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実食からの

なんちゃってコースを食べ終わり、余韻に浸っている皆さんがこちらに戻ってくるまで、少し時間がかかった。

やはり和食ではないが、現代日本の食文化をいきなり見せられるとその味に魅せられるようだ。


「料理長、このメニューの中から取り入れても良い物はあったか?」

「スープはこの店の物ですが、それ以外は全て取り入れるべきかと。他にもメニューがあるのであれば他のメニューもご教授いただきたいと思います。このメニューを提供すればこの町、いやこの国一番の店になれると思います」

イッコーさんからの質問に、料理長は鼻息荒く答えている。


「ここでの提供だけでなく、商店で販売用に商品化はできないか?」

「それでしたら、ドレッシングとマヨネーズと呼ばれていたソース2種類と、最後に出てきた甘いのはいかがでしょう?時間遅延の魔法をかけた容器に入れて出せば、鮮度を保つことができるのでは?」

「売れると思うか?」

「売れるでしょう。製法を秘匿すれば簡単に真似ができる物ではないので、独占できると思います。問題は『殺菌消毒と時間遅延、火魔法と水魔法氷魔法』の使い手の確保かと。しかし時間遅延の魔法の使い手となると、宮廷魔術師クラスの魔術師を探さないといけません。魔術師ギルドで見つかればよいのですが」

二人は商品化に向けて盛り上がっている。


「魔術師に関しては何とかしよう。あとは製造拠点とレシピの管理、原料原価と容器費用、販売価格をどうするかになるな。ケンジさんはどう思う?」

「製造拠点はこの店の近くに、機密を保てる警備のしっかりした製造拠点を用意できないですか?食品ですので料理長が動きやすい場所が良いかと。レシピの管理は厳重な金庫を用意し、イッコーさんと料理長しか開けられなくすれば良いのでは?原価と容器費用と製造費用は原料の価格がわからないので何とも言えません。販売価格は最終原価率を70%~80%に設定して出せば良いのでは?原価は下がったに越したことはありませんが。販売相手を一般層にするのか富裕層にするのかでも、原料の選択の段階から変わってくると思います」

「なるほどな…。疑っていた訳ではないが、本当に商いをやられていたようだな」

「いえいえ、まずは販売相手の設定と併せて近隣で似たような物が売られていないか調べるべきかと。その後原料の選択を行い試作、改良点を見出してまた試作、それを繰り返し商品レベルを上げます。商品として問題がないレベルになれば、販売に移行しても良いかと」


かなり端折ってはいるが、商品を世に送り出すプロセスを説明した。本来ならリサーチから始まって商品の最終形態になるまでかなりの時間を要する。

この世界に競合はほぼ居ないと考えても良いだろう。根拠はそこそこの規模の商店オーナーと腕の良い料理人が食べたことの無い物だからだ。

それであれば競合商品のシェアをリサーチしたり、オリジナリティーを出す為のレシピ開発時間を短縮したりできる。商品ラベルも存在していないので、デザインに使う時間も短縮できる。

宣伝する媒体が存在しているかわからないので、広告宣伝については触れていない。

私の思いつく新商品を世に送り出す方法論を、この世界向けに簡単にした内容を伝えた。


「急ぎ手配しよう。この商いは成功する。私の勘がそう告げておる。この案件は極秘で進行させ、料理長は進捗を逐一ワシとケンジさんに共有するように」

鶴の一声で動き出すことが決まった。

異世界に来てまでビジネスに関わると思っていなかったが、月の報酬以上の仕事をしようと思った。


「そういえば、商業ギルドで失礼を働かれたそうですな?」

ビジネスの話が一段落したところで、商業ギルドでの一件について質問をされた。

私は話をしていないので、調理をしている間に聞いたのだろう。


「少々変わった商人の方がおられましたが、ご心配には及びません。ああいった輩には慣れておりますので…」

「ケンジさんが良くても、我が商店としては良くない。我が商店の関係者に害を及ぼすようであれば、敵対するも同然。ここ最近増長しておるのでそろそろ身の程をわからせねばならん」

イッコーさんはサルマと事を構える気のようだ。

きっかけは私に理不尽に絡んできたことだが、あんな小者の為にアンノン商店を動かす訳にはいかない。


「まだ実害はありませんし、あんな小者が向かってきても怖くはありません。今回は事を荒立てずに静観しませんか?無論、サルマが何か仕掛けてきた時は動きますので」

「そう言えば、ケンジさんは武の使い手のようらしいな。それであれば安心ができるかもしれぬが、何か武器を携行されよ。我が商店で気に入った物があれば持って行ってもらって構わん」

なんとか納得してもらうことができた。…が、丸腰はよろしくないらしい。

かといって剣をぶら下げて歩くのは抵抗がある。

できれば拳銃のような小型で携行性の高い飛び道具、妥協してもナイフだ。

お言葉に甘えて、後で商店の武器を見せてもらおう。


町中で目にはしていたが、この世界は常に武器を携行することが普通らしい。

ということは生命の価値が『低い』世界なのだろう。

元の世界も日本のように治安の良い国もあれば、紛争地帯や宗教・民族問題を抱える地域は生命の価値が低かった。

武器の携行を奨励される世界であれば、用心に越したことはない。


新しい事業に携わることと、武器を携行しなければならない治安レベル、色々な緊張感を持たなければならないようだ。




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