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22.変わりゆくもの、変わらないもの

あの日、皐月さんに会ったあの日、

私はもう…許してもいいのかもしれない…と

私は私の罪を許していいのかもしれない…

私が、私を責めていることで

皐月さん達は苦しんでしまっているのかもしれないと

本当は頭では分かっていた


それでも私が、私を奮い立たせるのは

自分を責めることでしか強く立っていられなくて…


そうでしょ?

だからあの日から毎日この夢を見るんだよね?

ねぇ…お父さん…

やめて、やめて、お願いお父さんっ…


「ハアハアハアハア…はァっ…」


(あーまたいつの間にか寝ちゃった

久しぶりで早く来たのが間違いだったな…)

美乃里は水筒の水を飲み干す


ガチャ

かれん 「美乃里〜久しぶり!体調はどう?

もう会社来て大丈夫?私も美乃里が早く着くって行ってたから早く来ちゃったじゃん」

ニコッと笑うかれんは相変わらず可愛かった


美乃里 「心配かけてごめんね、、

もう、だいぶ大丈夫だよ仕事も有給使いすぎちゃった」

美乃里は優しく笑う


(ニュースになった涼介の死と洋平くんと雅紀くんの逮捕

直ぐにかれんから連絡が来たけど私は返せなかった…

連絡を返せたのはつい最近で

雅紀くんと私の関係の事は言えなかった…

変に心配かけたくないし…あの合コンで出会ってなければって…かれんに負担をかけたくなかった

かれんはこんな偶然あるんだね、と言っていたけど

本当は全て私のせいだ…

かれんは私を思って涼介の死を一緒に泣いてくれた…

どうして私はいつも周りの人を笑顔に出来ないんだろう)


かれん 「美乃里〜おーい!美乃里〜」

美乃里 「あ、ごめん…ぼーっとしちゃって」

美乃里は笑って誤魔化す

かれん 「大丈夫?まだ無理してるんじゃない?休む?」

心配そうなかれんの顔

(あーだから、こんな顔させたいんじゃないのに

しっかりしろ私!)


美乃里 「本当にもう全然大丈夫!

今日さ久しぶりの仕事だから早く起きすぎちゃって

今になって眠くなって、ぼーっとしちゃった

いつものこと」

美乃里はなるべく平然と答え、いつもの笑顔でかれんを見る

かれん 「本当に?無理してない?」

美乃里 「本当に大丈夫!

かれんこそどうなの?あれから話し聞けてなかったから聞かせてよ!

まだ時間あるし下でコーヒーでも買いに行こう」

美乃里とかれんは部屋を出て、1階のカフェへ向かった


かれん 「それがさ、なーんか微妙な流れで

光太が奥さんに全部話して離婚しようってなったんだけど離婚届のサインって所でなんか急に離婚しないって言い出して…

それで光太が色々 問い詰めたら奥さん妊娠中だって言って…」

美乃里 「え?」

かれん 「そう、びっくりでしょ?

だけど光太は絶対に俺の子じゃないってなって

そりゃぁ、光太はレスって言ってたし、有り得ないって

言うんだけど奥さんは光太の子どもって言い張るの

もう私はどっちが本当の事を言ってるのか分かんなくって…」

美乃里 「そりゃぁそうよね」

かれん 「うん、だからどうしたらいい?ってなって

ずっとDNA検査を奥さんが拒否してたんだけど

最近になって承諾してくれて…今DNAの検査結果待ち」

美乃里 「それは大変だね…」

かれん 「でしょ?

