表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/37

33.普通でいい

(あの日、あの日、あの日…)

やめてください、あなた…美乃里だけは美乃里だけは…

(そうだ…お母さんが私を生かしてくれた)

じゃあ、美乃里にやらせるか?クククグハッハッハッ

(はァっ、はっ…あの笑い声…苦しい…)


美乃里「はぁっ、はぁはぁ…はぁ、夢…か」

(最悪、いつの間にか寝ちゃった…

電気つけっぱなしだ…ごめんなさい守さん…)

携帯を見ると時刻はAM3:28


美乃里は静かにキッチンへ行き冷蔵庫から水を取り出し飲み干す

美乃里「はぁ…」

小さくため息をつく美乃里


(走りに行ったら守さん心配するよね…

はぁ…苦しいなぁ…守さんの傍にいきたい…)


美乃里は真っ暗な部屋でぼーっと考える


(はぁ、守さんと向き合いたいのに…

怖い

誰にも言ったことない…あの日のことは…

私の気持ちなんて誰にも伝わらない

あの日だって…みんな私を腫れ物に触るみたいに扱って

可哀想な目で見てた…

守さんにそんなふうにされたら…私は…)


美乃里「どうなるんだろ…」


美乃里は守の眠る寝室へ向かう

そおっと扉を開ける

美乃里「守さん…」

美乃里は小さな声で呟く


(寝てるよね…起こしちゃダメだよね…

でも、外にも行けないし…

考えちゃうから1人になりたくないなぁ)


美乃里は静かに部屋に入ると扉を閉めた

守が眠るベッドに腰掛ける


(守さん…ごめんなさい…少しだけ隣りにいたい)

守の隣りに横になる美乃里は守の手を優しく握る

(温かいなぁ…守さん…だいす)


守「ん?美乃里?」

守は少し驚きつつも優しい声で呼びかける

美乃里「守さん…起こしちゃってごめんなさい…

少しだけ隣りにいてもいいですか?」

守の手をキュッと握り小さな声で話しかける美乃里


守「ん、おいで」


仰向けで寝ていた守は美乃里の手を優しく離すと

美乃里の方へ体の向きを変え、

優しく腕枕をし、美乃里を抱きしめた


守「美乃里、大丈夫だよ」

優しく声を掛ける守は美乃里の頭を優しく撫でる


守の腕の中にすっぽりと入った美乃里

(温かいなぁ…守さん…ありがとう、守さん…)

美乃里は心地良さを感じ、直ぐに眠りについた


美乃里「すぅ…すぅ…」


守は美乃里の寝息を聞きながら優しく微笑む

(ふぅ…やべぇ…可愛すぎる、嬉しすぎる

俺の心音うるさくないか?ドキドキがやべぇ…)


しばらく美乃里の寝息を聞いていた守は

目を閉じ、美乃里をそっとキツく抱きしめた

(なんかあったか?眠れなかったか?

もっと早く気付いてやれば良かった…ごめん…)


守も美乃里を抱きしめて眠りについた



美乃里「ん…」

(今何時だろ…え…私、夢見てない?今起きてるよね?

はぁ…守さんの腕の中…落ち着くなあ…)


美乃里は守の腕の中から顔を出す

(かっこいいなぁ…)

守の寝顔を見つめる美乃里

すると薄ら目があいて美乃里と目が合う守

守は美乃里の顔を自分の胸に抱きしめる

守「おはよう、美乃里さん」

美乃里「守さんおはようございます」


(今、俺、冷静だよな?大丈夫だよな?

はぁ…可愛すぎるから…やべぇ…朝から…拷問だ)


守「お腹すいた?」

守は美乃里を抱きしめながら声を掛ける

美乃里 「ん」

守「今ね、7時前…美乃里、眠れた?」

美乃里「守さんと寝たらぐっすり眠れました

ありがとうございます」

ニコッと微笑む美乃里


守「良かった」

美乃里の髪の毛を撫でながら答える守

(こちらこそありがとう…)


美乃里「守さん…」

守「ん?」

守は美乃里の顔を覗き込む


(…はぁ、やっぱりまだ言えない

ごめんなさい…守さん)


美乃里「朝ごはん何にしますか?」

ニコッと微笑む美乃里


守「美乃里」

守は意地悪な顔で美乃里を見つめる


美乃里「…///へ?」

体を起こしビックリした後、顔を真っ赤にして照れる美乃里

守「今度ね」

ニッコリと笑う守は起き上がり美乃里の頭をポンッと撫でる

守「よし、朝ごはん準備するか

美乃里はパン?ご飯?どっちがいい?」


美乃里「…パン」

(待って、ドキドキが止まらない

あー守さん…意地悪だ)


守「了解、じゃ先に準備するから

美乃里はゆっくりおいで〜」


守は寝室を出ると洗面所へ向かい顔を洗う

(あー俺、何言ってんだ…やべぇ…これってどんだけ我慢すんだ?キス…もダメか?

