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21.待ち人との再会

美乃里 「もうすぐか…」

電車に揺られながら外の景色を眺める美乃里

景色を眺めながら手紙を綴る美乃里


美乃里 「久しぶりだな…全然分かんないや」


美乃里は電車を降りるとバス停でバスを待つ

(今何時だろう…)

美乃里は昨夜から電源を落としていた携帯の電源を入れた


守さんから4通メールが届いていた

かれんからも連絡が来ていた

守さんのメールを確認しようとした時

ちょうど電話が鳴る

RRRRRR電話の画面には守さんの文字


(今は出たくないな…どうしようかな…)

悩んでいるうちに電話は切れた


メールの内容はどれも心配している内容だった

美乃里 「はぁ…」(なんて言おうかな…)


RRRRRRまた電話が鳴る


美乃里 「はい」

守 「み、美乃里さん!なんかありましたか?

返事がないから心配で…」

美乃里 「すみません、充電が切れていまして」

守 「何も無いなら安心しました

ゆっくり休んでくださいね」

美乃里 「直ぐに連絡返さなくてすみません」

守 「いえ、こちらこそ何度もすみません…

今は自宅ですか?」

美乃里 「ちょっと出掛けていまして…」

守 「そうなんですね…


…大丈夫ですか?」


美乃里 「それは全然、本当にただ出掛けいるだけなので

本当に大丈夫です

少し遠いのでまたそちらに戻ったら連絡させて頂きます」

守 「分かりました

あの、僕…今日お休みなので何かあったら

いつでも連絡ください

もし必要でしたら迎えとかも行けたりしますので…」

照れくさそうに声が小さくなる守


美乃里 「フフっ、守さんは本当に優しいですね

ありがとうございます」

美乃里は微笑む


遠くにバスが来るのが見えた


美乃里 「あ、バスが来ましたので

守さん、また」

守 「あっ…美乃里さん必ず連絡くださいね」

美乃里 「はい、失礼します」

守 「じゃあ、また」

美乃里は電話を切るとちょうど来たバスに乗り込んだ


席に着くと外を見ながら守さんを思い浮かべ笑みが零れる美乃里

(守さんって意外と心配性なんだな…フフ)


10分程バスに揺られ、降りた美乃里は

花屋さんへ寄り花を買い、そこから15分程歩く…


美乃里 「ここで合ってるよね…」

美乃里は持っていた手紙の内容と1枚の写真を見ながら

場所を照らし合わせる

美乃里 「どこだろ…」

(写真には大きな木と(すばる)のおもちゃが写っている)


美乃里 「あそこかな…」


沢山のお墓が並ぶ墓地を歩く美乃里


(あ、昴の玩具…ずっと置いていてくれてるのかな…

お墓も綺麗にされてる…)

美乃里が立つ目の前には“荒川家之墓”と書かれている


美乃里は挨拶をし、お花を添える

(お花はまだ新しくて綺麗だから変えなくていいよね

それにしてもちゃんと整理されていて

頻繁に来てくれてるのかな…)


美乃里 「ふぅ…お母さん、昴…きたよ

私は元気にしてるよ…


ダメだよね…私ばっかり生きて…

本当にごめんなさい」


初めて来るお母さん達のお墓を目の前に

美乃里の気持ちは前向きではなかった


美乃里 「ずっと来れなくて…来てもいいのかなって…

分からなくて本当にごめんなさい

最低な娘で本当にごめんなさい…


うう…ひっ…」


美乃里は溢れる涙を止めることは出来なかった


美乃里 「あの…ね

今日はどうしても伝えたくて…


私の大事な人が亡くなってしまったの

また、私のせいで…

夢でね…お母さんと涼介が出てきて

お母さんが涼介を迎えに来てくれていて…

一緒に居てくれてるのかな…

お母さん…昴、涼介…本当にごめんなさい」


(本当はありがとうって言わなきゃいけないのに…)


美乃里は大粒の涙を流しながら空を見上げる

美乃里 「ふぅ…お母さん、また来てもいい?」

(来てもいいのかな…今度はちゃんと…)


美乃里は電車の中で書いた手紙を置いて

少しお墓の周りを綺麗にし、お水を上げて

1時間くらいすると「帰るね」と伝え、お墓を後にした


..


