表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/27

厨二する者 暗躍する者

こちらは冒険者ギルド練習場のケンジです。

現在、登録試験の模擬戦闘の結果、白目を剥いて気絶するギルマスのケイブさん、何故かわからないが気絶している受付嬢さん、そして真っ蒼なバッサの3人と、身の振り方をどうしたら良いか思案している最中の私です。


ギルマスを当身一発で白目失神させたのは良いが、多種多様なフリーズをされている皆さんが再起動するのを待つこと数分。


ある者は「ケンジさん。闘気を出されても良いのですが、加減をしていただかないと周囲の被害が…」

ある者は「負けると思っていなかったのですが、気が付いたら寝そべっていましたw」

ある者は「((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル」

再起動の結果はこんな感じだった。


そして、少し離れたギルド内は「((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル」

後から聞いたのだがこんな感じだったらしい。


「いやいや、まさか1撃で気絶させられると思わなかったですよw。私の攻撃を防がれてから身のこなしも、身に纏う闘気もあり得ないくらい上がってましたけど、何されました?え?…………試験の結果?そんなの合格に決まっているじゃないですか!私に素手で圧勝したんですよ。で、何をされたのか詳しく教えていただけません?出来ればこれだけ強くなった経歴も教えていただけません?」

再起動したギルマスは饒舌だった。

試験の合格は貰えたのだが、私の攻撃内容や過去が気になって気になってしょうがないらしい。

うん……踏んではいけない地雷を不本意ながら踏み抜いてしまったらしい。

「今日はこの後回らないといけない所がありますので、また日を改めて…」

厄介そうなギルマス案件を回避した。


受付カウンターに戻り、必要な登録書類を書いていると

「受付には言っておきますのでいつでも私を訪ねてきてくださいね。それでは私は部屋に戻ります」

と私に言葉を残し、受付嬢には何かを耳打ちしてからギルマスは自室に戻っていった。

閑散としてはいるが、それでもギルド内に居るギルド関係者や冒険者はゼロではない。

商業ギルド同様、要らない注目を集めてしまっていた。


冒険者登録を待つ間、私はバッサにいくつか質問をした。

「ギルマスに勝てたら合格ってなんでですか?もしかして勝たなくても合格ってできてました?」

「勝たなくても戦闘できると判断されるだけの動きができていたら合格でしたよ。本来なら基礎体力があるかどうかの簡単な体力試験もあるのですが、今回はゲイブ様が模擬戦をされるということで免除になったようです。あと、ギルマスに勝てたらってご質問ですが、ギルマスになる最低条件はギルドランクAの上位に位置しており、人格に問題がない者でなければギルマスになれません。でなければ冒険者を纏め上げることはできません。そんな方に圧勝したので合格は間違いないです。むしろ圧勝しない方が良かったのではと思います」


「ケイブさん、本気じゃなかったです…よね?」

「恐らくケイブ様は本気になられていたと思います。ケンジさんが攻撃を防がれてからのケイブ様が発する闘気は現役時代にお見掛けした時と遜色ない物でしたから。ケンジさんも本気になられてましたよね?」

「………いえ…気合は入れましたが本気ではなかったです」

「…………」

こんなやり取りをしていると受付から声が掛かる。


「ケンジ様、ギルド証登録の最終段階になりました。ギルド証に血を一滴落としていただけますか」

受付嬢からそう言われたので、腰からナイフを抜いて切っ先で指先を軽く突く。

血が出たのでギルド証に血を落とし受付嬢に渡す。

~関係のない素朴な疑問だが、小さい子どもは何故『血が出た』のことを『血がが出た』と言うのだろう~

…受付嬢はそのギルド証を受付の奥に持っていった。


血を極少量出す為に指先を軽くナイフで突いたつもりだったが、加減がわからず案外深く突いてしまったようで、血が止まる気配がない。

ダガーナイフだからか傷口もひし形になっており、余計に血が止まりにくい状況になっている。

バッサもそんな私の指を心配そうに見ていた。

『あ‘~こんな時、簡単に血が止まって傷が治ったりするといいな~。なんとかならないかな

~』

と思った瞬間、『ピコン!治癒魔法を創造しました』と声が頭の中に響いてから指先が淡い光を放った。

光が収まると指先の傷は完治しており、出血した血液だけが指先に残っていた。


創造しますって言ったよね、指先治っているよね、治癒魔法って言ってたよね、そんなことを思いつつポケットからハンカチを出して指先の血を拭いていると、隣でバッサが凄い顔をしていた。