あー考えるな、俺

よし、パン、パン、パンに何乗せよっかな〜)

守は顔を拭きながら考える


美乃里「私も顔洗っていい?」

美乃里は洗面所を覗き込む

守「どーぞ、タオル適当に使ってな」

守はポンッと美乃里の頭を撫でてキッチンへ向かった


朝ごはんを準備する2人


2人はテーブルで仲良く朝食をとり、食後の珈琲を飲む

テレビのニュースを見ながら仲良く他愛もない話しをする

時間はあっという間に過ぎて

守は仕事の準備をする


美乃里「守さん、何時頃帰りますか?

夕飯とか…作ってもいい…ですか?」


守「え?いいの?美乃里のご飯嬉しいな

予定では21時頃には帰って来れるけど…

遅くなるようだったら連絡するね」

美乃里「はい、分かりました、お仕事頑張ってください」

ニコッと微笑む美乃里

守「美乃里も今から仕事する?」

美乃里「はい」


守「家のものは何でも適当に使っていいからね

後、買い物に行くなら明るいうちに行ってね

これ、置いとくから使って」

守は1万円札と家のキーをテーブルに置いて玄関へ向かう


美乃里は守の後を追う

美乃里「でも、私が勝手に作るって言ったのに

それに泊まらせて頂いてるので」

とお金を守に返す美乃里


美乃里の頭にポンッと手を置き

守「大丈夫、後で沢山もらうから」

とニコッと意地悪に笑う守


美乃里「…はい

あ、じゃあ…これ」


美乃里は守の手を引き、背伸びをすると守に優しいキスをして

美乃里「朝のお返しです」

と意地悪く笑った


ポカンとびっくりした守だったが、直ぐに表情を変えて

守「足りない」

ともう一度、美乃里からのキスよりも優しくないキスをする


美乃里「ま、守さん、ん…仕事」

守は美乃里から唇を離すと意地悪な笑顔を見せ、

美乃里は照れた顔で守を見つめる

守「はぁい、じゃあ行ってくるね」

美乃里「行ってらっしゃい、守さん

帰り、待ってます」

優しく微笑み手を振る美乃里


守は美乃里の頭を優しく撫で、出て行った


バタン


(やべぇ、俺…)

守はエレベーターに乗りながら頭を抱えた


(あーもう会いたい…早く帰りたい)


美乃里を想いながら仕事場まで向かう守

智樹「よぉ、守」


守「あ、智さんおはようございます」

智樹「お前…なんかいい事あったのか?」

守「んーっ」

守は持っていた珈琲を吹き出しそうになる


守「ケホッ、智さん…何者っすか?」

智樹「ハッハッハ、お前が分かりやすいだけだ

顔に、いい事ありましたって書いてあるぞ」

智樹はケラケラと笑っていた

守は笑っている智樹を見ながら口角をあげる


智樹「ウキウキした顔して楽しみがありそうだが…

そんなお前に残念なお知らせだ」

守「なんすか?」

智樹「今日は徹夜だ…調べたい事件がある」

守「はい」

智樹「あからさまに沈むな」

智樹は守の肩をポンッと叩く


守「え?どこがですか?全然顔色変わってないですよ」

智樹「俺から見たら変わってんだ」

そう言ってガハハ、と笑う智樹


(いや…そうだめちゃくちゃショックだ俺は

あー美乃里さんと一緒に手作りの夕飯を食べたかった…

美乃里さんごめん、今日は遅くなる…

後で電話するか…はぁ…)



美乃里「お腹すいた…」

(なんか食べたいなぁ…これだけ終わらせたら

買い出しついでに何か食べようかな)


美乃里は資料を見ながらパソコンに打ち込んでいく

1時間程経った頃、パソコンをパタンと閉め

大きく体を伸ばす美乃里

美乃里「終わったー16時か…買い物行って、夕飯の準備しなきゃ」


美乃里は守の家を出て、スーパーへ向かう

(守さん何食べたいかなぁ…)

RRRRRR美乃里の携帯が鳴る

(あ、ちょうど守さんからだ、何食べたいか聞いてみよ)


美乃里「はぁい」

守「美乃里さん、何してました?」

美乃里「今、スーパーについたところです」

守「そっか」

美乃里「守さん何か食べたいものありますか?」

守「それが…今日帰り遅くなりそうで…」


美乃里「そうなんですね、じゃあ、帰って温めて食べられるもの作っておきますね」

守「美乃里さんごめんね、ありがとう…」

美乃里「そんな、謝ることじゃ明日もありますしね」

明るい美乃里の声に元気が出る守


守「そうだな、明日は一緒に食べよう

美乃里は先に寝てていいからね

帰って、リビングで寝てたら起こしちゃうかもしれないからベッド使っていいからね」


美乃里「ふふ、はい、分かりました」

微笑む美乃里

守「じゃあ、帰り気を付けてね

もうすぐで暗くなっちゃうから早く帰ってね」

美乃里「はあい、守さんお仕事ファイト」


守「ありがとう」

守は優しく微笑み電話を切った


美乃里は買い物を終わらせ、帰り道、美味しそうなパン屋さんを見つけて

寄り道をしてから家路についた


美乃里「ただいま〜」

ガチャン


(あーなんか…胸がキュッてなる)

