Shall we dance?
「シェリーヌ公爵令嬢、僕とダンスしませんか?」
「シェリーヌ公爵令嬢、ぜひ自分とダンスをしてください」
「シェリーヌ公爵令嬢、よければ私とダンスを!」
周囲を令息の皆様に囲まれ、目が点ですよ。
さっきの元同級生の言葉を思い出します。
“公爵令嬢”を狙う令息の方が沢山いるというのは、本当のようです。
もしかするとこれまではシャールがそばにいてくれたから、皆さん、近寄らなかっただけなのかもしれません。
困りましたね。
こうなると誰とも踊らない……というわけにはいきません。
さすがにそれはお相手に失礼になりますし、我が家の家門に泥を塗ることになってしまいますから。
「分かりました。では三人、あなたとあなたとあなた。順番に踊りますから。その後は休憩ですから、お願いしますわね」
もう仕方ないですから、近くにいる令息を指名し、エスコートしてもらうことになりました。
国王陛下とダンスするボタンを押してしまったのに。
こんなに令息に囲まれるなんて。
もしや「YES」ボタンではなく、「NO」ボタンを押したのかしら?
そんなに風に思っていたら……。
三人の令息とのダンスを終え、ホッとして広間の中央からはけることにしました。
元居た場所に戻ると、そこには沢山の令息が待ち受けています。
それが分かっていたので、別の方向にあえて向かうことにしたところ……。
人混みを避け、開けた場所に出た、と思ったら、そこは国王陛下がいらっしゃる玉座の真ん前でした。どうりで空いていると思ったら……。
バッチリと、国王陛下と目が合ってしまいます。
ここはちゃんとご挨拶をしなければ!
慌ててカーテシーをして顔をあげると、目の前に国王陛下がいるではないですか。
「シェリーヌ公爵令嬢、どうだろうか。私と一曲、踊らないか」
この問いに、ノーの選択肢なんてないでしょうね!
お相手は国王陛下なのですから。
ここは笑顔で「はい」と答えるしかありません。
何より、私があの案内標識で「YES」を選んでいたから、こうなったと思いますからね。
国王陛下にエスコートされ、歩き出した時。
シャールの姿が見えました。
玉座のすぐそばに配置されたソファに、シャールとソフィーと並んで腰かけていたのです。もうお似合いのプリンス&プリンセスが座っているという姿だったのですが。
シャールは国王陛下にエスコートされる私を見て、口をぽかんと開けてしまっています。
せっかくの王子様なのに! シャール、口を閉じて!と念を送りました。
一瞬のことですが、伝わったのでしょうか。
シャールが慌てて口を閉じています。
すると。
クスッと笑い声が聞こえました。
「!」
すぐ近くにセシリオがいました。
パールグレーの明るいテールコートを着ています。
タイは濃いグレーでサファイアが飾られた宝飾品で留められていました。ベストは銀糸で唐草模様が織り出されたシルクのもの。シャツは純白です。
アイスブルーの髪がシャンデリアの明かりを受け、さらに煌めきが増し、もう全身が輝いているようですよ。
これはもう大天使様みたいですね。拝みたくなってしまいます。
「シェリーヌ公爵令嬢?」
気づくともう広間の中央に到着していました。
慌てて国王陛下と向き合い、ダンスに備え、体勢を整えます。
こうやって向き合うと、見た目はジョナサンそっくりですが、体格がいいですね。
エドマンドほどではないですが、国王陛下もまた、体を鍛えられているのかもしれません。
「宮殿の舞踏会にはあまり顔を出していなかったようだが、忙しかったのかね?」
これにはドキッとしてしまいますね。
忙しかった……というのもありますが、婚約破棄の一件もありました。
宮殿の舞踏会には当然、王族の皆様が沢山いらっしゃるので、足を運びにくい気持ちもあったのです。ただ、今日、久々に皆様とお会いしてみると、ジョナサンと婚約していた頃と変わらない態度で接していただけました。いろいろ考えてしまいましたが、すべて杞憂だったわけです。
それを話すと……。
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