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platonic a  作者: いづくにか
friendship
10/11

閑話小噺ー親友へー

本作品をお読みくださりありがとうございます。


本エピソードは本編の流れと直接関係がないため、とばしていただいたほうが混乱なく読めるかもしれません。

彼女を初めて見たとき心を奪われた。

なんて綺麗なのだと。欠けたところのない満月のような人だと思った。


忘れもしない。あの日、あたしのすべてが変わった日。


あたしはあらゆる面で優れていた。

優れた容姿、優れた頭脳、優れた運動神経、家は巨大軍事企業総帥。

鼻にかけるようなことはしない。人にはそれぞれいいところがあって自分のことが好きでいられたらそれでいいと思う。

もちろんあたしはあたしのことが大好き。

勉強にも運動にも困ったことがない。欲しいものがあればだいたいなんでも買える。

でも、腰まで伸ばしたプラチナブロンドとエメラルドよりも透き通った自慢の目が1番大好き。

あたしを愛してくれるお父さんとお母さんが好き。

欲しいものが買えるお金が好き。

キラキラしてる宝石が好き。

ピカピカのブランド物が好き。


でも今日からは満月が浮かんだ夜空が大好きになった。そんな日。




お父さんの軍の視察について行った日のこと。

お父さんは神徒と戦うための武器をつくっているすごい人。だからみんなお父さんを尊敬している。

尊敬していなくても尊重はしてくれる。お父さんににらまれたら出世できなくなっちゃうから。

だからついでにあたしのことも尊重してくれる。もっと子ども扱いでもいいんだけど、でももらえるものは遠慮しない主義だから。


視察は何回も着いてきたことがあるしあんまり意味ないんじゃないかなって思ってる。ただみんな緊張して神経すり減らすだけの面倒なこと。でも定期的に偉い人が見に来ることで不正を防ぐって観点ではまあいいかなとは思う。

それでもつまらないものはつまらない。

だからただの視察なら着いてこない。それなら家で1人ファッションショーしてたほうが何倍も楽しい。


今日お父さんに着いてきたのは面白いことがあるから。

ちょっと前に対神徒用の新しい武器の図案が会社に送られてきた。

会社の設計士の人たちはすごく驚いてた。前代未聞の強力な武器だって騒いでた。

あたしも見せてもらったけど確かにすごかった。でもそれより驚いたのは設計したのがあたしと同じ歳の女の子だってこと。

9歳の女の子がこんなの考えつくんだってびっくりだった。

あたしが言うのもなんだけどその年齢の女の子ってもっと無害なおままごととかするもんじゃないの?

さらにびっくりだったのが、その子は軍の戦闘戦術や通信の新しい方法も考案してたってこと。そのほかにも調べれば調べるほどたくさん出てくる出てくる。


気づいたらあたしは会ったこともないその子にすっかり夢中になってた。

両親は連合軍高官の父親と軍研究員の母親。お兄さんが1人。このお兄さんもすごくて神跡に適合しただけじゃなくて異能持ち。

でもやっぱり1番気になるのは同い年の女の子、ヒーシアちゃん。


1番古いので5歳のころの論文。『現状の連合軍の作戦系統と後衛部隊の食料補給のアンマッチについて』

あたしが1番好きなのは8歳のときの。「異能者単一部隊編成の脆弱性と司令官の重要性について」

軍とか戦いとか正直興味なかった。でも彼女の書いた論文を読んでいくうちにだんだん興味が湧いてきた。

軍の情報とかあんまり表に出せないような機密情報なんかもある程度調べてみたけど、それでもやっぱり1番面白いのはヒーシアちゃんの発案。彼女の視点は広くて常に的確。だから軍の偉い人たちも彼女の意見に従うしかなかったんだろうね。



