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19.ばいばい、またね

はぁ…ハァハァはぁっ…

ドンッ

「お母さん逃げて…お願い逃げて」


美乃里 「はあ…やっぱり見るか…

はぁ…涼介…会いたい」

美乃里はいつもの夢で目が覚める

走りたい衝動を抑え、窓際に立ち外を眺める


時刻は0時を過ぎたところだった

美乃里 「私…何時に寝たんだろう…20時過ぎだっけ」

ぼーっとする頭で考える美乃里

テーブルに置いていた携帯を手に取る


美乃里 「ん?」(何これ)

テーブルに置いてある見覚えのない袋を手に取る

ゴソゴソ…

中を覗くと小さな紙に

“良かったら使ってください”

“冷蔵庫に甘いもの入れておきました”守

シンプルなワンピースが2着程入っていた

冷蔵庫にはプリンとケーキが入っていた


(部屋着でも外でも使えそうだな…

後で有難く頂こう

守さんわざわざ持ってきてくれたんだ…)


美乃里 「ありがとうございます」

美乃里の顔はとっても優しい表情だった

いつもの悪夢を忘れるかのように穏やかな気持ちになっていた

美乃里はベッドに座り、手紙の続きを書く


私の命の恩人、涼介へ

涼介、とてもとても会いたいです

涼介が見てる景色はどんな景色かな…

寒くない?寂しくない?

私は涼介を失ってとても寂しいです

私は涼介の愛に答えることはなかったけど

貴方を特別に感じていたことは本当だよ

特別だったの

私の人生の中で涼介の存在は大きくて、

いてくれる事が当たり前だったのに

もう声も聞けないんだよね

美乃里、みのちゃんって…

貴方はいつも暖かくて沢山の愛を与えてくれて

真っ直ぐで素直で優しくてヤンチャで…

私はこれでいいのかな?

ねぇ、涼介

戻ってきて


美乃里 「はぁ…ダメだな」

美乃里は溢れる涙を拭うが、

目の前の便箋は涙で文字が滲んでいく


(戻ってきてなんて無理なのに

いないのに…また私は涼介に心配かけて…

はぁ、涼介、なんでいなくなっちゃうの)


美乃里はどれだけ涙を流しただろう…

何度も何度も思っても、願っても

届かないものはある

届かないと分かっているけど

遺された人達は自分を保つすべを吐き出すしかない


美乃里は何度も書き直す

涼介が心配にならないように

大丈夫だよ、ありがとう…と


(よし、書けた!涼介、大丈夫だよ、私

私…大丈夫だよね)

美乃里は何度も言い聞かせた


真っ直ぐで素直で優しくてヤンチャで…

涼介と過ごした彼女としての時間も

今までの時間も全部全部、絶対に忘れないよ

涼介、貴方は私のヒーローだよ

どんなときも…

私に沢山の特別な時間をありがとう

私を救ってくれてありがとう

私は大丈夫だよ、涼介

たまに貴方を思って涙する時もあると思うけど

涼介が助けてくれた私を、大事にするね

きっと私のお母さんにも会えたよね?

弟とも遊んであげてね

いつか、また会える時まで待っててね

少しだけバイバイだね、またね涼介


美乃里は手紙を書き終え、携帯を見る

時刻はAM4:38

(もうすぐで朝か…寝たらまた夢見ちゃうかな…

どうしよう…)


美乃里は守が持ってきてくれたワンピースに着替え

冷蔵庫からプリンを取り出し食べる

「いただきます」


(仕事…少しお休みしようかな…

SNSも溜まってるだろうな…少し休止にしよ)

美乃里は携帯を開きSNSを操作する

(最近更新出来てなかったし…)


しばらくの間お休みします

今までの連絡はゆっくりにはなりますが

必ず返信しますのでお待ち頂けたら嬉しいです

宜しくお願い致します


SNSに投稿した美乃里は

次に守さんの番号を登録し、ショートメールを送る

(まだ早すぎかな…お礼は早めがいいよね…

だけど起こしたら申し訳ないかな…)

悩みながらもメール文を作成する美乃里


《おはようございます。美乃里です

お洋服と、デザート受け取りました

お忙しい中ありがとうございます。

とても嬉しいです!!

