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platonic a  作者: いづくにか
friendship
11/11

今日のトレーニングも終わった。

メニューが軽いから日に日に物足りなさが増していく。

あまりペースを上げすぎると横で見てくれているケイに注意されるから気をつけないと。


トレーニング終わりには毎回ケイがマッサージをしてくれる。こわばった筋肉からこもった熱と疲れが抜けていく感覚があって気持ちいい。


「もっと強くしてもらってもいいだろうか?」

「肩のところか?これくらいか?」


ぐっぐっと肩の筋肉がほぐされる。

今日は昨日よりも体調がいい。ケイのおかげで少しずつ回復しているようだ。


「最近調子がいいんだ。ケイのおかげだ」

「それはよかった。もう少し様子みて徐々に負荷上げていくか」

「ああ、頼む。やっぱり疲れがたまっていたようだ。でもトレーニングできないとストレスなんだ。なるべく早めにさせてくれ」

「お前な..トレーニングしすぎで体調崩したんじゃないのか?徐々にだ。ていうかなんかあったら相談しろって言ってるだろうが」

「すまない。では相談していいだろうか?」

「なんだ?」


そう聞きながらもケイはマッサージを続ける。足の筋肉をほぐされるが少し痛い。ケイは涼しい顔をしているがやっていることはえげつない。

足を動かさないように気をつけながらなんとか声を出す。


「やることがないんだ。暇なときはなにをしたらいいだろうか?」

「趣味とかないのか?」

「トレーニングだ」

「まったく...試合のことしか考えてないのかよ。ちょっとは肩の力抜いた方がいいぜ。読書とか映画とかはどうだ?」

「試合のことが気になってあまり集中できないんだ」

「本当にしょうがないやつだな...今日この後予定ないだろ?ちょっと出かけようぜ」

「それは本当か?助かる」


情けないことを言って失望されたかと思ったがやっぱりケイは優しい。

一緒に出かけるのは久しぶりだ。


なにをしに行くのだろうかと楽しみにしていたらいつの間にかマッサージは終わっていた。






ケイと宿舎前で待ち合わせた。

時間通りに行くとすでにケイは待っていた。いつもより少し洒落た格好をしており、高い身長と合わせてよく似合っている。


「すまない。着替えてきた方がいいだろうか?」


ボクはと言えば何も考えずに薄っぺらいパーカーを着てきてしまった。


「そんなちゃんとしたとこに行くわけじゃなから気にしないでくれ。なかなか着る機会なかったやつ着ただけだから」


なるほど。チーム本部内にずっといるとどうしても動きやすい服装ばかりになる。少なくともボクはそんな服しか持っていない。

ケイのような服も持っておいた方がいいだろうか。





「そういえば昨日、警察から話を聞かれた。失踪事件を捜査していると言っていた」

車内で思い出し昨日のことを話した。

「ああ、テオドールとメリンダだろ?1人だけならまだしも2人同時期ってなるとなんかありそうだよな」

ただ、とやや言いにくそうに続ける。

「シラーって知り合い少ないだろ。そういうごたごたに巻き込まれなさそうだし、そこまで心配してないんだよな」

なにも言えない。

「悪気はないんだ。気に障ったならすまん。でも下手に巻き込まれてほしくはないって気持ちは本当だからな。俺は正直シラーだけでも無事ならそれでいい」

「そうか。気をつける」


たとえ言葉だけでもうれしい。ケイは優しいやつだ。ボクの担当だから気を遣ってくれているのだろう。




「どこに向かっているんだ?」

しばらくの間外の景色を眺めていたが行き先の見当がつかない。

「とりあえず飯だろ。おすすめのとこつれてってやるよ」

「いいのか?食事管理から外れる」

「お前ストイックすぎるんだよ。大丈夫だって今日くらい。我慢しすぎるとメンタルにくるぞ」

ケイはあきれたように言った。


「そうか。気をつける」

「ほんとかよ...なんかあったら遠慮すんなよ」


ケイは話していて楽しい。ボクは口下手だから会話は得意ではないがケイはいろいろな話をしてくれるから聞いているだけでも楽しい。

おかげで1時間弱ほどの車内もあっという間だった。


都市中央部のほうに入りしばらくすると目的地に着いた。




「ここがおれのおすすめだ。知る人ぞ知るし知らない人も知れるファミレスだ。有名だからな」

ケイが連れてきてくれたところは都市で1番と言っても過言ではないほど有名なファミレスだった。


「てっきり穴場のような場所かと思っていたんだが」


ケイの口ぶりからもっとこじんまりとしたところを想像していた。じとっとした視線を投げるがケイはあっけらかんと言い放った。


「とりあえず有名なとこ行っとけば間違いないって。だれも知らねえようなマイナー店行っても口に合わなかったら最悪だろ?」


それはそうかもしれないがなぜだろう、納得がいかない。


「もったいぶった罰だ。ここはお前が払え」

「ご機嫌ななめじゃねえか。悪かったって!いくらでも食ってくれ。なんたっておれのおすすめだからな!」

本当にやかましいやつだ。






「こんなにうまいものがあったのか!この肉味が濃いぞ!」


ボクはファミレスを侮っていた。普段食堂で食べる優しい味付けの料理とは完全に別物のうまみの暴力!一口噛むごとに脳天が揺さぶられるようだ。

「味が濃いってなんだよ。うまいって言えよ」


あきれたように言うがケイもうれしそうだ。ファミレスがそれくらい好きなのだろう。ケイがうれしそうだとボクもうれしい。



「パフェがあるぞ!食べてもいいだろうか!?」

「ああ、好きに食ってくれ」


苦笑しながらもタッチパネルで注文してくれた。


「普段からそれくらい楽しそうにしてれば友達の1人や2人すぐできるのによ。いつも修行僧すぎるだろ」

「失礼なやつだ。楽しいときにしか楽しそうにできない。それに友達はケイがいれば充分だ」

ムッとして言い返したが軽くあしらわれてしまった。



そうこうしているうちにパフェが運ばれてきた。

ボクの前腕よりも長いのではないかと思えるそれはもはや芸術品のようだ。もりもりのアイスクリームと色とりどりのフルーツに我慢できずさっそくスプーンですくう。

口に入れると強烈な甘みが舌を刺激する。


なんだこれは!うますぎる!ボクは夢中で食べ進めた。中央部のやつらはこんなものを毎日食べているというのか!?