やっと彼女に会えるって思ってついキョロキョロしちゃってた。普段だったらもっと落ち着いてるんだけど、なんか子どもっぽくて恥ずかしい。けどそれくらい楽しみ。


一通りの視察はいつも同じ順番。決まり切ったルーティンは退屈だけどこの後のお楽しみのためならいくらでも我慢できる。

すっごい緊張した軍の人がいろいろしゃべってたけど全然聞いてなかった。

多分お父さんもそんなに真面目に聞いてないんじゃない?真面目くさった表情でうなずいてるけどパフォーマンスの意味のほうが大きいんじゃないかって思ってる。


一連の視察が終わったらようやくお楽しみ。

聞いたらヒーシアちゃんは戦闘訓練の指南をしてるらしい。

お父さんを置いて訓練場まで走る。


見たらすぐわかった。ゴリゴリに鍛えた大人たちの中で1人だけ小さな女の子。

でも存在感は間違いなく1番。

なんていうか異質。蛇の群れの中にいるドラゴンって感じ。

夜空を切り取ったみたいな黒髪と2つの満月みたいな金色眼。腰まで伸ばした髪がおそろいでちょっとうれしい。

頭のてっぺんから指の先まで精密機械みたいにきれいな動作。

それに比べたら軍人たちの動きの大雑把なこと!そりゃ本人たちは真面目にやってるのはわかるよ。けどもっと張り詰めてやらないと。戦場で困るのは自分たちだってわかってないのかな。


しばらく見てたらヒーシアちゃんと軍人たちが手合わせする流れになった。

やんないとなにが足りないのか自覚させられないからだろうね。

ヒーシアちゃんは基本的な動きだけしかしてない。それに加えて圧倒的なリーチの差。

ここまでハンデあってもだれも適わない。

ヒーシアちゃんに見とれてたらいつの間にかその場の全員と手合わせが終わってた。

みんなにそれぞれ足りないところを教えてあげてて優しいなって思ったけど、それよりもむずむずして止まらない。

あたしもやりたい。あたしならもっと上手にできる。あたしならヒーシアちゃんのあの鉄面皮動かせるんじゃないの?


気づいたらあたしはヒーシアちゃんのところに向かって走ってた。

「お疲れー!あたし、レネ!ジア財閥の!はじめまして!さっそくだけどさ、ヒーシアちゃん、あたしともしない?」

「未経験者へ指導する自信はないわ」

「やったことはないけどさ!さっきまでの人たちより強い自信あるよ」

周りの軍人たちが怪訝な目を向けたのがわかったがそんなのはどうでもいい。

「どう?やらない?」

「そこまで言うのならかまわないわよ」

相変わらず無表情なまま了承してくれた。あたしが楽しませてみせるよ。


実際に対面してみて彼女のすごさをもっと感じた。

単純な動作しかしてないはずなのに動きが追えない。次の動作がわかってるからなんとか避けられるけどっ。

逆にあたしの攻撃は全部届かない。避けるかいなされる。

こんなんじゃ全然楽しくないでしょ?

「あたし軍人ってわけじゃないしさ、こっからは自由にやんない?」

「あなたがそれでいいならかまわないわ」

「言ったね?」


素早さだったら後手に回っちゃうけど、なるべく視界の外から蹴り技主体で。あたし足の長さにも自信あるんだよね。9歳のお子様だけど。

ヒーシアちゃんのスタンスは変わらず基本的にあたしに対応するだけ。あっちからの攻撃は最小限。

「ヒーシアちゃんも攻撃しないと勝てないよ!」

挑発してみても全然意味ない。そういうとこも好きだけど!

