表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/37

8.動き出す闇

年が変わった1月3日、まだまだ正月気分の抜けない日々

そんな日々も少しずつ動き出す、そして変わり出す

平凡な日々だと思っていた事でも一瞬で変わっていく

良い方にも、悪い方にも…



智貴 「守〜資料出来たか?」

守 「はい」

智貴 「ちょっと難しいよな

とりあえずまだ探りが必要だな

表向きの可能性もある」

守 「そうですよね…

記者も嗅ぎつけてるみたいで

変に動かれて逃げられたら困りますね」

智貴 「そうだな…守、今日の夜空いてるか?」

守 「大丈夫っす」

智貴 「俺はちょっとおじさんすぎるから…

お前、女友達とかいないのか?」

守 「女の子は…ちょっと、はい、すみません」

智貴 「じゃぁ、男2人だと怪しいから

友達何人か連れて行けるか?」

守 「分かりました」


守は早速友達にアポを取り、予定をつける

智貴 「守、頼むな

あくまでも自然体でただただ友達と楽しんで来いよ

過度な捜査はするな」

守 「はい、ありがとうございます」

智貴 「何かあったら直ぐに連絡しろ」

守 「はい」


あれから守は母親と2人で沢山のことを

乗り越えてきたと思う

母親が精神を病んでしまった時も

守は揺るがなかった、強かったな…

きっと1人でも沢山のことを乗り越えてきた

あの日から守をずっと見てきた

守が高校を卒業する時

「僕は智貴さんみたいな警察官になりたいです。

父さんは医者は人を救えるんだ

守れる、助けられるんだ。だから誇らしい

そんな事をよく話していました。

僕は医者だけが人を救えるとは思っていません

智貴さんみたいな警察官になって

僕が救われたように、僕も人を救いたいです、守りたいです。

父さんが望んだ僕ではないですが、僕は僕自身が決めた道を進むことで父さんが敷いたレールに囚われず進める気がするんです」


真っ直ぐにそんな事を話す守が一段と大人びて

まだまだ子どもでいいのにな…

そんな立派な言葉を並べずに、苦しいと言って泣く姿でも見せてくれれば

俺もお前に何か…父親とは言わないが

1人の大人として、人生の先輩として何か言ってやれるのに…お前からは学ぶことばかりだ。


「守、お前は今のままで十分だ。

お前の人生は素晴らしいものになる

お前が決めた道が正しいに決まってる

俺が大先輩になるな」

智貴は溢れ出しそうな涙を堪えて守の頭をぐしゃぐしゃと撫でた

そして守もまた、溢れ出しそうな涙を拭っていた



RRRRRR… 美乃里の電話が鳴る

美乃里 「はい」

雅紀 「あ、美乃里ちゃんおはよう」

美乃里 「おはよう〜ってもうお昼だよ」

美乃里はクスクス笑う

雅紀 「ほんとだ、起きてすぐ美乃里ちゃんの声

聞きたくて電話しちゃったよ

もうお昼なんだね ふぁ〜あ」

雅紀は大きな欠伸をしながら話す

美乃里 「それはどうも〜」

照れ隠しで素っ気なくなる美乃里

雅紀 「美乃里ちゃんまだ実家?そろそろ会いたいけど」

美乃里 「まだ実家だよ〜明日には帰るかな」

雅紀 「じゃぁ、明日またご飯しよ」

美乃里 「いいよぉ」

雅紀 「決まりねーまた明日こっち帰ってきたら教えてね」

美乃里 「分かった〜」

雅紀 「じゃぁ俺は寝正月だから美乃里ちゃんを思ってまた寝るわ〜おやすみ〜」

美乃里 「アハッ、おやすみ〜」


あれから雅紀くんはマメに連絡をくれる

そして気のある素振りを見せる

まあ、嫌な気はしない

だけど本心なのかがイマイチ分からない

やっぱり謎な人だよな〜雅紀くんって


私は周りにはアリもしない実家に帰省中だと言っている

年末年始くらい1人でのんびりとしたいし

仕事も溜まっていた

こーゆうところ私は結構冷めてるのかな…なんて思う

本当の自分で接してないから疲れるし、自分でも本当なんてのが分かんなくなる

人と関わらない日常も必要であの日のことを振り返るのも必要で、私はあの苦しみを忘れてはいけないの

私の罪を私は背負わなければいけないの



ハァハァハァはぁっ

ごめんなさい ごめんなさい

お母さん、お願い お母さんお願いだから逃げてー

アハハハハハハッ


美乃里 「はぁはぁ…はあ〜」

(いつの間にかまた寝ちゃってたなぁ)


