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所変わって、床の上

 という感じで、戦闘を挑もうとしたのだが。俺が突撃しようとした瞬間、魔物達が一気に消失した。


 隠れたとか、逃げたとかそういう次元ではなく、まるで最初からそこに居なかったかのように、静かに消え去ったのだった。


「我らの勝ちだ!!!」


「「「「うおおおおお!!!!」」」」


 城壁(仮)に戻りながら勝鬨をあげる吸血鬼たちを遠目に、カリアさんに説明を促す視線を送る。


「奴らとて四六時中攻めてくるわけじゃないんじゃ。あんな風に唐突に影から現れ、唐突に闇に消える」


「里の中には出ないんですか?」


 影に溶ける様な移動をしていたあれらがどういう原理で動いているのかはわからないが、居住区に現れられたら防衛は困難だろう。


「それは無い」


「……何故?」


 日が沈み昇るように摂理に則って語っているのだと言わんばかりの口調でカリアさんは断言する。


「それはまた今度話そう。ほら、門が開かれるようじゃぞ?」


 今の、大事な気がするな。

 魔物達が原理的に入ってこれないなら防衛する必要はなく、それならあの瞬間移動が里の中へは使えないことになるが……。

 それなら里の目の前である此処で使えた理由はなんだ?


 何もかも情報が足りない。ピースが欠けてるパズルをやらされてる感じと言うかなぁ。まぁ今解く謎じゃないんだろう、保留。


「置いてく、よ」


「あぁ、すぐ行きます」


 言葉こそ冷淡だが多分に心配の籠った声色で語り掛けた華火花さんにすぐに返答する。

 思考に浸っていたせいで気づかなかったが、既に重厚な扉が開かれ、そこから光が漏れ出していた。



 ◇



 吸血鬼の里、デミアルトラ。

 そこは木材が使われておらず、石材で構成された何処かのっぺりとした印象を受けさせる場所だった。


 何を燃料に光っているのかわからない外灯や、里の中を飛び回るデカめ蝙蝠のような何か。西洋風なファーティアとは違い、リアルでは中々無いであろうファンタジーな街並みであった。


 そんなデミアルトラの建物の一室。宿屋としての役割を持つその建物の床の上で、俺はぐでーん、と脱力しきっていた。


「つっかれた」


 VRゲーム故肉体的な疲労は無いが、精神的に疲弊した。


 あの後、カリアさんに一度休憩するか諸々の説明を受けるかという選択肢を迫られたのだが、いろんなクエストが立て続けにあったのと、やりたいこともあったので休息を選び、宿屋に案内された。


 ちなみにカリアさんの謎の交渉でお金はかかってないぞ!怖いね!


「よ~し」


 過去の振り返り終わり、今を味わおう。

 手元に現れたのはステータスのウィンドウ。そう、スキルだのアクセサリーだの、確認が済んでいないことがあるのだ。


 先ずは……スキルにするか。



 ◆



・朱月:天災流の技が一つ。それは魂を喰らう者たちの力によって開花し、使い手の技として振るわれる。

 居合の体勢になることによって条件を満たし、発動時にHPを消費する。

 放った斬撃の軌跡を血液がなぞり、血液の刃が飛翔する。


 朱き月は、自分に立ちはだかるもの、それに、使用者すら蝕むのだ。月に手を伸ばすには、それでもまだ失い足りないが。



 ◆



「……最高では」


 飛ぶ斬撃だぞ飛ぶ斬撃。HPを消費するのは少し気になるが、それ以上にメリットの方が大きいだろう。


 カリアさんが使ったような魔法を相手にする際、防戦一方じゃあ勝てない時もあるかもしれない。けれど、これがあれば反撃という選択肢も視野に入れることができる。

 凄くメリットがデカい。


 後フレーバーなテキストが結構色々書いてあるなぁ。

 記述的に『魂ヲ喰ラウ者』と関係を持つこととかが条件だったのだろうか。それと、最後に明らかに『星ヲ望ム者』用の一文がある。

 自分の体力なんかじゃ足りねぇよ、ですって。


 スキルはこれくらいでいったん放置、次はアクセサリーを見よう。


 こいつに至ってはまだどういう経緯で手に入れたかわからないんだよなぁ。十中八九『星ヲ望ム者』関連だとは思うけど。



 ◆



夜空の破片:漆黒の宝石に白い欠片、それと赤い一等星が浮かぶ美しい装飾品。役目を終えた夜空の破片は、再び胎動を始めた。見るべきものの元へ、持つべきものが運ぶこと。それが夜空の破片の胎動を、鼓動に戻すために必要なのだ。

 数多の星を光を仕舞い込んだこの宝石は、魔力による光を受け止める。


効果:光線系魔法の吸収



 ◆



 何ともゲーム的とは真逆に位置する感じの文体ではあったが、わかったことが一つある。


 『見るべきものの元へ、持つべきものが運ぶこと』この一文と、吸血鬼……いや、『魂ヲ喰ラウ者』と関わったことでこのアクセサリーに変化が起きたのを鑑みると、他にもあるであろう因子と関わることが俺の、『星ヲ望ム者』の目的なのだろう。


 他の因子のクエストを受けた瞬間に起きたスキルの増加、アクセサリーの変化、因子クエストの受注。


 状況証拠が揃いすぎまである。まぁそりゃ吸血鬼が居た時点で他の因子があるのも想定内だが、全部と関わるのは中々高難易度じゃないかぁ……?


 一つ目ですら華火花さんが通りがかったからっていう運100パーの遭遇だったし……。


 ウィンドウとにらめっこしながら考えていたのだが、目の前に現れた何かによって視線が阻まれる。


 なんだ?小さめのウィンドウ?


『華火花 さんからのメッセージです』


 フレンド以外でもメッセージ送れるのか。いや、パーティ解散してないな、そっちか。


『話したいことがある。廊下に出てほしい』


 オウイッツジャパニーズ果たし状、は流石に冗談。普通にゲーム的な話だろう。


 これで思ったほどじゃなかったからクエスト諦めてとか言われたら……いや、そんな人じゃないな。ごく短い付き合いではあるが、無口だけど結構優しめの人であることは察している。


 断る必要も無いと、ベットの上で勢いよく跳ね起きる。さて、行くか。できれば良い話でありますように!

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