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platonic a  作者: いづくにか
friendship
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どうしたらあなたの悲しみを取り除いてあげられるだろうか。どうしたらあなたの涙を止めてあげられるだろうか。少しでもあなたの背負っているものをわけてもらえたら。なんでもいいから、あなたのために僕になにができるだろうか。

ただ生きてくれているのだけでいいのだと、ただ笑顔でいてくれるだけで、そのためなら僕はなんでもするのだと。言葉にするための口が動かない。頬を流れる涙を拭うための手が動かない。そんな情けない自身への怒りさえ湧かない。

彼女のくれるぬくもりと浮かぶような心地よさしか感じないことが恐ろしい。

次第に一抹の自己嫌悪すら霧散する。彼女の涙を感じながらも僕はただ包まれるような安心感に堕ちていった。









規則的に鳴るアラームの音で目がさめた。ベッドから起き上がり大きく伸びをする。たまにある、よく眠れたという感覚だ。こんな朝から始まると1日なんとなくいい気分だ。

初出勤の日とは思えないほど、すっきりとした目覚めだ。

顔を洗い新品のスーツに腕を通せば、鏡に映る自分の姿はなんとなく凜々しく見えるような気がする。


いつもより少し早く起きたため時間には余裕があるのだが、ゆっくりと朝食をとる気分にもなれずなんとはなしに浮き足立ち家を出た。春先とはいえ早朝はまだ幾分肌寒い。新調したばかりのスーツの肌触りはまだ慣れない。朝早いこともあり、通りを歩く人はまばらだ。ここにきてそぞろに緊張してしまい深く息を吸いこむと思いのほか冷たい空気にむせかけた。





地下鉄駅から出て少しばかり歩いた距離に警察局はある。もちろん初めて見るわけでもないのだが、これからの職場としてあらためて見ると印象は大分変わるものだ。中央政府庁と権力を二分するといわれるだけはある広大な土地に見上げんばかりにそれはそびえ立っている。かのドミナント部隊が前身といえばもう少し軍事基地のようなものが予想されるだろうが、どちらかといえば都市中央部に乱立しているビジネスビルのような様相だ。


ここで1つの問題がある。

そう、早く来すぎてしまっているのだ。もちろん警察局なのだから人の出入りはちらほらあるのだが配属されたばかりの新人がずかずかと入っていくのはためらわれる。

かくして早朝に警察局の前を行ったり来たりする自首間際の犯罪者まがいの不審者のできあがりである。それもこれも計画性もなく気分にまかせて家を出たところからはじまった身から出た錆である。


幸運にもというべきか不運にもというべきか僕はあの後道行く人々にいぶかしげな目で見られることはありつつも通報や事情聴取などに遭うことはなく、30分ほどは警察局の前をうろつき続けることになった。

指定された時間の15分前になってようやくなけなしの勇気を振り絞った僕が受付の女性に話しかけると、受付前で少し待つように言われた。女性はそこはかとなく僕のことをかわいそうなものを見るような目でみていた気がする。この女性にもさきほどの僕の不審者ムーブが目撃されていたのかと思うとなんともやるせない気分だ。


しばらく待っていると、どうにも周囲の様子がおかしい。急にざわざわとしだしたというか……みんな1点を見つめて、いったい何だというのだろうか。そちらに目を向ければ、この人気アイドルの出待ちさながらの喧噪の原因がわかった。

天使が歩いてくる...

地上の天使―――レネ・ジアは今日も今日とて輝かんばかりのオーラをまとい、こちらに歩いてきた。

「ヒラギくん!おはよう!昨日はよく眠れた?」

挨拶を返すと前置きもそこそこに、とりあえずついてきてと歩き出す彼女に続く。周囲にはやはりというべきか奇異の目で見られているのを感じた。


「入り口前でうろうろしてたんだってね?呼んでくれたら迎えに行ったのに」

彼女はからからと笑った。

「すみません、実は早く着きすぎてしまって...他の新配属の方々が来るのを待っていたほうがいいのかなと思いまして...」

「他部署の配属は再来週だよ、言ってなかった?」

衝撃の事実である。

「えっ、もしかして今日配属の新人って僕だけだったりします?」

ハハハまさかと聞けば

「そうだよ、もしかしてこれも言ってなかった?ごめんね!」

そう言いながらも彼女はすたすたと前へ進んでいく。


しばらく彼女について行くとかなり奥まったところにあるエレベーターについた。

「今からいくところはこのエレベーターじゃないと行けないから、他のに乗らないように気をつけてね」

やや不規則に配置された中から6sのボタンが押されるとエレベーターは尋常ではない初速で動き出した。


エレベーターが目的の階につくと音もなく静かに扉が開く。壁に手をついて衝撃に備えていたが、最初と違いやたらスムーズに止まるものだからあっけにとられてしまった。

「あ、このエレベーターこんな感じなんだよね。言い忘れてたよ」

ごめんごめんと笑いながらもレネは慣れているのだろう。何事もなかったように平然と歩き出した。


やや不気味と思えるほどに静かな廊下を少し歩けば「対神跡特殊捜査課」とある部屋の前で彼女は足を止めた。

「ここは警察局内でも独立した組織なんだ。対神跡特殊捜査課、ヒラギくんの配属先ね。」

そう言って彼女は扉を開けた。



白い。扉を開けて真っ先に浮かんだ感想だった。淡く灯った青白いフットライトのみを頼りに歩かねばならなかった廊下とは対照的に、白を基調としたこぎれいに整頓された部屋だった。