美乃里はキッチンへ行き水を一気飲みする

そして汗で湿った顔を吹く

美乃里 「はぁーなんか気分転換しよ」


美乃里はジャージに着替え走る準備をする

(帰省中の設定だし、知り合いには会いたくないよなー)

美乃里は帽子を深く被り、マスクをしてマフラーを巻く

時刻はPM5:30

もう、あたりは真っ暗だ

美乃里 「 朝以外に走るのは久しぶりだな〜」

美乃里はいつもと違うルートを走る

美乃里 「少し遠くまで行ってみよ」


(何聴こうかな〜♪

今日は冬ソングメドレーにしよ)

イヤホンからはbacknumberのクリスマスソングが流れ出す

(もうクリスマスは終わってるけど

冬って感じだよね〜うん、好き)


美乃里は気分良く走り出す

美乃里 「ふぅー、二駅分くらい走っちゃったかな〜」

近くのコンビニでお茶を買う

コンビニを出る時、見知った顔とすれ違う

(ん〜?どっかで見た顔なんだけどなぁ…

あ!守さんだ!)


美乃里は横目でチラッと彼を確認した

すると彼もこちらを見ていて

目が合ってしまった

美乃里は直ぐに目を逸らし走り出す

(何故か心臓がバクバクとしている

目しか出してない私にはきっと気付いてないだろうけど

でもなんでこっちを見てた?

あたしがこんな格好だから?

もしかして警察の癖で私を怪しんでたのかな?

それにしても私服は反則

なんか!なんか!ドキッとしたじゃんか!)


大興奮の私は気付いた頃には家の近くまで走っていた

美乃里 「あー声かけるべきだったかな?

いや、そもそもそんな仲じゃないしね」



RRRRRR…画面の名前は涼介

出るか出ないか悩む相手だ…


美乃里 「はあ、なんですか?」

涼介 「普通もしもしとか、はーいだろ」

なんでため息なんだよ

美乃里 「 用もないのに電話してこないでよ」

涼介 「 用があるから電話してるんだよ」

美乃里 「なに?」

涼介 「明日こっちに帰ってくるんだろ?」

美乃里 「え?なんで知ってるの?もしかしてストーカーですか?」

涼介 「なんでだよ、知ってるだろ付き合ってたんだから

毎年4日には帰ってきてただろ」

美乃里 「えー覚えてるの怖いんですけどー」

涼介 「怖くないわ!で?明日帰ってくんだろ?」

美乃里 「まぁ…たぶん?」

涼介 「多分ってなんだよ

明日さー俺とディナーでもどうだ?」

美乃里 「アハハハハハハッ 行くわけないじゃーん」

涼介 「お願いします!」

美乃里 「いや、明日は先約あるし、無理」

涼介 「そこをなんとか」

美乃里 「あのねーそんな大事なら前もって連絡するもんでしょ?昔からそーゆう計画性ないんだから」

涼介 「さすが俺の事よく知ってるなぁ、みのちゃんは」

美乃里 「喜ぶとこじゃないから、とにかく!明日は無理なの」

涼介 「分かったよ、あ、でももし予定キャンセルなったら連絡くれよ

美乃里の為ならいつでも予定空けるから」

美乃里 「調子いいこと言って、仕事の為ならでしょ

お見通しでーす」

涼介 「さすが美乃里ちゃんっ!じゃぁ、連絡待ってるね〜おやすみ」

美乃里は返事もせずに電話を切る


(昔からそうだ、涼介は連絡もマメだし

愛情表現もしっかりしてくれる

デートも沢山するし、一緒にいて楽しいし

だけど涼介は仕事絡みが多い

ネタになる所へはカモフラージュで私をよく連れて行った

楽しく話してても上の空だった

仕事モードに切り替えてネタになる奴を探して、

追って、危ない目にだって巻き込まれる

そんな事に私は耐えられなかったと言うよりも

楽しくなくなっていた

まあ、合わなかったんだよね

それでもこうやって普通に友達感覚で連絡をくれるのは

鬱陶しいけど本当は嫌いじゃない

そんな事、本人には言えないけどね…)


今着きました、店内は若者、カップルが多くて

情報通り流行りのオシャレなカフェです

またわかり次第連絡します


俺は智貴さんにメールを打つと

自然に周りを見渡しながら店員の顔や客層、

店の作りを頭にインプットしていく


ハル 「それにしても守がこんなオシャレなカフェ知ってるなんてな〜彼女でも出来たのか?」

守 「そんなんじゃないって

ほら、俺って美味しいご飯好きじゃん?

