23.自分の幸せ?
日曜日、AM5:30
美乃里 「はぁはぁはぁ…」
昴 「お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃっ…」
お父さん、ごめんなさいごめんなさい
お願いします…お父さん…っ
美乃里 「はあー」
美乃里はキッチンへ行き水をゴクッと飲み干す
いつものようにトレーニングウェアに着替えて
家を出る
イヤホンからは大好きなMr.s Green Appleの曲が流れる
美乃里 「ハアハアハァッ…」
(ちょっと早く走りすぎちゃったな)
美乃里はコンビニで水を買う
(久しぶりだな…ずっと来れなかったけど…)
美乃里が久しぶりに来たのは雅紀と会ったコンビニだ
(あの日、私が声を掛けてたら…
あの日ここに立ち寄らなかったら…
そんな事考えたって仕方ないんだけどさ)
美乃里 「よし!大丈夫」
美乃里は少しづつ受け入れようとしていた
帰って朝食をとり準備をする
美乃里 「守さん9時って言ってたよね…」
時刻はAM7 :48
ピコン
《おはようございます
予定通り9時に美乃里さんのマンションにつきます
よろしくお願いします》
《おはようございます、
お迎えありがとうございます!!
よろしくお願いします》
(守さん車出してくれるし、お礼に買ったけど…
お金の方がいいのかな…ガソリン代ですって…
あーどうしよう…ハンカチなんて要らないかな…好みじゃなかったらどうしよう…
こっちのお菓子だけでいいかな…あー悩む)
美乃里は準備していたお礼の品を見ながら考えていた
もうすぐで約束の時間だ
ソワソワとする美乃里
(服、変じゃないかな…
前に見かけた時、守さんオシャレだったよな…
ってそんな事は考えない)
美乃里 「よし!」
美乃里は涼介家族への手土産と涼介への手紙とプレゼント、そして守さんへのお礼を持って
マンション下へ向かう
美乃里 「大荷物になっちゃった…」
(これ、車じゃなかったら大変だ…守さんに感謝)
時刻は待ち合わせの10分前だ
美乃里 「守さん9時に着くって言ってたしちょっと待っておこうかな〜」
と下に着くと守の姿が見えた
守は車から降りてソワソワしていた
美乃里 「守さん、おはようございます」
守 「み、美乃里さん、早いですね!おはようございます」
美乃里 「守さんこそ、待たせてしまいましたか?」
守 「いえ、とんでもないです…
では行きましょう」
(30分前に着いたなんて言ったら楽しみなのバレバレだよな…)
美乃里 「よろしくお願いします」
守 「荷物いっぱいですね、後ろに入れますね」
美乃里 「いっぱいになっちゃって…
車じゃなかったら大変でした。ありがとうございます」
守 「お役に立てて良かったです」
優しく笑う守
2人は車に乗り込み涼介の自宅に向かう
(守さんブラックコーヒーなんだ…
なんだか甘いの飲みそうって思ってたから…)
美乃里はそんな事を思いながら口元が緩む
守 「ん?」
守は美乃里の微笑む姿に気付き問いかけた
美乃里 「あ、ごめんなさい何でもないです」
美乃里は恥ずかしそうに窓の外を見た
(ん?ってなに?ん?って守さんにときめいてる場合じゃないし今日は涼介に逢いに行くだけだし…
変に意識し過ぎてしまった…友達、友達)
美乃里 「守さんはなんで警察官になろうと思ったんですか?」
守 「ん〜道のりは色々あったんだけど
僕が中学生の頃に刑事さんに助けられた事があって
その刑事さんみたいに、誰かを救いたいと思ったのが始まりで、ご縁あってその刑事さんと仲良くさせてもらって…こんな警察官になりたいって強く思うようになって…そこから目指し始めて今があるって感じかな
ちなみにその憧れの人は…美乃里さんも知ってるのかな?
あの、警察署で会った智樹さんって人だよ」
美乃里 「あ、あの人ですね!私も子どもの頃にお会いした事があって…あんまり覚えてないですが…
守さんは夢を追いかけて叶えたって事ですね!