「美乃里…ちゃん?」

美乃里の姿を見て涙を流す女性がいた


美乃里は気付かずに帰路に着く…

女性は急いで美乃里とは逆方向へ戻って行く


ガラッ

「お父さん、お母さん!!大変!」

お父さん 「どうした、皐月(さつき)そんなに慌てて」


女性の名前は皐月(さつき)

年齢は40代後半くらいだ


皐月 「今、い、ま美乃里ちゃんがお墓に…」

お母さん 「美乃里ちゃんが?本当に美乃里ちゃんだったの?」

お父さん 「美乃里…来たのか」

皐月 「どうする?追いかける?まだ遠くには行ってないんじゃない?」

お母さん 「お父さん…」

お父さん 「今日は止めておこう…」

お母さん 「…美乃里ちゃん元気に暮らしてるのかね

会いたいわねぇ」

お父さん 「とりあえずお墓に行くぞ」

お母さん 「お父さんは足が悪いんですから待っててください…ね?」

お父さん 「そんなん知らん、バカ息子に言わないかん

美乃里が来たって

やっと母親と弟に会いに来てくれた…って…

うぅ…美乃里が…ようやく…頑張って来てくれたんだな…」

涙を流す父親につられて母親も皐月も涙を流す


お母さん 「とりあえず…ね、お父さん

お家の仏壇に報告しましょう」


3人は仏壇の部屋へ行くと手を合わせた

そこには

美乃里の母、千佳子(ちかこ)と弟、昴の写真と

その隣の離れた位置に男性の写真が飾ってあった

この老夫婦の息子で、皐月の兄であり、

そして美乃里の父親の圭介(けいすけ)


お父さん 「圭介、美乃里が千佳子さんと昴に会いに来てくれたんだってよ

お前、ちゃんと美乃里のこと見てるんか?

お前が美乃里の幸せ奪って…美乃里がどんな思いで…」

また涙を流す父親

お母さん 「お父さん…」

父親の背中を摩る母親


皐月 「私、お墓行ってくるね

お母さん、美乃里ちゃんに兄さんのお墓は教えてないよね?」

お母さん 「教えてないわよ、圭介のお墓は反対側だし、高橋は沢山あるから気付かないと思うわよ」

皐月 「分かった」


皐月は家を出て、荒川家之墓へ向かう

(お花買ってきてくれたのね…飾っておかなきゃ)


パラッ


皐月 「ん?手紙?」

下に落ちた手紙を拾う皐月


宛名には

お母さん、昴へと書かれていた


皐月は風で飛ばされないようにして

「ありがとう」と呟いた


美乃里の持ってきてくれたお花を飾り、

皐月 「お姉さん、昴くん、美乃里ちゃん来てくれたね

とても綺麗な女性になっていたね

いつかみんなで来れたらいいな…

お姉さん、昴くんいつまでも美乃里ちゃんをお守り下さい」

千佳子と昴のお墓に挨拶をすると急ぎ足で戻る皐月


皐月 「お父さん、お母さん

美乃里ちゃん、お花とお手紙持ってきてくれてたよ」

お母さん 「そう…」

優しく微笑む母親と遠くを見つめる父親


お母さん 「私達も永くは無いし

美乃里ちゃんに会いたいわねぇ…」

お父さん 「美乃里は今でも俺らの大事な孫だ…」


..