だけど夫婦の事は夫婦にしか分からないことがあるからさ

私は待つことしか出来ないんだけどね」

美乃里 「かれんは強いね…」

かれん 「え?これって普通でしょ?」

美乃里 「その普通が出来ない人の方が世の中多いんじゃない?」


美乃里とかれんは久しぶりの再会でお喋りに夢中だった

そしてこんな普通の日常を待ち望んでいた美乃里


(こうして、変わらない日常に溶け込んで

毎日過ごしてたんだな…

私の気持ちや涼介がこの世に居るっていう日常は変わったはずなのに

この社会は何も変わらないし、時間は同じように進んでいくんだよな…

そう思うと、自分が気付かないだけで

変わってゆくものは沢山あるんだろうな…

私の中で変わったものがあるように

きっとあの人も、あの人も今日、何か変わってしまった事があるのかもしれない…

私はこのままでいいのかな…)


かれん 「そろそろ始まるね、行こうか」

美乃里 「うん、またお昼一緒に食べよ」

かれん 「私、今日お昼まで会議あるから先に休憩室で待ってて〜」

美乃里 「分かった、また後でね」

かれんはそのまま会議室へ、美乃里は自分のオフィスに戻る


(あの日、守さんからの連絡は無くて

私も連絡する事はなかった…また連絡しますと言ったのは私なのに…

2日後に連絡はあったけど忙しいと返してしまった

何度か連絡はあったのに…返すことはなかった

ただ、怖かった。守さんの優しさに甘えてしまうのが

強くいなければいけない私に

守さんは寄り添う場所を与えてくれようとしていたのかもしれないけど私はそれを受け入れられなかった…

もう誰も私のせいで不幸にしたくない…)


ピコン


《さっき向かいのコンビニで守さん見た〜

やっぱり刑事さんってパン食べながら待ち伏せとかするのかな 笑》

かれんからメッセージと画像が届く

画像には守ともう1人刑事が写っており、守の手には菓子パンとコーヒーが握られていた


美乃里 「守さん…」


《盗撮で捕まるぞ〜笑》

美乃里はかれんにメールを返す


(ちょうど守さんのこと考えてる時に…)

美乃里はなんだか胸が締め付けられる思いだった


智樹 「お前どうした?」

守 「何がっすか?」

智樹 「あからさまに元気が無さすぎるだろ」

守 「え?そうっすか?」

智樹 「気付いてないのか?重症だなそれは


…恋の病か?」

守 「智さん」

守は呆れ顔で智樹を見る

智樹 「ガハハハハッ、すまん」

守 「はあー俺、なんかしたんすかね…」

智樹 「だから言っただろ

気持ちの整理が着くまで待ってやれって

お前は優しいから気にかけ過ぎちゃうんだよ

もっとほっとけ」

守 「気になっちゃうじゃないっすか…

好きな人は守ってやりたくなるでしょ?智さんだって」

智樹 「いや、俺は好きな人だけじゃなくて

悪からどんな人でも守りたい…

なんてったって俺は刑事だからな!ガハハッ」

守 「はい、はい」


ふざけて大笑いする智樹に呆れる守


智樹 「まあ、気長に待て

お前が守るべき人なら必ずまたタイミングが来るさ」

守 「なーんか認めたくないけど

智さんが言うとそうなる気がするんすよね

認めたくないんすけどね…」

守は首を傾げながら歩く

智樹 「だろ?」

智樹は得意気な顔をしながら車に乗り込んだ


守 「今日の張り込み夕方まで長いっすね」

智樹 「刑事らしくコンビニで菓子パンでも買ってくか」

守「そんなんやった事無いっすよ」

智樹 「だからやるんだろ?いつもと違うことをするから

いつもと違う何かが起こるもんだろ

気分転換だよ、気分転換」

守 「へーい、じゃ俺は定番の焼きそばパンで決まりっす」

智樹 「お、いいなあ」


2人は現場近くに車を停める

智樹 「歩いて行くか、この裏側に確かコンビニがあったな」

守 「美乃里さんの会社側っすね」

智樹 「もう仕事行ってんのか?」

守「そんなこと俺が知ってたらこんなに落ち込んでると思いますか?」

智樹 「それもそうだな、知る訳ねぇか」

守 「はぁ…」

智樹 「バッタリ会えたりして」

可愛く目をキラキラさせる智樹


守 「期待させないでくださいよ」

智樹 「アハハハハ」

守 「笑い事じゃないっす…」

智樹 「仕事の張り込みより美乃里ちゃんの張り込みのがしたいよなーガハハハハッ」

守は智樹を呆れ顔で見ていた

(そりゃぁ出来るならそうしたいっすよ…

また連絡でもしたらしつこくて嫌われちゃうかな…)


..