本当に凄いです」
(あーあの人のこと詳しく聞かれたらどうしよう…
どうして知ってるの?どこで会ったの?とか…)
(きっと美乃里さんは触れてほしくないよな…子どもの頃の事は…)
守 「そんな事ないですよ、まだまだ新米です
どんな会社でも、合わないなとか、嫌なこと言ってくるなって人も居ると思うけど、目標に出来る素晴らしい人も居て、自分が尊敬出来て、この人みたいに…この人を越えたいとかそんな思いを持つことが大事だと思っていて…それで突っ走ってきた感じです
美乃里さんは目標にする人や、こうなりたいとか
先のこと考えてたりしますか?」
美乃里 「ん〜守さんみたいに目標にしてる人も尊敬してる人も特に居なくて
だけど自分自身、こうでありたいとか…
こうすべきだよなって事はあります
まぁ、私なんて立派な守さんに比べたら全然、のほほんと暮らしてると思います」
クスクス笑う美乃里
(美乃里さんの方が凄いじゃないか…)
守 「僕もそんなカッコつけて話しましたけど
本当に、ごく普通のつまんない奴です」
アハハッと笑う守
美乃里 「実は守さんと初めてお会いした時
名刺をもらって、警察官で守って…もう使命感凄い!って思いました
名前の通り守さんなら沢山の人を守ってくれそうです」
ニコッと笑う美乃里
守 「それ、結構ネタですよね、アハハッ
よく職場でも言われちゃいます
美乃里さんも僕にとってはもう大事な方なのでちゃんとお守りさせてくださいね」
真剣にニコッと微笑む守
美乃里 「ありがとうございます…」
照れる美乃里
守 「あの、良かったら敬語辞めませんか?
なんだか遠く感じちゃって…」
美乃里 「あ、はい…」
守 「まあ、僕も仕事柄こんな喋り方が多いので
徐々にでお願いします」
ニコッと笑う守
美乃里 「はい…」
優しく微笑む美乃里
その後も他愛もない話しで盛り上がる2人
美乃里の自宅を出てから1時間ほど経った
守 「ナビだともうすぐなはずなんだけど…」
それから10分程で涼介の自宅に着いた
車を停めた涼介は美乃里に問いかける
守 「美乃里さん、大丈夫?しんどくない?」
美乃里 「うん、大丈夫」
美乃里は真っ直ぐに涼介の自宅を見つめていた
守がチャイムを押す
守 「ご無沙汰しております、近藤です」
母親 「今開けますね」
美乃里は溢れだしそうな涙を堪えていた
そんな美乃里の表情に気付いた守はそっと背中をさする
守 「大丈夫」
守の言葉は力強く、真っ直ぐで美乃里を安心させてくれた
ガチャ
母親 「おはようございます
遠くからわざわざ本当にありがとうね」
守 「おはようございます、お時間作ってくださりありがとうございます」
守と美乃里は頭を下げる
美乃里 「おはようございます…荒川美乃里と申します」
母親 「美乃里ちゃん、来てくれてありがとう
2人とも中へどうぞ」
「失礼します」
2人とも涼介の自宅に入り仏間へ案内された
母親 「今日は主人は仕事に出ていて
私だけだけどゆっくりしていってね」
守 「ありがとうございます」
美乃里は仏壇を前に立ち尽くしていた
(涼介…涼介…逢いに来たよ…
お花がいっぱい…写真も…あ、私との写真も飾ってくれてるんだ…私からのプレゼントも…
私と涼介でいっぱい…懐かしいな…これ)
美乃里は目に涙を溜めながら写真を覗き込む
付き合いたての若い頃の写真だ
美乃里は静かに仏壇の前へ座り手を合わせる
その姿はとても綺麗で涼介への愛が伝わるようだった
