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逃走は許されず、果ては闘争へ

 謎の二体……人間を素体にモンスターを組み合わせて雑にメタルにした感じのモンスター二体に唐突に襲撃された俺は、困惑と焦りを胸に抱きつつ何とか応戦を開始した。


「やっ、ば!」


 こいつら誰!?なんでバレた!?

 人間の四肢のしなりから繰り出される獣の爪の攻撃をいなし、もう一体が飛ばしてきた音波を地面を転がることで回避する。あのグレネードと違ってちゃんと範囲を示すエフェクトがある!有情!


「踏み込み」


 右足で踏み込むと同時に体を沈み込ませ、左足を軸に右足で一体に足払いを仕掛ける。参考資料は放たれる独楽!

 うーん手応えなし、相手の体幹がブレる様子も無しと。すげぇ、鉄の板にキックしたみたいだ。


「上!」


 叫んだ言葉は報告ではなく、雑多に散らかった思考をまとめ上げるためである。テンパった心を言葉で無理矢理落ち着かせろ。


 頭をかち割ろうとする踵落としを刃で受け止め……たところまでは良かったのだが。左足のみで体重を支えている上、半端に膝を曲げている状況で相手の体重が籠った足技を受け止めれるわけも無かったのは、今になって、上からかかる圧力で前後に開脚させられた今になって気づいた。


「ぐっ……」


 このゲームに体の柔らかさ云々なんていうステータスは無いが、其れとは別に人間としての限界がある。この体勢から踏ん張るなんていうのは無理なので次の攻撃を防御できない!あと普通に絵面がヤバイ、女の子やぞ今は。

 手首を傾けて刀の向きを変更、流し受ける防御として刀の側面を使う!バランスが保てなくなったのか一体は後ろに飛びのき、それに合わせるようにもう一度音波を放ってきた個体の方は体を横に倒してから転がって対処する。


「……良い連携するじゃん」


 下がった一体に横並びになったもう一体……わかりづらいな、AとBにしよう。Aと横並びになるように移動したBを睨みながら、そう言葉を零す。

 Aが近距離を担当し、Bが中距離から音波、隙があれば近距離の攻防に参加する、単純な陣形ではあるがそれゆえに対策しずらい。此処に居るのが二人であるなら一体ずつ交戦したりできたのだが、生憎今の俺はソロなせいで2対1を強いられ……


「いいや、違うな」


 強いられている?違う、今の俺はそれを拒否する手段を持っている。


「お披露目と行こうか」


 動き出そうとしたAとBに、挑発的に言い放った。


「天災流」


 刀を鞘に納め、足裏に力を集中させる。Bが音波の準備モーションである口を大きく開く動作を開始したのと、ほとんど同時。


「『朱月しゅげつ』」


 鞘から抜き放たれた刀身は金属光沢を帯びた銀色ではなく。紅い、朱い、まるで鮮血のような色彩を放っていた。俺の血《HP》を消費し、放つスキルである朱月。斬撃の跡を空中に残すように刻まれた鮮血の軌道はまるで


()い三日()


「っよし!」


 飛んでいった血の斬撃を喰らい怯んだBを横目に、一気にAに肉薄する。そんなに露骨に距離とって音波ばっか出してたら近づかれたら困るって言ってるようなもんだろ!恐らく攻撃準備モーション中は怯みやすくなるとかそんな感じ。


「俺を見ろよ」


 仲間意識からか、只相方に攻撃されたのが不都合だったのか。金属の頭がほんの一瞬だけ、俺を捉えずにBの方を向いた。拗ねちゃうなぁ、相手は俺だぞ?


「新スキルぅ!」


 『ソードプロッド』発動!名前通り剣での突きを放つスキル。ちょっと大振りと言うか溜めが長く設定されているのが気になるが、こんな隙を晒されてしまえば関係ない。狙うは喉、真っすぐに突き出された刀は誰にも阻まれずその喉仏を貫……かなかった。


「やっぱり、な」


 心地いいとは言い難い感触と、攻撃に怯むことのないのっぺりとした顔面と眼が合ってしまったのが合わさり強烈に嫌な予感が走り、後ろに飛びのいた。

 大きな怯みでは無かったらしいBも復帰し、スキルを使ったのにも関わらず何のリアクションも見せてくれないAがまた横並びになる。結局振り出しに戻ってきちゃったなぁ。


 多分だが、俺の攻撃は一つもアイツらに効いていない。聞いていたとしても本当に僅か……というのが、この一分ぐらいの戦闘を経た俺の答えだ。


「流行りなのか?攻撃無効」


 神ゲーと言われてるにもかかわらずこの攻撃無効三昧、結構やらかしてないか?いや、あのデカスライムはフィールドボスだから全員が戦う訳じゃないし吸血鬼の里も全プレイヤーが行く場所じゃないな?

 それにこいつらはなんて言うんだろうか、他のモンスターとは雰囲気が違う。さっきの狼とデカスライム、どっちがこいつらに雰囲気が似ているかと聞かれればスライムになる。


 それじゃあフィールドボスなのか?けどフィールドボスは接敵した瞬間にウィンドウが出た筈……。


「ギギギギギギ!!!」


 あぁごめんな?ちょっと意識が逸れて


「え?」


 今の高速回転する金属に金属こすり合わせたみたいな不快な音もしかしなくてもお前らが出した?え、鳴き声とか今まで一回も出してこなかったよね?


「ちょっと待て」


 何でジリジリと下がっていくのかな君たち。

 いつの間にか戦っているうちに移動していたようで、あいつらの背後にはどうやらそこそこの広さがあるらしい空洞が広がっていた。

 こいつらのプロフィールを整理しよう。獣の爪を四肢に持ち合わせ、背中からは蝙蝠の羽。そのほかにも動物的な特徴が盛り込まれているキメラだ。そして、キメラなのに人型なのは恐らく理由がある。此処が吸血鬼の里の地下である、という単純な理由が。


 はい、ここまでの情報を踏まえて。このダンジョンの集大成みたいなモンスターが、只の雑魚ではないということは言うまでもなく。そいつらをほんの少し追い詰めたら、おもむろに逃走し始めた。

 情報を纏めるごとに首筋を嫌な予感が伝っていく。あぁ、俺はこれを知っている。中盤辺りから出てくるボスに常備されているアレ……つまりは。


「第二形態!」


『Dungeon Boss 「遍倣」コテピリアル』


 鋼鉄の合成獣キメラが五体、そこには並んでいた。


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