美乃里 「はぁー終わったー

なんか久しぶりすぎて1週間分くらいの労働感…」

かれん 「久しぶりだもんね…お疲れ様」

かれんは美乃里の肩をポンっと叩いた


美乃里 「かれんはもう帰る?」

かれん 「なんか食べちゃいたいよね…

まぁ月曜日だから、明日もあるし

ササッとなんか食べて帰る?」

美乃里 「そうしよー

あー誰かとご飯なんて久しぶりだなー」

かれん 「何食べたい?」

美乃里 「パスタかな」

かれん 「お!いいね、パスタにしよ」


2人は夜食を食べ、家路についた

かれん 「また明日ね」

美乃里 「ありがとう〜かれんのおかげで久しぶりの仕事も助かったよ、また明日ね

おやすみ」


美乃里は歩いていると家の近くで誰かに声をかけられた

男性 「あのー、すみません美乃里ちゃん?」

美乃里 「誰ですか?」

(もう家なんだけどな…早く帰りたい…)

男性 「僕こうゆう者で…少し話しできる?」

美乃里 「後藤…健太さん?記者…」

健太 「そう、涼介の先輩ってゆうかまぁ、兄貴分かな」

健太は優しく微笑んだ


美乃里は健太に軽く会釈すると近くの公園へ誘い

2人でベンチに座る


健太 「もしかしてずっと出てなかった?

前にさ、健太が仕事の時に今彼女の家の近くにいるんで

健太さん迎え来てくださいよーって言われてここら辺に涼介を迎えに来たのを覚えてたんだけどさ

それで涼介いなくなっちまってから美乃里ちゃんのこと気になって…

俺、最近よくここら辺ウロウロして…もうそれは不審者並に朝昼晩とウロウロしてんのにずっと美乃里ちゃんに会わないから、そろそろ辞めようかなって思ってたんだよ


会えて良かった」


美乃里 「すみません…今日から会社も復帰して…

すみません、ご心配をお掛けしてしまって…

あの、私もお付き合いしてた頃はよく健太さんのお話し伺ってました

もう人遣い荒いんだから〜って言いながら

なんかいつも嬉しそうで…」

そう言いながら美乃里は優しく微笑む


健太 「あのさ、美乃里ちゃん

今更 色々言ったって仕方ないんだけどさ、

アイツ…あぁ見えてすげぇ本当に心から好きだったよ美乃里ちゃんのこと

だから美乃里ちゃんのこと助けれて本望だと思ってるよ

美乃里ちゃんも沢山、色んなことで自分を責めてるんじゃないかって思ってさ

そんなの、俺だって一緒だからね?

だってあの日…涼介をあのカフェに誘ったのは俺でさ…

涼介は何にも関係無いのに

俺が1人でカフェに行ってたら涼介は巻き込まれ無かったかもしれねぇし」

美乃里 「だけど…助けを求めたのは私なので…」

健太 「ほら、またそうやって自分を責めてる」

美乃里 「でも…」

健太 「昔から涼介、言ってたんだよなぁ

俺の彼女は心の底がいつも寂しそうだって

美乃里は何かでけぇもん抱えてるって

俺、あいつの心開いてあげること出来ると思います?ってなんか悩んでる時はよく言っててさ…

俺はいつも、何事にもタイミングってのがあるから

そのタイミングを掴むのはお前次第だろって言ってたんだよ

それなのにすれ違いやらなんやらで別れちゃったかもしれねぇけど、涼介は違う関係になっても

美乃里の傍にいたい、美乃里が頼れる俺でいたいってアイツ頑張ってたよ…だから美乃里ちゃんは自分がピンチな時に涼介頼ったんだろ?