美乃里の目からは静かに涙がこぼれ落ちる
守と母親はそんな美乃里の姿を静かに見守っていた
美乃里はじっくりと涼介に手を合わせ、
母親のところへ行くと
美乃里 「涼介さんに会わせて頂きありがとうございます」
と声を震わせながら深く頭を下げてお礼を伝える
母親 「美乃里ちゃん、顔を上げてちょうだい
こちらこそ逢いに来てくれてありがとう
ずっと待ってたわよ
涼介が刺されて意識不明って聞いた時は
なんで…どうして…って思いで病院に向かったの…
だけど、涼介の想いがね沢山伝わってきたわ
貴方への
だからね、涼介が亡くなった時、きっと今の涼介や私たちに会ったら美乃里さんは自分を責めるんじゃないかって…
涼介も私たちもそんな事は望んでなかったから
亡くなった時も葬儀にも呼ばなかったの
それは美乃里さんにとっても私たちにとっても
良い判断だったのかな…って考える時があるの
あの時、会わせてあげれなくてごめんなさい」
美乃里は涙を流しながら首を横に振る
美乃里「謝らないでください
お母様達の判断は間違えてなかったと思います
私はあの時…涼介に会っていたら
取り乱していたと思います…
こうして私の気持ちの整理ができて、涼介に会いに来れて、とても幸せです
涼介さんとも沢山お話し出来ました」
美乃里は優しく微笑む
母親 「またいつでも来てちょうだい」
美乃里 「ありがとうございます」
守 「私も失礼致します」
守は母親に断りを入れて仏壇に手を合わせる
母親 「美乃里ちゃん、これ」
母親は細長い箱を美乃里に渡す
美乃里 「これは…」
母親 「涼介の部屋にあったの、美乃里ちゃんもうすぐで誕生日?それとももう過ぎちゃったかしら…
この手紙も一緒にあってね、ごめんなさい誰宛か分からなかったから中を見ちゃったの
お誕生日おめでとうって書いてあったから…
久しぶりにこんなに丁寧な涼介の字を見たわ
美乃里ちゃんを大事に思っていたんだなって凄い伝わってね、美乃里ちゃんが重く受け取ってしまわないか…
って考えたんだけど迷惑じゃなかったら貰ってくれる?」
美乃里 「迷惑なんて…嬉しいです
ありがとうございます」
美乃里は目に涙を溜めて優しく微笑む
細長い箱を手に取り開けると素敵なネックレスが入っていた
美乃里は静かに涙を流しながら
ネックレスを手に取り自分の首へ付ける
美乃里 「本当にありがとうございます」
母親 「とても似合うわね、受け取ってくれてこちらこそありがとう…
美乃里ちゃん、約束して欲しいことが1つだけあるの…」
美乃里 「はい」
美乃里は姿勢を正し、母親の顔を真剣な表情で見つめる
母親 「これから先、涼介の事は忘れてとは言わないけど
涼介を思って美乃里ちゃんが前に進めなくなるのは嫌なの…
美乃里ちゃんを責める人は誰もいないの
本当よ?誰1人と貴方が悪いなんて思ってないの
だからね、自分を絶対に責めないで
そして沢山の人と出会って、恋愛もして
美乃里ちゃんが幸せになれる選択をして欲しい…
その日々の中でたまに涼介を思い出して元気かな?と思ったらいつでも会いに来て?いい?」
美乃里 「はぃ…」
美乃里は涙を流しながら何度も頷いた
少しお茶を飲み、守と美乃里は身支度を整える
守 「この度は私たちが居ながら本当に申し訳ありませんでした。涼介さんにご挨拶できる機会を頂きありがとうございます。」
母親 「あらあら、貴方も毎回いいわよ、もう何回謝るのよ…
こんなしつこい刑事さんもいるのね」
