分には試合しかないのだと自覚させられる。勝ち続けるしかないのだ。戦えないボクに価値はない。


そういえばケイが来月の対抗戦の資料を送ってくれていたなと思い出しタブレット端末を開く。

対抗戦は好きではない。5回の個人戦と2回のタッグ戦の合計7戦をするというものだが、ボクと組むようなやつはいないから個人戦にしか出たことがない。

チームルームも気まずいし通常の試合のほうが圧倒的に楽だ。それでもチームに指名された以上出るしかない。


画面をスクロールするとこちらのチームメンバーに変更があるのに気づいた。

たしかテオドールが出ると聞いていた気がするのだがマルクというやつに変わっていた。テオドールは正義感の強いやつでボクにも邪険な態度をとらないから比較的楽だったのだがまあ仕方ない。そこまで強いイメージもないので変更があったのだろう。

今回の相手はビッグバンと同じくらいの規模のチーム、ブルースカイだ。相手も粒ぞろいの選手ばかりだ。互いに対抗意識もある。

親善試合というより勝ちにいく試合といった感じだ。そういえば最近チームがこれを意識していた気もする。


あまり乗り気にならないとはいえ手を抜くわけにはいかない。相手のメンバーも確認すると戦ったことのある選手がちらほらいた。

カート・ミラーという名前に目がとまる。彼とは戦ったことがある。

勝てなかった。

異能も強力で本人のスペックも高い選手だった。

個人戦の欄に名前があるからボクとあたる可能性もある。二度負けるわけにはいかないのだ。

無意識に拳を握っていたことに気づいた。

...今は自主トレは禁止だ。ケイに迷惑がかかる。

トレーニングできないことがここまで苦しいとは...


ため息が出た。








ここまで読んでくださってありがとうございました

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