それって涼介の頑張りが実ったじゃん?

アイツすげぇ必死だったもん、銃声聞こえた後にさ

美乃里ー美乃里ーってめっちゃ叫んで

警察官が何人も止めに入って押さえつけてんのに

振り払ってさ、人間って必死だとこんな力出るんだって…これが火事場の馬鹿力かって俺びっくりしたもん…アハハッ」


美乃里 「ヒック…ッヒッ…うぅ…」

涙を抑えきれない美乃里


健太 「思い出させちゃってごめんな、俺も辛いけどさ

なんか、アイツのかっこいい話し、美乃里ちゃんにどうしても聞かせたくてさ…

美乃里ちゃん、俺さ…めっちゃ悔しい

涼介のこと…弟みたいに可愛がってたからさ

めっちゃ悔しいんだ…

だけど俺の仕事は記者で、涼介を殺した奴を追って記事にするのが仕事なんだよ

そんな事したくねぇし、アイツらに関係する奴の顔なんか見たくもねぇ…


だけどアイツらだって抱えてるもんがあったかもしれねぇ…

だから俺、アイツらのこと記事にするからさ

美乃里ちゃんが見れるくらい立ち直ったら

俺の記事見てな!もちろん涼介にも見せようと思ってる

それが俺と涼介の仕事だからさ…


伝えたかったのはそれだけ…

最後に。一緒に居たのに涼介を救ってやれなくて本当にごめんな…」

健太は美乃里に頭を下げた


美乃里は泣きながら首を横にブンブン振っていた

美乃里 「ありがとう…ございました」


健太は美乃里の頭をポンポンと撫でる

健太 「こんなことしたら涼介がヤキモチ妬いちゃうな」

ニコッと笑う健太

美乃里もつられて優しく笑う


2人は空を見上げた


美乃里 「あの、落ち着いたら…記事…読むの楽しみにしています…

あと、また涼介の話しも沢山聞かせてください」

健太 「ああ、約束する

連絡先、聞いてもいいかな?」

美乃里 「あ、はい、よろしくお願いします」

健太 「職場で涼介のものまだ色々あってさ、整理してるところだからなんか上げれそうなもんあったら持ってくるね」

美乃里 「ありがとうございます」

健太 「じゃぁ、近くだろうけど気をつけてね

ありがとな、おやすみ」

健太は手を振り去っていく

美乃里 「涼介、ありがとう…」

空を見上げながら呟く美乃里はそのまま家路についた


そんな美乃里の後ろ姿を守は切なそうに見ていた…

10分前程前、守は上司との飲み会から酔い醒ましで徒歩で帰っていた

公園の脇道を通っている時に美乃里の姿を見つけた

隣にはあの時の記者の健太だとすぐに気づく

泣いている姿に胸が痛む守…

守 「美乃里さん…」

健太が美乃里の頭を撫でる姿を見て

(良いなぁ…

って俺そんな事思ってる場合じゃないだろ…

はぁ…俺も美乃里さんの傍に行きたい…

あーなんでっこんな事ばっかり考えるんだよっ)

守は自分のそんな姿にイライラしていた


2人が別れるのを見て、追いかけたい気持ちをグッと堪えた

(待つんだ…今は待つべきなんだ…)

守は自分に言い聞かせていた


美乃里が見えなくなるまで見守っていた守

(なんでこんなに惹かれてしまうのか…

どうしたら…どうしたら美乃里さんの目に映るのか…)

守は美乃里が座っていたベンチに腰掛ける


近くで買った缶コーヒーを開け、ゴクゴクと飲み干す

(待つ…つったっていつまで待つんだよ

俺は今、苦しんでる美乃里さんの近くに居てやりたいのに…

でも弱ってる時に…って思われちまうんかな…

あー分かんねえ、分かんねぇよ…)


少し酔っている守はいつもより荒々しかった

考えれば考える程に美乃里への気持ちが大きくなる守

それでも考えても考えても答えは出なくて

気付けばベンチに座って1時間も経っていた



守 「帰るか…」

(はあ…なんか買って帰ろ…)


