「きゃーっ」と悲鳴を上げて
体がぽかぽかとして、目が覚めました。
フカフカとまでいきませんが、それなりの寝心地のベッドに横になっているようです。そしてアイスブルーのサラサラの髪が見え、私は……!
もうビックリ仰天してしまい「きゃーっ」と悲鳴を上げてしまいました。
すると「どうされましたか!」と銀髪の女性の騎士さんが部屋に入ってきたので、さらに驚き目を丸くします。ですが私は下着姿だったので、女性の騎士さんで良かったと思いました。
良かったのも束の間、「シェリーヌ公爵令嬢」と寝惚けた声が聞こえ、今度は心臓が止まりそうになりました。羽毛布団から顔をのぞかせたのは……ソフィーです!
これは一体どういうことでしょうか!?
「どうやらお二人とも、お目覚めになったようですよね。すぐに医師を呼んでまいりますので」
そう言うと女性の騎士さんは、部屋から出て行きました。
同時に。
「シェリーヌ公爵令嬢、ご無事でよかったです! どこか痛むところなどありませんか!?」
「それは大丈夫そうですよ。それより、どうして私はここに? ここはどこでしょうか?」
とまどう私にソフィーは分かりやすく説明してくれました。
ここはセリア大橋から一番近い、町宿なんだそうです。
セシリオを追い、川に飛び込み、岸になんとか辿り着いたものの。
寒さで急激に体温が低下したせいで、私は気絶してしまいました。
そこで急ぎこの宿に運び込まれ、濡れた下着を脱がされ、宿の奥さんが用意してくれた下着を身に着けることになったのです。すぐにベッドに休ませ、駆け付けた町医者に診察してもらったところ。擦り傷やかすり傷が少しあるぐらいで、外傷はほとんどありません。ただ体温を上げる必要があったのです。
丁度そこへ、ソフィーとシャールが駆け付けました。ここに宿の奥さんと娘さんくらいしか女性がいません。体を温める場合、体温を活用するのはこの世界ではよくあること。そこでソフィーがその役目を買ってでてくれたわけです。
可愛らしい髪型をしていたのに、それは解き、下着姿になったソフィーは。
私を抱きしめているうちに、眠りに落ちてしまったようなのです。
「ソフィー皇女、まさか皇族の方に、体を温めていただくなんて……。恐れ多いことです。本当に申し訳ありません」
「そんな! シェリーヌ公爵令嬢はお兄様を追って川に飛び込んでくださったのです! とても勇気ある行動でしたわ。シェリーヌ公爵令嬢を温めることくらい、して当然のことだと思っています」
「それは……そう言っていただけるとありがたいような申し訳ないような。セシリオ皇太子は私を庇い、川に落ちました。それなのに私は自ら川に飛び込み、セシリオ皇太子を助けるつもりでいましたが……泳ぐことができるのですよね、セシリオ皇太子は?」
私の問いにソフィーは「はい。ちなみに私も泳げます」と笑顔で答えました。
これには、ターナー帝国の皇族はすごいです!と思わずにいられません。
「結局、完全な空回りでした。私は必要なかったのに、川へ飛び込み、挙句、気を失い……。セシリオ皇太子の足手まといだったと思います、私は」
「そんなことありません! お兄様から聞きました。岩にひっかかった剣をはずすため、ベルトをシェリーヌ公爵令嬢がはずしてくださったと。この助けがなかったら、大変なことになっていたかもしれないと、言っていました!」
「ですが護衛騎士の方も、飛び込んでくださいましたし……」
すると「違います!」とソフィーは否定しました。