王子の分際でガラスの靴待って追いかけてくんな!
「……ってわけなんよ。わかってもらえた?」
魔法おばばの店に駆け込んだあたしは一気にまくし立てた。
説明しろ?
はいはい、あたしの名前はシンデレラって言うんだ。
あたしは貴族の庶子、いわゆる愛人の子ってやつでさ。
義母や二人の異母姉にはウケが悪いんだ。
やつらはあたしを虐めてうさ晴らししようとするけど、あたしも一・五倍くらいはやり返してるからトントンだね。
見方によってはドアマット令嬢の範疇なのかな。
何てかわいそーなあたし。
でも今のこの気楽な生活に満足してるんだよ。
まああたしは社交デビューなんかしてない。
ろくすっぽ教育も受けてないのに社交界なんか恐れ多いわ。
もっとも家には自称淑女(笑)達がいるから、見よう見まねでそれなりに令嬢を演じられるとは思う。
でもどうせすぐに化けの皮が剥がれるわ。
ただパーティーとゆーもんには心惹かれるわけよ。
間違えた、パーティーで饗される御馳走には心惹かれるわけよ。
一度試しに参加してみるベえと思ったの。
さすがに王家は調査力があるのか、あたしの存在を把握してて招待状が来た。
ドレスは太った異母姉達が着られなくなったやつがあるんで、直せばいい。
裁縫は得意な方だから。
ささっと潜り込んでお腹一杯食べたら中座しようと思ってたのさ。
ところが物事思った通りにはいかないもので。
いや、料理はおいしかったよ。
ごちそーさまでした。
王宮でのパーティーだったから、あたしも装いに気を使い過ぎたかもしれない。
あたしのドレス結構洒落てて目立ってた。
以前見習い職人に作ってもらったガラスの靴も履いてたし。
そしたら王子様の目に留まったらしくてさ。
あたしが可愛い子ちゃんてこともあるんだろうけど。
ダンスを所望されちゃって。
あれはどこの令嬢だってことになったわ。
異母姉達はあたしに気付いたらしくて、口あんぐり開けてたわ。
何のために扇を持ってるのだ。
アホ面を隠せ。
あたしもさすがにヤバいって自覚した。
もう一曲って誘われたけど、疲れてしまいましたわおほほこれにて拙者はどろんでござるって逃げてきた。
もっとヤバいことにガラスの靴を片っぽ落としてきちゃった。
王子様がガラスの靴の持ち主を探してるって情報を得たから、泡食って魔法おばばのところへ相談に来たんだよ。
これが現在の状況です。
現場の魔法おばばさんどうぞ。
「呆れたもんだねい」
「ちなみにどの辺に呆れるポイントがあったかな? 後学のために教えてもらいたい」
「あんたの度胸にだよ! 普通アンタの立場なら、隅っこで壁の花やってるもんだろうに」
「天性の麗質が王子様のハートを射止めてしまったとゆーか」
おいこら、露骨にため息を吐くな。
「……先のパーティーは、第一王子カール殿下の婚約者選びじゃないかって噂があるよ。伯爵家以上の令嬢にしか招待状が配られなかったはずだ」
「やっぱ婚約者選びだったのか。そんな雰囲気は感じた。うちの姉ちゃんズ含めて気合の入った令嬢多かったし」
「何の問題があるんだい? アンタ王子妃になりゃいいじゃないか」
「おばば本気で言ってるのかよ? ムリに決まってるだろ」
あたしが王子と踊ってる時、ものすごい嫉妬の視線を感じたわ。
あれは実家の押し出しなり自分の実力なりがないと撥ねつけられんわ。
教育も受けてない、実家の援助も期待できないあたしなんかお呼びでない。
あたしにあるのは可憐さと慎ましさと美しい心だけだわ。
「アンタのカンと機転とクソ度胸は大したものだがねい。まあアンタがムリと判断したなら難しいんだろう」
「あれ、何げにあたしの評価高いね」
「そりゃあそうさ。アタシと気後れせずに会話できる令嬢がどれだけいると思ってるんだい」
まあそうか。
おばばは怪しいし実力者だし妙な迫力があるもんな。
ってことはさておき。
「あたしの落としてきたガラスの靴を頼りに、王子があたしを探してるんだってさ。これをどうにかしたいから相談しに来たの」
「アンタ本当に王子妃やる気はないんだね?」
「ないと言っとろーが」
王子妃も面白そーではあるけど、あたしじゃ足りないものが多過ぎる。
王子妃の座は足の引っ張り合いの場だ。
ウィークポイントの多いあたしが勝負すべき場所じゃない。
賢いあたしは勝てない勝負はしない。
「おばばなら拘りを忘れさせるとか、心変わりさせるとかの薬を持ってるかと思って」
「ないことはないねい。ん?」
何これ?