キックと見せかけて、足を死角にして拳をたたき込む。今まで使わなかったからヒーシアちゃんの反応がちょっと遅れた。

知ってるよ。これを待ってたから。この拳もフェイント。本命は左足。

試合中右足での攻撃27回に対して左足は9回。ちょっとあからさま過ぎるけどそのための2重フェイントなんだから。

彼女の足を払うように渾身のカーフキック。


...決まったと思ったんだけどな。直撃しなくてもいいからせめてかすらせてほしいな。

「え~、これも避けるの?」

「そろそろ終わらせたいの?」

「まさか!ずっと戦ってたいよ!」

ぞくぞくが止まらない。身体中からアドレナリンが吹き出してるみたいに興奮する。

次に仕掛けたのは彼女だった。踏み込んだと思ったら次の瞬間にはあたしの目の前、的確に顎を狙ってきた。

なんとかぎりぎりで体をのけぞらせたが、それでも拳の先がかすった。

あたしはその姿勢のまま後ろにバク転、ヒーシアちゃんを蹴り上げた。と思ったら案の定避けられた。

「顎って!殺意高すぎでしょ!」

「あら、あなたはこういうの求めてると思ったのだけど」

「わかってるじゃん」

無表情かと思いきやちょっと口角上がってるの気づいてるよ。そういうとこも好き。


さっきのスピードにあたしがついていくのは今は多分無理。やっぱフェイント。

パンチを受け流されても本命はそっちじゃない。そのまま肘打ち。

でもこれも受け流される。

「受け流しなんだ?あたし強いでしょ?」

「そうね」

でしょでしょ!そろそろヒーシアちゃんの速さに慣れてきた頃。だからあえての受け流し。回避ができなかったってこと。

でも攻撃は続けられない。ヒーシアちゃんの右手があたしのあばらを粉砕する直前でなんとか体をひねる。動きになんとかついて行けてるけど予備動作は全然見えない。

あたしの体勢が崩れた隙をついて左足の蹴り。

当たったら死にそう。あたしには最初から受け流しの選択肢はない。バク転で躱すしかない。

そうすると拳があたしの顔の前。知ってる。あたしでもそうする。

だからそれは避けられる。回転の勢いに任せてアッパー。からのがら空きの胴に蹴り。

って計画だったんだけど足をつかまれた。

「降参!強すぎ!」

「あなた本当に戦闘未経験者?」

「やったことはないけどずっと見てたからね!いい感じだったでしょ!?」

「あなたいいわね。優秀だわ」

表情ほとんど変わらないけど若干興奮してるでしょ。そういうのわかるよ。好き。

「でしょでしょ!」

「そうね。遅れたけれどヒーシア・ウルよ。よろしく」

「あたしはレネ・ジア!よろしくね!」


周りを見ると軍人たちが固まってた。

度肝抜かれちゃったでしょ。だってあたしレネ・ジアだし!




ヒーシアちゃんは話してても楽しい。話が合うって言うのかな、会話のキャッチボールできてる感じ?

彼女があたしたちに新しい武器の機構について説明してくれたときもすっごく面白かった。

なんでそんなの思いつくの?ってところばっかりでやっぱりすごい。

設計士の人たちの質問にもすっごい的確に答えてるところもかっこいい。

説明が終わってもあたしはまだ話したくて彼女を引き留めた。


彼女の論文について聞きたいところもいくつかあった。説明はすっごくわかりやすい。

「ヒーシアちゃんさ、すっごくすごいけどどこ目指してるの?」

「人類の領土奪還よ。神徒と眷属の殲滅、人類の生態ピラミッドの頂点への帰還、それが最終目標よ」

「へ~、なんかすごいね。あたしなんかそんなことほとんど考えたことなかった。毎日遊んでばっかりだよ」

「別に私の考え方を他人にも強制しようとは思っていないわ」

「そういうとこ好き。ね、ヒーシアって呼んでいい?」

「好きに呼んでいいわ」

「ねね、あたしもヒーシアに着いてっていいかな?一緒にいたら楽しそう」

「着いてこられるならかまわないわ」

「大丈夫だよ。今までめんどくさいなって思ってたんだけど今日決めたから!」

そう言ったらヒーシアは怪訝な顔をした。いろんな表情見せてくれるのうれしい。

「実はさ、あたし適合者なんだよね。移植してないけど。」

「神跡移植の問題点はわかっているの?」

「記憶のリセットでしょ。大丈夫だよ。ヒーシアがいろいろ教えてね」

「ジア財閥の御曹司が記憶喪失はいろいろと問題が起きそうね」

「そ。だから表向きは前から移植されてたーってことになると思うよ」

ヒーシアは相変わらず無表情でこのときばかりはなに考えてるかわかんなかったな。






あたしの神跡移植はそれからしばらくして行われた。

政府、軍関係者の中でもごく一部だけにしか知らされず機密中の機密事項らしい。

冷たい手術台で意識を失うまでヒーシアが手を握ってくれてたのはうれしかったな。












意識が戻ったときの記憶は曖昧だ。

それからしばらくして感情を知った。言葉を知った。人を知った。社会を知った。敵を知った。戦争を知った。欲を知った。才を知った。力を知った。


あたしはあたしのことが大好き。

勉強にも運動にも困ったことがない。欲しいものがあればだいたいなんでも買える。

でも、腰まで伸ばしたプラチナブロンドとエメラルドよりも透き通った自慢の目、水晶みたいな紫羽は特にお気に入り。

あたしを愛してくれるお父さんとお母さんが好き。

欲しいものが買えるお金が好き。

キラキラしてる宝石が好き。

ピカピカのブランド物が好き。


でも満月が浮かんだ夜空が1番好き。



ここまで読んでくださってありがとうございました

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