女子会
「まあ、ご丁寧にありがとうございます! 私、枕が変わってもグッスリ眠ることができるんですよ。頭の中をね、空っぽにしてから横になるんです。ごちゃごちゃ考えると眠ることができなくなっちゃうでしょう」
するとセシリオはクスクスと楽しそうに笑い「あなたらしい方法です」と……これは褒めてくださったのですかね? でもね、本当に。孫の二人も「おばあちゃんの家に行くと、枕が変わるから眠れない」と言っていましたが。
スマホのゲームのやり過ぎ、動画を見過ぎて寝ようとしていない……のが原因なのではないかと思います。その一方で、寝つきが悪い方って多いですよね。そんな皆さんには、お布団なり、ベッドに横になる前に、頭の中を空っぽにすることを、おススメしたくなります。
いろいろ考えること、思い出すことがあっても、それは明日起きたら考えます!で、一度全部忘れちゃうのです。それがね、毎日の習慣になると、不思議と眠ることができるようになるのよ。
そんなことを思いながら、セシリオにはおやすみなさいをして、メイドさんにソフィーのお部屋へ案内してもらいました。ソフィーは私が訪ねると、大喜びです。こんな風にお友達とお泊りの機会が、ソフィーはないそうで。それは警備の都合上とか、いろいろあるみたいですが。寝ている時ほど、無防備になることはないですからね!
でも私は身元がしっかりしています。皇太子であるセシリオも許可をしたでしょう。だからこうやって今は……。
大きなベッドに寝そべり、たわいのないおしゃべりをして、本当はダメなのよ、でもこっそり用意してもらったお菓子を食べ、ジュースを飲んでいました。
これってあれかしらね、孫の言っていた「女子会」かしら。二人しかいないけれど、楽しい!
それに「恋バナ」というの? それをしたのよ、ソフィーと。
「そういえばソフィー様はシャールと最初のダンスをされていましたが、いかがでしたか? その後のおしゃべりも盛り上がりました?」
そこでソフィーはハッとした表情になり、私を見ます。
「あの、シェリーヌ様はシャール様と一緒にパレードも観覧されていましたよね? もしやお二人はお付き合いを……」
「まあ、ソフィー様、それはありませんわ! シャールは私の孫……い、いえ、シャール様は同じ公爵家として、仲良くしていただいているだけで、ただのお友達です」
ソフィーがとんでもないことを言いだすので、動揺して「シャールは孫としか思えない」と口走りそうになりました。もう焦って手でパタパタと顔をあおいでしまいます。
「そうでしたか。それをお聞きできて安心ですわ。……シャール様とはダンスは勿論ですが、お話がとても楽しくて! 私、読書が大好きですの。シャール様も読書家でしょう。ですからお互いに面白い本を紹介しあって、とても盛り上がりしましたわ」
これを聞いた私はもう大喜びです。
ソフィーとシャールは趣味が一致しているではないですか!
これなら絶対に仲良くなれますし、慣習に従い、婚約することになっても……。
国王陛下はこれを見越して、二人を選び、最初のダンスをさせたのでしょうか。
「シャール様は読書以外にも、もっとすごいことをされているのですよ」
「そうなのですか!?」
「はい。でもシャール様はああ見えて、恥ずかしがり屋さんなんです。ですから、まだお話できていないのでしょうね。でも少しずつ打ち解けることができれば、きっとソフィー様にも話してくださると思います。ところでソフィー様はどんな物語がお好きなのですか?」
大好きな本の話題だからでしょうか。
ソフィーの瞳がキラキラしています。
「お茶会で顔を合わせる令嬢の皆さんは、恋愛小説を楽しまれているようなのですが……。私はそう言った小説より、冒険物語が好きなんです」
これは意外ですね。
なぜ冒険物語が好きなのでしょうか。尋ねてみると……。
「こんな風に外交で他国に行けることもありますが、基本的に皇宮で過ごすことが多いんです。皇都にいるのに、皇都の観光名所と言われる場所も、じっくり見たことがなくて……。式典やお祝いなどでお邪魔しても終わるとすぐに移動です。自由にいろいろなところに行きたいと思うと……気づけば冒険物語ばかり、選んで読んでいました」
さらにソフィーはこんなことも教えてくれました。
「冒険物語には海や砂漠を旅したりするのは勿論、宝探しやドラゴン退治もあります。そういったハラハラドキドキする物語は、本当に面白くて大好きです!」
シャール、あなたの良き理解者ですよ、ソフィーは!
今すぐこのことをシャールに教えたくなるのを我慢して、ソフィーに提案します。
「今のお話、ぜひシャールとしてみてください。きっと話が弾むと思いますわ。……ちなみに何かお約束されています? 次にお会いする機会とか」
「はい。明日で建国祭は終わりですよね。二日後、帰国になるので、明後日、お茶会をする約束をしました」
「そうですか。それは良かったですわ!」
こんな風に楽しくソフィーとおしゃべりをして、ついつい夜更かししてしまいます。ようやくそれぞれのベッドに眠る時、ソフィーはこんな提案をしてくれました。