母親は美乃里に向かって意地悪に笑ってみせた
美乃里 「ふふふ」
母親と美乃里は控えめに笑い合う
母親 「刑事さんも美乃里さんをここまで連れてきてくれてありがとうね
貴方は本当に優しいわね、なんか伝わるわ…
あなたの思いはいつも真っ直ぐだから、嘘がなくて
私は好きよ、ふふふ」
母親に褒められ、照れる守を見て笑う美乃里
守 「では、失礼致します」
美乃里 「お父様にもよろしくお伝えください
本当にありがとうございます」
母親 「美乃里ちゃんいつでも遊びに来てね」
母親は優しく美乃里に問いかける
美乃里 「はいっ」
美乃里は笑顔で返す
守と母親は美乃里の笑顔を見て微笑んだ
2人は車に乗りこみ、涼介の家を出る
少し車を走らせたところで涼介が声を掛ける
守 「少しコンビニ寄ってもいい?」
美乃里 「はい」
コンビニに車を止めると涼介は携帯を見て連絡の確認をしていた
守 「ちょっと電話してきていい?」
美乃里 「はい、あの私何か買ってくるのでどうぞ車で電話してください
守さんは何か欲しいものありますか?」
守 「ありがとう、僕は何もいらないよ
待ってますね」
美乃里 「はーい、行ってきます」
ニコッと笑う美乃里
(あー可愛いなぁ…)
美乃里はコンビニに入って行く
美乃里 「守さんコーヒーでいいかな?…」
(お手洗いも行っとこ)
美乃里は飲み物とちょっとしたお菓子を買って車に戻る
守は電話も終わり、美乃里を待っていて
コンビニから出てきた美乃里に笑顔で手を振る
美乃里 「戻りました〜お電話大丈夫でした?
もし、急用がありましたら私電車で帰れるので遠慮なく言ってくださいね」
守 「大丈夫だよ、ありがとう」
優しく微笑む守
美乃里 「良かった」
美乃里もまた優しく微笑む
ガサゴソとエコバッグの中身を見る美乃里
守 「僕いつもエコバッグ忘れちゃうんだけど
忘れたのに買うのが嫌でもいつも両手いっぱいに持って
買ったもの落としたりして、あぁ袋買っておけば良かったって思っちゃうんですよね〜アハハ
ちゃんとエコバッグ使う人っていつも素敵だなぁって見ちゃうんですよね」
美乃里 「守さんはそうやって直ぐに人の良いところを見つけて褒めてくれるの素敵です」
ニコッと笑う美乃里
守は照れ臭そうに微笑む
美乃里 「守さん、コーヒーはブラックでいいですか?」
聞きながらブラックコーヒーを手渡す美乃里
守 「あ、え、買ってきてくれたんですか?
気を遣わせてしまってごめん…有難く飲み干します
お礼に今日、夜ご飯ご馳走させて!」
美乃里 「そんなっ…全然割合が違うじゃないですか!」
(てゆうか、今日?え?
サラッと誘ってくるなぁ…まぁ友達だから?
でもそれって夜まで一緒にいるってことだよね?…って
私なんで浮かれてるのよ!)
守 「美乃里さんは予定ない?
今ってなんか映画とかいいのやってるかな〜最近テレビでしか見ないから
久しぶりに映画とか行きたいんだけど…どう?」
美乃里 「予定…はないですが…守さんは良いんですか?
あ、もしかして涼介のお家に行った後なので私のこと
気遣ってくれてますか?」
守 「いいえ、僕がまだ美乃里さんと居たいんですよ」
守は優しく微笑み美乃里の頭をポンと撫でる
美乃里 「??…はぃ…」
美乃里は驚いて返事をする
守 「よし!決まりですね
出発しまーす」
美乃里は驚きながらも少し照れた様子で微笑んでいた
(サラッと頭ポン…もしかして守さんって慣れてる?)
