11.たどり着けない華
涼介 「あーめんどくせぇ」
(美乃里も何で連絡無視すんだよ)
涼介は不貞腐れた顔で待ち合わせ場所まで歩く
涼介 「後藤さん、ここっすよ」
健太 「ああ、ごめんごめん遅れちゃって」
後藤 健太 (ごとう けんた)涼介と同じ職場の先輩だ
涼介 「後藤さん、俺も忙しいんすよ?」
健太 「嘘つけ、お前」
涼介 「本当に!美女とディナーの予定だったんですから」
健太 「はい、はい」
涼介 「てゆーかカモフラなら俺じゃなくて彼女にしてくださいよ、こんなもっさい男2人で行く場所じゃないでしょ」
健太 「しょうがねーだろ、空いてるのお前だけだったんだから」
涼介 「だから、俺も美女と予定あったんすよ」
健太 「振られてるくせに」
涼介 「絶対また振り向かせれますって」
健太 「俺みたいにドーンと構えてたら戻ってくるぞ」
涼介 「後藤さんは体型がドーンとしてるだけっすね」
健太 「お前、今日奢りな」
涼介 「い、いや普通は誘った方の奢りっすよ
いや、違うわ。先輩なんだから後輩には奢るのがかっこいい先輩じゃないですか」
健太 「…」
涼介 「そもそもね、俺の担当分野じゃないですからね」
健太 「お前が掴んだらお前が書いていいぞ」
涼介 「警察も絡んでんじゃないんですか?」
健太 「多分な」
涼介 「バレたらやばいじゃないっすか」
健太 「その時はその時だ」
涼介 「全然頼りにならないっすね」
健太 「いざという時に頼れるのは自分自身だけだ」
涼介 「ま、その体なら頼れそうっすね」
「べシッ」
肩を叩かれる涼介
涼介 「ぅおっ、飛んで行きましたよ。今」
健太 「着いたぞ」
涼介 「あー男2人キツイな〜」
PM 20:15
店員 「いらっしゃいませ2名様ですか?」
健太 「はい」
店員 「こちらにどうぞ」
通されたのは守達の後ろの席だ
店員 「メニューはそちらからお願い致します」
涼介 「ありがとうございます」
(なんだ、他にも男2人で来てるのいるじゃん)
涼介 「後藤さん、飲みますか?」
健太 「俺は仕事だからいらねぇ、お前は飲んでもいいぞ」
涼介 「あざーす」
健太 「遠慮しろよ」
涼介 「適当に頼んじゃいますねー」
健太は周りをキョロキョロと誰かを探す
店員 「お待たせしました、生ビールです」
涼介 「いただきまぁ〜す」
涼介は飲みながら電話を掛ける
涼介 「はぁ…」
(何で出ないんだよ、返信もないしあいつ何やってんだ)
…
雅紀 「美乃里ちゃん、何食べる?」
美乃里 「雅紀くんのおすすめでいいいよ」
雅紀 「OK〜適当に頼んじゃうね」
美乃里 「ありがとう」
雅紀 「お酒も頼んじゃっていい?美乃里と飲みたい」
美乃里 「う、うん少しだけなら」
雅紀 「やった〜」
雅紀はとても上機嫌だ
「ブーッブーッブーッ」
雅紀 「出なくていいの?さっきからよく鳴ってない?」
美乃里 「この間の元彼だから大丈夫」
雅紀 「俺が出ようか?」
美乃里 「え?大丈夫!迷惑とかじゃなくて
いつもの事だし、言われる事もだいたい分かってるから」
雅紀 「何それなんか妬くわ」
美乃里 「え?なんで?」
雅紀 「お互い知り尽くしてる感に嫉妬する」
美乃里 「クスクスクス」
美乃里は可愛く小さく笑う
雅紀 「まじだからね」
美乃里 「雅紀くんもそんな一面あるんだ」
雅紀 「美乃里だからかな」
美乃里はキュンとしてドキドキが止まらない
RRRRRR 雅紀の携帯が鳴る
雅紀 「はーい、もういるぜ」
それだけ話すと雅紀は電話切った
雅紀 「さっき話した友達、もうすぐで来るって」
美乃里 「そうなんだ」
「ブーッブーッブーッブーッ」
美乃里の携帯が鳴る
美乃里 「はぁー」
雅紀 「出る?」
美乃里 「1回出てくるね」
席を外そうとした美乃里の手を掴む雅紀
雅紀 「ここで話して?」
美乃里 「分かった…」
美乃里 「はーい」
涼介 「うぉっ美乃里?」
美乃里 「……」
(自分から何度も掛けといて出たらビックリしてんじゃん)
涼介 「何で連絡無視してたんだよ」
美乃里 「何か用ですか?」
涼介 「あのなー、その冷めた感じやめろ」
美乃里 「なに?」
涼介 「今どこにいる?」
美乃里 「今…食事中」
涼介 「どこで?誰と?」
美乃里 「何で言わなきゃいけないの?」
(ん?あれ?)