美乃里はエコバッグをテーブルに置き、夕日が差し込む部屋を眺める


(こうやってただいまって帰ってきて

たまにはおかえりって迎えてくれる人がいたり…

自分1人だけじゃない家だったり

誰かが帰ってきてくれるんだって…思うだけで

こんなにも嬉しくて締め付けられる…)


美乃里「普通…」

(はあ…多分これが普通なのかな…

普通でいい…普通が…いい

幸せでいたいなんてわがままは言わないから…

純粋に人を好きになって、恋愛して友達と沢山遊んで

仕事して…

ありのままの自分でいたい…

いつまでも過去に…

あの日に…囚われたままでいたくない…)


美乃里「はぁ…」

深く深呼吸する美乃里


美乃里「よし、作るか」

美乃里はキッチンに立つと手際よく夕飯を作っていく


作った夕飯をテーブルに並べ、テレビを見ながら食べる

(守さんと食べたかった…な)

食べた食器を片付け、お風呂を済ませる

お風呂から上がるとちょうど守からメールが届いた

ピコン


時刻はPM21:34

《美乃里さん、ご飯食べましたか?》


《食べました!守さんも帰ってきたら食べてくださいね》


《楽しみです、結構遅くなりそうなので

先に寝ててくださいね》


《ありがとうございます》


美乃里は携帯をテーブルへ置き、守へ手紙を書く


守さん、お仕事お疲れ様です

肉じゃがとお味噌汁、温めて食べてください

冷蔵庫に副菜が4種類あります!

好きな物食べてください


また明日…おやすみなさい。美乃里


美乃里「はぁ…」

(会いたい…な…素直になるってどうやるんだろ…

普通の恋愛ってどうしたらいいんだろう…

今までは偽りばかりだったから…気楽だった

…だけど寂しかった

今は…なんか苦しいけど…幸せ?な気がする

これが普通の恋愛ってことでいいの?

はぁ…この歳でも恋愛ってこんなに悩むんだ…)

美乃里は天井を見上げて目を瞑る


深く深呼吸をする

(考えたくない…仕事…しよう)


仕事に集中することにした美乃里

気が付くと時計は12時を回っていた

(集中したなぁ…もうこんな時間だ)


美乃里「守さんから連絡なしか…」

(刑事さんって大変なんだなぁ…凄いな…)

美乃里は寝支度を整えて

部屋の電気を消し、寝室のベッドに転がった


美乃里「はぁー」

(守さんの匂いだ…落ち着くなぁ)


そのまま眠りについた美乃里


(お母さん、お母さん、お母さんどこ?)

暗闇で母親を探す美乃里

(美乃里、大丈夫よ…)(大丈夫だから)

聞こえるのは母親の声だけで美乃里は暗闇の中

母親を探し続ける


夢の中の美乃里は泣いていて

(お母さん、昴、どこなの…)

2人を探し続ける


(美乃里、お前がやれ)

後ろから聞こえたのは父親の声

(ほら、これ持て)

夢の中の美乃里は大きく首を振る

(じゃあ俺が教えてやるよ)


(はぁはぁはぁっ、お願い、お願いしますお父さん)


「…り、…のり、美乃里、」

「はぁっ、はぁっ」


美乃里は目を覚ます

美乃里「はぁっ、はぁ…守さん…」

荒い呼吸で涙でぐしゃぐしゃになった顔の美乃里


守「大丈夫、美乃里、大丈夫だよ」

そんな美乃里を優しく抱きしめる守


守「怖かったな…美乃里…俺がいるから」

守は美乃里の髪の毛を優しく撫でる

呼吸が落ち着いてきた美乃里は守の顔を見る


美乃里「守さん?」

守「ん?」

美乃里「ありが…とう」

か細く絞り出した美乃里の声


守「ご飯、美味しかったよ、ありがとう」

守は美乃里の頭をポンポンっと優しく撫でる

美乃里「ぅん、お仕事…お疲れ様です」

守「ありがとう、水持ってくるね」

美乃里は頷いて返事をする

守「はい」

美乃里は持ってきてくれた水を飲み干し

コップを片付けにいく守

壁の時計はAM2:43を指している


寝室のドアが開き、美乃里に声を掛ける守

守「美乃里、もう少し一緒にいてもいい?」

頷く美乃里


(そう言えば…あの日の夢を見るって智さんに聞いたな…)

守「美乃里は、いつも怖い夢見るの?」

守の声はとても優しく美乃里に問いかける


美乃里「うーん…そうだね…

見ない日は数えるくらいしか…それこそ守さんといると見ない時多いかもしれないなぁ」

明るく振る舞おうとする美乃里

守「そっか…」

そう言って美乃里の頭を撫で、手を握る守


守「どんな夢か…どんな事があったのか…話せる?


美乃里、俺を信じて

絶対に大丈夫だから」


ベット側の電気が優しく灯り、薄暗い部屋の中

揺れる美乃里の瞳を真っ直ぐに見つめて

優しくも力強く手を握り、力強い眼差しを向ける守


美乃里は少しの沈黙の後、話し出す…

あの日の真実を…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