立派な家じゃないですか
バッサに案内され、住む場所へ向かい歩き始める。
やはり町並みは中世ヨーロッパのようだ。
日本で見るような、文明を感じさせる物は一切見えない。
でも、原始時代や石器時代のような古い時代ではなく、ある程度の文明が発達築かれている異世界へ落ちたのは幸運と捉えるべきだろう。
魔法やモンスターが存在している意外は。
思えば、すれ違う男の人達は腰に剣を挿しているか、ナイフのような刃物を着けている人が多い。
隣りのバッサを見ると腰にナイフを着けている。
バッサに疑問に感じたことを投げかける。
「皆さん武器を携帯して歩かれるんですね。」
「そうですね。町の外では魔物や獣や野盗が出ますし、町の中では時々ならず者が出ますので、護身用に武器は携帯しています。ナイフだと生活に使えますしね。ケンジ様は何もお持ちではないのですか?」
この世界では武装してナンボらしい。
そして私は丸腰だ。
「あいにく武器を持ち合わせておりません。後ほど用意しようと思います。」
私はそう答え、案内される方向へ歩いていく。
店から歩くことおよそ5分、住む場所に到着した。
1.5mくらいの高さの石造りの塀に囲まれた、門付きの2階建てのかなり大きな家だ。
門と玄関の間に庭まである。
「こちらがケンジ様に住んでいただく家になります。生活に必要な物は夜までにご用意させます。」
と言われ、家?見た目は小さ目の屋敷に入っていく。
玄関に入ると正面に階段があり、左右に部屋がある。
まず右奥にキッチンがあり、右手前はダイニングになっている。
キッチンは日本のキッチンと変わらず、シンクに蛇口が付いており、コンロは仕組みがわからないが薪を使うような物ではないようだ。コンロの下にある扉はオーブンだそうだ。
ダイニングは大きな長方形のテーブルに、向かい合わせて座るよう5脚づつ椅子が10脚ある。
左奥は浴室とトイレ、左手前はリビングだ。
浴室はシャワーはないが、蛇口の付いた浴槽がある。
そしてトイレは水洗のようだ。
これは嬉しい。
2階の左奥に客間が2部屋、左手前に大きな寝室があった。
左側の寝室がメインのベッドルームらしい。
右奥に6畳くらいの部屋が3部屋、手前に8畳くらいの部屋が2部屋ある。
右奥の小さい部屋が使用人用、手前は家族が使う部屋らしい。
私は一人です…
建物内の設備の使い方も説明された。
蛇口は『水魔石』を蛇口にセットすることで、水が出てくるらしい。
お湯に関しては『水魔石・火魔石』をセットすればお湯が使えると。
キッチンのコンロは『火魔石』、オーブンは『火魔石・風魔石』で作動する。
照明は『光魔石』、気づかなかったが各部屋にある空調設備は『風魔石・火魔石・水魔石』で動作する。
トイレは『水魔石』、排水は『スライム』で汚水や汚物を浄化しているそうだ。
ここでファンタジー要素がまた登場した。
『魔石』と『スライム』だ。
そのファンタジー要素のおかげで、そこまで不自由なく暮らせそうである。
さらに建物の裏には物置があるとのことだ。
立派な家じゃないですか。
「元はオーナーが住んでおられた屋敷ですが、商店の最上階に住居を移されたので、こまめに清掃をして管理しておりました。いつか何かに使うかもと売却せず残されておりましたが、まさかその日が来るとは思っていなかったです。」
と家の説明をされた。説明をされたが『屋敷』って発言はしっかり拾わせてもらおう。
「そうなんですね。立派なお屋敷ですね。私が住ませていただいても良いのですか?」
「もちろんでこざいます。我が商店の顧問になられる方に小さな家や宿暮らしなどさせる訳にはいきません。」
バッサはそう返答してきた。
ついでに疑問に思っていたことを質問する。
「アンノン商店はこの町で、どのくらいの規模の商店になるのですか?」
「我が商店はこの町では一番の大店になります。他の町に支店もあります。この町の商店が本店となります。」
町一番の商店らしい。そこで新たな疑問が生じる。
「町一番の商店のオーナー自ら仕入れに動かれるのですか?」
「今朝の話しですね。とても気難しい取引相手にはオーナー自ら仕入れに動かれます。高価ではないですが、貴重な物を取り扱っておられる気難しい方なので、恥ずかしながらオーナーしか相手にされません。」
今朝の出会いの謎が解けた。
あの大きさの商店、町一番の商店オーナーが自ら仕入れに動く。
声をかけてくださったのは幸運のようだ。
日本でも自ら動く経営者、小さい会社に限っては自ら動く経営者の方はやり手が多かった。
私の中では信用できる人間だと、イッコーさんの評価が上がった瞬間である。
バッサに案内され屋敷を回り「他に行きたい所はないか?」と聞かれたので、身分証を作りたいことを伝えると『冒険者ギルド・商業ギルド』のどちらかを勧められたので、イッコーさんとのビジネスのことも考え『商業ギルド』で登録をし、身分証を得ることにした。
「商業ギルドに登録をしたら冒険者ギルドに登録はできないのですか?」
「両方登録できますよ。他に魔術ギルドもありますが、魔術の適正がなければ登録できないので、比較的簡単に登録ができる、商業と冒険者をお勧めしました。魔術に適正があれば全てのギルドに登録できますよ。」
「一つのギルドしか登録できないと勝手に思っていました。専業しないといけないのかと思いまして…」
「冒険者をしながら商売をしたり、商売に必要な物を冒険者で入手したり、魔術を使った商売や冒険者をしたりと、マルチな方はたくさんおられますよ。登録となると、今日は時間の都合で1ヶ所しか行けませんが、時間のある時に他もまわられてみたらどうですか。ただ、各ギルドで登録試験がありますが…」
登録に関して質問をすると、以外な答えが返ってきた。
『登録ギルドに関わる仕事をしなければならない』と勝手に思い込んでいたようだ。
気になる登録試験の内容は。
商業・・・読み書きと簡単な計算
冒険・・・簡単な運動テストと実戦を想定したテスト
魔術・・・規定の魔力量保有と指定魔術の発動
らしい。今から行くのは商業ギルドだが、今更ながらこの世界の文字の読み書きができるのか不安が襲ってきた。
不思議と会話はできる。
そういえば、この世界で意識的に文字を探して目にしていないこと今更ながら気づいた。
この世界の文字が書かれた物…書かれた物……そうだ!紙幣があるじゃないか!!
財布を取り出し、イッコーさんに貰った紙幣を取り出してみた。
アラビア数字で10000と表記されていて、通貨単位はアルファベットでGと表記されている。
そしてアルファベットで『ZIHANG』と表記されているが国名だろう。
なんてことだ!読める!なんとも素晴らしいご都合主義!あとは商業ギルドに着くまでに町の中から文字を探して規則性を補完すれば問題ないだろう。
「それでは商業ギルドまでご案内お願いできますか?」
バッサにそう伝えると私は屋敷の玄関に向かった。