道中、2人は映画の話で盛り上がり
都内に戻ると映画館へ行き、流行りの映画を見た
映画が終わると時刻はもう夕方過ぎで外は暗くなり始めていた
守 「少し早いですが、夕飯に行きましょうか」
美乃里 「はい、守さんは何食べたいですか?」
守 「今の気分は洋食かな、美乃里さんは?」
美乃里 「私は何でも食べれちゃいます!なので洋食行きましょう」
守 「僕のおすすめでいいですか?」
美乃里 「もちろんです」
美乃里は笑顔で微笑む、楽しそうな美乃里を見て
守もまた、優しく微笑む
2人はレストランに着くと角の席に座る
守 「食べたいもの何でも頼んでね」
美乃里 「美味しそう〜悩むな…」
守 「どれで悩んでる?」
美乃里 「これとこれです…どっちも美味しそう」
美乃里は真剣な顔付きでメニューを見ている
守 「あははっ可愛いなぁ、本当に」
守は言いながら店員さんを呼ぶ
美乃里 「へ?」
守 「このハンバーグとこちらのパスタをお願いします」
店員 「かしこまりました」
美乃里が拍子抜けしている間に美乃里が食べたかった2つをサラッと注文する守
美乃里 「守さん、ダメですよ!守さんは何が食べたかったんですか?」
美乃里は少し怒って問い詰める
守 「本当に僕も美乃里さんと同じのが食べたかったんですよ?シェアしましょ」
守は優しく笑う
美乃里 「ありがとうございます…」
美乃里は少し頬を膨らましながらも有難くお礼を伝えた
食事がくると2人は仲良く食べ、デザートも頂き
レストランを後にして車に乗り込む
美乃里 「あの、守さん
映画もお食事もご馳走になんてなれません」
守 「いーのっ」
美乃里 「それに、今日は車も出してもらって
至れり尽くせりで申し訳ないです」
守 「そんな、申し訳なくさせる訳じゃなかったのになぁ」
守は少し困りながら考えていた
守 「じゃあ、今度は美乃里さんがご馳走してよ
美乃里さんのおすすめ紹介して?」
美乃里 「分かりました」
美乃里は少しの不満さを残し、口を尖らせながら返事をした
守 「あははっ、ありがとう」
守は可愛げな美乃里を見て嬉しく笑う
美乃里の自宅へ着き車から降りる美乃里
美乃里 「守さん、今日は本当にありがとうございました」
美乃里は頭を下げる
守 「また、そんな他人行儀にしないで、ね?」
美乃里 「はい…」
守 「やり直しですね、ありがとうって言ってください」
守は意地悪な顔で微笑む
美乃里 「あ、ありがとぅ…ござい…ます」
守 「あははっ本当に可愛いなぁ」
守は美乃里の頭をポンポンと撫でると、顔を覗き込んだ
守 「今日は楽しかった、こちらこそありがとう」
美乃里 「はい…」
美乃里は恥ずかしそうに頷く
美乃里 「あ、守さんトランクにお菓子を…」
守 「お菓子?買ったっけ?」
守はトランクを開ける
美乃里 「あの、これ本当に少しですが今日のお礼です」
美乃里は朝に積んだお菓子とプレゼントを渡す
守 「そんなのいいのに!でもありがとう
本当に美乃里ちゃんは気が利いて思いやりがあって
僕の理想の女性です」
ニコッと笑う守にガバッと顔を上げて拍子抜けする美乃里
守 「ははっ、じゃぁまた連絡するね
ゆっくり休んでくださいね」
美乃里 「あ、はい…」
守 「冷えるので先にお家に入ってください
美乃里さん、おやすみ」
もう一度頭をポンと撫でて守は車に乗り込む
美乃里 「守さん、おやすみ」
美乃里は自宅へ向かって歩きながら窓越しに手を振る
守もまた、嬉しそうに手を振っていた
美乃里が自宅に入るのを確認し、守の車は去っていった
家に着き、美乃里はボーッとしていた
(こんなに幸せな気持ちでいいのかな…
私…怖いなぁ…もう、幸せが怖い…
守さんを好きになっていってる自分が嫌だ…
どうしよう…)
美乃里は不安だった…自分のせいで大事な人を亡くすのは
もう嫌だった
誰とも深くならないようにあの日から過ごしてきたはずだったのに…
美乃里の真実は誰にも打ち明けないできたはずなのに
周りの温かさに触れそうで触れられない
美乃里は幸せになりたいはずなのに
どん底を恐れていた…深い自分の中の闇に恐れていた