底に残ったコーンフレークを最後に口に入れるとケイがこちらを見ているのに気づいた。


「なんだ?」

「いや、幸せそうに食べるなって」

「ああ、おいしかった」

「それならよかったよ」


そう言い終わるとケイはついに吹き出した。

「あははっ、ははっ、待って、違っ、ぶふっ、っはははっあはっ、はっはっ、はああああぁぁぁ」


ケイは腹をかかえて笑い続けている。そんなにおもしろいことがあっただろうか。

ケイが楽しそうでうれしいが、さすがに周りの視線が痛い。

「ケイ、うるさい」

「ふははっははっ、、、、はあー、よし大丈夫だ。すまん」


こほんと咳払いをして姿勢を正したが、まだ口元がぴくぴくと動いている。

大丈夫だろうか。


「さあ、次はどこに行く?なんかしたいこととかないのか?」


水を飲んで落ち着いたようだ。

とは言われても思いつかない。普段から趣味らしい趣味もない。


「思いつかない。すまない。ケイは行きたいところはないのか?」

「あー、そうだな。じゃあ映画とかどうだ?実は観たいやつあるんだよな。でも映画は微妙って言ってたっけ?」

「いや、かまわない。それを見よう」

「よし。じゃあ行こうぜ」


そう言うとそのまま立ち上がる。口拭いとけよな、と言い残してすたすたと会計に行ってしまった。


そんなに汚れているだろうか。

ナプキンで軽く拭ってケイを追いかける。







映画は王道のミステリーものだった。


登場人物が多くてなかなかおぼえられず途中で疲れてしまったが隣のケイは夢中になっていた。ケイが楽しめているならいいか。


映画の内容を理解することをなかば諦めなんとなくスクリーンを眺めながら目の端にうつるケイの姿を見ていると意外と映画も苦痛ではなかった。


そうこうしているうちにいつの間にか映画はクライマックスにさしかかっているらしい。


主人公の幼なじみが一連の殺人事件の犯人だったようで、主人公の推理によってトリックを見破られるとそれまでの淑やかな姿から豹変した。


なにか大声でわめいたと思ったら次の瞬間には主人公にとびかかって隠し持っていた包丁を腹に深々と突き立てた。


周りの人たちが急いで止めにかかるがあの出血量ではすでに手遅れだろう。



...なんだろう。映画のことはよくわからないがケイはこれがおもしろいのか。


隣に顔を向けるとケイも冷めた目でスクリーンを眺めていた。


ふと、ケイがこちらを向いた。視線が合った。その表情からはケイがなにを考えているのかわからなかった。





「どうだった?やっぱつまらなかったか?」


他の客がすでにいなくなった上映席で聞かれた。


「出てきた人が多くておぼえられなかった」

「そうか、悪いな。俺の観たいのに付き合わせてしまって」

「いや、映画はよくわからないがケイと一緒に観るのは嫌いではない」

「よくそんなこっぱずかしいこと言えるもんだ。まあ、ありがとな」


そんなに恥ずかしいことを言ったつもりはないが、ケイの様子から気を悪くしたようには見えない。それなら悪いことではないのだろう。




映画館から駐車場へと歩きながらふと気になったことを聞いた。


「なぜ幼なじみは主人公を殺したんだ?最後に1人殺しても結局は捕まっただろう?」


ケイは少し考えてから言った。


「...あー、そりゃ好きだったからだろ」

「幼なじみが主人公をか?ならばなぜ殺したんだ?」