ぶわっと奇妙な感覚がある。
魔力かな?
下半身が魚の令嬢が現れた!
「おやおや、これは珍しい客人だねい」
「メッチャ美人やんけ。ねえねえ、おばば。あたしにも紹介してよ」
「海底のマリーナ第六王女殿下だよ」
「人魚姫か。おばばは海底の王国とも付き合いがあるんだ?」
「おうともさ。海底城からは転移で行き来できる」
転移ってどんだけ魔力使うんだろ?
すげえ仕組みだな。
「あたしはシンデレラ・フォークロアだよ。王女様よろしくね」
「はい、あの、わたくしのことはマリーナとお呼びください」
「よろしくマリーナ」
「アンタは全く遠慮がないねい」
笑うな。
遠慮した方が得な時は遠慮するよ。
で?
「マリーナもおばばに相談事があるんでしょ?」
「姫、シンデレラなら心配いらないよ。こう見えて頭が回るから、力になってくれるかもしれない」
「そ、そうですか。実は……」
何々?
以前マリーナは第一王子カール殿下を海岸で助けたことがある?
それ以来王子に惚れちゃった?
最近では王子のことが気になり過ぎて、夜も眠れない?
王宮に潜り込みたいが、何とかならないか?
「半年くらい前に、カール殿下の乗った船が嵐に遭遇して、殿下が海に投げ出されたという事件があったねい」
「縁があるのか。要するにマリーナはカール殿下にアタックしたいんだね?」
「はい」
「いやいや、でも王宮に潜り込んだってどーにもならないでしょ」
「わたくしの尾びれを足に変えていただければ、何とかなるのではないかと……」
それだけの考えでおばばのところに相談に来たのかよ?
あまりのドリーマーっぷりに、思わずおばばと顔を見合わせる。
「……尾びれを足にか。おばば、可能なん? まずそこを知りたい」
「不可能か可能かで言うなら、可能だねい」
「ふーん、じゃあマリーナの目論見が実現する可能性がないではないんだな? マリーナは美人だもん」
一回会っただけであたしに魅了されるくらい、女好きの王子だ。
マリーナの顔を見た途端愛を囁くこともないではない。
が……。
「お願いします! わたくしに足をください! 代償は何でも支払いますから!」
だから落ち着け。
相手はがめつい魔法おばばだぞ?
何でも支払うなんて、どんだけぼったくられるかわからんわ。
ただ仮に王宮で何らかの職に就けたところで、王子に見初められるのはどーだろ?
王子の外見の好みはあたしみたいなキュートガールなのかもしれんしな?
マリーナとはタイプが違う。
でもマリーナがメッチャ美人なのは間違いない。
天然物の王女オーラは有無を言わせないところがある。
それなりの舞台に上げて王子の視線を得られさえすれば、成功の確率はありそうだな。
いや、その場面を作るのが難しいか。
おばばが言う。
「代償として、あんたの声をいただくよ」
「声?」
おかしなものを代償にするんだな。
てっきり財宝ガッポリとか海底でしか手に入らない珍しい素材とかを欲しがるかと思った。
「おばばは何で声を欲しがるん?」
「ひれを足に作り変えるなんて、大変な魔法が必要だってことはわかるだろう?」
「わかる」「わかります」
「マリーナ王女の持ち物で最も価値があるのは声だ。だから声をいただく。それだけのことだねい」
ふうん、価値があるからなのか。
どうしても欲しいってわけじゃなく。
しかし?