守は近くのコンビニにまで行くと、

目の前のコンビニから出てきた人を見て歩く足を止めた


守 「美乃里…さん…」

守は小さな声で呟く


そこに居たのは部屋着でエコバッグを持って

コンビニから出て来る美乃里の姿だった…


美乃里は正面にいる守に気付くと一瞬、驚くが

どちらも避けられない状況を察してすぐに声をかけた


美乃里 「守さん?こんばんは、お仕事帰りですか?」

スーツ姿の守を見て笑顔で声を掛ける美乃里

守 「美乃里さん」


いつも優しく微笑む守だが、少し怒って見える

(守さん…怒ってるのかな…)

美乃里は慌てて連絡をしなかった理由を申し訳無さそうに話し出す

美乃里 「あ、あのずっと連絡返さなくて本当にごめんなさい…

少し1人で整理する時間が欲しくて…

あの、守さんの優しさに甘えてしまったら申し訳ないと…ッッ」


守は美乃里の話しを聞きながら少しづつ美乃里に近付くと美乃里の手を引き抱き締めた


突然の事で固まってしまう美乃里


守 「心配してました…凄く凄く

心配しました」

守の言葉に首を縦に振り頷く美乃里

(恥ずかしいな…守さんお酒飲んでるのかな…お酒の匂い…

私のドキドキ聞こえちゃいそう…どうしよう…)

そんな事を思いながら抱きしめられている美乃里は

下から守さんを見上げると、守さんと目が合う


守 「うっ///」

顔を真っ赤にして美乃里から優しく離れる守

守 「あ、あの…美乃里さん、ごめんなさい」

守は美乃里に頭を下げる

美乃里 「ふふふ」

優しく口元を隠しながら照れくさそうに笑う美乃里

守 「あの、今日飲み会でお酒をちょっとだけ飲んでしまい、あの…あんまり得意じゃなくて、その…お酒が…

ちょっと酔いが醒めてなくて…

美乃里さんを心配だったのは本当なんですけど

あの…

こんなつもりじゃな…本当にすみません…」

色々な言い訳を並べる守は自分の咄嗟の行動にとても申し訳無さそうに落ち込んでいた


美乃里 「ありがとうございます…

あの、守さんのおかげで元気になりました」

ニコッと笑う美乃里とは反対に

守の表情はどこか辛そうだった


守 「美乃里さん…」

(今、美乃里さんに好きだと伝えたら困ってしまうよな…

それにいい返事は貰えない…

今じゃない、落ち着け俺、今は美乃里さんの友達にならなきゃ…)


守 「あの、今度…涼介さんのところどうですか?

何度か涼介さんのご家族と連絡をとってるのですが

1ヶ月程経ってご両親も落ち着いてきたみたいで

美乃里さんが良ければ是非逢いに来てと仰っていました」

美乃里 「ありがとうございます

是非、伺いたいです」

守 「大丈夫ですか?無理してないですか?」

美乃里 「はい、大丈夫です

私も涼介に会いたいと思っていたところなので」


守 「では、来週の日曜日どうですか?」

美乃里 「大丈夫です。涼介の自宅の住所お聞きしてもいいですか?」

守 「あの、美乃里さんが良ければ一緒に行きませんか?

少し遠いですし…僕車出すので…

あ、あの、でも…あの全然断ってくれて大丈夫です」

守は勇気を振り絞り美乃里を誘う


美乃里 「とても助かります、ありがとうございます。こちらこそ守さんが良ければご一緒させてください」

ニコッと優しい笑顔でお辞儀をする美乃里


守 「も、もちろんです!宜しくお願いします」

守も嬉しそうな笑顔で返事をする

美乃里 「では、日曜日に」

美乃里はペコッと頭を下げ、手を振り帰ろうとする

守 「美乃里さん、もう夜遅いので送らせてください」

美乃里 「大丈夫ですよー」

守 「ダメです、送ります」

守は真剣な顔で美乃里を見つめる


美乃里 「あ、あの…じゃぁすみません、お願いします」

美乃里は守の真剣な顔にドキッととする

(あー守さん心臓に悪いなあ…)


