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祝〜退任〜祝

法人名・株式会社デルクイック

資本金・3,000,000円

代表者・松田 健二

所在地・S県M市

事業内容・食品製造、食品卸売、コンサルティング、付帯する事業一式

年 商・30,000,000円


私が経営する会社概要だ。

いや…経営していた…が今は正しいだろう。

経営していた会社の出資者である親会社に、食品を扱う営業マンとして入社してから僅か4年。

僅か4年で子会社の起業を任された。

営業マンとして入社し、半年で営業課長、一年後に営業部長、その半年後に取締役、その2年後に起業を任された。

気持ち悪いくらいのスピード出世だ。


そして起業して一年、今期を振り返り来期は完全に軌道に乗せると気合いを入れていたある日、株主である親会社の社長からお誘いを受けた。

「明日10時から、緊急で株主総会を開催します。必ず出席してください。」

とんでもない内容のお誘いだった。

定期の株主総会であれば開催実績のカウントの為にという側面もあるので正直怖くない。

未上場の中小零細なんてそんなもんだ。

しかし[緊急]と頭に付けば話は違ってくる。経験上、[緊急]なんて頭に付くことにロクな物はなかった。

それも決算直後である。正直何を言われるか想像も出来ない。

そんなモヤモヤを抱えながら、緊急株主総会当日を迎えた。


翌日〜緊急株主総会当日

私は緊急株主総会に出席するべく、親会社の会議室に向かっている。

4年と短い期間ではあるが、今の自分を形成した懐かしい社内風景を眺めながら歩いている。

見知った顔を見つけるたびに、

「お疲れ様です。」

「お元気でしたか?」

と、サラリーマンテンプレートである、お決まりの挨拶と言葉を何度も繰り返しながら会議室にたどり着いた。


会議室に入る前、決算で計画に乗らなかったから吊るし上げられるのではないか?などと憂鬱な想像を膨らませていた。

事実、親会社から求められていた売上計画には乗せられなかった。

そうなると、利益も計画には乗っていない。販売管理費を引くと赤字での着地になる。

本日の主役、吊るし上げられる要素は十分にある。

それを想定し、今後の主力商材になるであろう商品案と、商品開発のプロジェクト内容、現在に至る経緯、その根拠となる資料を、パワポ先生にご協力いただき昨夜作って用意してある。

一応準備は万全だ。

万全だが憂鬱な気持ちは晴れることなく、会議室の扉を開いた。


会議室に入ると親会社の三役がすでに到着して待ち構えていた。

私が一番最後に到着してしまったようだ。

たった4人の株主総会。

4人の背景は、親会社が100%出資の100%株主になる。その会社の代表、次席、常務の三役が親会社の関係者として、出資を受けたデルクイックの代表の私がデルクイック代表として、合わせて4人の株主総会だ。


入室後、お決まりの挨拶を交すことなく席を勧められ着席する。

何か空気が違う、代表しか顔を上げていない。

今までに感じた事の無い緊張感が漂っている。

そして挨拶の言葉もなく、


「デルクイック代表取締役を本日をもって退任していただきます。これは株主である当社役員の総意であり、決定事項です。金融機関、士業の方々への連絡と手配はしてありますので、速やかに退任手続きの準備をして、本日中に退任をしていただき、引継ぎを完了して去っていただきます。」

親会社の代表からの一方的な通告。

今日ここに至るまで何も聞かされてなかった。何も匂わされてなかった。


「緊急株主総会は以上で終了します。お渡しする書類に署名捺印後、本日13時までに私に提出してください。15時から引継ぎ要員を行かせるので引継ぎをし、本日中に会社から去っていただきます。」

現実を理解する間もなく、緊急株主総会と私の法人代表としてのキャリアが終わった。




フィクション?ノンフィクション?どっちでしょう?

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