「幼なじみちゃんが殺したのは主人公も含めて多分3人だけだと思うぜ」


急に話を変えられた。だが、映画をそれほど集中して観ていなかったボクでもそれは違うと言える。最後だけは観ていた。


「それは嘘だろう。あと1人殺している」


まさかケイに限って自分で選んだ映画をまともに観なかったなどということは考えられない。なにかケイなりの考えがあるのだろうと次の返答を待つ。


するとケイは言葉を選びながらゆっくりと話した。


「冒頭に電話かかってくるとこあっただろ。あのときうつってた薬なんだが、幻覚症状を抑えるために処方される薬だ。そのほかにも急な場面転換が何カ所かあっただろ?おそらく暗転後は幻覚なんだと思う。まあつまりジャクソン、ああ主人公な、は脳の疾患で幻覚が見えてたわけだ。で1人目が殺害された時間はちょうどジャクソン視点の暗転後と一致しただろ」


「薬についてはそうだとしても他はさすがに考えすぎではないか?」


「まあ、そう言われちゃそうなんだが、でもなやっぱ2人目と3人目の推理に対して1人目が雑過ぎる気がすんだよな。しかもさ、3人目のやつがジャクソンになんか話あるって言ってただろ?でその夜殺された。あれはなんかに気づいて脅迫でもしようとしたんじゃねえかって思うんだよな。て感じで考えてくと2人目も1件目の殺人に気づいたから殺されたんじゃないかって」


まともに観ていなかったからそんなこと考えていなかったが、それでもやっぱりケイの考えすぎな気がする。そんなわかりにくい伏線を張るだろうか。最後だけは観ていたのだがそんな描写はなかった。


無言で続きを促すと、気づいたケイが続けた。


「いや、これで終わりだ。あくまで俺の推測ってだけだからな」

「それでなぜ主人公を殺したんだ?」

「あー、そういやそういう話だったな。これも推測の続きなんだがやっぱ1人目の推理雑だと思うんだよな。多分1件目の殺人はジャクソンが犯人だ。でだ、幼なじみちゃんもいずれ主人公がそれに気づくと思ったから、気づく前に殺してあげたってことじゃねえかな」

「やはり考えすぎではないか?それにそれだと最初の好きだったということとかみ合わないだろう」


いつの間にか乗ってきた車までたどり着いていた。



ケイはエンジンをかけながら言った。


「好きだったから自分の殺人に気づく前に殺したんだろ。や、あくまで推測だぜ」


鵜呑みにすんなよと付け加え、車を発進させた。


ケイの言っていることは難しい。頭の出来が根本から違うのだろう。


でもケイの考えを聞くのは好きだ。ボクにはない視点からの考え方で新鮮な気持ちになる。




「...お前はおれのために罪なんか犯すなよ」


夜道を走る車内でケイがぼそりと言った。


「急にどうした?」

「いんや、思ったより自分の考察がそれっぽいなって思って感傷的になっただけだ。てかよく考えたらあの映画ふつうに駄作じゃねえか」


そう言って笑った。


ケイが笑ってくれるならなんでもいい。ボクは先ほどの不穏な一言などすっかり忘れていた。


「そんなことより夜何食う?何でもいいぜ」

「ケイが決めてくれ」

「しゃあねえな。とっておきを教えてやるよ」




夕飯は有名チェーンのピザになった。おいしかった。




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