守 「美乃里さんいつもこんな時間にコンビニに1人で出掛けたりするんですか?」

美乃里 「え?そんなことは…」

守 「危ないですからお買い物は日中にしてくださいね」

美乃里 「あはははッ」

美乃里は大笑いする

美乃里 「守さん、お父さんみたいですね」

守 「え?そうですか?」

クスクス笑う美乃里と、照れくさそうな守


美乃里 「何だか久しぶりに日常を送ってみると案外変わらなくて、周りはいつも通りで…ってそんな1日を過ごしていたら

あれ?結局 いつも通りで私ってなんも変わってない

色んな事あったのにいつも通りの毎日に馴染んで

つまんない奴って思って…いつもなら絶対しない事をしてみようと思って、コンビニでお酒とおつまみ買ってお家映画でも見て寝てみようかな…なんて思って出てきました

いつもは家に帰ると中々出ないので、違うことしてみました」

ニコッと笑いかける美乃里


守 「いいですね、とても素敵です」

ニコッと優しく微笑む守

美乃里 「え?素敵だなんて…ただのおじさんじゃないですか」

クスクス笑う美乃里

守 「僕も帰ったらお酒飲みながら映画でも見ようかな

って…思いました」

(ほんと美乃里さんと一緒がいいなんて言えないよな…)

美乃里 「一緒ですね」


守 「あ、実は僕も今日いつもと違うことしたんですよ

刑事ドラマみたいに車で焼きそばパン食べました

そんな事したことないのに」

あははと笑う守

美乃里 「えー!!しないんですか?いつも」

美乃里はびっくりしていた

守 「しないです」

美乃里 「するもんだと思ってました」

(あ!隠し撮りは内緒にしておこう…)

守 「あははっそうですよね」


美乃里 「そこの角のマンションが自宅ですので

守さん、ここまでで大丈夫です

送って頂き本当にありがとうございました」

守 「いえ、とんでもないです」

美乃里 「では来週よろしくお願いし」

守 「あの、美乃里さん…

変化は怖い時があります…自分の中の何かが変わると今まで積み上げてきたものが崩れてしまうんじゃないかって

人は変化を怖がります…ですが変わりゆくものは必ずあります

変わりゆくものを美乃里さんの中で変わらないものにしないでください…

変わりゆくものを受け入れてください

美乃里さんは1人で背負いすぎです

僕は美乃里さんともっと仲良くなりたいです

美味しいご飯を食べたり、他愛もない話しをしたり…

あの、なので…その…あれです


お友達とかどうですか?」

(あーなんか偉そうに言い過ぎた…美乃里さん引いてるかな…)

守は真剣な表情から少し照れくさそうに言う


美乃里 「ありがとうございます…

お友達…よろしくお願いします」

優しく微笑む美乃里


守 「あ、ありがとうございます

じゃぁ、また連絡します」

美乃里 「はい、また」

美乃里は手を振り帰っていく


守は美乃里が自宅に入るまで見守っていた

守 「はあー危ねぇ…」

(美乃里さんといると気持ちが溢れそうだ…

あの優しい笑顔…可愛すぎるだろ…)

守は名残惜しく家路につく


バタン

美乃里 「はぁ…」

美乃里はベットにダイブした

(守さんに会えるなんて…良かった…違うことして

ドキドキした…

変わりゆくものを受け入れる…

この気持ちを受け入れるってこと?

いや、これは恋じゃないよね…守さんが優しいから甘えちゃいそうなだけで…

だって…ほら、守さんだって友達って言ってたし

気があるとかじゃないって事だよね?

あー自意識過剰じゃん私

はぁ、とりあえずお酒とつまみと映画…

守さんもするって言ってたし…)


美乃里 「よし、映画に集中だ」

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