美乃里 「小学生以来だからなぁ…もう忘れちゃったな…」

美乃里は歩きながら辺りを見渡す


(おばあちゃん、おじいちゃん…もう私の事は忘れてるよね…)

美乃里は来た道を戻り、バス停に座る

(バス、もう少しかかるなぁ…)

ピコン携帯が鳴る


《お昼ご飯、食べましたか?》


守からの連絡に微笑む美乃里


《朝に沢山食べてきたのでお昼はまだです

守さんは、食べましたか?》


《今日はパスタを作りました

こう見えて料理は得意で良く作ります》

メールと一緒に美味しそうなパスタの画像が届く


(え〜本当だ!美味しそう)


《お店みたいですね!とても美味しそうです》


《美乃里さんは何が好きですか?》


《パスタ好きですよ!お肉もお魚も

何でも食べるの好きです》


《今度、食べに行きませんか?》


(…どんな意味なんだろう…これってお誘い?

でも、守さんは今回の件で気に掛けてくれてるだけだし

ただ、ただ優しい人って感じだし

気がある感じはないし、涼介の事で心配してくれてるのかな…どうしよう…なんて返したら…)


返信に悩んでいるともう一通連絡がきた


《警察官とお食事って微妙ですよね…すみません

気にしないでください

美乃里さんはご予定は順調ですか?

無理したりはしてませんか?》


《全然!そんなことないですよ

ちょっとびっくりしちゃっただけで

私で良かったら是非お食事ご一緒させてください

予定は終わり、今からのんびり帰ろうかなと思っています

バスを待っていたので守さんのおかげで

待ち時間が楽しく過ごせました。ありがとうございます》


《良かったあ

美味しそうなお店リサーチしておきますね

そうなんですね、何時にバスが来るんですか?》


《宜しくお願いします

15時30分のバスに乗るので後45分くらいです》


メールを送ると直ぐに電話が鳴ったRRRRRR

画面には守さんの文字


美乃里 「はい」

守 「すみません、電話…迷惑じゃないですか?」

美乃里 「大丈夫ですよ、心配してくれてありがとうございます」

守 「あの、、」

美乃里 「はい」

守 「えーと、あの、、」

美乃里 「ふふふ、はい」

守 「美乃里さんってどんな人ですか?」

美乃里 「ふははは、それ私に聞きますか?ふふふ

守さん面白いですね」

守 「ああっ、あ、ごめんなさい少し緊張してます…」

美乃里 「私もです」


2人は照れながらも微笑ましく電話を交わす


守 「あの、そう言えば…美乃里さんは走るの好きだったりしますか?」

美乃里 「え?好きですよ、何で知って…あ

もしかしてあの日、気付いてましたか?」

守 「あの、コンビニで美乃里さんぽいなぁ…って

やっぱりあれは美乃里さんだったんですね」

美乃里 「さすが警察官ですね!

あんなに隠してて私って分かったんですか?

守さんに変装は通用しないですね、ふふふ」

守 「いや、美乃里さんが…」

美乃里 「あ、守さんすみませんまた連絡します」


美乃里は守の言葉を遮り電話を切る


美乃里が見る方向には涙目でこちらを見ている

皐月の姿があった

美乃里 「さ…つきおばさん?皐月おばさん?」

美乃里は皐月の元へと駆け寄る

皐月 「ごめんなさい、美乃里ちゃん、さっきお墓で見かけてね、会いたくないとは思ったんだけど

どうしても近くで美乃里ちゃんを見たくて…」

美乃里 「会いたくないなんて…そんな…

皐月おばさん泣かないで

会いに来てくれてありがとう…」

美乃里は皐月の顔を見て優しく微笑んだ


皐月 「美乃里ちゃん、ごめんね?

良く来てくれたね、千佳子さんと昴くんのところに

頑張ったね…ほんと…辛かったでしょ」

皐月は美乃里を優しく抱きしめる

美乃里 「ありがとう、ありがとう皐月おばさん」


皐月 「少し話してもいい?」

美乃里 「うん」

2人はバス停のベンチに座った


皐月 「お墓、初めて来てくれたわよね?