また後ほど宜しくお願いします》


(ちょっと堅いかな?いいよね…

もう送っちゃおう)


守の返信は意外と早かった


《ご連絡ありがとうございます。

とんでもないです

僕が勝手にした事ですのでお気になさらないでください

こちらこそ宜しくお願いします

では後ほど^^》


(起きてたのかな?守さんも今起きてるんだ…)

美乃里は守からの返信で1人でいる寂しさが

少し和らいだ気がした


そして窓際で外を見ながら

涼介に書いた手紙をもう一度読み直す

もう涙は溢れなかった

少しだけ目に溜まった涙を拭う美乃里

(こうやって少しづつ進んでいけばいいよね)


「ピコン」

美乃里の携帯が鳴る


《気分はどうですか?

僕はもう起きてますので何か話したい事があれば

メールも電話も出来ます

もし、寝ていたらすみません…》


守からのメールだった

(守さん…優しい人だなぁ…)


《ありがとうございます。

守さん昨夜お仕事終わりに来てくれたんですか?》


《はい、早めに終わりましたので

丁度帰りに通る道で…

美乃里さんはしっかり眠れましたか?》


《少し眠れました。

ですが、ここ数日たくさん眠っていたので

凄く元気です^^》


《そうですか…あまり無理なさらずに

食事と睡眠はしっかりとりましょうね》


《お父さんみたいなセリフですね

気にかけて下さり感謝しています》


美乃里の気分はとても穏やかで

守からの返信でクスクスと笑うこともあり

少しずついつもの美乃里を取り戻していた


何度か連絡を重ね、外も明るくなっていた


《もうすぐで朝食の時間ですね

私も朝食をとり、準備しましたら

病院に向かいますので

後ほど》


《本当にありがとうございます。

では後ほど宜しくお願いします^^》


美乃里は丁度きた朝食を食べ、診察を終え

退院の準備をする、時刻はAM9:55

守が来るのは11時頃だと聞いていた美乃里は

ベッドに座り、涼介への手紙を何度も読み返していた

涼介の携帯は鞄の奥に閉まった

あの動画は、まだ自分を責めてしまう美乃里には

冷静になって見れない気がしていた


美乃里は天井を見上げる

「涼介…」


コンコン…

(誰だろ…)美乃里 「はーい」


美乃里が返事をするとドアが開く

守 「美乃里さん、おはようございます」

美乃里 「守さん、おはようございます

少し早いですね…朝からありがとうございました

1人で心細かったので凄く助かりました」


守 「いえ、私は何も…

目が赤いですね…冷やしましたか?」

守は冷蔵庫に向かい、保冷剤を取り出し

自分のハンカチに包むと美乃里に差し出した

美乃里 「すみません…本当に

ご迷惑ばかりお掛けして…ありがとうございます」

守 「気になさらず何でも言ってください」

美乃里 「あの、これ…どうにか涼介と一緒に入れてくれないでしょうか?」

美乃里は持っていた便箋を手渡す


守 「もちろんです。ご両親も涼介さんも喜んでくれますね

では、私はこちらを渡して来ますので

美乃里さんは書類を出して準備をお願いします」

美乃里 「はい、あの…ありがとうございます。

涼介のご両親にも…手紙を書いたのですが…

渡さない方がいいでしょうか?」

守 「渡しましょう。美乃里さんの気持ち伝わりますよ」

美乃里 「ありがとうございます。宜しくお願いします」


守 「では、また迎えに伺います

あ、あの…あと、すみません…ワンピースお似合いです」

ニコッと恥ずかしそうに微笑み、

涼介は頭を下げて急いで出て行った


残された美乃里は恥ずかしそうに微笑んでいた


10分程で守は病室に戻ってきた

守 「それじゃ、少し早いですが行きましょうか」

美乃里 「はい」


2人は病院の裏口玄関へと向かう

美乃里 「あの、涼介は…」

守 「涼介さんも今日、自宅に戻られますよ」

美乃里 「そうですか…」

守 「私も葬儀に伺いたかったのですが家族葬ということでまた日を改めて会いに行けたらと思っております」

美乃里 「そうですか…」

守 「その時は美乃里さんも一緒に伺いましょう」

美乃里 「え?」

守 「美乃里さんなら大丈夫ですよ

また涼介さんに笑顔で会いに行きましょうね」

美乃里 「は…い」

美乃里の目には涙が溜まっていた


病院を出ると美乃里は空を見上げる…

美乃里 「涼介、ばいばい、またね」

と小さな声で呟いた


守と美乃里は迎えの車に乗り込み、警察署へと向かった

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