「マリーナの声って価値があるんだ? 奇麗な声だってことはわかるけど」
「人魚族の声には人の心を穏やかにする特別な効果があるんだよ」
「マジか。ああ、歌で誘惑するって伝説は聞いたことあるわ」
「実際には他人を誘惑できるほどではないけどねい」
声があるからマリーナは王宮に行ければ何とかなると考えたのか。
でも一番の武器である声を代償として失ったんじゃ、その先が覚束ないだろ。
あっ!
「いい方法がある!」
「何だい? 聞こうじゃないか」
「あたしの足とマリーナの尾びれを交換しよう! 新たに足を作るよりは簡単でしょ?」
「そりゃまあ」
「あたしは海底の王女の代役としてのんべんだらりんと暮らす。ウィンウィンだ!」
ハハッ、マリーナが目を白黒させてら。
「マリーナいいかな? あたしはこの前のパーティーでカール殿下に一目惚れされちゃってさ」
「ええっ?」
「あたしが落としてきたガラスの靴を頼りに、殿下はあたしを探してるんだよ。あたしの足を持つならば、必ずマリーナはカール殿下に会う機会がある」
「か、かもしれませんが、シンデレラさんはよろしいのですか? 凛々しいカール殿下のお妃になるチャンスではありませんか」
お姫様の発想だなあ。
さすがだわ。
「いやー。あたしみたいな半分平民には将来の王妃は務まらんね。とゆーかあたしへの反発で国が割れちゃうわ」
「そうでしょうか?」
「そうそう。あたしはらくーに暮らしたいだけなんだ。わざわざヘイト買ってまで王子妃なんてポジションに収まりたいとは思わないの。でもマリーナはカール殿下のお妃になりたいんでしょ」
「なりたいです」
「おばば、手を貸してよ」
「しかし……アンタとマリーナ王女じゃ全然顔貌が違うじゃないか。うまくいくのかい?」
心配そうだね?
「どっちかとゆーと、あたしよりマリーナの方が成功率は高いと思う」
「根拠は?」
「王子の部下がガラスの靴の持ち主を割り出したとするよ? それであたしだったケースとマリーナだったケース、絶対にマリーナの方が説得力は高いね。だってマリーナは正真正銘の姫なんだから、醸し出す雰囲気が違う。殿下に仕える人達は殿下との釣り合いを考えるから」
「家来衆を納得させられるという意味かい? 実際にカール殿下に会った時が困るじゃないか。顔が全然違うんだから」
「少々顔が違ったって、マリーナはちょっといないレベルの美人だぞ? マリーナの顔を正面から見て好き好き光線を浴びせられて、殿下みたいな惚れっぽい人が無視できるかな?」
「一理あるねい」
「話くらい聞いてみるかってことになるわ」
あたしじゃ何であの子がって言われちゃうけど、マリーナなら殿下にピッタリって空気になるわ。
そして声の効果が本物なら勝てる!
「でもマリーナが声をなくしたら勝てなくなっちゃうでしょ? 声は勘弁してやって、海底のお宝で満足しなよ。将来の王妃に貸しを押しつけたなら、老後が明るいぞ?」
「そ、そうだねい」
「あのう、シンデレラさんはよろしいのですか? 自由に歩けなくなりますし、海底では生活が全然変わってしまいますが」
「構わないぞ? マリーナこそいいんだね?」
「わたくしはもちろん、はい」
「よし、あたしを虐めるうちの極悪な義母と異母姉どもに言い聞かせないと。急ぎで呼び寄せよう」
◇
――――――――――後日、マリーナ視点。
シンデレラさんはすごかったです。
本当に実家で虐められてたのですかね?
そういうことにしといた方が、余計なことを背負わず気楽だからなんじゃないでしょうか?