ここ美味しいって聞いて流石に1人じゃ行きにくくて…」

たか 「まあーな、俺はこの前彼女と来たけど

確かに美味かった 特に女子は好きそうだな」

守 「やっぱ、こんだけ流行るだけあるよな」

ハル 「守も彼女作って来たらどうだ?最近どうなのよ?」

守 「いらないかな、今は」

のぶ 「さっきコンビニでランニング中の女の人めっちゃ見てなかった?」

ハル、たか 「え?まぢ?」

守 「知り合いに似てただけだから」

少し照れながら答える守

男4人、普段の会話を楽しみながらも

守だけは周りに意識を集中させる

店員のホールはほぼ全員女性か…

リーダーっぽい人はあの金髪の女性だけで

あとはバイトっぽいな…

色々偵察をしていると金髪の男が入ってきた

こんな所に1人で?従業員か?

こんな時間から出勤なはずないよな…

リーダーらしき女性と少し話し奥へと入って行った

奥に席なんてないよな?

従業員なのか?

守 「ちょっと俺トイレ」

守は席を立ちトイレを探すフリをする


(どっちに行った?こっち側か?)

俺は奥に進んでみた

店員 「どうされましたか?華の席の方ですか?」

守 「あ、ごめんなさいお手洗いを探してまして…」

店員 「あ、ああ、お手洗いですね、こちらです」

守 「ありがとうございます」

店員 「失礼します」

店員は小走りでリーダーらしき人の所へ行った

守は聞き逃さなかった

(あの店員は華の席と言った

俺がお手洗いを探していると言うと

不味いことを言ってしまったというような顔をした

間違いない。他に特別な席があるはずだ)


お手洗いを終えるとリーダーらしき女性が守に目線を向けている

きっとさっきの店員さんが華の席と言ってしまったことを報告したのだろう

(俺は確実にマークされている

このまま探って感づかれては困る

今日はこのくらいにしよう…)


さっきの店員さんが前から歩いてくる

守 「あ、先程はすみません。

ここのお店始めてで、直ぐに案内して下さり助かりました」

守はペコッと頭を下げて自分の席に戻る

視界の端で店員さんがリーダーらしき人に報告しに行ったのを確認した

(2人とも険しい顔から安堵した顔に変わったから

上手くマークは外せただろう…

まだまだは課題は沢山ありそうだが

今日はここまでかな…)


守は友達との食事に集中しようとした

その時、

奥からあの金髪男が出てきてその腕には

だいぶ歳の離れた女性がくっついている

(どういう事だ?)


女性の様子は普通だが普通じゃない感じもする

金髪男はリーダーらしき女性に声を掛けて女性を連れて出て行った

追い掛けたかったが

智貴さんからの言葉を思い出す

(1人行動は絶対するな

今日はあくまで下見で偵察だ

余計な動きをしてバレてしまえば終わりだ)



守 「あー美味かったなー」

はる 「なっ!」

守 「そろそろ出るか」

たか 「 行くかー」

守たちはお会計を済ませ、店を出る

守 「あー丁度よく上司から仕事の呼び出しだー

また遊ぼうぜー」

はる 「おお、お疲れ様〜またな〜」

たか 「気をつけてな〜」

てる 「ファイトー」


俺は普段から上司によく呼ばれて帰るから特に怪しむ様子もなく先に家路に着く

(智さんに電話しなきゃ)


智貴 「はい」

智貴はワンコールで電話に出た

守 「お疲れ様です、今どちらに?」

智貴 「近くだ、角のコンビニまで来れるか?」

守 「スグ行きます」


電話を切ると守はコンビニまで走る

「ガチャ」

守は智貴の車に乗り込む

守「お疲れ様です」

智貴 「おーお疲れさん、どうだった?」

守 「あのカフェで間違いないっすね」

守は先程の情報を全て智貴に話す

智貴 「このまま進めるか…」

守 「そうですね…」

智貴 「明後日くらいにもう一度行けるか?」

守 「行けます」

智貴 「よろしくな」

守 「はい」


…動き出す

闇は知らないところでどんどん動き出して

どん底に誘い込む

まるで蟻地獄のようにみんなを砂の底に吸い込んでいく

這い上がるのが難しい、底の下まで…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