0005.年末の反省会
隣の席で今日もまた きみは盛大に愚痴ってる
軽快な不機嫌トークが冴えわたり ぼくの頬の引きつり具合も絶好調だ
なぜかひとの愚痴を聞かされることが多い
言いたいことを言いやすいキャラなんだろうか
愚痴を聞かされたところで なんの解決策も提示することはないのだけど
ただ聞いて なんとなく話を合わせて ほどほどに応えているだけ
愚痴るひとにとっては きっとそれでいいんだろう
それで今日も ぼくはきみのサンドバッグ
フロアの真ん中の大きなテーブルに ぼくたちは並んで座ってる
お店はいい感じに繁盛してて 大体の席はお客で埋まってる
クリスマスが過ぎて あとちょっとで今年もおしまいという頃合い
わたしってそんなにバカっぽく見える?
あちらのお客さまほどではないと思います
熱弁をふるうきみの栗色の長い髪が 小洒落た店内を背景にさらさらと宙を舞う
左手のこぶしを握りしめて 右手にはマグカップ
弾丸トークはまだまだ続く サンドバッグはただ耐えるのみ
高台にあるお店の大きなガラス窓から 年の瀬の街並みが広がるのが見える
低い日差しが暖かく差し込んで いい天気の昼下がり
いつもよりクルマの通りが少なくて 静かな冬休みのちょっと緩い感じが漂ってる
年末も年始も 他の生き物にとっては いつもと変わらない日々なんだろうけど
暦を作ってしまった人間にとっては なぜか特別な時期
今年の反省とか来年の抱負とか じっくり考えるために
ひと月ぐらい休みがあってもいいのに 遊ぶだけかもしれないけど
きみはひと通りストックしていた愚痴を吐き出したのか
一息ついて抹茶ラテを啜ってる
でもいつもありがとう きみのおかげで気分はすっきり
これだけなんでも話せるのは ほんとにきみしかいないんだよね
そりゃどうも もう少し友達を増やしたほうがいいかもね
来年もわたしの悩み相談に付き合ってくれる?
いいですよ でも聞くだけで何もしませんけどね
きみは笑いながらぼくの腕を組んで 頭を肩のあたりに擦り付けてくる
去年の年の瀬もこんな感じだったかな
来年の年の瀬もこんな感じなんだろうな
それがずっと続くといいけれど
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