涼介 「そりゃぁ気になるからに決まってるだろ」
美乃里 「秘密」
(このガヤガヤ感とBGM…)
涼介 「男じゃないよな?」
美乃里 「あっ」
美乃里から携帯を奪う雅紀
雅紀 「こんばんは〜も・と彼さん」
涼介 「誰?」
雅紀 「嫌だな〜この間会ったじゃないですか」
涼介 「お前か」
雅紀 「美乃里は俺と食事中で、申し訳ないです」
涼介 「どこだ?」
(こいつ美乃里って呼んでんのか?)
雅紀 「多分その感じ同じ店ですね」
涼介 「は?何言ってんだ?」
雅紀 「では取り込み中なので失礼します」
涼介 「おい!まて!」
雅紀 「何か用ですか?」
涼介 「美乃里にかわれ」
雅紀 「無理ですね〜楽しい食事を邪魔しないでくださいよ
食事中なんで何度も掛けてこないで下さいね」
言い終えると雅紀は電話を切る
雅紀 「はい、みのちゃん」
携帯を受け取る美乃里
美乃里 「ごめんね、なんかありがとう…」
雅紀 「ぜんぜ〜ん美乃里ちゃんここのお店にいるって言った?」
美乃里 「ううん、何も」
雅紀 「偶然か…」
美乃里 「ん?」
雅紀 「多分、その元彼さん同じ店にいるよ?」
美乃里 「やっぱり?なんか電話口から聞こえる音楽が一緒だったから」
美乃里は苦笑いする
雅紀 「ま、こっち側にいたら気付かれることもないしゆっくりしよ」
美乃里 「うんっ」
ニカッと笑う雅紀につられて美乃里も笑う
(奥のこの部屋は2部屋だけ…かな?
ここと、隣にあっただけだよね…)
美乃里はぼんやりとこのカフェの構造を考えていた
「ガチャッ」
男性 「こんばんは〜」
男性は前菜と一緒に登場した
雅紀 「おう、洋平」
洋平 「美乃里ちゃん、こんばんは」
美乃里 「こんばんは
あの、この間はご馳走になりました」
ペコっと頭を下げる美乃里
洋平 「全然!気にしないで」
美乃里 「とても美味しかったです」
ニコッと笑う美乃里をまじまじと見る洋平
美乃里 「ん?」
美乃里は雅紀に目をやる
洋平 「いや〜可愛いね」
雅紀 「やめろ」
少し強めで怒っているような口調の雅紀
洋平 「う〜怖いっ」
美乃里 「ありがとうございます…」
美乃里は控えめにお礼を言い、目の前の食事に手をつける
雅紀 「今日、運び持ってきたか?」
洋平 「もっちろ〜ん」
雅紀 「じゃぁ、後でここに持ってきて」
洋平 「お!今日から?もう?」
雅紀 「お前……」
洋平 「先に頂いてます」
雅紀 「はぁー仕事終わってからにしろよ」
洋平 「先にしたから仕事頑張れてるんだろ〜」
雅紀 「はいはい分かった」
洋平 「じゃ、お料理持ってきまーす」
「ガチャッ」
洋平は出て行った
美乃里 「何だか凄く陽気な人なんだね、洋平くん」
雅紀 「まぁ、今わな」
美乃里 「そうなんだ」
(2人の会話は理解出来なかったけど
雅紀くんのお友達に挨拶できて良かった)
…
(後ろの2人…音楽で聞こえにくいな…
電話してる男性から微かに'みのり'って聞こえた気がしたんだけどな…みのりさんの事じゃないか…
偶然だよな、、)
守 「どうした?」
険しい顔の悟に声を掛ける守
悟 「後ろの体格のいい男、記者じゃないか?