実家の方々との話し合いでも、終始ペースを握っていました。
――――――――――
『シンデレラ! あなたどういうこと? どうしてわたし達に無断で王家主催のパーティーに出席するなど……』
『ギャラリーがいるからって今頃それをゆーな。あたし宛に招待状が来てたじゃん。王家の意向を無視するのはかなりの不敬だと思うよ』
『カゼを引いて欠席とでもしておけば……』
『ウソ吐くのは不敬に当たらないかってのはさておき、どうせあんた達も浮かれてて、あたしのことなんか考えてなかったんでしょ?』
おばば様がとても愉快そうです。
『終わったことをガタガタ言うのは、建設的でないからやめようじゃないか。未来に目を向けよう』
『そうだわ! あなたカール殿下とダンスしてたじゃないのっ! あなたなんかが目をかけられて悔しいいいいいいい!』
『殿下はあなたを探してるって話じゃないの。靴を落としていったのもわざとなんでしょう? 小知恵が回るんだから!』
『目をかけられたのはあたしがチャーミングだからだわ。靴を落としたのは偶然だわ。大体靴であたしを探せなんてことになると思わなかったわ』
……何だか面白いです。
どういう展開になるのでしょう?
わくわく。
『シンデレラなんかにカール殿下の婚約者が務まるわけないでしょう?』
『問題はそこだ。あたしも王子の婚約者になれるとは思ってないんだ』
『ふん、わたし達は絶対あなたの手助けなんかしないですからね!』
『問題の認識がなってないんじゃないの? あたしの不出来はイコールフォークロア伯爵家の不出来だってわかってる?』
『……そういえば……』
『不肖のあたしに対して何も手を打たないとゆーことになると、フォークロア伯爵家の姿勢が疑われる。姉ちゃんズ達の婚約だって遠のくってことだよ』
『『ひいい!』』
『もっとゆーと、義母と異母姉達に虐められて教育さえ受けられなかったんですと、あたしがうっかり本当のことを漏らしたりするじゃん? するとあんた達の評判は地に落ちる。大手を振って外を歩けなくなっちゃう』
『『『ひいいいい!』』』
『ちょっと状況がわかった? ならあたしの話を聞きなさい』
すごい。
嫌ってるはずのシンデレラさんの話を聞こうという態勢になりましたよ。
『とはいえ、愛人の子であるあたしに本気で協力できない心情はわかる。だからマリーナに協力してやって』
『さっきから人魚がいるなあ、とは思っていましたけど』
『マリーナ……聞き覚えのある名前ですわ。その気品、ひょっとして?』
『海の王国の第六王女だよ』
『『『ええっ!』』』
いよいよわたくしの出番です。
『マリーナと申します。どうぞ、よろしくお願いいたします』
『あたしの足とマリーナの尾びれを交換することにしたんだ。ガラスの靴であたしを探してるなら、あたしの足を持つマリーナは、おおあなたこそカール王子の運命の人! ってことになる』
『『『ええ、そうね』』』
『あたしじゃ王子の婚約者なんてムリだとは自分でもわかってるんだ。でもマリーナは違うぞ? 本物のお姫様なんだから。フォークロア伯爵家でバックアップしてやれば、マジで王子の婚約者に決まる可能性は高い』
『『『そうねっ!』』』
『あたしのことを気に入らなくても、マリーナなら推せるでしょ?』
皆さん頷いています。
嬉しいですねえ。
『あ、パーティーの出席者名簿のことがあるか。齟齬があっちゃいけないね。うちの貴族籍名シンデレラことマリーナですよって言い張っておきゃいい。あとはマリーナのスペックにお任せ』
『『『わかったわ!』』』
『王家と海の王国両方にいい顔できる、そしてあたしを家から追い出せる千載一遇のチャンスだぞ。頑張れ』
言いくるめました。
シンデレラさんは頭も口もよく回りますねえ。
魅力的な方です。
シンデレラさんにポンと肩を叩かれました。
『舞台は整えた。あとはマリーナ次第だぞ。健闘を祈る』
――――――――――
そして今、王宮で、カール殿下と一対一で話し合っています。
憧れのカール殿下が目の前にいるのですよ?