「ケンジさん……いや、ケンジ様、このことはくれぐれも他言なさいませんよう。私も絶対に他言いたしません。治癒魔法は聖女様にのみに発現する尊き魔法。男性に発現する場合は神の使徒、もしくは神族にしか発現しないと言い伝えられております。神の使徒様や神族と在らせられるのであれば、国王よりも位が上と言われております。絶対に他言いたしませんので、ケンジ様も他言なさいませんようお願い申し上げます」

「使徒でも神族でもないと思いますよ。もし知れ渡ったらどうなりますか?」

「国家や貴族、世界的な宗教のアスモ教が囲いこもうとするでしょう。また邪な心を持つ者達は私利私欲の為に使徒様を利用しようとするでしょう。使徒様をめぐって争いが起きるかもしれません。イッコー様にも言いませんので、くれぐれも他言はなさいませんよう。それと治癒魔法が発現しておりますので、ケンジ様が神に関わりのある方であることは間違いないと思われます」

バッサに真顔で言われた。しかもいつの間にか『ケンジさん』呼びに変わって距離が縮まったと思っていたら『ケンジ様』呼びに戻って、今まで以上にヘリ下った言葉遣いになっている。


バッサの変化に戸惑いつつも色々と考える。

まずは創造してしまった治癒魔法は神に関わる魔法らしい。

そして厄介事に巻き込まれるのは勘弁していただきたい。

今朝ステータスを見た時は種族はヒトだったはずだから、夜になったらステータスで確認してみよう。

創造が使えることがわかったので、当初の予定通り『武器の製造・防御装備の製造』を行うのと並行して、魔法も何種類か創造してみようと思う。

厨二がはかどってしまうな…。


「ケンジ様、お待たせいたしました。ギルド証が完成いたしました」

そんなことを考えていると、受付嬢がギルド証を持ってきた。

何故かはわからないが金色に光っている。

「ギルドマスターに模擬戦闘で圧勝され、ギルドマスターからの指示によりAランクのギルド証を発行いたしました。アンノン商店のイッコー様が認められた幹部としての人格、Aランク上位のギルドマスターに勝利された戦闘能力、特例ですがAランク認定となりましたので、ギルド証受領をお願いいたします」

受付嬢に言われ、現実の理解が追い付かないままギルド証を受け取った。


「ケンジ様、Aランク登録おめでとうございます。早速ですが商業ギルド証と一緒にされては?」

バッサに言われるがまま首から商業ギルドを外し、冒険者ギルド証をチェーンに通した。

「これでケンジ様も高位冒険者となられましたので、気安く絡んでくる輩も減ることでしょう」

バッサは何故か満足そうに頷きながら私に言ってくる。


「ギルドマスターより伝言を預かっております。近日中にご足労いただきたいとのことです。ご無理を申し上げますが何卒宜しくお願いいたします」

受付嬢から近いうちにギルマスを訪ねるよう言われた。

先ほど去り際に言われたこと、本気だったようだ。

長い物に巻かれるメイドinジャパンのビジネスマンはNOが言えないことで有名だった。

そんな元メイドinジャパンのビジネスマンである私は「必ずお邪魔させていただきます」と受付嬢に伝え、冒険者ギルドをあとにした。






ーー町のとある裏路地ーー

「金はいくらかかっても構わん」

「・・・・・・・・・・・・」

「そうだ。決行は今夜だ」

「・・・・・・・・・・・」

「何人集められる?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「ターゲット諸共潰してしまえ!」

「生死は?」

「生死は問わん………いや……殺せ!」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