エピローグ
一人の人間の命を奪い、さらにもう一人、死者を出しかねない行動をとったタイド。軽い刑で終わるわけがありません。しかもこれまで出版された彼女の本の原型は、ソラリスだったわけです。世間を欺いたこちらの罪も、タイドは問われることになるのではないでしょうか。
「なんかこんなことになると思わなくて。行き詰っていたから、つい助けを求めてしまったけど……。嫌な想いをさせてしまったな」
ポマードが「申し訳ない」と頭を掻きますが、シャールは首を振ります。
「こんな経験、しようと思ってできることではないです。いつもドラゴンや宝探しの物語を書いていましたが……ミステリーにも挑戦したくなりましたよ。結局、何事も経験ですから。ありがとうございます、ポマード」
「私も同じですよ。ポマードが王立警備隊に入隊したから、こんな人生ドラマを目の当たりにできたと思います。しばらくは社交界でこの経験について、語ることができそうだわ」
シャールと私が順番にそう答えると、ポマードは「二人とも優しいなぁ。ありがとう」と笑顔になります。
その瞬間!
またも予告なしで案内標識が出てくるので、もう本当に。
心臓に悪いったらありゃしないわ。
『資産家老婦人殺害事件の真相を究明しよう、見事クリアしました! おめでとうございます。報酬は、名探偵トロフィー、サマーフェスティバルのドレス……』
はい、はい。
なんだかいろいろ頂けるようで、ありがとうございました!
×ボタンに触れ、とっと消して終了です。
「ではそろそろ帰りますか?」
シャールが私を見て、「そうですね」と全員、椅子から立ち上がります。
すると……。
シャールとポマードが、同時に手を差し出します。
また二人してエスコートを申し出るなんて!
でも二人ですからね。
私は左右の手をシャール、ポマードのそれぞれの手にのせます。
「さすがシェリーヌ嬢だ。こんな解決方法を思いつくとは!」
ポマードはご機嫌で、シャールは優雅に笑い「では参りましょう」とレストランを出ました。
廊下に出ると、窓からは王立警備隊の敷地の中庭が目に飛び込んできます。
そこには初夏の今の季節を彩る、ジャカランダの明るい紫色の花が満開です。
日本では生育が難しいと言われ、見かけたことがなかったジャカランダですが、この世界では毎年のように楽しむことができます。
日本では春に桜の花びらの絨毯、秋にイチョウの葉の絨毯を楽しめますが、ここでは夏にジャカランダの明るい紫色の花びらの絨毯を楽しめるのです。
でもそれはまだ先のこと。
今は澄み渡った初夏の空と、このジャカランダの明るい紫色の花の饗宴を、存分に楽しむべきでしょう。
夕方とは思えない強い陽射しが、ジャカランダの花に降り注ぐ。
その花木の下に広がるのは、ひと際濃い影。
明と暗は表裏一体。善と悪もまた同じ。
ある女性が善かれと思ってとった行動は、とんでもない悪魔を生み出してしまった。
だが悪も裏返せば、いつか善になるのか?
その答えは今、牢の中で一人涙する女性が、示してくれるのかもしれない――。
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~アジサイとジャカランダ:真相究明の物語 完~
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
【以下、御礼&重大発表です】
今回、最終話を飾るジャカランダの美しい写真をYOSSHI様にご提供いただきました。
YOSSHI様、ありがとうございます!
まさにミーチェが見た景色が映像化できたようで感涙。
読者様とも共有でき、心から嬉しく思います。
【重大発表!本作読者様への最速情報解禁】
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