「おはよう!ヒラギくん連れてきたよー!」

急な明るさに慣れずいまだ目をしばたいていると入り口近くに座っていた女性が立ち上がって右手を額に掲げ敬礼した。

「おはようございます局長!その子が新しい子ですか?」

「そうそう、今日からうちに来てくれるヒラギくん。ヒラギくん、この子はリファちゃん」

リファと紹介された女性は一度下ろしていた腕を挙げ再び敬礼しながら口を開いた。

「対神跡特殊捜査課のリファ・アリウです!これからよろしくお願いします!」

「本日より配属されました、ヒラギ・ドーンです。よろしくお願いいたします!」

見よう見まねの敬礼をしながら挨拶をかえす。

「おおー!なんか新鮮って感じですね!フレッシュです!」

捜査の特殊性やこの部屋までの道のりの非日常性などから、どれほど癖の強い人たちがいるのだろうと思っていたが彼女はそんな人物像にはあてはまらないようだ。人なつっこい笑顔と左に垂らしたサイドテールは警察関係者というより1階に入っているカフェの店員と言われた方がしっくりくる。高そうなスーツとビシィッと音が聞こえてきそうなほどの敬礼とのアンバランスさを感じてしまった。


「ユーゼンは今いないみたいだね。ヒラギくん、この部署にはもう一人いるんだけどそのうち来ると思うから仲良くしてね」

どうやらこの部署は僕以外あと2人だけらしい。もちろん事前に聞いていない。さすがに少し慣れてはきたがそれでも驚きである。

そうこうしているうちに、リファちゃんいろいろお願いね!と言い残してレネは去って行った。ほんとにあの人案内してくれただけだったんだ...

「...独特ですよねー、でもでも!すっごくいい人なんですよ!」

あっけにとられたのが顔にでていたのか、なんとも言えない空気を変えるようにフォローが入る。

「あらためてリファ・アリウです!もう一人いるんですけどそんなに怖い人じゃないですから!働きやすい職場です!」

デスクはここですよー、と彼女の隣に案内される。

これまた白いデスクに白い椅子だ。ノートパソコンまで白。すさまじい。

「真っ白ですね」

「黒いのもありますよ!そっちの方がいいですか?」

「いえ、白いので大丈夫です..」

どうやら彼女もこの部屋に劣らず変わった人のようだ...僕はここでやっていけるのだろうか...


「棚とかハンドガンとかほしいものがあれば申請するので言ってくださいね!」

ハンドガンと聞くとようやく警察っぽいものが出てきた。

「制服とかも申請してからなんですか?」

「んー、できますけどスーツのほうがいいと思いますよ。こっちのほうがいろいろ便利ですし...あっ、ヒラギくんも仕立てましょう!いいとこ紹介しますよ!」

どうやら今着ているものはいいものとは判定されなかったらしい。就職祝いに仕立てた立派な(個人の意見です)スーツだと思い、初配属に心躍らせながら何度か袖を通していたのだが...ちなみに僕の貯金額的に決して安くはなくなかなかに気合いの入った金額であった(僕のなけなしの名誉のため一応明言しておく)


受け取った名刺は「abnormal white」という仕立屋であった。まさにこの部屋のことである。もはやここまで来るとなんらかの執念を感じる。

「ユーゼン・スタンの紹介って言えばいい感じにしてくれますよ!ちなみに経費で落ちます」

心配しないでください!と言ってくれる彼女は悪い人ではないのだろうが、変わった人だとは思う。

「いろいろ申請できますけど、うちの部署は絶対必要なものとかはないですねー。清潔な身なりを意識しておく、くらいですかね?あっ、お酒とたばこはこの部屋だめです!」

ユーゼンがうるさいんですよね、とぼやきながら、パソコン上の備品申請のファイルをスクロールしながら見せてくれた。



一通り見終わると、ちょっと待っててください!と隣の部屋に行ってしまった。

抱えて戻ってきたアタッシュケースを開けるとカードキーと携帯端末であった。

「携帯はカードキーとしても使えるのでこれだけは持っててくださいね!忘れるとユーゼンに怒られます」

たびたび話に出てくるが僕としてはユーゼンさんのほうが常識人なのではないかと思う。

聞くところによるとこの部屋をデザインしたのはユーゼンさんらしい。常識人...ではないかもしれない。...僕はここで本当にやっていけるのだろうか。


「仕事内容とかって局長から聞いてたりします?」

「神跡関係の事件を担当しているとだけ聞いてます」

「そうですね!主に神跡が関係してることの調査が主ですね!そのほかにも局長から調べてきてって言われたこととかですかね。ここは局長直下なので。あっ、コーヒー飲めます?」

乳首を模したような蓋のついた容器を吸いながら、部屋の隅で幅をきかせる巨大なコーヒーメーカーをがちゃがちゃと動かす。ちなみにコーヒーメーカーも真っ白である。

「まあまあ、徐々に慣れていけば大丈夫ですよ!とりあえず今日はお話しましょう!」


コーヒーの香りに包まれた空間で彼女から仕事のことや近場のおすすめのカフェ(こちらの比重のほうが大きかった)について聞いていると1日が終わった。昼どきに簡易キッチンからサンドイッチが出てきてもびっくりしないくらいには職場に慣れることができた。ちなみに、これまた真っ白な冷蔵庫の中身はパンパンに詰め込まれた栄養ドリンクと牛乳であった...好きに飲んでいいとのことだが、逆に不安になる...


ここまで読んでくださってありがとうございました

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