お父さんは足が悪くなっちゃってね、毎日は行けて無いけど私とお母さんで毎日行ってるから…

誰か来たら直ぐに分かるんだけどね…」

美乃里 「はい、初めて来ました…

実はこの間、私の大事な人が亡くなってしまって…

その時お母さんが夢に出てきて、その人を連れ行ってくれたんです…だから…

ああ、お母さんと昴に伝えなきゃなって思って…

ずっと来ないで、お墓のお掃除も、お参りも私がするべきなのに…挨拶もろくにせず本当にごめんなさい」


皐月 「何言ってるのよ、ごめんなさいなんて…

言わないで、美乃里ちゃんがこんなに立派に育ってくれて…もう、それだけで本当に十分なんだから」


美乃里 「皐月おばさん…」

皐月 「美乃里ちゃんを大事な家族と思っているのはお母さんもお父さんもずっと変わらないからね

私達に何か出来ることがあるなら何でも言ってね

お母さんもお父さんも美乃里ちゃんに会える日をずっと…ずっと待ち望んでてね…

美乃里ちゃんさえ良ければまたここに遊びに来て?」


美乃里 「はい…またお母さんと昴にも会いにくると約束したので…

おばあちゃん、おじいちゃんは迷惑じゃないですか?」

皐月 「もうっ!何言ってるの」

皐月は溢れそうな涙を拭いながら美乃里の手を取り、強く、強く握りしめる


皐月 「美乃里ちゃん、お願いだから

貴方は自分を責めないで…貴方は悪くないのよ

もう、いい加減自分を責めるのは止めなさい」


強く、とても強い眼差しで美乃里を見つめる皐月


美乃里 「皐月おばさん…ありがとう

私、こんなんで本当にごめんなさい…

まだまだ弱くて…もっと強くならなきゃいけないのに」

美乃里は涙を溜めながら優しく微笑む


皐月 「貴方は十分すぎるくらい強いわ」


遠くからバスが来るのが見える


美乃里 「皐月おばさん、また必ず会いに来ます

その時はおばあちゃんとおじいちゃんに会いに行ってもいいかな?」

皐月 「もちろん、2人とも喜び過ぎて

お父さんなんて足が治っちゃうかもしれないわ」

皐月は冗談交じりでアハハと笑っていた

それにつられて美乃里もくすくす笑う


バスが到着して乗り込む美乃里


美乃里 「皐月おばさん、またね

会いきてくれてありがとう

私、とても嬉しかった…本当にありがとう」


美乃里は手を振り、皐月は美乃里の言葉に大きく何度も頷き手を振っていた

皐月 「美乃里ちゃん、また必ず来てね」


2人は見えなくなるまで手を振りあっていた


皐月 「良かった…良かったわ本当に…

会いに来て良かった…」

皐月は美乃里が見えなくなると急いで帰路に着く


皐月 「お母さん、お父さん!」

お母さん 「今日は大忙しね、また何かあったの?」


皐月 「実はね、美乃里ちゃんに会いに行ったの…」


お父さん 「何だって?会ったのか?美乃里に…」

お母さん 「あら、買い物じゃなかったの?」

皐月 「買い物には行ったわよ?

でも…やっぱり一目会いたくて…

もし、まだバス停にいたら…と思って覗いて見たら

美乃里ちゃんがバス停のベンチに座ってて

私、話したくて…美乃里ちゃんが気付いてくれて…」


お父さん 「美乃里は嫌がって無かったか?ワシらのこと顔も見たくないって言って無かったか?」

お父さんは悲しそうに、不安な面持ちで聞く


皐月 「ううん、全然

本当に千佳子さんに似て、優しくて綺麗で思いやりのある昔の美乃里ちゃんのままだったよ

ずっと来なくてごめんなさい…なんて私に言ってね…

ごめんなさいなんて美乃里ちゃんが言うことじゃないのに…」


お母さん 「うん、うん、そうね」

お母さんは涙ぐみながら皐月の話しを聞く


皐月は美乃里との事を話し、今度 来た時は会いに来てくれると言うと

2人はとても喜び、今からワクワクとドキドキが

止まらないと美乃里に会えるのを楽しみにしていた


この家族もきっと、あの日のどん底の柵からまだまだ抜け出せていないのだろう…

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