恥ずかしいですね。
シンデレラさん、ありがとうございました。
「……そうか、奇想天外な話だが。君の足がガラスの靴にピッタリなのも、僕に淀みなく説明できるのも頷けることだ」
カール殿下には全てお話いたしました。
シンデレラさんにこう言われましたから。
『王子はきっと印象的な出来事が大好きなんだと思う。だからあたしに一目惚れしてみたり、嵐なのに船からダイビングしてみたりするんだ』
『好きでダイビングしたわけではないと思いますが』
『今回の一連の話は、きっと王子気に入るよ』
ズバリでした。
カール殿下は深く頷いています。
「僕とダンスを踊ったシンデレラという令嬢は、今海底城にいるということだね?」
「はい。魔法おばば様なら連絡が取れると思います」
「魔法おばばか。シンデレラにしても君にしても、よくあんな恐ろしい老婆と話ができるな」
おばば様はいい人ですよ?
「シンデレラ……実にキラキラした個性だった。一度会っただけなのに忘れられない」
「カール殿下はお目が高いですね。わたくしもシンデレラさんほど機転の利く方は見たことがないです」
「であっても僕の元から去ってしまうのか」
あっ、寂しそうですね。
慰めて差し上げねば。
「シンデレラさんはフォークロア伯爵家の庶子だそうなのです」
「ふむ、庶子?」
「殿下の婚約者になったら反対がたくさん出る。殿下の隣には相応しくないと。王家の求心力を落とすには忍びないと言っておりました」
「僕に気を使ってくれていたのか」
シンデレラさんがそう言っていたのは本当です。
でも言葉の端々から、面倒なことを抱え込むのはごめんだという本音が漏れていましたね。
多分シンデレラさんがカール殿下の婚約者になっていても、最終的には自力で解決して、問題なかったんじゃないでしょうか?
わたくしにカール殿下を譲ってくださったのだと思います。
「君は海難事故に遭った僕を救ってくれたのだという」
「はい」
「証拠はあるか? いや、君を疑っているわけではないのだが」
カール殿下は迷っていらっしゃるようです。
ロマンチストでいらっしゃいますので(シンデレラさん曰く、惚れっぽい)、運命の出会いというものに惹かれるのかもしれません。
それはわたくしも同様ですね。
でも証拠と言われても……。
あっ!
「殿下はこの歌に聞き覚えがありませんか?」
殿下を海岸まで連れてきましたが、体温を奪われてしまい命が危なかったのです。
わたくしが抱きしめて差し上げ、意識がないことはわかっていましたが歌を歌いました。
殿下は御記憶されていらっしゃるでしょうか?
わたくしの歌よ、届け!
「……これだ」
「はい?」
「暗い淵に落ちそうだった僕を引き上げてくれた歌。君だったのか」
ああ、殿下。
思い出してくださったのですね。
涙が出てきてしまいます。
だって嬉しくて。
「間違いない。マリーナ、君こそ僕の運命の人!」
「殿下、嬉しゅうございます!」
カール殿下が抱きしめてくださいます。
そうです、わたくしはこの瞬間を夢に見ていました。
シンデレラさん、本当にありがとうございます。
『物事がうまく運びそうだったら、おばば経由で海底城に連絡を取るんだよ。フォークロア伯爵家だけだと弱いからね。海の王国がバックにいることを知らせて、反対派を黙らせるのだ』
シンデレラさんはそう言っていましたね。
まったく賢い方です。
でも今はもう少し殿下のぬくもりを楽しみたいのです。
わたくしが殿下に与えたぬくもりくらい返してもらったって、バチは当たりませんよね?
――――――――――その頃海底にて。何の代償もなしにマリーナのポジションと交代したシンデレラは。
「ねえ、シンデレラさん?」
「何だろ?」
「あなたのお相手は、地上の人でも大丈夫よね?」
「そりゃあもちろん。あたしは元々地上人だし」
「タロウさんという、漁師の優しい美男子がいるのよ」
「優しいイケメンか。漁師なら気軽でいいわ。会ってみたいね」
「よかった。元々オトヒメさんがタロウさんを海底に招待したのですけど、彼女ったら平民は嫌みたいで」
シンデレラが浦島太郎とくっつきそうになる謎物語(笑)。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
どう思われたか↓の★~★★★★★の段階で評価していただけると、励みにも参考にもなります。
よろしくお願いいたします。