あ、まだ振り向くなよ」
守 「ああ」
悟 「この間の事件の時にしつこい記者がいてな、多分あいつだ」
守 「偶然か?それとも…」
悟 「いや、あいつは嗅ぎつけてる」
守 「はぁ…智さんに報告するか」
守は携帯を取り出し、智貴にメールを送る
記者が嗅ぎつけてるようで、店内に来ています
このままノータッチでいいでしょうか?
智貴からの返信は直ぐにきた
とりあえず様子見だ
何か動きそうであればまた連絡してくれ
守 「とりあえず様子見で」
悟 「了解」
…
涼介 「クソっ同じ店ってなんだよ」
(なんだよ、あいつめっちゃムカつく)
涼介は切られた電話を眺めながらイライラをぶつける
健太 「お〜荒れてるね」
涼介 「あー俺も美乃里と会いてぇー」
健太 「お前、未練タラタラだな」
涼介 「あんないい女いないっすもん」
健太 「次!次!男がグジグジいつまでもだせぇな」
涼介 「美乃里しかいらないっす…」
涼介はお酒も入ってるせいか弱々しく机に突っ伏す
健太 「ナンパしろ!ほら、あの子 綺麗だぞ」
涼介 「金髪は無理っすね〜
今、美乃里にちょっかい掛けてるアホも金髪なんすよ
見るだけでアイツの顔がチラついて…」
健太 「他に特徴は?」
健太は食い気味に涼介に聞く
涼介 「え?えーっと爽やか系でニカッて感じの笑い方しますね、女慣れしてそうな嫌な感じっす」
健太 「そいつが同じ店って言ってたのか?」
涼介 「そうっすね…って後藤さんどうしたんすか?
怖い顔して」
健太 「ちょっと見にくいけどこいつだろ?」
健太は携帯の画面を涼介に見せる
涼介 「そうっす!え?知ってるんすか?」
健太 「俺が今日ここに来た理由もこいつだ」
涼介 「て事は…」
健太 「そうだ、俺がこの間お前に教えてやった
何も知らない女の子達が犯罪に巻き込まれてる…
美乃里ちゃん…そいつと今いるのか?」
涼介 「コマ…」
(美乃里はしっかりしてるからそんなのに騙されないはずだ…)
健太 「涼介、しっかりしろ
俺の情報だとキーワードは華らしい」
涼介 「はな?」
健太 「あぁ、この華ってのをどう使うかは知らない」
涼介 「同じ店ってことは」
健太 「あぁ、この店のどこかにいるはずだ
ただ、普通の従業員と奴のグループの従業員がいるはずだ」
涼介 「変に探し回れば直ぐに気付かれるか…」
健太 「本当はヤツが来るのを確認して見つけたかったんだが先を越されたか…」
涼介 「美乃里…」
涼介は美乃里に連絡をする
美乃里、返事できたら直ぐにしてくれ
俺は返信が来るのを待った
本当は待つべきではなかった
探すべきだったんだ